藤原千秋の使ってわかった! 便利家事アイテム

浴室の“白いザラザラ”汚れがサッパリ落ちる「お風呂用ティンクル」

家事アイテムオタクなライター藤原千秋が、暮らしの不具合等々への現実的対処法とともに、忌憚ないアイテム使用感をご紹介していく連載記事です

 もう何年も前のことになるのだけど。

 とあるテレビ番組収録の仕事のとき、本筋とは全然関係のない共演の方の個人的なお悩みとして、「お風呂場のガラスがさぁ、あの真っ白になっちゃうやつって、どうしたらいいわけ?」と訊かれた。

 話によると、その御宅のお風呂はガラス張りになっているのが伺えた。すっごいオシャレ。オシャレお風呂。

 話を聞くだけでも、手入れはかなり大変だな……と思えた。そしてどうやらふつうにご自身で掃除をしているようだった。

 「ああえーとそれはですね、鱗状痕っていいまして、普通の中性洗剤じゃなかなか落とせないんです、硬くて石みたいなものなので」「そうなのよザラッザラなのザラッザラ」「だから溶かすんです酸で」「酸?」「手近なのは100均でも売ってるクエン酸でアレ溶かしたのとその顆粒と両方使って」

 「あっ本番!」

 タイムアウトー。

 ……これが私の心に残った。澱のように。あの話、ちゃんと最後まで掃除法をお伝えしておきたかった……と。

 あのときとっさに出した「クエン酸」という道具、そのチョイス自体は妥当だったし決して悪いものではなかったと思う。

 しかしベストだったかというと、疑念が残る。ここはやはり市販の洗剤でないと初動は難しいだろう。「◎◎を買ってください。なぜならば……」っていう順番であるべきだった。でもあの時点で教えられる洗剤が私には思い浮かばなかったのだ。

 こういった水場の「白いザラザラ」、いわゆる水アカ、水道水に含まれるミネラル由来の硬質の汚れはウロコ状に重なることから「鱗状痕(りんじょうこん)」と呼ばれる。

 プロにこの除去を頼むとなんらかの酸で緩められる。昔であれば塩酸だったりしたのかも知れないけど、昨今風呂場で使われる多くはクエン酸か酢酸かスルファミン酸かそのへんの成分だ。

 緩めたらなんらかの研磨作業がなされ、石的なその汚れはジョリジョリこそげ落とされ、濯がれる。ただ、このとき活躍の「酸」系洗剤、風呂場でよく使われるあのカビ取り剤(次亜塩素酸ナトリウム)との相性がすこぶる悪い。悪いというか混じり合うと命がアウトになりかねないので、近づけることすらいけない点で難なのだった。

 だからこの掃除法自体は決して難しいものではないのだけど、説明するときには結構な緊張感が伴う。気を遣うのだ。

 何か手近な洗剤パッケージを以って容易に注意喚起ごと掃除方法が伝えられればいいのにと、長く思っていた。

 「お風呂用ティンクル」は私の友人より、比較的最近に伝わってきた洗剤である。あくまで次亜塩素酸ナトリウムとの相性は悪いままだが、まさに「オシャレお風呂」を擁するその家庭において、「ついに見つけた逸品」と言わしめたほどの威力。ぜひ試してみようと少し遠くのホームセンターで、私もすばやく入手した。

キンチョー「お風呂用ティンクル」
メーカー名キンチョー
製品名お風呂用ティンクル 400ml
実売価格283円

 我が家の風呂にはほとんどオシャレ要素などないのだが、風呂椅子は複数あるし、入浴人数と頻度の高さにより、常に風呂場は多様な汚れ要因によって汚れている。実験場所には事欠かない。

 まずはすぐにガビガビになるあの風呂椅子(プラスチック製)で汚れの緩み具合を確認することにした。すると、スプレー後、ほぼ「速攻」白い汚れがネトネトに溶けていくもので、「あれま!」と声に出た。

 その風呂椅子に付着しているのは「水アカ」というより「石けんカス」、いわゆる「金属石けん」で、これまた通常の中性洗剤では落としにくい輩なのであるが、これがきわめてよく落ちた。

 いろいろ思案し、現在、我が家ではこの「お風呂用ティンクル」1日に対して、先般採り上げた「バスマジックリン スーパークリーン」2日の割合で交互に稼働させ、バクテリアやカビその他蠢く風呂場環境を維持しているのだが、なかなか快適である。

 ちなみに次亜塩素酸ナトリウムを主成分としたカビ取り剤は、混合すると危険なので現況使用していない。このカビ取り剤の出番のない風呂場を維持するのが、この夏のひそかな目標なのである。

藤原 千秋

主に住宅、家事、育児など住まい周りの記事を専門に執筆するライターとして17年目。リアルな暮らしに根ざした、地に足のついたスタンスで活動。現在は家事サービス、商品開発アドバイザリー等にも携わる。大手住宅メーカー営業職出身、中3、小5、小1の三女の母。『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)、『ズボラ主婦・フニワラさんの家事力アップでゆるゆるハッピー‼』(オレンジページ)など著監修書、マスコミ出演多数。