藤山哲人の実践! 家電ラボ

第17回

1万mAhで電池切れの心配なし! 大容量モバイルバッテリーはどれが良い?【前編】

 昨年の冬、当連載では「スマホ時代の新必需品『モバイルバッテリー』はどれを選べば良い?」という記事を掲載した。スマートフォンの補助電源として普及が進んでいる外部電池「モバイルバッテリー」について、実際に何製品か使ってどれが良いのかを検証したが、結論としては「ヘビーユーザーは容量5,400mAhのバッテリーがあれば十分。iPadなど大容量バッテリーを内蔵するタブレットは5,400mAhを2個持つのが良い」という結論を出した。

 がっ! たった1年ですっかり話が変わってしまった!

 スマートフォンは高速通信ができるLTE端末が続々と発売され、長時間使えるように内蔵バッテリーの大容量化が進んでいる。さらに、スマートフォンだけではなく、ノートパソコンよりも出荷台数を上回ったタブレット型端末や、ニンテンドーDSやPS Vitaなどの携帯用ゲーム機など、モバイル機器は身の回りに山ほど溢れている。これらの機器をカバーしようとなると、もう5,400mAhのモバイルバッテリーでは足りなくなっているのだ。

スマートフォンの大容量化、タブレットの普及により、最近増えつつある10,000mAhの大容量モバイルバッテリー。でもどれを買えば良いのか?

 これに対応するように、モバイルバッテリーも大容量モデルが登場してきている。2012年より容量10,000mAh以上のモバイルバッテリーが続々リリースされており、中にはノートパソコンのバッテリーが充電できるなど、大容量化に拍車が掛かっている。しかも価格も、これまでと比べれば驚くほど安い商品が多く出ている。

 しかし、数ある製品の中で、一体どの大容量モバイルバッテリーを選べば良いのか。価格も従来モデルよりも高い製品が多いため、失敗したくない。

 というわけで今回のテーマは、「大容量バッテリーはどれを選んだらいいのか?」だ! 数ある製品の中から製品を実際に使い、「これぞオススメ」という商品を導き出してみよう!

 分からんことは、自分で調べる!やってみる!

 Do it oneself!

 それが家電ラボのポリシーだ!

大容量モバイルバッテリーが必要な人とは?

 さて、実験を開始するまえに、「そもそも容量10,000mAh以上のモバイルバッテリーなんて必要あるの?」「そこまで大容量の電池を持ち歩かなくても良いのでは?」という疑問をお持ちの方もおられるだろう。当然、必要な人もいれば、まったく必要のない人もいる。

 今回取り上げる容量10,000mAhクラスのモバイルバッテリーは、だいたいスマートフォン3~5回分ほどが充電できる。なので、スマートフォンを1台だけ使う人、ケータイを1日2回程度充電できれば十分という人は、前回紹介した5,000mAh程度のモバイルバッテリーで、十分ことが足りてしまう。

 大容量モバイルバッテリーが必要なのは、スマートフォンなどモバイル機器のヘビーユーザーだ。例えば、高速通信「LTE」対応のスマートフォンと、iPadなどタブレットなどほかの機器を同時充電する場合や、アプリやワンセグなどスマートフォンの機能を長時間利用して、1日に3回以上バッテリーを充電する人、モバイル機器をいくつも持ち歩く人などがそうだ。

 特に、最近流行りのLTE対応のスマートフォンユーザーで、一日に何度か充電をする方には、10,000mAhクラスのモバイルバッテリーをお勧めしたい。LTE端末は電池の減りが早いものが多く(理由は本記事の後半で)、また内蔵バッテリーの容量も大きいため、モバイルバッテリーも大容量なものを用意しておけば、いざというときに安心だ。

テストしたのは2千円台の激安品からも含め5製品

 今回の実験に選んだのは5製品。いずれも実験開始当初の12月時点で、ネット通販で購入できた、容量10,000mAhを超えた商品だ。中には、“こんなに安くて大丈夫?”というものから、価格も高いけど高性能という製品もあった。

 それぞれの詳細なスペックは記事中の各パートで紹介するので、ここでは簡単に説明しておこう。

 なお本稿では、容量を「10Ah」じゃなくて「10,000mA」という表現をしている。これはスマートフォンのバッテリー容量で「mAh」が使われており、単位を統一するために「mAh」としている。また、ここで紹介する全製品が、電源にリチウムイオン電池を使用している。

【エントリーナンバー(1)】
cheero「Power Plus」容量10,000mAh

【エントリーナンバー(1)】
・cheero「Power Plus」~10,000mAh

 「ウソだろっ!」というくらい安い2,780円のモバイルバッテリー。格段に安いがiPadにも対応しており、スマホの同時充電もできるという。個人的には電源スイッチがオモチャで使われるスライドスイッチってとこが気になった。

【エントリーナンバー(2)】
パナソニック「USBモバイル電源 QE-QL301」容量10,260mAh

【エントリーナンバー (2)】
・パナソニック「USBモバイル電源 QE-QL301」~容量10,260mAh

 国内大手家電メーカーで、10,000mAh超えのモバイルバッテリーを発売しているのはパナソニックくらい。発売から約半年ほど経過したぐらいの製品だが、性能比較をしてみよう。

【エントリーナンバー(3)】
koges「enecycle EN-01」容量11,000mAh

【エントリーナンバー(3)】
・koges「enecycle EN-01」~容量11,000mAh

 USBコネクタが5口もついている、容量11,000mAhのモバイルバッテリー。iPadの充電にも正式対応しているというのに、Amazonでの購入価格は3,980円と激安だった(価格は12月当時)。本当に使えるのかどうかをチェックしてみよう。

 前編で紹介するのは、これら3つの製品だ。後編では、「タブレット&ノートパソコン編」として、ノートパソコンの補助電源にも使える以下の2製品を紹介する。一度に紹介してしまうととても長くなってしまうので、記事を分割してしまう点はご理解いただきたい。

【エントリーナンバー(4)】
JTT「エナジャイザー XP-14000」14,000mAh

【エントリーナンバー(4)】※後編で紹介
・JTT「エナジャイザー XP-14000」~14,000mAh

 世界的な電池メーカー「エナジャイザー」のモバイルバッテリー。電池を知り尽くしたメーカーが作ったモバイルバッテリーの性能は果たしてどのようなものか。こちらも、タブレットやノートパソコン用の補助バッテリーとして使える

【エントリーナンバー(5)】
OTAS「MiLi King Power」容量18,000mAh

【エントリーナンバー(5)】※後編で紹介
・OTAS「MiLi King Power」~18,000mAh

 モバイル通には「MiLiシリーズ」の名でおなじみ、OTASの大容量モバイルバッテリーだ。20,000mAh台がすぐそこに見えているほど大容量でかつ、バッテリー残量がデジタルで1%刻みに変わるのがうれしい。ノートパソコンの補助バッテリーとしても使える

 今更言うことでもないが、「mAh」の値が大きいほど、バッテリーの容量が大きく、スマートフォンなどモバイル機器が何回も充電できることを示している。この「mAh」が何を示しているかは、過去の記事「第7回:スマホ時代の新必需品「モバイルバッテリー」はどれを選べば良い? 前編」を参照していただきたい。

■■注意■■

・以降の実験結果は、室温がコントロールされていない環境で行なっています。電池は温度により、その特性が大きく変わる点にご注意ください。
・実験結果は記事作成に使用した個体に関してのものであり、すべての製品について共通であるとは限りません。
・記事中のバッテリーは基本的に新品ですが、電池を活性化させるため、3回の充放電(リフレッシュ充電)を行なっています。リフレッシュ充電をしていない製品では、同様の実験を行なっても結果が異なる場合があります。
・筆者および家電Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。

大容量ながら2,000円台で買える激安品の理由とは ――(1)cheero「Power Plus」

 まずはエントリーナンバー1番のcheero「Power Plus」(以下、Power Plus)から紹介しよう。

 この製品の特徴は、何より激安なところだ。代理店のWebページによれば定価7,800円ということらしいが、Amazonで購入した価格は、税込みで2,880円。なんかもう定価が定価の意味をなさないほど激安、いや“爆安”だ。その安さが人気を後押ししているらしく、Amazonの家電・カメラ部門の人気ランキングNo.1に輝いたらしい。品切れのショップが多いが、最近は後継の「Power Plus 2」という製品が売られている。

 大きさは116×74×22mm(幅×奥行き×高さ)で、ちょうど手のひらサイズ。重量は230gで、ややズッシリとした重みを感じる。

 本体のUSBコネクタは、スマホの充電用の1A(アンペア)出力と、iPadなどのタブレット充電用の2.1A出力の2口があり、同時充電も可能で非常にパワフル。もちろんスマホ2台の同時充電も可能だ。

大きさはちょうど手のひらサイズ
スマホ用の1A出力とiPad用の2.1A出力があり、2台同時充電ができる。2.1A側にスマホを接続して充電もOK
こちらが付属品一覧。対応コネクタはAppleのDockコネクタ、Galaxy TAB用コネクタ、PSP、micro-USB、Mini-USBコネクタが同梱されている。本体充電用のケーブルとアダプターはなし

 ただ、細かいところを見ていくと、安さの理由がわかった。まずは、専用の充電器が同梱されていない点。マニュアルには、別売りのUSB-ACアダプタを使うか、パソコンのUSBコネクタから充電するとあった。このモバイルバッテリーの充電には1Aの電流が流れるので、それ以上に出力ができるUSB ACアダプタが必要。なので、出力が500mA(0.5A)のUSB-ACアダプタを使うと、思わぬ事故が起こる危険もある。

 また、もう1つの注意すべき点がある。それはモバイルバッテリーの電源スイッチがオモチャなどで使われる機械式のスライドスイッチなので、スマホの充電が終わっても電源が自動的にOFFにならない。バッテリー残量の隣にある押しボタンスイッチは、残量を表示させるだけのもので、電源スイッチではない。つまりスマホの充電が終わったら、自分でモバイルバッテリーの電源スイッチをOFFにしないと、スマホがズーッと充電状態になってしまう。これはスマホの内蔵バッテリーを劣化させる原因になる恐れもある。

充電は1A以上出力できるUSB-ACアダプタを利用する。なお、USB-ACアダプタは別売
ここでは2A出力できるUSB ACアダプタを利用。必ず出力の電流を確認して、1A以上のアダプタを使う
電源スイッチは機械式のスイッチで、スマホを充電し終えても自動的にOFFにならない

 しかし、これらの注意点を踏まえれば、この上なくコストパフォーマンスに優れたモバイルバッテリーと言えそうだ。なにより実際にスマホを充電したところ、後述する容量10,260mAのパナソニック「QE-QL301」よりも多く充電ができたのだ。

【(1) cheero「Power Plus」の概要】
項目スペック
購入店舗Amazon.co.jp
販売価格2,780円(1月19日時点)
サイズ116×74×22mm
重量230g
バッテリー容量10,000mAh
充電コネクタmicro-USB
充電器付属しない
充電時間9時間8分(実測)
USBコネクタ数2口(1.0A×1、2.1A×1)
USB最大出力合計3.1A
同時充電iPad&スマホ:○、スマホ×2台:○
給電用ケーブルDock,micro-USB,mini-USB,PSP,GalaxyTAB
コネクタ差し替え式
残量インジケータ1色5灯
【(1) cheero「Power Plus」の実験結果】
端末タイプ端末名内蔵バッテリーPower Plus
10,000mAh
で充電すると?
スマホ3G端末REGZA IS04(実測)1,300mAh5.2回
Android系1,500mAh4.5回
スマホLTE端末Android系1,800mAh3.7回
Android系2,000mAh3.4回
Android系2,200mAh3.1回
iPhone系iPhone 3GS1,219mAh5.5回
iPhone 4S1,432mAh4.7回
iPhone 51,434mAh4.7回
iPad系iPad 26,580mAh1.0回
iPad 311,560mAh0.6回
ゲーム系PSP-30001,200mAh5.6回
ニンテンドー3DS1,300mAh5.2回
ニンテンドーDSLite1,000mAh6.7回

 充電時間は専用充電器がないためか、実測でも9時間と、8時間を越えた。もしかすると、寝ている間だけではフル充電にならない恐れがある。帰宅したらすぐ充電するように心がけるのがいいだろう。

 とにかく安いモバイルバッテリーが欲しいという人にオススメできる製品だ。しかし安いぶん、充電時間が長めなのと、アダプターが同梱されない点はご注意。それさえクリアならば、後述する国産メーカー品の半額ほどで購入でき、それ以上のパフォーマンスを見せるお買い得なモバイルバッテリーだ。

国内大手家電メーカーでは唯一の大容量モデル。薄型デザインが使いやすい
――(2)パナソニック「USBモバイル電源 QE-QL301」

面積はタブレットより一回り小さい。厚さはわずか11mmという薄型デザインだ

 とにかく薄くてスタイリッシュなデザインを特徴とする、厚さ11mmのモバイルバッテリーが、パナソニック「USBモバイル電源 QE-QL301」だ(以下、パナソニック)。面積は221×153mm(幅×奥行き)で、B5判とA5判の中間ぐらいなので、男性なら薄型アタッシュケースのすき間に、女性ならハンドバッグに入れてもバッグが膨らまないだろう。カラーもブラックとシルバーが用意されている点も魅力だ。

面積はタブレットより一回り小さい。厚さはわずか11mmという薄型デザインだ
厚みはスマホとほぼ同じ。本のように立て掛けてもいいし、モバイルバッテリーの上にスマホを乗せてもいい
micro-USBケーブルと専用充電器がセットになっている

 USBコネクタは2つ用意されており、1ポートのみの接続の場合、最大1.5Aの出力が可能。スマホ1台の急速充電にはまったく問題ない出力だが、iPadなどのタブレットには出力不足。出力が1.5Aを越えると、安全のため保護回路が働き、モバイルバッテリーの電源を自動的に切ってしまうため、iPadなどの出力の高い機器によっては、充電できなかったり、また急速充電できなかったりする恐れがある。またUSBコネクタの合計出力が2Aとなっているため、約1.3A程度の電流を使って急速充電を行なう一部のスマートフォンでは、2台同時充電はうまくいかないかもしれない。

【(2)パナソニック「USBモバイル電源 QE-QL301」の概要】
項目スペック
購入店舗Amazon.co.jp
販売価格5,409円(1月19日時点)
サイズ221×153×11mm
重量490g
カラーブラック/ホワイト
内蔵電池容量10,260mAh
充電コネクタmicro-USB
充電器あり
(5V 1.5A ワールドワイド仕様)
充電時間約7時間
USBコネクタ数2口(1.5A×2)
USB最大電流2.0A
(1口あたりの最大1.5A)
同時充電スマホ×2台:○
給電用ケーブルmicro-USB
残量インジケータ1色5灯
【(2) パナソニック「USBモバイル電源 QE-QL301」の実験結果】
端末タイプ端末名内蔵バッテリーパナソニック
10,260mAh
で充電すると?
3G従来型REGZA IS04(実測)1,300mAh4.5回
Android系1,500mAh3.9回
LTE系Android系1,800mAh3.2回
Android系2,000mAh2.9回
Android系2,200mAh2.6回
iPhone系iPhone3GS1,219mAh4.8回
iPhone 4S1,432mAh4.1回
iPhone 51,434mAh4.1回
iPad系iPad 26,580mAh0.9回
iPad 311,560mAh0.5回
ゲーム系PSP-30001,200mAh4.8回
ニンテンドー3DS1,300mAh4.5回
ニンテンドーDSLite1,000mAh5.8回

 実験結果は、今回試した中では普通といったところ。最初に試した「Power Plus」よりも充電回数が少なかったのは残念だが、ロスを考慮すればスペック並みの能力を発揮しているといえそうだ。なお充電時間は、スペック上では9時間とのことだったが、実測では7時間13分で終わった。

 一般的なモバイルバッテリーに比べると面積が広くて邪魔かと思ったが、実際に使ってみるとその考えは払拭された。まずバッテリー自体の充電時は、本を立て掛けるようにして置くことが可能なので、かえって省スペースだ。スマホを充電する際も、バッテリーの上にスマホを2台置けたりと汎用性が高い。カバンの中に入れておいても、邪魔になるようなことはほとんどないだろう。

 また、大手家電メーカーであるパナソニックの製品だけに、家電量販店ですぐに入手できる点も見逃せない。iPadなどのタブレットユーザーを除けば、大容量モバイルバッテリーをはじめて購入するという人にもオススメできる、万人受けするモデルだ。

充電コード付きで3,980円。かなりリーズナブルだけど実際どう?
――(3)koges「enecycle EN-01」

USBコネクタが5個もついているモバイルバッテリー。専用充電器付属で3,980円と激安

 こちらも安い大容量モバイルバッテリーだ。実売価格は3,980円と、エントリーナンバー(1)の「Power Plus」よりも高いが、USBコネクタが5つもあり、容量表示も11,000mAhと大きい。さらに価格も専用の充電器付きなのだから、3,980円は“激安”と言っても良いだろう。

 というわけで、利用前は非常に期待値が高かったのだが、実際に実験してみると、ほかと比べて問題点の多いモバイルバッテリーだった。

 第1の問題は、スマートフォンを充電する回数が、明らかに他のバッテリーより少ない点。表示容量の11,000mAhのうちどれだけスマホの充電に使えるかをテストしたところ、半分以下の44%程度しか使えなかった。前回の経験を踏まえると、モバイルバッテリーは効率が悪いものでも表示容量の50%台、いいものでも60%台なので、44%という数値は低い。内部の回路が非効率なのか、内蔵している電池そのものの品質に問題があるのか不明だが、容量的には7,000mAh程度と言えるかもしれない。

【(3)koges「enecycle EN-01」の概要】
購入店舗Amazon.co.jp
販売価格3,980円(1/19時点)
サイズ(幅×奥行き×高さ)131×80×20mm
重量305g
内蔵電池容量11,000mAh
充電コネクタ専用、micro-USB
(どちらか一方のみ)
充電器あり
(12V 1A 国内仕様)
充電時間約7時間
USBコネクタ数5口(2.1A×1、1.3A×1、1A×2、0.5A×1)
USB最大電流2.5A(合計出力の最大値)
同時充電スマホ×2台:○、iPad・スマホ:不可
給電用ケーブル携帯電話
(docomo/SoftBank/au),Dock,micro-USB
mini-USB,PSP,任天堂DS
コネクタ差し替え式
残量インジケータ1色5灯
【(3)koges「enecycle EN-01」の実験結果】
端末タイプ端末名内蔵バッテリーenecycle
11,000mAh
で充電すると?
3G従来型REGZA IS04(実測)1,300mAh3.7回
Android系1,500mAh3.2回
LTE系Android系1,800mAh2.7回
Android系2,000mAh2.4回
Android系2,200mAh2.2回
iPhone系iPhone 3GS1,219mAh4.0回
iPhone 4S1,432mAh3.4回
iPhone 51,434mAh3.4回
iPad系iPad 26,580mAh0.7回
iPad 311,560mAh0.4回
ゲーム系PSP-30001,200mAh4.0回
ニンテンドー3DS1,300mAh3.7回
ニンテンドーDSLite1,000mAh4.8回

 第2の問題は、USBコネクタが5つあっても、それが活かしきれないという点。最大出力は合計で2.5Aとなっているが、これだとほぼ1Aで急速充電をする最近のスマ―トフォンは2台までしか同時充電できないことになる。また、iPadなどタブレット用に2.1A出力のコネクタも用意されているが、スマホと同時充電すると保護回路が働いて同時充電できない。コネクタを増やすのなら、出力はスマートフォンとiPadが同時充電できる3.1Aぐらいはほしい。

USBコネクタは、写真左から順に1~5番まである。出力は5つのコネクタ合計で2.5Aまで。iPadとスマホの同時充電はできない
専用充電器がセットになっている。このほか、AppleのDockコネクタ、携帯電話用コネクタ(au/Softbank/docomo)、mini-USB、micro-USB、PSP、任天堂DSのコネクタも付いている

 また、繰り返し充電の回数について、パッケージや説明書、通販サイトの製品情報欄に記載されていないことも気になる。粗悪なバッテリーだと100回も使えるかどうか怪しいところだ。例え500回使えたと仮定しても、実際に充電に使える容量の少なさが大きな問題になるだろう。

 ちなみに、充電時間は実測で6時間57分と、今回試した3製品の中では最も短かった。

 用途としては、スマホ2台もしくはスマホと携帯ゲーム機の同時充電、あるいはiPad単体での充電がメインとなりそうだ。USBコネクタが5つあるというメリットが活かせるのは、ガラケー(フィーチャーフォン)の5台同時充電ぐらいだろうが、実際にそのようなシーンがあるかどうかは別。充電完了後のオートパワーオフ機能も備えているが、全体的には充電容量といいUSB出力といい、残念な結果に終わった。

激安品は大当たりもあればハズレもある

 とりあえず3製品の概要を見てみたが、ここで各項の表中に載せた、実際にスマートフォンがどれだけ充電できたか、という実験結果についてまとめてみよう。

 今回の実験では、内蔵バッテリーの容量が1,300mAhの富士通東芝モバイルコミュニケーション製「REGZA Phone IS04」(au)を使用し、実際に充電できた回数を掲載した。なお1回の充電は、電池残量が1%の状態から100%まで充電した状態としている。

REGZA Phoneを使って、実際に充電できた回数。製品は左から表示容量(mAh)が大きい順に並べているが、結果的に表示容量が小さい方が充電できる回数が少ないという結果に

 上の表が、スマートフォンを実際にフル充電した回数を表している。左から表示容量の大きい順に並べてあるが、実際には表示容量が少ないほど充電回数が多くなっている。本来なら容量11,000mAhの(3)enecycleは、スマホを5回以上充電するはずだが、3回と62%しか充電できなかった。実験にミスがあったのかと思い再実験したが、結果は同じだった。

 一方で、容量10,000mAhの(1)Power Plusは、10,240mAhの(2)パナソニックより容量が260mAh少ないのに、充電回数が多い結果になった。この実験結果から、ひとくちに「10,000mAh」といっても、製品によっては幅があるということが言えるだろう。

 さて実験では、内蔵バッテリーが1,300mAhのREGZA Phoneを使ったが、このデータをもとに、ほかのスマホやタブレットがどのぐらい充電できるかをまとめてみた。なお数値は実測値ではなく、筆者がこれまで多くのモバイルバッテリーとスマートフォンの実験を行なった結果を踏まえて、実際に充電できる容量や各種端末のロス率などを考慮した参考値となる。

【今回試した大容量モバイルバッテリー3製品のAndroid系スマホ充電能力の差】
端末タイプ端末名内蔵バッテリーenecycle
11,000mAh
パナソニック
10,260mAh
Power Plus
10,000mAh
3G従来型REGZA IS04(実測)1,300mAh3.7回4.5回5.2回
Android系1,500mAh3.2回3.9回4.5回
LTE系Android系1,800mAh2.7回3.2回3.7回
Android系2,000mAh2.4回2.9回3.4回
Android系2,200mAh2.2回2.6回3.1回
【今回試した大容量モバイルバッテリー3製品のiPhone系充電能力の差】
端末タイプ端末名内蔵バッテリーenecycle
11,000mAh
パナソニック
10,260mAh
Power Plus
10,000mAh
iPhone系iPhone 3GS1,219mAh4.0回4.8回5.5回
iPhone 4S1,219mAh3.4回4.1回4.7回
iPhone 51,434mAh3.4回4.1回4.7回
iPad系iPad 26,580mAh0.7回0.9回1.0回
iPad 311,560mAh0.4回0.5回0.6回
【今回試した大容量モバイルバッテリー3製品のゲーム機系充電能力の差】
端末
タイプ
端末名内蔵バッテリーenecycle
11,000mAh
パナソニック
10,260mAh
Power Plus
10,000mAh
ゲーム系ソニー PSP(3000)1,200mAh4.0回4.8回5.6回
任天堂 3DS1,300mAh3.7回4.5回5.2回
任天堂 DSLite1,000mAh4.8回5.8回6.7回

 3G従来型のスマートフォンやiPhoneシリーズは、内蔵バッテリー容量がそこまで大きくないので、LTE端末のiPhone5といえども10,000mAhのモバイルバッテリーはオーバースペックかもしれない。一方で、2,000mAh以上の内蔵バッテリーを持つLTE端末は、これくらい容量があったほうが信頼感が高いだろう。

 iPadは、iPad2に使うなら容量10,000mAhレベルのモバイルバッテリーは最適だが、大幅にバッテリー容量が増えた第3世代では、10,000mAhでもまだまだ足りないという感じだ。

 これで1台当たりのおおよその充電回数は分かったが、スマートフォンの2台同時充電や、ゲーム機とスマートフォン、またスマートフォンとiPadの同時充電をしたいという場合もあるだろう。そこで、2台同時充電の可否を調べてみた。なおここでは実験の都合上、iPad実機ではなく、2.1Aの電流が流れる機器を使用している。ニンテンドー3DS(約600mA)、DSLite(約400mA)、PSP-3000(約700mA)は、それぞれ実機を使って確認した。

製品名スマホ2台同時
スマホとゲーム機
スマホと タブレット
enecycle-
パナソニック-
Power Plus

 iPadとスマートフォンなどほかの機器との同時充電が可能なのは、2.1A出力と1A出力のUSBコネクタを備えた「Power Plus」のみ。ただ、iPadのフル充電はできないため、後編で紹介するもっと大容量のモバイルバッテリーをオススメしよう。

 さらに大容量のモバイルバッテリー選びで、もう1つ欠かせないポイントがある。それは充電時間だ。各モバイルバッテリーをフル充電するまでにかかった実測値は次のとおり。

10,000mAhクラスのモバイルバッテリーをフル充電するまでにかかった時間。どれもおよそ一晩かかるとみていい

 enecycleとパナソニックは、専用の充電器を使っておよそ7時間かかった。寝る前に充電しておけば翌日フル充電になっているという感じだ。Power Plusは充電器が同梱されていなかったので、2A出力できるUSB ACアダプタを利用して充電したところ、およそ9時間かかった。この3製品については、フル充電するのに一晩かかるということを念頭に置いておく必要がありそうだ。

充電回数を左右するのは「DC/DCコンバータ」の性能

 先の実験結果を振り返ると、モバイルバッテリーに記されている容量と、実際の充電回数にはだいぶ差があるが、これには理由がある。

 モバイルバッテリーのパッケージには「10,000mAh」などと、必ず容量が表示されている。これは極論すれば、牛乳などに表示されている1,000ccといった容量表示と同じだ。一方で、スマートフォンのバッテリーにも、1,300mAhという表示がされている。

 ここでモバイルバッテリーを10,000ccの牛乳、スマートフォンのバッテリーを1,300ccのコップとしてみよう。10,000ccのモバイルバッテリーを1,300ccのスマートフォンに注いだら、いったい何個のスマートフォンに注ぎ込めるだろう? 答えは簡単、10,000÷1,300=7.69回だ。

 しかし先の実験結果から、10,000mAhのPower Plusを見てみると、1,300mAhのスマートフォンに5.2回しか充電できていない。残りの2.49回分のバッテリーはどこに消えてしまったのだろうか?

モバイルバッテリーと抵抗(左上のファンがついている部品)を接続し、電流がどれだけ流れるかをパソコンで1分おきに記録した

 それを知るために、モバイルバッテリーに抵抗という部品を取り付け、どのぐらいの電流が流れるかを計測してみる。これでバッテリーが何時間で空になるかが分かれば、スマートフォンへ給電した容量がより正確に分かる。たとえて言うなら、牛乳パックにストロー(抵抗)を取り付け、一定時間にどれだけの牛乳(電流)が流れるかを測り、牛乳が空になるまでの時間を調べれば、パックにどれだけ牛乳が入っていたかが分かるというものだ。

 次のグラフは、各モバイルバッテリーが、どれだけの電流を何時間流して、内蔵バッテリーが空になったかを測定したものとなっている。

各モバイルバッテリーが、どれだけの電流を何時間流して、内蔵バッテリーが空になったかを測定したグラフ。線が突然落ちているところは、モバイルバッテリーが空になった瞬間を表している

 各モバイルバッテリーからは、だいたい960mA程度の電流が流れている。容量11,000mAhのenecycleは5時間43分でカラに、最も長持ちした10,000mAhのPower Plusは7時間17分となった。

 この結果から〔平均電流(mA)〕×〔空になった時間(h)〕を計算すれば、モバイルバッテリーのおおよその容量(mAh)が計算できる。計算結果をまとめると、次のグラフのようになった。なお青色のグラフは、モバイルバッテリーに表記されている容量を示している。

今回試した3製品における、モバイルバッテリーに表示されている容量と、実験から割り出した充電に使える実容量

 いずれのモバイルバッテリーも、表示容量のおよそ6割程度しか充電に使えないようだ。予測した充電回数よりかなり少なかったenecycleは、表示容量の半分も充電に使えないことが分かる。

 そこで表示容量を100%として、そのうちの何割が充電に使えるかを示したものが次のグラフだ。

モバイルバッテリーの表示容量のうち、実際に充電に使える容量はおよそ60~70%程度だった

 enecycle以外は、表示容量の60~70%を充電できることが分かる。モバイルバッテリーで実際にスマートフォンの充電に使えるのは、スペック値の6割、7割程度なのだ。

 ではロスしてしまったバッテリーはどこに消えたのか? それのカギを握っているのは、、モバイルバッテリーの中に必ず入っているDC/DCコンバータという部品だ。

 モバイルバッテリーに内蔵されているリチウムイオン電池の電圧は3.7Vしかないので、DC/DCコンバータという部品を使って、USBで定められた5Vに引き上げている。

 しかしDC/DCコンバータを動かすためには電源が必要なので、モバイルバッテリーに内蔵している電池から電気を分けてもらっているのだ。そのほかにも、スマートフォン側の充電機構ロスや、充電中のランプが点灯したりというロスもあるが、メインはDC/DCコンバータの駆動に使われる電力だ。

 このようにモバイルバッテリーの性能を大きく左右するDC/DCコンバータと呼ばれる部品だが、ここで行なったような実験をしないと性能が見比べられないのが難点。しかし、実際に使ってみれば、良し悪しを判断できる。標準的なモバイルバッテリーの場合、表示されている容量のおよそ60~70%が充電に使えるので、次の式でおおよその充電回数を計算し、実際に充電できた回数と比較すればいいのだ。

[モバイルバッテリーの表示容量(mAh)] × 0.6 ÷ [スマートフォン内蔵バッテリー容量(mAh)] = [充電できる回数]

 たとえば計算結果が「5.36」となった場合は、スマートフォンを5回と36%程度充電できるクラスのモバイルバッテリーということ。そこで実際に充電できた回数を比較して、計算結果より多く充電できた場合は、優秀なDC/DCコンバータを内蔵した、性能の良いモバイルバッテリーということになる。もし比較して少なかった場合は、次回からそのメーカーのものは避けるといいだろう。

【突然コラム】LTE端末はなんでバッテリーが減りやすい?

 今回の記事では、LTE回線と従来の3G回線のスマートフォンを区別したが、なぜ? と疑問に思われた方がおられるかもしれない。同じスマホながらあえて区別した理由は、2013年1月現在、LTE回線に対応したスマホは、場合によってはバッテリーの消費が激しい人(地域)が多いからだ。

LTE回線のサービスエリア内で移動する人ならそれほどバッテリーが減らないが、回線の境界や3G回線のエリア内にいると、LTE回線を探したり、切り替えで電池が減りやすい

 現在スマートフォンの基地局は、従来の3G回線からLTE回線へ移行する過渡期となっている。そのためLTE端末には、LET回線の電波が届かない場所でも通話・通信ができるように、従来の3G回線とLTE回線の2つの送受信機を備えている。つまり1本の電池で2つのラジオを同時に受信しているような状態なので、電池の減りも早いというわけ(実際にはどちらかの電波を受信すると、もう片方をOFFにする)。しかし日本全国にLTE回線が普及すれば、受信機を2つ持つ必要がなくなるので、時が来ればバッテリーの減りは解消される。これが「2013年1月現在」と限定した理由だ。

 “場合によっては”と表記した理由は、LTE回線の基地局数や電波の強さが原因している。LTE端末は、LTE回線の電波が弱いと3G/LTE回線の切り替えが頻繁に行なわれ、スマホのバッテリーが減りやすい。これはLTE回線のサービスエリアぎりぎりにいる場合に起こるだけでなく、屋内外に移動したときにも発生する。また安定した3G回線のエリア内にいるときは、より高速なLTE回線がないかどうかを常に調べるので、これもバッテリーが減る原因となる。

 もちろん中には「私のLTE端末は、そんなに電池が減らない。むしろ以前より長持ちしている」という人もいるだろうが、それはLTE回線の電波が安定して受信できているため。3G回線との切り替えが行なわれないのが主な原因で、それは本来はバッテリーが長持ちするLTE回線の恩恵を受けているからなのだ。

 3G回線の従来型スマートフォンは、移動で基地局をAからBに切り替える場合、自分自身で安定した電波を探し出し基地局に接続するため、基地局の探索中にバッテリーを消費しがち。しかしLTE回線は、現在位置などを考慮して最適な基地局選びを基地局側で行なってくれる。そして基地局からスマートフォンに対して「次は基地局Bに切り換えて!」と伝言されるので、指示通りにするだけでよく、“理論的”に省エネ設計なのだ。

 とはいえ。これは基地局の切り替えに限っての話。結局は高速通信でスマホがさばく情報量は増えるので、ついついWebを見入っちゃう人は、やっぱりバッテリーの減りが早くなっちゃうかもしれない。

こちらはNTTドコモのサービスエリア表(NTTドコモのWebページより抜粋し、一部筆者が加工。地図は最新のものではありません)。赤と青を足した領域が3G回線(FOMA)のサービスエリア。青い部分がLTE回線(Xi)サービスエリア。青と赤の境目、青い部分でも屋内外で電池が減りやすい状況になる

 現時点では、右の地図のように赤い3G回線のみの地域がまだまだ多いので、LTE端末を持つ多くの人が、バッテリーの減りが早いと感じているはず。人によっては、何もしていないのに電池が半日持たない、という事例まであるらしい。将来、地図の赤い部分がすべて青になれば、LTE端末のバッテリーの減は改善されるだろう。

 このようにLTE端末の多くは、3G回線用の従来型スマートフォンより大容量の2,000mAh前後のバッテリーを内蔵しているにも関わらず、バッテリーの減りが早くなりがちな地域が多い。これが本記事で、LTE端末を従来機と別扱いにしている理由だ。

次回はタブレットやノートPCも充電できる超大容量のモバイルバッテリーを紹介

 今回紹介した中で最も買って損はないのが、容量10,260mAhのパナソニックQE-QL301だ。iPadの充電はできないが、スマートフォンや携帯ゲーム機の同時充電も可能で使い勝手も非常にいい。

 またPower Plusも、多少クセがあるものの2,780円という安さが魅力だ。iPad2ならちょうど1回、最新のiPad第三世代なら60%ほど充電できるだけでなく、スマートフォンも同時充電できるというパワフルさを併せ持つ。

ノートパソコンの補助電源としても使える上に、スマホの同時充電もできるため汎用性が高い超大容量バッテリーを後編で紹介!

 後編では、iPadもフル充電にできる、さらに大容量のバッテリーを紹介しよう。このクラスになると、ノートパソコンの補助バッテリーとして使える。ノートパソコンにスマ―トフォンやモバイルルーターを接続すれば、電源がない場所でも、インターネットに長時間アクセスできるのだ。タブレットやノートパソコンユーザーは、後編も合わせて読んでいただきたい。

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藤山 哲人