藤原千秋の使ってわかった! 便利家事アイテム

湿気取りも、こもるニオイにも、紙だからこその使い方ができる「脱臭炭 ニオイとり紙」

家事アイテムオタクなライター藤原千秋が、暮らしの不具合等々への現実的対処法とともに、忌憚ないアイテム使用感をご紹介していく連載記事です

 湿気、カビ、バクテリア(細菌)、ニオイ……という、暮らし周りにおける諸問題。これら例年、萌え出る緑のように林立するものの、冬の訪れとともに枯れ消えていく。まあ、季節ものの話題だ。

 そして今年も、このハイシーズンがやってきたわけだが、毎年思う。こんなにもテクノロジーが発達した21世紀においてなお、我々はなぜここまで多少の水分や微生物にしてやられっぱなしなのだろうか、と。

 さまざまな洗剤、家事ワザ、グッズが、「湿気、カビ、バクテリア(細菌)、ニオイ」対策を謳い編み出されるものの、一向に解消することはない。諸行無常。しかし住まいにおけるこの不愉快に対して、実のところ手っ取り早く軽減し得る方法自体は、ないわけではないのだ。

 それは古来よりの知恵であり、毎年さんざん筆者もあちこちで言ったり書いたりしている、要は「換気」だ。

 こもって湿気た屋内の空気を、新鮮な外気と入れ替えるという、家事ともいえない家事である。すなわち、ただ住まいの窓を2カ所以上開けるだけ。「風を通す」だけ。なのに、なかなかこれが「難しい」と言われる。「できない」とも言われる。

 理由はいろいろある。換気の最適時間はだいたい朝なのだけど(世の中の空気の塵が夜露で落ちるなどして清浄度が高い)、まず朝は時間がないから無理。

 あと窓を開けると花粉が入ってくるから無理。近所の学校の校庭のホコリがやばいから無理。道行く人目があるから無理。夜は虫が入ってくるから無理。家の中丸見え。防犯上リスク高い。いろいろ無理。

 最近、「空気清浄機とは一酸化炭素や二酸化炭素などの汚れを除去してくれるもの」だと思っている人と「普通のエアコンをかければ屋外の空気と部屋の中の空気はキレイに入れ替わるもの」だと思っている人に立て続けに会い、かなり焦った。

 彼らは「だから換気なんて必要ない」といった。筆者は無謀にも折伏を試み、疲労で半日寝込んだ。おかげで家事一切は滞り、あっという間に我が家も湿気、カビ、バクテリア(細菌)、ニオイに覆われかけてしまった。

 はたして雨がちで気温の高い気候のもたらす過剰な湿気も、街中や住まいの津々浦々に浮遊し発芽の機会を狙うカビ胞子も、われわれの存在と渾然一体となっている各種バクテリアも、それらの発するニオイも、偉大なる「自然」のもたらすものだ。換気に使う「風」ももちろんのこととして。

 そんな「自然」に楯突こうと考えることの無謀さや愚かさは確かにある。しかしその姿勢こそが文明……いかな偉大でも「自然」にひれ伏すままでは、私たちの暮らしは早晩立ちいかなくなる。へなちょこパンチであれ多少は抗いたい。

 と、前振りが異常に長くなったが、今回ご紹介するこの「脱臭炭 ニオイとり紙」は、「紙」「炭」というきわめてありふれてアナログな素材を合体させた、逆に「なんで今までなかったんだ?」というくらいに新鮮な発想の具現化した姿を持つ道具である。

メーカー名エステー
製品名脱臭炭 ニオイとり紙
実売価格477円

 これが、「へなちょこパンチ」に地味に役立つ。換気が行き届かず湿気った各場所に敷くもよし、丸めて押し込むもよし、ニオイそうなところに一緒に放り込むもよし、ニオイそうなものを包むによし。

 と、八面六臂の働きを見せる。ジェルとか粉とか分厚いシートとかではないので、扱いやすくどうにでもなる感が半端ないのである。

 はっきり言って見た目は地味を通り越して安っぽい。ただの「黒いトイレットペーパー」じゃないかなどという人もいるだろう。しかし、謎に効果は高い。湿気もしっかり吸う。だって紙だから。そう、およそ「紙」のもつデメリットが裏返ってこの商品の場合メリットに転じているのだ。

 筆者は背中汗で湿気がちなリュックの内側に敷いたり、異臭が発生しがちな保管中の弁当箱の中に入れフタを閉めたりして、この商品の使いこなしを日々実験している。

 「生ゴミ」「靴」「オムツ」などのニオイとりが商品パッケージの用途例に挙がっているけれども、その範囲に狭めてしまうと、商品のもつポテンシャルを活かしきれない気がする。もっと奥深い使い方ができるはずだ。そういう意味で確かに私たちは21世紀を生きているのである。

藤原 千秋

主に住宅、家事、育児など住まい周りの記事を専門に執筆するライターとして17年目。リアルな暮らしに根ざした、地に足のついたスタンスで活動。現在は家事サービス、商品開発アドバイザリー等にも携わる。大手住宅メーカー営業職出身、中3、小5、小1の三女の母。『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)、『ズボラ主婦・フニワラさんの家事力アップでゆるゆるハッピー‼』(オレンジページ)など著監修書、マスコミ出演多数。