藤山哲人のモバイルバッテリー診断

OTAS「MiLi Power Visa(ミリ パワービザ)」

~厚さわずか4.8mm! iPhone 5向け激薄モバイルバッテリー

「モバイルバッテリー診断」は、スマートフォンの外部電源として普及しているモバイルバッテリーをレビューするコーナーです。(編集部)
OTAS「MiLi Power Visa HB-T12-2」

 今回紹介するモバイルバッテリーは、とにかく薄い! そして小さい! 厚みは4.8mm、大きさは名刺サイズで、コンビニで売られているミントタブレットほどだ。

 どう見てもモバイルバッテリーに見えないオシャレなそのバッテリーとは、OTASの「MiLi Power Visa(ミリパワービザ。以下Power Visa)」。今春に発売された当初は即完売となったほどの、人気のバッテリーだ。

 ちなみにOTAS(オータス)という会社は、MiLiブランドのバッテリーなど、スマートフォン黎明期からモバイルバッテリーを扱っている代理店。すでにOTASやMiLiの製品を使っているという人も多いだろう。

メーカー名OTAS
品名・型番MiLi Power Visa HB-T12-2
バッテリー容量1,200mAh
サイズ56×86×4.8mm
重量36g
カラー・モデルブラック+ゴールド 1色のみ
販売価格3,500円程度
対応スマートフォンAndroid:○
iPhone:○
※iPhone 5用Lightningコネクタ対応

 容量は1,200mAhと控えめ。イザというときに備えて名刺入れや財布に忍び込ませておく補助バッテリーとしての意味合いが強い。容量が少ないスマートフォンなら、フル充電とまでは行かなくても、そこそこは充電できる。

 注目は付属品だ。Power Visaには、Lightning変換コネクタ(Micro USB - Lightningコネクタ)が同梱されている。充電以外の動作保障はしていないが、コネクタの淵が純正品のようにステンレスでカバーされており、作りはしっかりしている。このほか、iPhone4S以前の製品に使用できる30ピンの変換コネクタ(Micro USB - Dockコネクタ)も付属する。

Power Visa(中央)を、名刺(右)とミンティア(左)と並べてみたところ。スマートフォンに入っている内蔵バッテリーよりも薄い。ちなみに名刺は筆者が実際に使っているもの
付属のLightning - MicroUSB変換コネクタ。充電以外の動作保障はしていないが、純正品同等にしっかりした作りになっている

 なお、Lightningコネクタが同梱されていないモデル「HB-T12」も、500円安い約3,000円程度で販売されている。Android系やiPhone 4S以前のスマートフォンを使用しており、Lightningコネクタは不要という場合は、こちらも選べる。

本体上部。Micro USBコネクタは珍しい入出力共用。その脇には3つのLEDがあり、1つは充電中(赤)と完了(青)を示す。残り2つはバッテリー残量計。一番右は電源ボタン
本体上部から見て右側。何もなく、とても薄いのが分かるだろう
本体天面。MiLiのワンポイントロゴがあるだけで、マット(非光沢)なブラック仕上げ
本体下部は何もない
本体上部から見て左側も何もない
本体底面はゴールド仕上げになっている。お財布に入れておくとゴールドカードに見えるかも(笑)
■■注意■■

・実験結果は、室温がコントロールされていない環境で行なっています。電池は温度により、その特性が大きく変わる点にご注意ください。
・実験結果は記事作成に使用した個体に関してのものであり、すべての製品について共通であるとは限りません。
・実験結果に基づいた実容量やロス率は、その値を保障するものではありません。
・筆者および家電Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにはお答えできません。

Micro USBコネクタから出力。スマートフォンが半分ほど充電できる

 まずは内蔵バッテリー容量1,800mAhのスマートフォン「ARROWS X F-10D」を充電してみよう。バッテリーの出力コネクタは、一般的なモバイルバッテリーに採用されているUSB Aコネクタとは違い、Micro USBコネクタを採用している。

 その一方で同梱のケーブルは、長さがおよそ10cmのMicro USB - USBケーブルとなっている。そのため、スマートフォンを充電するには、Micro USB - Micro USBケーブルが必要になる。そんなケーブルは同梱されていない……と思ったが、実はギミックがあった。ケーブルのUSBコネクタを引っ張って折ると、中からMicro USBコネクタが顔を出し、Micro USB - Micro USBケーブルとして利用できる。

USBコネクタを引っ張って折り曲げると、Micro USBコネクタに変身する。折り曲げたコネクタは、スマートフォン側にしてもバッテリー側にしてもかまわない
こちらはApple製品用のLightning変換コネクタちDock変換コネクタ。Micro USBコネクタに差し込んで使う

 薄く軽いモバイルバッテリーなので、スマートフォンと重ねてポケットに入れたまま充電したいところだが、1つ難点がある。引っ張って折ったUSBコネクタが、スマートフォンと重ねた際に邪魔になってしまうのだ。スマートに収納したい場合は、なかなか入手しづらいとは思うが、Micro USB - Micro USBケーブルか、USB - Micro USB変換コネクタを別途購入したほうがよさそうだ。

 モバイルバッテリーにスマートフォンを接続すると、自動的に電源が入り、充電開始となる。本体に付いているスイッチは、バッテリー残量確認用だ。バッテリー残量表示機能は2段階になっており、2灯点灯で100~50%、1灯で50%以下となっている。LEDが3灯付いているので、3段階に見間違えてしまいがちだが、1灯は充電中と充電完了を示すランプとなっている。

ポケットに入れて使いたいが、折り曲げたUSBコネクタが邪魔になって、モバイルバッテリーの薄さの意味がなくなってしまうのが残念
電源ボタン横の2灯がバッテリー残量計。写真では1灯光っているので、残量が50%以下であることを示している

 さて充電の結果、前述のスマートフォンがおよそ50%充電できた。

・スマートフォン充電テストの結果
充電回数「50%」(954mAh相当)
※測定条件は、WiFi:ON、Bluetooth:ON、GPS:ON、省電力モード:OFF、画面OFFの状態で充電、電池残量約10%から充電開始し90%程度までを繰り返し、アプリ「Battery Mix」にて容量変化を記録

 さすがにコレだけ小さく薄いと、スマートフォンを急速充電できるほどの電流は出力できず、最大で0.5A(500mA)となっている。したがってスマートフォンの充電時間はかなり長くなる。

 なお自動的に電源が切れるオートパワーオフ機能は、マニュアルにも説明がなく、スマートフォンを接続すると自動的に電源がONになってしまうため、確認できなかった。基本1回の充電で容量を使い切ってしまうので、オートパワーオフ機能の必要はなさそうだ。

電流・電圧ともUSB規格を下回る。購入時には対応機種チェックを!

 本連載では通常、独自の測定器を用いて連続して1Aの電流を流し、電圧と電流の変化、そしてスマートフォンに充電できる実容量を測定しているが、このモバイルバッテリーは0.5Aまでの出力となっているので、0.5Aの電流が流れるように実験装置を組み直し、そのうえで出力を測定した。

 なお実用量とは、パッケージの「○○mAh」というバッテリー容量のうち、実際にスマートフォンを充電できる容量を示す。実用量率は、表示容量に対する割合で、値が大きいほど高性能バッテリーといえる。

電圧はかなり不安定で、USBで定められている5Vが出力できていない。しかし辛うじて充電はできた

 電圧はUSBで定められている5Vまで出力できていない結果となった。ただし、実際にはARROWS Xは充電できたので、ギリギリ充電できるといった感じだろう。また電流も500mAを出力できていない結果となった。

電流は安定はしているのだが、規程の500mAを出力できていない

 なおグラフ中では、2時間半を越えたところで、電圧5V、電流が450mAまで復帰しているが、これはスマートフォンが充電モードを解除したからだと思われる。

 この実験から算出した、実際にスマートフォンへ充電できる実容量は「68%」。かなり高い値を示している。しかしラスト30分はスマートフォンが充電モードを解除しているため、実際にはもっと少ない値になるかと思われる。

68%とかなり高い値を示す。ただラスト30分はスマートフォンがされていなかったため、実際にはもっと低くなると思われる

 計算を元に出した実用量から、各種スマートフォンやタブレット、携帯ゲーム機をおよそ何回充電できるかは、次のとおりになる。Android系の場合()内が内蔵バッテリー容量を示している。この値も、実際にはもう少し低くなると思われる。

【実用量と各種スマートフォンの充電回数予測】
項目詳細
バッテリー表示容量1,200mAh
連続利用時の実用量822mAh(68%)
連続実用量1,000mAh あたりの価格4,259円
充電回数(理論値)Android(1,300mAh):0.7回
Android(1,500mAh):0.6回
Android(1,800mAh):0.5回
Android(2,000mAh):0.5回
Android(2,200mAh):0.4回
Android(2,500mAh):0.4回
Android(3,000mAh):0.3回
iPhone4S(1,432mAh):0.7回
iPhone 5(1,434mAh):0.7回
ソニー PSP(1,200mAh):0.8回
ニンテンドー3DS(1,300mAh):0.7回

何と充電用・給電用コネクタが共通。フル充電まで約3時間

スマートフォン充電用と本体充電用のコネクタが共通なので、少し戸惑う。コネクタ横のランプが赤いと充電中で、青に変わると充電完了

 続いて、内蔵バッテリーの充電性能を見ていこう。実は本製品では、スマートフォン充電用と本体充電用のコネクタが共通で、同じMicro USBコネクタを使用する。一般的なモバイルバッテリーは、スマートフォン充電用のコネクタと本体充電用のコネクタが分かれているため、この共用コネクタには少し戸惑いを覚えるだろう。

 充電するときは、USBコネクタをMicro USBコネクタにはめて、ケーブルをMicro USB - USBコネクタにし、パソコンなどのUSBコネクタとバッテリーを繋ぐ。コネクタに一番近いLEDが2色1灯の充電サインとなっており、本体充電中は赤く光り、充電完了すると青く光る。

 マニュアルにはバッテリーの充電時間が記載されていなかったが、実際にテストしてみたところおよそ3時間だった。充電に必要な電流は0.5(500mA)なので、スマートフォンに同梱されているUSB ACアダプタやパソコンのUSBコネクタからの充電もOKだ。

 1,200mAhの充電に3時間かかるのは、この容量を考えるとかなり時間がかかるが、この薄さとサイズを考慮すれば仕方がないだろう。デスクでひと仕事していれば3時間ぐらいは経つので、体感ではそれほど充電時間が長いと感じることはなかった。

【本体充電スペック】
項目詳細
本体充電用コネクタMicroUSB(出力と共用)
添付充電器(仕様)なし
充電時間(カタログ値)記載なし
充電時間(実測)2時間58分
繰り返し利用回数記載なし

オシャレなiPhoneユーザーにオススメ。Android系は購入前に対応チェックを

 このモバイルバッテリーは、機能性や容量より、デザインや充電のスマートさを重視する、iPhoneのライトユーザー向けと言える。

 とくにオススメしたいのはiPhone 5ユーザーだ。純正のLightningケーブルは高価だが、安いサードパーティー製のケーブルは互換性に問題があるものも多く、手を出しづらい。その点Power Visaには、充電検証済みのLightning変換コネクタが同梱されている。

 逆に言うと、内蔵バッテリーの大容量化が進むAndroid系のスマートフォンユーザーや、複数のモバイル機器を利用するヘビーユーザーには不向きと言える。

 なお本文中でも述べたが、出力電圧と電流がUSBの規定よりも低いため、スマートフォンによっては充電モードに入らない場合もある。購入前には、OTAS DirectMiLi Storeなどで対応機種確認を確認していただきたい。

【総合評価】
メーカー・品名OTAS「MiLi Power Visa HB-T12-2」
ロスの少なさ ★★★★☆(4)
持ち歩きやすさ★★★★★(5)
単位容量の安さ★☆☆☆☆(1)
 充電の早さ ★★★★★(5)
使い勝手のよさ★★☆☆☆(2)

藤山 哲人