第7回:スマホ時代の新必需品「モバイルバッテリー」はどれを選べば良い? 前編

~容量3,000mAh未満、充電1回の“ライトモデル”の場合

 電話は当然。音楽からネット、地図にゲームに動画まで見れちゃう超便利な文明の利器といえば、スマートフォンだ。だが、多機能がゆえに、電池がスグになくなっちゃうという最大の弱点がある。

 このスマホの電池切れを防ぐために有効なツールが、携帯型の充電池「モバイルバッテリー」。本体に内蔵された充電池に電気を溜めて、それをスマホなどモバイル機器に供給することで、電池切れを防ぐというヤツだ。家電量販店に足を運べば、国内メーカーから国外メーカーまで、いろいろな会社のいろいろな製品が陳列されている。

 しかし、ここで迷うのが、どのモバイルバッテリーを選んで良いのかがわからないこと。容量や出力などでいろいろ幅があるようだが、数値だけを見せられてもよくわからないし、そもそも数値通りに充電してくれるかもわからない。「表示されている容量通りに充電できない」なんて声を耳にしたこともある。

今回のテーマはスマートフォンを充電するための「モバイルバッテリー」。実際にスマホを充電してみて、どういう特徴があって、どれだけ充電できるか、どれがオススメか、などを検証してみよう
  ということで家電LABOの今回のテーマは、スマホの電池切れを防ぐ「モバイルバッテリー」の選び方だ! 巷に出ているモバイルバッテリー8製品を実際に使ってみて、製品ごとにどんな違いがあるかを調べてみよう。

 そう、当連載のモットーは

Do it oneself!

 実際にスマートフォンを充電して、そのデータから、賢いモバイルバッテリーの選び方を模索しよう! そして、買うときにはどこを注意すべきか、どれを選んだら良いのかを、読者の皆様に身をもってお伝えしよう!


実験に使用するモバイルバッテリーはこの8機種!

 さっそく、今回の実験で使用するモバイルバッテリーを紹介しよう。さすがに全メーカーの全機種をやっていると実験がいつまでも終わらないので、以下の8機種に絞らせていただいた。


カテゴリメーカー名製品名・品番電池容量実売価格
(Amazon.co.jp
12月6日時点)
ライト
モデル
(3,000mAh
未満)
エレコムDE-U01L-18101,800mAh1,470円
パナソニックUSB対応モバイル電源パック
QE-PL101
2,700mAh2,709円
三洋電機エネループ モバイルブースター
KBC-L27D
2,700mAh2,590円
大容量
モデル
(4,000mAh
以上)
ソニーUSB出力機能付きポータブル電源セット
CP-A2LS
4,000mAh2,800円
エレコムDE-U01L-47104,700mAh3,410円
パナソニックUSB対応モバイル電源パック
QE-PL201
5,400mAh3,563円
三洋電機エネループ モバイルブースター
KBC-L54D
5,400mAh3,840円
OTASMiLi Power Prince5,000mAh8,925円
 

 これらの8製品をよく見ると、電池容量が「3,000mAh未満」が3機種、「4,000mAh以上」が5機種ある。実は巷に出ているモバイルバッテリーは、3,000~4,000mAhの中間層がなく、大体がこの2クラスに分けられる。恐らく、電源として使用するリチウムイオン電池を1個搭載するか2個搭載するかの違いがあると思われるが、本稿では、3000mAh未満を“ライトモデル”、4,000mAh以上を“高容量モデル”として区別して紹介する。

モバイルバッテリーに記載されている「mAh」って何?

 さて、モバイルバッテリーについて調査する前に、先程から何度か文章に出ている「mAh」(ミリアンペア・アワー)という値を解説したい。

 このmAhという数値は、内蔵電池のバッテリー容量を表すもので、“スマホが何回充電できるか?”の指針となるものだが、この「mAh」とはいったい何を意味するのか。モバイルバッテリーの性能に大きく関わる部分なので、念のために説明しておこう。

 モバイルバッテリーのパッケージには、例えば「2,700mAh」やら「5,400mAh」というように必ず明記されている。この数値が大きければ大きいほど、スマホが何回も充電できることになる。

 では、この「mAh」という単位は、いったい何を示しているのだろうか? これは、「**mAの電流が、**時間使える」ということを表していることになる。「A」は電流を表す「アンペア」で、「m」はその1/1,000であることを示す「ミリ」で、「h」は時間を意味する「アワー」。「mAh」は「ミリアンペアアワー」と呼ぶ。

モバイルバッテリーに記載されている電池容量。本体だけでなく、パッケージにも必ず書かれているのでチェック!
電池容量をペットボトルで表してみた。水のタンクを同じ高さ(=電圧)で、同じ太さのホース(=抵抗)をつなげば、同じ水量(=電流)が流れる。そのため2,700mAhのタンクの水は、5,400mAhの半分の時間でなくなってしまう

 より分かりやすく理解できるよう、2,700mAhと5,400mAhのモバイルバッテリーを原理模型で示すと、右のような模型の感じになる。

 電流は、写真のペットボトルから流れ出る水流(電流)の強さを表す。そしてペットボトルに入っている水の量が、モバイルバッテリーの電池容量(mAh)を示している。

 つまり2,700mAhのモバイルバッテリーというのは、「2,700mAの電流を流した場合、1時間でペットボトルの水=電池容量が空になるぐらいの容量ですよ」という意味だ。ここで、もし半分の1,350mAの電流を流せば2時間電池が持つことになるが、倍の5,400mAの大電流を流せば。0.5時間(30分)で空になる。

 かたや5,400mAhのモバイルバッテリーは、2,700mAの電流を流せば2時間、5,400mAの電流を流せば1時間で空になる。つまり、2,700mAhの2倍の電池容量を持った電池というわけ。大容量のモバイルバッテリーが欲しい場合は、この「mAh」の数値が高いものを選べば良いわけだ。

 ところでモバイルバッテリーには、「2,700mAh」という容量を表す数値とともに、「3.7V」などというような「V」という数値も記されている。この「V」とは「電圧」のこと。この電圧が高くなるほど、電気を流す力が大きくなる。先ほどの原理模型で言えば、水のタンクの高さがそれに当たる。高いところから水を流した方が水流が強くなるのと同じことがいえる。

 おそらくたいていのものは3.7V、低いもので3.6V(まれに3.75や3.8Vの場合もある)と書かれているはず。これは、ほとんどのモバイルバッテリーで電源として採用されている充電池「リチウムイオン電池」の電圧が、1本3.6もしくは3.7Vになっているためだ。乾電池が1本1.5Vであるのと同じことだと思ってほしい。

モバイルバッテリーは、そのほとんどがリチウムイオン電池を電源とするため、だいたいの電圧が3.6Vあるいは3.7Vとなる話の本筋とはあまり関係ないけれど、こちらはデジカメのバッテリー。3.7Vの電池が2本直列になっているので、電圧は7.4Vになっている

 しかし、USBの出力電圧は5V。対するモバイルバッテリーのリチウムイオン電池の電圧は、先程指摘したとおり3.7V。これじゃあUSBに出力する電圧として、1.3Vほど足りないのだ!

 そこでモバイルバッテリーの中には、電池と一緒に「DC/DCコンバータ」なる電圧を上げる回路が入っている。このコンバーターは水をくみ上げるポンプのようなもので、先の原理模型の写真では、レンガ1個分(3.7V相当)の高さから水を流していたが、DC/DCコンバータなるポンプによって、それより少し高い場所まで電圧(高さ)を上げて、電気(水)を流せるというわけだ。

 ちなみに、モバイルバッテリーにはさらに「出力:500mA」などという数値も記載されている。これはモバイルバッテリーから機器に供給される電流のパワーを表しているもの。この数値が高い方が、機器が早く充電できることになる。また機器によっては、充電の際に1A以上のもの大電流が必要になることもある。モバイルバッテリーを購入する際は、スマートフォンに同梱されている充電用のACアダプターが、「5V 何mAh」出力するのかをチェックしておきたい。

スマートフォンの電池容量も確認しておこう

 モバイルバッテリーについて基本的な情報がわかった後は、次にモバイルバッテリー自体の電池容量を見てみたい。

 これを調べるのは、携帯電話やスマートフォンのフタを開けて電池が確認できる機種なら簡単。電池パックに「mAh」の数値が記されているからだ。

 例えば、NTTドコモの「XPERIA SO-01B」は1,500mAh、ソフトバンクの「AQUOS PHONE 006SH」の場合は、それよりもちょっと少なめの1,240mAhのリチウムイオン電池が内蔵されていた。

「XPERIA SO-01B」は、1500mAhの電池が内蔵されていた「AQUOS PHONE 006SH」は、ちょっと少なめの1240mAhの電

  iPhoneの場合、電池は分解しない限り取り外せないので、内蔵電池の容量は分かりにくい。ただし、海外の分解サイトなどを見るかぎり、iPhone 3GSは1,218mAh、iPhone 4(含む4S)は1,420mAh、iPadは6,613mAhとなっているようだ。本稿では、この数値をiPhoneの電池容量として想定する。

 一方で、一般的な携帯電話では、800mAh~1,000mAh程度だった。携帯電話は2~3日充電器にかけなくても電池が持つのに、スマートフォンがスグ電池切れしてしまうのは、携帯の何倍もの電力を食うので、大容量の電池が内蔵されていてもスグ空になってしまうためなのだ。

 スマートフォンの大容量電池をほぼ1回フル充電にできるのは、「内蔵電池の倍の容量があるモバイルバッテリー」を選ぶのが良い。今から紹介する実験結果を踏まえた上での提案だが、そもそもモバイルバッテリーの容量通りにスマートフォンの電池は充電できないのだ。

【突然コラム:Wh表記されているバッテリーは、mAhに変換するとどれくらい?】

 モバイルバッテリーの電池容量は、ほとんどの場合が「mAh」で表される。しかし、海外の製品だったり、大容量の蓄電池では、たまに「Wh」(ワット・アワー)表記の場合がある。表記がブレていると、容量が単純に比較できず、わかりにくい。

 でも、実は簡単な計算式で、「Wh」を「mAh」に変換したり、その逆もできてしまうのをご存知だろうか。

 例えば、電池に「5.25Wh」、電圧は「3.7V」と記載されている場合。「W」(ワット)は、電流と電圧をかけた値なので、Wh表記をmAhに変換する場合は、次の式で求められる。

〔Wh〕÷〔電圧(V)〕×1,000=〔mAh〕

 5.25Whをこの式に当てはめると

5.25Wh÷3.7V×1,000=1,418mAh

となる。逆に、「mAh」表記をWhに変換する場合は、この式を逆にすれば良いだけだ。

1.418mAh ÷ 1,000 × 3.7V = 5.246Wh(約5.25Wh)


まずはスマホ充電1回クラスの“ライトモデル”3製品を実験

 長らくおまたせしたが、いよいよ実用的な実験に入ろう!

 実験内容は、電池容量がなくなり、電源が入らなくなったスマートフォンに、モバイルバッテリーを接続し、電池がどれだけ充電できるか、というもの。実験に使用するスマートフォンは、ソフトバンク「iPhone 3GS」と、NTTドコモの「XPERIA SO-01B」で、電池の充電具合は、本体の残量表示部に表示されている数値で表す。iPhone 4/4SやAndroidの最新機種などについては、これらの測定結果を元に算出した“理論値”という形で表示する。

 また、スマートフォンではないが、最近増えているタブレット型の機器の代表として、iPadについても実験してみよう。

 まず実験するのは、電池量量が3,000mAh未満の“ライトモデル”のモバイルバッテリー3製品だ。5,000mAh以上の製品と比べると、容量がコンパクトなライトユーザー向けモデルとなる。

 実験をしたのは、以下の3製品。(1)エレコム「DE-U01L-1810」(1,800mAh)、(2)パナソニック「USB対応モバイル電源パック QE-PL101」(2,700mAh)、(3)三洋電機「エネループブースター KBC-L27D」(2,700mAh)の3製品だ。

【実験に当たっての注意】

・充電回数など、測定にあたっては、モバイルバッテリーを一度完全に充放電を行なった後、フル充電したものを利用しています。購入直後のモバイルバッテリーでは、実験どおり回数だけ充電ができない場合があります。
・バッテリーは温度や利用方法などによって性能が大きくことなるので、必ずしもこのデータ通りにはなりません。実験は室温を管理していない環境で行なっています。
・市販の測定器とオリジナルの回路を使っているため、測定器内部の抵抗や実験装置および配線の抵抗により、メーカー発表の値とは必ずしも一致しない場合があります。測定結果は、あくまでも相対的な参考値としてご利用ください。


エレコム「DE-U01L-1810」(1,800mAh)

エレコム「DE-U01L-1810」(1,800mAh)

 まずは、エレコムの「DE-U01L-1810」から挑戦だ。薄型・軽量で、カラーバリエーションもブラック、グリーン、ピンク、ホワイトの4つから選べる。容量が1,800mAhと少なめだが、そのぶん価格は購入しやすくなっている。




製品紹介Webページここをクリック
実売価格1,470円前後
(Amazon.co.jp 12月6日時点)
内蔵電池容量1,800mAh
出力コネクタUSB×1
最大出力電流1,000mA
充電コネクタmicroUSB
付属品USB - micro USBケーブル
(充放電兼用)
残量インジケータ1灯2色
繰り返し利用回数約500回
重量60g
サイズ93×40×16mm
(幅×奥行き×高さ)

 結果、iPhone 3GSはフル充電できたものの、XPERIAでは71%しか充電できなかった。これがiPhone 4だと、80%しか充電できず、1,800mAhクラスの電池を内蔵したスマートフォンとなれば、50%ほどしか充電できないことになる。これは本製品にかぎらず全体に言えることだが、iPhoneシリーズは充電ランプなどを持たないため充電のロスが少なく、Android系に比べると効率よく充電できるようだ。

iPadでは「充電していません」の文字が出てしまった。DE-U01L-1810では充電できないようだ

 なおiPadは出力電流が不足していたためか、画面には「充電していません」のメッセージが表示され充電ができなかった。

 もう一つ指摘すると、本体は急速充電に対応しておらず、フル充電に4時間程度かかる。会社で充電するというよりは、寝ている間に自宅で充電する使い方がメインになるだろう。


【測定結果】
測定状況充電するスマートフォン電池容量充電回数
実測iPhone 3GS1,219mAhちょうど1回
実測XPERIA SO-01B1,500mAh71%
実測iPad6,613mAh充電できず
理論値iPhone 41,418mAh83%程度
理論値GALAXY SII1,600mAh63%程度
理論値Android系1,400mAhクラス71%程度
理論値Android系1,800mAhクラス55%程度
本体充電時間3時間44分(5V,1,000mA USB ACアダプタ利用時)

使い勝手:バッテリー残量が赤と青のランプでしか表示されないが、1回のみの充電なのでとくに不便は感じない。また本体の電源スイッチはなく、ケーブルでスマホとモバイルバッテリーを接続した瞬間から電源が入るようになっている。シンプルで使いやすい。


パナソニック「USB対応モバイル電源パック QE-PL101」(2,700mAh)

パナソニック「USB対応モバイル電源パック QE-PL101」(2,700mAh)

 この製品の最大の特徴は、無接点充電のQi(チー)規格に対応しているという点。別売の充電パッド(3,200円前後)を使うと、パッドの上にポン!と置くだけで約5時間でフルチャージにできる。また付属のACアダプタでは、2時間程度で急速充電が可能だ。なおカラーバリエーションは、白と黒の2色。

 iPhone用に使うなら、1回フルチャージ、Android系でもほぼ100%まで充電できる。繰り返し利用回数は明記されていないが、恐らく一般のリチウムイオン電池同様に約500回の繰り返し利用ができるだろう。


製品紹介Webページここをクリック
実売価格2,709円前後
(Amazon.co.jp 12月6日時点)
内蔵電池容量2,700mAh
出力コネクタUSB×1
最大出力電流1,500mA
充電コネクタmicro USB、無接点充電「Qi」規格対応
付属品充電用ACアダプタ
USB - micro USBケーブル(充放電兼用)
残量インジケータ1灯3色
繰り返し利用回数記載なし
重量80g
サイズ41.5×70×23.2mm(幅×奥行き×高さ)
7.5kHzのキーン! という音が聞こえたり、聞こえなかったりを繰り返す

 少し気になったのは、スマホの充電中に時おりキーン! という音が聞こえる点。音の成分を調べる機械「スペクトラムアナライザ」で見てみると、7.5kHzの音が突出しているのが分かる。おそらくDC/DCコンバータが直流を交流に変える際の音だが少し耳障りだ。なおこの音は、この後で紹介する三洋の「KBC-L27D」でも同様だった。



【測定結果】
測定状況スマートフォン電池容量充電回数
実測iPhone 3GS1,219mAh1回と19%
実測XPERIA SO-01B1,500mAh95%
実測iPad6,613mAh24%
理論値iPhone 41,418mAh1回と25%程度
理論値GALAXY SII1,600mAh94%程度
理論値Android系1,400mAhクラス1回と6%程度
理論値Android系1,800mAhクラス83%程度
本体充電時間1時間58分(添付ACアダプタ利用時)

使い勝手:スマホがほぼ1回充電できる。残量表示が緑→オレンジ→赤の3色で表示され、充電中もどのぐらい充電できたかがひと目で分かる点がいい。難点は、静かな部屋でスマホを充電しているとDC→DCコンバータからキーン!という音が時おり聞こえるところだ。

 

三洋電機「エネループ モバイルブースター KBC-L27D」(2,700mAh)

パナソニック「USB対応モバイル電源パック QE-PL101」(2,700mAh)

 先ほど取り上げたパナソニックのバッテリーと、スペックも形状もほぼ同じ製品だが、無接点充電機能は持っていない。こちらも繰り返し利用回数は明記されていないが、一般的なリチウムイオン電池と同じ約500回の繰り返し利用が可能だ。

 なお旧製品の「KBC-L3AS」も流通在庫が残っているが、購入される場合は、このKBC-L27Dを選ぶのが良いだろう。外観はとほとんど変わりがないが、旧製品は容量が2,500mAh、最大電流500mAと、かなりスペックが落ちる。購入時には型番を確認しておきたい。


製品紹介Webページここをクリック
実売価格
2,590円
(Amazon.co.jp 12月6日時点)
内蔵電池容量2,700mAh
出力コネクタUSB×1
最大出力電流1500mA
充電コネクタmicroUSB
付属品充電用ACアダプタ
USB⇔microUSBケーブル(充放電兼用)
残量インジケータ1灯3色
繰り返し利用回数記載なし
重量78g
サイズ70×39×22mm


 商品名は「エネループブースター」となっているが、内蔵している電池はニッケル水素ではなく、三洋製リチウムイオン電池が使われている。価格、性能、外観はパナソニック製とほぼ同じなので、購入のポイントは無接点充電を使うか否かと、どちらが好みのブランドかで決まるだろう。

ストラップをつけておけば、カバンの底の方に潜り込んでしまってもスグに取り出せる

 なお、これはパナソニック版とも同様だが、携帯ストラップを取り付けられる穴が開いているので、カバンの奥に入ってしまっても見つけやすい。

 iPhone用なら、1回フルチャージでき、Android系ならほぼ100%まで充電できた。


【測定結果】
測定状況スマートフォン電池容量充電回数
実測iPhone 3GS1,219mAh1回と40%
実測XPERIA SO-01B1,500mAh96%
実測iPad6,613mAh26%
理論値iPhone 41,418mAh1回と25%程度
理論値GALAXY SII1,600mAh94%程度
理論値Android系1,400mAhクラス1回と6%程度
理論値Android系1,800mAhクラス83%程度
本体充電時間2時間3分(添付ACアダプタ利用時)

使い勝手:スマホがほぼ1回充電できるタイプ。残量表示が緑→オレンジ→赤の3色で表示される。静かな部屋でスマホを充電しているとDC→DCコンバータからキーン!という音が時おり聞こえてしまう

 

パナソニック・三洋は電圧も電流も非常に安定

 スマホへの充電具合がわかったところで、モバイルバッテリーからスマホへ、どのように電気が流れているのかを見てみよう。最高出力の1,000mAの電流が流れた場合を想定し、5Ωの抵抗をモバイルバッテリーに接続した状態の、電圧と電流を計測してみた。

実際に充電したときの電圧ではなく、5Ωの負荷を接続した状態
電流も5Ωの負荷を接続した状態

 測定器や電線の抵抗などで若干電圧が低い値を示しているが、各社とも電圧と電流は非常に安定している。当たり前の話だが、問題なくスマートフォンの充電は可能といえるだろう。

 いずれも誤差の範囲かもしれないが、敢えて差を指摘すると、最も安定した電圧を供給し続けるのはパナソニック。次に三洋が僅かに電圧が低いものの安定した電圧を出している。エレコムは他の2つに比べ高い電圧を維持するようだ。

 一方電流の電圧では、パナソニック、三洋ともに910mAで始終安定して出力している。エレコムは少し高めの930mAを出力しているが、後半に若干のブレが見られる。

 iPadの充電にも使う場合は、パナソニックか三洋を選べば25%ほどの充電が可能だ。エレコム製は画面に「充電していません」の文字が表示され充電ができなかったので、スマートフォン専用と言っていいだろう。

iPhoneなら1,800mAhのバッテリーでも十分に使える。Android系は容量が多いパナ・三洋で

 さて、3,000mAh未満の“ライトモデル”のモバイルバッテリーでは、スマートフォンがどのくらい充電できたのか。これまでの実験を、以下の表にまとめてみた。充電回数が1回を超えていれば、フル充電が可能ということになる。


モバイル
バッテリー名
スマートフォン区分iPhone系Android系

製品名

iPhone 3GS
実測値
iPhone 4
理論値
iPad
実測値
1,400mAh
クラス
理論値
XPERIA
SO-01B
実測値
GALAXY
S II
理論値
1,800mAh
クラス
理論値
電池容量1,219mAh1,420mAh6,600mAh1,400mAh1,500mAh1,600mAh1,800mAh
エレコム
モバイルバッテリー
DE-U01L-1810
1800mAh
1.00回0.83回充電不可0.71回0.71回0.63回0.55回
パナソニック
USB対応モバイル電源パック
QE-PL101
2700mAh
1.19回1.25回0.24回1.06回0.95回0.94回0.83回
三洋電機
エネループモバイルブースター
KBC-L27D
2700mAh
1.40回1.25回0.26回1.06回0.96回0.94回0.83回

 ※表中の整数(1以上の値)はフル充電できる回数を示し、少数点以下はおおよそ何%まで充電できるかを示している。

 この結果でわかるのが、モバイルバッテリーに表記されている「○○mAh」という数値が、その数値ぶんを丸々充電できるワケじゃない、ということ。実際、エレコムのモバイルバッテリーは容量1,800mAhだったが、電池容量1,500mAhのXPERIAがフル充電できなかった。この詳しい説明は次週で述べるが、実際スマホに充電できるのは、モバイルバッテリーの容量に対し、iPhone系ならおよそ6割、Android系なら5割程度だろう。

 それを踏まえた上で、このライトモベルの3つの製品は、以下のような場合にオススメできる。

iPhoneを1回充電するには、エレコムの1800mAhで十分。緑以外に、黒、ピンク、ホワイトのカラーバリエーションがある。

・iPhoneの1回充電には、エレコムの1,800mAhでも十分

 容量は少ないが充電ロスが少ないiPhoneには、エレコムの1,800mAhでも十分だった。カラーバリエーション豊富で、価格も千円台という安さも魅力だ。

・Android系には、容量が大きいパナソニックか三洋の2,700mAhモデルがオススメ

 大容量バッテリーを内蔵するAndroid系には、容量が3000mAhほどあるモバイルバッテリーの方が安心感があるだろう。パナソニックと三洋のどちらを選ぶかについては、価格も性能もほぼ同じなので、充電コネクタの抜き差しが面倒でワイヤレス充電をしたいというヒトはパナソニック製がオススメ。それ以外の場合は、自分の好きなブランドで選んでかまわない。

左が無接点充電にも対応したパナソニック製、右は三洋製。無接点充電を使わないなら、好みのブランドで選べばOK

 それでは続けて、モバイルバッテリーの“大容量モデル”を紹介しよう……と思ったが、かなり長くなったので、明日掲載予定の後編で取り上げさせていただく。

 なお、今日のライトモデルには、iPadにベストマッチなモバイルバッテリーはなかったが、後編ではいくつか良い製品があったので、明日までお待ちいただきたい。

後編 →





2011年12月8日 00:00