10分こそうじ

その家具配置、危なくない? 今すぐ見直したい家の中の地震対策

年に一度の大掃除より、日々の“小”掃除。整理収納アドバイザーとお掃除スペシャリストの資格を持つ筆者が、1日の終わりに10分でできる掃除や片付けのポイントをお伝えします
家の中の地震対策を見直してみましょう

平日でも半日以上を過ごす自宅。コロナ禍以降、テレワークによって、さらに自宅で過ごす時間が増えている人もいるでしょう。

整理収納アドバイザーで防災士でもある筆者は、部屋を片付けることについて、スッキリした空間で暮らすことで精神的なゆとりが生まれる、掃除しやすいなど、普段生活するうえでの利点に加えて、「災害の危険から身を守る」という最大のメリットがあると考えています。

防災訓練の一つに「DIG」というものがあります。大きな地図を囲みながら、災害時の対応方法などを考える内容で、「Disaster=災害」「Imagination=想像力」「Game=ゲーム」の頭文字をとって「DIG(ディグ)」と名付けられました。

動詞としての「dig」は「掘り起こす、探求する、理解する」といった意味もあり、「地域を探求しよう」「災害を理解しよう」といった、訓練のねらいが込められています。

この考え方は、家庭内でも活かすことができます。簡単な家の間取り図に、家具の配置を書き足すだけで、家中を俯瞰して見られるように。

ドアの近くに家具があった! 移動する? 固定する?
この窓には飛散防止フィルムを貼った方が良いかも!

など、対応策を考え実践することができます。

「何も対策しないでいたら、こうなってしまうかもしれない」と、想像しながら対策を考えましょう。

防災を意識したリビング・ダイニングの空間作り

家庭内で集う場所といえば、リビング・ダイニング。人も集まれば、モノも増える空間でもあります。テーブルやテレビなど、大きな家具・家電があり、ほとんどの家庭には大きな窓サッシもあることでしょう。

耐震グッズを使用することも重要ですが、暮らしの中で「カーテンを閉めて、ガラスが飛散しても室内に散乱しないようにする」「高い場所に設置するモノには割れる素材を選ばない」など、防災を意識しながら生活していくことも大切なことです。

危険ポイント何が起きる?対策
テレビ倒れる・飛んでくる粘着耐震シート、転倒防止チェーン
割れた破片が家の中に散乱レースカーテンは常に閉める、飛散防止フィルムを貼る(厚さ70μm推奨)
壁掛け時計・絵画落ちる・ガラスが割れる固定、額縁のガラス板はアクリル板に変更
照明落ちて電球・蛍光灯が割れる特に吊り下げ式のものは、同色の飾りチェーンなどをつないで天井の3~4カ所に留める
ダイニングテーブル・カウンター卓上の食器が床に落ち、割れてケガをする毎食片付ける、寝る前は何もない状態にしておく、小物は蓋付きの収納に入れる

テーブルの上にはなるべくモノを置きっぱなしにせず、食器棚へ。または、卓上で使う調味料など細々したものは、蓋の閉まるケースに入れておきます。このとき、ケースにも耐震ジェルマットを貼りましょう。

よく使うものは蓋付きのケースに入れましょう
卓上調味料などが入っています

危険の多いキッチンは要シミュレーション

限られた空間に、割れものや重い家電があるキッチン。食器棚・吊り戸棚など収納に高さもあるため、家具家電の固定は必須な場所です。

特に、キッチンへの出入り口が1カ所しかない場合は、調理中の発災を想定して、キッチンから無事に出られるかどうかシミュレーションもしておきましょう。

危険ポイント何が起きる?対策
食器棚扉が開き食器が落ちて割れる・扉のガラスが割れる耐震ラッチが付いているか確認、ガラスには飛散防止フィルム(厚さ50μm以上推奨)を貼る
吊り戸棚扉が開き、上から物が落ちてくる耐震ラッチを付ける
冷蔵庫倒れて人に当たる・中に入っていた食材が散乱転倒防止ベルトなどを使う
電子レンジ倒れる・飛んでくる転倒防止ベルトなどを使う
電気ポット倒れて熱湯がこぼれる使用しない時は通電しない、高い場所に置かない

食器棚やカップボードは、揺れても扉が開かないように固定する金具(耐震ラッチ)が付いているかを確認しましょう。付いていない場合は、後付けも可能です。

また、電子レンジ・オーブンレンジも揺れの大きさによっては棚から落下します。しっかり固定しましょう。

収納扉の耐震金具をチェック。ない場合は後付けも

寝室はもしものときに逃げやすい家具配置に

寝室では就寝中を想定して、不安定な家具を置かない、暗い室内から逃げる際に障害にならないようにすることがポイントです。

危険ポイント何が起きる?対策
タンス倒れて下敷きになる固定、移動
暗い室内で床に散乱した物に引っかかり転倒床にモノを置かない、寝る前に片付ける
寝ているところへタンスや本棚が倒れてくる危険はないか、よく考えましょう

玄関までの動線を塞がない

廊下は、そこを通って玄関へ逃げるとなれば、モノを置きっぱなしにすることの危険性が想像つきますが、少しの間だけ、仕方なく……といった具合に仮置きしやすい場所なので気をつけましょう。

例えば、廊下に捨てるために置いていた畳んだ段ボールが揺れでパタンと倒れてしまった。それが、廊下に面したトイレの前だったとしたら……ドアが開かなくなったそのトイレにあなたが入っていたとしたら……想像するだけで恐くなりませんか?

危険ポイント何が起きる?対策
廊下壁の絵画が落ちる・仮置きしていた荷物に引っかかって転倒荷物は仮置きしない、絵画は置かないまたは固定する
階段仮置きしていた荷物に引っかかり転倒荷物は仮置きしない
倒れて割れたガラスが飛び散る・靴が履けない金具で固定する、割れない鏡に変更
もしものとき、スムーズに玄関に出るためにも廊下は常に片付いた状態にしておきましょう

玄関は屋外へと繋がるスペース。安全に外へ逃げられるよう常に整理整頓が必要です。壁に掛けてあるものは固定していますか? 下駄箱の上に、写真立てや花瓶などの割れものはありませんか? もし鏡を置きたい場合は、割れない素材のものを置くと破片が散らばることがなく安心です。

玄関の鏡は割れない素材にしておくと安心

いつやってくるかわからない災害への備えは、完璧を求めるよりも、少しでも早く始めることが大切です。まずは、家庭内のどこが危険なのかを知ることから始めましょう。

やっておけばよかった……こんな後悔をしないように、今一度、室内を見直すことをおすすめします。

丸 マイ

整理収納アドバイザー、クリンネスト(お掃除スペシャリスト)講師。個人宅の整理収納サービス「mawaru暮らし」主宰。片づけ苦手主婦だった自身の経験から、楽に片づく収納提案を行なっている。ほかにも、子供からシニアまで幅広い層へ片づけや掃除の楽しさを伝える講師としても活動中。