データで読み解く家電の今

新生活家電のトレンドはこだわり・高付加価値へ!?

販売実績を基にしたデータから、国内家電市場の実態を検証(協力:GfK Japan)

 2月下旬から4月下旬に、最も需要が高まるのが冷蔵庫、洗濯機、炊飯器など新生活向けの家電製品。市場調査会社GfKジャパンによると、家電量販店における動向では、この3点の販売台数はいずれも3月が最も多く、2016年には、年間販売台数の13%前後を占めていた。今回は、そんな新生活向けの家電需要の詳細を、読み解いていこう。

春先の量販店には、新生活向けの製品をセット販売するケースも多い

 新生活向けの家電製品と言えば、一人暮らし向きの小型で手頃な価格の製品が中心となる。例えば3月における、小容量モデルの販売数量構成比をみると、冷蔵庫(201L未満)が55%、洗濯機(6kg未満)が40%、炊飯電子ジャー(0.7L未満)が43%を占める。これらは、通常月よりも20%前後、高い状況だ。

販売数量構成比「冷蔵庫(201L未満)」※2015年のJIS改正により一部新JIS表示値を採用
同「洗濯機(6kg未満)」
同「炊飯電子ジャー(0.7L未満)」

 小型で小容量の家電製品は、機能がシンプルなモデルが中心だった。だが、昨今では事情が変わってきているという。GfKジャパンのアナリスト、田中 常元氏は次のようにコメントする。

 「冷蔵庫では、小容量モデルは大容量モデルと比べ選択肢が限られていました。それが最近では、小容量でもガラスドアを採用するなどデザイン性の高いモデルが増えています。また、洗濯機では大容量モデルの本体サイズが小型化してきています」

シャープもデザインにこだわった小型冷蔵庫を投入。容量は137Lでひとり暮らし世帯をターゲットにしている

 1人~2人の世帯が日本の全世帯の半数以上を占めるという現状から、各メーカーが、小容量モデルのラインナップを拡充している、という背景もありそうだ。この季節は特に、1人~2人世帯が増える時期でもあるのだろう。

 「さらに、新生活需要が高まる3月は、価格だけを見て選ぶのではなく、自分にとっての価値を重視する傾向も見られるようになりました。今後は、小容量クラスへの、更なる付加価値機能の搭載が期待されます」

 これは平均価格の上昇からもみてとれ、冷蔵庫・洗濯機・炊飯電子ジャーではいずれも平均価格が年々上昇している。さらに小容量モデルに絞ってみると、その傾向はより顕著だ。

 例えば、2016年の小型・小容量モデルの平均価格は、冷蔵庫は前年から5%上昇、炊飯電子ジャーは7%、洗濯機は12%上昇した。3月の新生活需要の時期に限定してもこの傾向は変わらず、前年同月よりも高価格の製品が拡大している。

新生活者向けの家電製品として、ビックカメラが提示したオリジナル家電「Tag line」は、amadana監修のデザイン

 そして、付加価値の搭載において一歩先を行くのが炊飯電子ジャーで、小容量モデルでも選択肢が豊富だという。

 「小容量の炊飯電子ジャーにおけるボリュームゾーンは、安価なマイコン式ですが、マイコン式に比べて価格が高い圧力IHやIHタイプの販売も好調です」

 これは、必要な時に必要な分だけおいしく炊いて食べたいという“こだわり層”を取り込んでいるからだと田中氏は分析する。

 「小容量の高付加価値製品が、さらに新生活向けに受け入れられれば、市場はまだまだ拡大の余地があります。既に一部の消費者に受け入れられていることから、土台は整っているといえるでしょう。なお、2017年3月の新生活需要は堅調で、特に高価格帯製品の販売が拡大しました」

タイガー魔法瓶は、上位機の土鍋圧力IH炊飯ジャー「The 炊きたて」に、3.5合炊きモデルをラインナップする

出典「全国有力家電量販店の販売実績集計/GfK Japan調べ」