家電ラボの徹底「本音」レビュー

究極の1枚焼き! 耳までフワフワの焼き立てパンが食べられる、三菱「ブレッドオーブン」を試した

家電プロレビュアー・石井和美が、レビューハウス「家電ラボ」で徹底的に試した「本音」の製品レビューコーナーです。

 調理家電「三菱ブレッドオーブン TO-ST1」(以下、ブレッドオーブン)の発表会兼試食会では、製品をひと目見たメディアはザワつきました。1枚しかパンが焼けず、一般的なトースターとは違う、新しい形のパン専用オーブンだったからです。

 そして何より驚いたのは、焼き上がりの食感です。スーパーで売っている食パンが、まるで有名店の焼き立てパンのように生まれ変わっており、香りや甘みが際立ち、耳までふっくらとしていました。

 「トースト」ではなく「焼き立て」に近く、今までに食べたことがない食感に「美味しい!」という声があふれたのです。今回は、4月25日発売の「ブレッドオーブン」を一足先に試してみました。

耳までフワフワに焼き上げる「三菱ブレッドオーブン TO-ST1」
メーカー名三菱電機
製品名三菱ブレッドオーブン TO-ST1
実売価格30,000円前後(税抜)

「食パン」と「高級トースター市場」がアツい! 全く新しい「ブレッドオーブン」とは?

 「生食パンブーム」以降、食パン専門店には長蛇の列ができ、テレビなどのメディアでも多数取り上げられています。もはや食パンは「嗜好品」。それに伴い、トースターも「BALMUDA The Toaster(バルミューダ ザ トースター)」をはじめとした高級トースターが続々登場しており、売れ行きも好調です。

高級トースターの先駆けともいえる「BALMUDA The Toaster」

 今回試す「ブレッドオーブン」は、「トースト」ではなく「焼き立て食パン」を目指して開発されたそうです。三菱電機は高級炊飯器「本炭釜」を搭載したIHジャー炊飯器が有名ですが、その技術を応用したとのこと。上面(フタの部分)と下面(パンを置く部分)にフラットヒーターを内蔵。密閉シールで熱や食パンから出た水分(蒸気)、香りを逃さない「密封断熱構造」により、狭い庫内に蒸気と香りが充満し、食パンの水分が内側だけでなく耳の部分にも移動します。

トースターには見えないデザイン。一般的なトースターよりも小さなサイズです
ボタンで操作します。メニューはすべてイラスト
天板は美しい木目調
このように開いて使用します
パンを置く下のプレート
フタの部分はパンにかぶせるようにします
付属のへらでパンを取り出します

 外形寸法は幅270×奥行223×高さ140mmで、庫内は幅192×奥行142×高さ44mmしかありません。コンパクトなサイズで、一度に焼けるのは食パン1枚のみ。

 1枚の食パンしか焼けないのは、狭い庫内と近接ヒーターによる高い熱効率を実現し、食パンの両面の温度をセンシングしながら細やかに加熱制御するためです。そのため、他社の高級トースターのように水を追加する必要がなく、食パンの水分だけで焼き上げられます。

使い方はカンタン、挟み込むようにして焼く

 使い方はまず、最初にパンを置きます。食パンはスーパーでよく売っている「超熟」を使ってみました。フタをかぶせるようにして焼くので高さ制限があります。本体上蓋に表示してある「MAX」が高さ上限です。約33mm程度なので、4枚切りの食パン(約30mm)に山盛りにトッピングすると上限を超えてしまいそうです。

MAXと表示してある高さが上限。へらにもMAXの線があり、そちらで高さも確認できます

 次に3つのボタンを操作します。左から「メニューボタン(料理の種類)」「枚切ボタン(パンの厚さ)」「焼き色ボタン(5段階から選択)」をそれぞれ選択。メニューボタンでは、「普通のトースト/冷凍トースト/トッピングトースト(チーズやハムなどの具をのせたトースト)/フレンチトースト」の4つから選びます。枚切ボタンは「4/5/6/8枚切り」からパンの厚さを選択し、焼き色は「ふわふわ/薄め/ふつう/濃いめ/サクサク」5段階から選択します。

 今回は、6枚切りを「ふつう」で焼いてみることにしました。スタートボタンを押す前に、上蓋をそっと閉じます。

パンを置きます
トースト、6枚切り、ふつうの焼き加減でスタート

 焼き上げの様子としては、最初は水分を閉じ込め、最後のほうで焦げ目をつけています。そのため、最後で一気に水蒸気が出てくるのですが、1枚のパンからこれだけの水蒸気が出てくることに驚きました。

最後になると水蒸気がぶわっと出てきます

耳までふんわり! 新食感のトーストが楽しめる

 パンの見た目はこんがり。一般的なトースターよりもムラが少なく、全体がキツネ色になっています。持ってみると、いつものトースターよりもしっとりしており、少し重く感じます。通常、トーストしたパンは耳がかたいですが、こちらはつまんでみてもフワフワです。

ムラなくキツネ色に焼けています
耳までふんわり。こんなにフワフワな食パンのトーストは初めてです

 やはり、家で食べてみても美味しい! しっとりしていてもちもち、甘さと香りが際立っており、スーパーで購入したパンなのに、パン屋で購入した食パンのようです。真ん中はパリッと表面が薄くピンと張りがあり、サクッとした食感も楽しめます。「焼き立て」という表現がぴったりです。

 焼き時間は実測で約2分半。時間の経過とともに、カチカチというレトロな音がだんだん早くなっていくので「もうそろそろかな」というのは音で判断できますが、正確な時間はわかりません。残り時間などが表示されないのは少々不便です。

 「ふわふわ」「濃い目」でも焼いてみました。焼き時間は「ふわふわ」が約2分半、「濃い目」が約3分半でした。「ふわふわ」は焼き色がついていませんが、中までしっかり熱が入り、表面もサクッとしています。「濃い目」はこんがりしているものの、一般的なトースターよりもやわらかく、香ばしさを楽しむことができました。個人的に好きなのはバランスのよい「ふつう」ですが、高級パンを購入したら「ふわふわ」で焼き立ての食感が味わえそう。

左は「ふわふわ」、右は「濃い目」。ふわふわは焼けていないように見えますが、アツアツです

 冷凍した4枚切りのパンも焼いてみました。冷凍トーストは「薄め/ふつう/濃い目」しか選ぶことができません。分厚い4枚切りでも中まできちんと温まっており、ふわふわです。ただ、耳の部分は常温のパンよりも少しだけかたさを感じました。それでも、一般的なトースターよりやわらかく、もっちりとしています。

 スーパーで購入した食パンや、日が経ってしまった食パンは、トーストするとかたくなりがちで香りも落ちてしまいますが、ブレッドオーブンで焼くと、数日経過した常温の食パンも香りが際立ち、食感を楽しむことができました。

半熟エッグトースト、フレンチトーストも絶妙な制御で焼き上げてくれる

 なかなか卵に火が通らず、難しい「半熟エッグトースト」もカンタンです。マヨネーズで囲んでからパンの中央部分を凹ませて卵を置き、トッピングトーストコースで焼きます。「4枚切り」「濃い目」でスタート。白身の部分は固まっており、黄身は半熟です。

難しい半熟エッグトーストに挑戦
約6分半で焼き上がりました。卵にも火が通っていますね!
半熟なので、黄身はとろっとしています
白身の部分はほどよく固まっていました。黒コショウをたっぷりかけるとさらに美味!

 チーズとハムを乗せたパン(5枚切り)は、トッピングトーストで焼いてみました。チーズがまんべんなくとろりと溶けており、耳もふわふわで絶品です。こちらの焼き時間は約2分半でした。

チーズがしっかり溶けて、中までしっかり熱が入っています
これもまた絶品!

 フレンチトーストは、牛乳、卵、砂糖をかき混ぜたフレンチ液に漬け込んで「フレンチトースト」モードで焼きました。最初にプレートにバターを塗ってから焼きます。このような使い方ができるのも、ブレッドオーブンの特徴です。

 4枚切りで作ったところ、かなり膨張して上が少し焦げてしまいましたが、中がふるふるで、まるでスフレ。空気をたっぷり含んでおり、やわらかく、専門店で食べるような食感です。子どものおやつにもぴったり。

 使用後はサッと濡れた布巾などで拭き取ればOK。ただ、プレートを外して洗えないのは残念です。

フレンチ液をたっぷり染み込ませた4枚切りのパン
焼き上がりに10分近くかかりました。ふくらんでいます
プルプルで美味しい!
キッチンペーパーや濡れ布巾なのでさっと拭き取れば汚れが落ちます

パン嫌いな子どもが感激し、「誕生日に買って」

 我が家の子どもたちは、高級トースターを色々試していますが、「コレが一番美味しい!」と大絶賛。特に息子のほうはパンの耳が苦手で、トーストした食パンはほとんど食べないのですが、ブレッドオーブンで焼いた食パンだけは4枚切りでもペロリと食べてしまいました。

 もともとパンが好きだった娘も「コレで焼くと別物だね。パンそのものが美味しいから、バターもいらない」と、大好きなバターもぬらずにパクパク食べていたので驚きました。「毎日食べたいから、誕生日にコレ買って!」と言われて驚愕……。

子供たちが勝手に焼いて食べてくれるのでラク
こんなにすごい勢いでパンにかぶりつく息子は初めて見たかも……

 我が家は4人家族なので1枚ずつしか焼けないのは不便と思いましたが、主にパンを食べる朝食の時間がバラバラになっており、一度に4枚焼くということはまずありません。また、テーブルに食パンをそのまま置いておけば、子供たちが勝手に焼いて食べてくれるので、親としてはむしろラク。また2等分や4等分に切ってから焼き、焼き立てを温かいうちに食べながら連続で焼いていく食べ方もおすすめです。

 最初は「1枚しか焼けないなんて……」と否定的でしたが、テーブルに置いて使えるので、小分けにして何回か焼きかながらアツアツを食べるのも楽しく、朝食の時間がバラバラになりつつある我が家では、それほどデメリットには感じませんでした。

究極の一枚焼きトースターの置き場所は、キッチンではなくダイニングで

 いくら焼き立てが食べたくても、一般的なトースターをテーブルに置いて使用するご家庭は少ないのではないでしょうか。ブレッドオーブンはダイニングテーブルに置くことを意識した、置きっぱなしにできるデザインなのです。テーブルの上で、焼き立てをすぐに食べられます。これまでのトースターにはない使い方ができる、新しい調理家電だと感じました。

出しっぱなしにして使えるので、食べたいタイミングでそれぞれ焼いて食べられます

 実売予想価格は30,000円前後(税抜)とのことで、決して安くはありませんが、耳までふんわりとした、驚きの食感を楽しむことができます。「トースト」ではなく、「焼き立て」パンを楽しめますよ。

まとめ

○ここがスゴイ!・今までにない新しい食感。特に耳の部分がやわらかく、まるで焼き立てパン。香りや甘みが増すので、スーパーの安いパンでも驚きの美味しさ
・半熟エッグトーストやフレンチトーストなど、調理が難しいパンもおまかせできる
ダイニングテーブルに置きっぱなしにして、焼き立てをその場で食べられる
△もうひといき!残り時間がわからない
・上蓋の取っ手部分が小さいので少々持ちにくい。またフタが重く、きちんと持って開閉しないとバタンと閉まるので、お子さんがいる場合は手を挟まないように注意
・サッと拭くだけでお手入れはカンタンだが、プレートを外して洗えればさらに嬉しい

石井 和美

家電プロレビュアー。白物家電や日用品のお役立ちグッズなどを中心に製品レビューを得意とする。テストスペースとして守谷市に一戸建てタイプの「家電ラボ」開設し、冷蔵庫や洗濯機など、大型家電のレビューも行なっている。レビュー歴10年以上。

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