10分こそうじ

3つの「もしも」に備える防災グッズ

年に一度の大掃除より、日々の“小”掃除。整理収納アドバイザーとお掃除スペシャリストの資格を持つ筆者が、1日の終わりに10分でできる掃除や片付けのポイントをお伝えします
被災したときに家で過ごすのか避難所へ行くのかによって用意するものは変わります。外出時にもできる範囲で備えておくと安心です

「水持った?」

あの日から、出かける家族へ掛けている言葉です。

東北から400km近く離れていた筆者の住む街でも震災の影響は強く、その後の暮らし方を大きく変えました。震災を経て意識が変わり、防災に対する何らかの備えをしている人も多いことでしょう。

「水は1日3L」「ローリングストック」などの言葉は、一般に浸透していると感じます。ただ、実際に整理収納サービスでお宅へ伺うと、備蓄アイテムも、その量も、圧倒的に少ない家庭が目立ちます。

十分なスペースがないのも理由のひとつ。ですが地震だけに限らず、災害に備えた備蓄の優先順位は高いと考え、モノの整理と収納を改善してできたスペースに、防災用品を備蓄してもらっています。

この「備え」は、災害時に家で過ごせるのか、避難所へ行く状況なのかによって内容が変わってくることをご存知でしょうか。

あるお宅では、避難するためのリュックに2Lの水や缶詰がいくつも詰められているなど、使うときが想定されていない場面も見られました。また何をどれだけ、どこに備えたらいいかがわからず、備蓄が進まない方も多いことでしょう。

今回は、想定してほしい「もしも」を3つのパターンに分けました。それぞれに必要な備えを考えていきましょう。

外出中のもしもに備える

外出先での防災には、毎日バッグの中に入れて持ち歩くことを前提として、外で数時間〜1日程度過ごせるアイテムを選びます。そのうえで、日常生活の負担にならない程度の量にするといいでしょう。

水は必ず持ち歩く習慣をつけるほか、ポーチの中に必要最小限の物を詰めておきます。

筆者が持ち歩いているポーチ
ポーチの中身

ライト、笛、飴やチョコ、マスク、コンタクトレンズ、絆創膏、簡易トイレ、防寒シート、常備薬、ゴミ袋、除菌シート

ポーチには入っていませんが、モバイルバッテリーとハンカチも持ち歩いています。

ボトルに防災グッズを詰めたセットも市販されています。中には軍手、笛、ライト、防災メモ、簡易レインコートが入っています。このようなボトルに、ご自身が必要と思うもの(飴や絆創膏など)を追加してもいいでしょう。

市販の防災ボトル。エピオス「防災ボトル7点セット」

もしも家以外の場所に避難するとしたら

災害時に家を出るときの備えは、非常用持ち出し袋と言うと想像しやすいです。自宅から自力で持って逃げることを前提として、避難所まで安全に持ち出し、3日程度過ごせる用意をしておきます。

一般的に防災リュックの重さの目安は、女性10kg、男性15kgと言われていますが、小さなお子さんがいる場合は抱っこしたまま何キロのリュックを背負い歩けるのか、事前にシミュレーションしておくと安心です。

筆者の非常用持ち出し袋(主なもの)
非常用持ち出し袋の中身

ヘルメット、水、簡単に食べられる食品、上履き(避難所用)、懐中電灯(予備電池も)、絆創膏、カイロ、メガネ、防寒シート、タオル、軍手、ペン、ノート、マスク、生理用品、下着、ウエットティッシュ、現金

このほか、マイナンバーカードの写しや連絡先を記載したもの、家族写真(はぐれたとき用)も備えています。

子供がいる場合はこれらに加えてミルク、離乳食、オムツ、抱っこ紐、慣れたおもちゃなど、高齢者はお薬手帳、服用中の薬、杖や補聴器なども一緒に持ち出しましょう。

上記の例を参考にしながらも、個々の実情に合った持ち出し袋を作ってほしいです。

もしもライフラインが途絶えた自宅で過ごすなら

ライフラインが途絶えた場合は、電気や水、ガスが使えない状況で3日間過ごすための備蓄をすることが推奨されていますが、この目安は住居形態や家族構成によっても変わってきます。

戸建てや低層階であれば給水車の水を持ち込むことが容易ですが、高層階はそうはいかないので、7日分は備えるなど、それぞれの基準を作ってください。

高齢者だけで暮らしている、または要介護認定を受けている家族がいれば、事前に地域の避難行動要支援者名簿に登録しておくなど、多めの備蓄に加えて、共助の制度についての情報も把握しておくといいでしょう。

ご自宅の備蓄に関しては、各都道府県や市町村のサイトに備蓄品の推奨品が掲載されているので、ぜひチェックしてみましょう。

東京都防災ホームページ

大阪府 防災・減災ポータルサイト

地震だけでなく、災害はいつやってくるかわかりません。完璧な備えは難しくても、ある程度の備えはもしもの時に、人が落ちついて行動できる安心材料になるのは確かです。

また、すべての備蓄品を新調しなくても家の中には災害時に使用できる日用品がたくさんあります。ラップの買い置きや、電池、以前使っていたメガネなど……それらを防災品としてまとめ、不足分だけ買い足すこともできます。

お金がかかるから、場所がないから……と、防災が後回しになることが残念でなりません。今日できることから、一つずつ。それがもしもの時に、自身を助けることになるでしょう。

丸 マイ

整理収納アドバイザー、クリンネスト(お掃除スペシャリスト)講師。個人宅の整理収納サービス「mawaru暮らし」主宰。片づけ苦手主婦だった自身の経験から、楽に片づく収納提案を行なっている。ほかにも、子供からシニアまで幅広い層へ片づけや掃除の楽しさを伝える講師としても活動中。