データで読み解く家電の今

高級志向高まる炊飯器市場。4合未満の“小型で高機能”もトレンドに

販売実績を基にしたデータから、国内家電市場の実態を検証(協力:GfK Japan)

 近年、高級炊飯器が人気だ。IH方式だけでなく、スチームや圧力機能などを搭載したり、各社がこだわりの内釜を採用したりと、“より美味い”ご飯を目指した、高級な製品が増えているように見える。ただし家電量販店における電子炊飯器の販売動向を見てみると、台数ベースではやや減少傾向で、金額ベースでは微増という状況だ。今の市場は、高機能で魅力的な製品をしっかり売っていく、という傾向になっている。

バーミキュラ ライスポット

 家電量販店における炊飯器の販売は、2011年の販売数量・金額を100とすると、数量は2015年に88まで減少。しかし、販売金額は'13年に93まで下げたものの、この2年は増加傾向で、2015年は102まで回復している。

 ここ5年間の動向を見ると、販売台数は1割減となった。しかし、販売金額は'13年に1割弱まで下がったものの、平均単価の上昇により’14年、’15年と’11年の水準を上回った。

 平均単価を見ると、'11年の19,100円に対し、'14年は21,100円、'15年は22,100円まで上昇している。16年(1-10月)もこの傾向は続き、台数は前年比4%減であるのに対し、金額は前年並みとなっている。

タイガー「The炊きたて JPX-102X」

 価格上昇の要因の1つは、圧力IH式の拡大。マイコン式の約5倍と高価な同タイプは年々構成比を伸ばし、15年には金額構成比で過半を占めた。また、小型炊飯器の高価格化も顕著。以前は小型=安価なマイコン式であったが、現在は、各社が圧力IHなど高付加価値製品を出してきている。

 注目したいのは、4合未満の“小型”が増加しているという点。同クラスが販売台数に占める割合は’11年では19%だが'15年は25%、'16年(1-10月)も29%と増加している。中でも機能の高い製品に人気が集まっているため、小型炊飯器は他容量クラスと比べて単価上昇率が高く、'15年の平均単価は前年から11%上昇。'16年(1-10月)も前年同期から9%上昇している。

アイリスオーヤマ IHジャー炊飯器3合「RC-IA30-B」

 GfK Japan田中常元アナリストは、「4合未満の小型炊飯器が拡大している理由としては、単身世帯や核家族世帯の増加だけでなく、必要な時に必要な分だけおいしく炊いて食べたいという『炊きたて需要』を取り込んだことが大きいと考えられる」と分析。

 さらに、「いわゆる、『こだわり層』が増えてきていると言えるのかもしれない。例えば、コーヒーメーカーの場合は、挽きたてを楽しみたいという需要を取り込んで市場を活性化させ、好きな産地の豆を選ぶこともひとつの楽しみとして広がっている。炊飯器市場でも同様に、好きな銘柄を炊く分だけ精米できるなど、新しい需要の喚起があれば面白い」と提案している。

出典「全国有力家電量販店の販売実績集計/GfK Japan調べ」