藤山哲人の実践! 家電ラボ
超黄ばんだシャツに生け捕りのダニ!? パナソニックの大人の科学実験室でなるほど! 納得!
超黄ばんだシャツに生け捕りのダニ!? パナソニックの大人の科学実験室でなるほど! 納得!
2016年9月28日 07:30
「本気」が見える技術とアイディア
パナソニックから「絶対、藤山さんが喜びそうな内覧会をやるので来てくださいね♪」と連絡があり、まんまとソレに乗っかってきた(笑)。
すでに発表済みの製品もあったので、それほど期待はしていなかったが(すまん! パナさん!)、行ってみたらせんじろう先生も驚く、大人の家電実験大会(笑)。
パナソニックの技術を余すことなく、分かりやすい実験で解説していたので、ぜひ読者のみなさんにも知ってもらいたく記事にしてみた。理系読者は大喜びの内容。ちょっと長い記事だけど、面白く読んでもらえれば嬉しい。
まじで、最近のパナはパネェっすよ!
暑がりと寒がりを見分けるエアコン! 驚愕の温度差10℃!
パナソニックのエアコンの愛称をご存知だろうか? 三菱電機や日立のようにパッ! とは出てこないが、なぜなら時代に合わせて愛称を色々変えてきているので、あまり定着していないのだ。そんな愛称の中のひとつに「エオリア」がある。
なんだかティッシュペーパーのブランドっぽい(笑)が、おそらく40~50代のヒトなら記憶の片隅にあるはず。なにせ徳永英明さんが、製品名を連呼するCMソング「だーかーらー、エオリア! エオリア♪」が大ヒットしたのだ。それでも「?」なヒトは動画サイトで「エオリア CM」で検索すれば、その歌に涙するだろう(笑)(だけど半マジ)。
比較的長く使われた「エオリア」ブランドは、今年で29年目になる。しかもパナソニックがエアコンを商品化したのは1957年なので、今年で60周年だ。
会場に展示してあったエアコン第1号機は1958年(昭和33年)製。読者の大半はおろか、筆者すら生まれてない! 何しろ東京タワーが完成した年で、子どもも大人もフラフープで踊りまくった頃なのだ。
街にはスバル360が走り交い、出前バイクでおなじみのスーパーカブがその横を追い抜き、家庭ではお湯をかけるだけで食べられるチキンラーメンに舌鼓を打っていた頃。テレビがようやく試験放送をはじめたころから、エアコン(正確には冷房)があったのが驚きだ。
エオリアブランドで販売されたエアコンですら1988年製。バブル絶頂期で青函トンネル、瀬戸大橋、東京ドームが完成し、東北上越新幹線が開業した。オフィスにはNECのPC-9801VMが導入され、一太郎(ワープロ)とロータス1-2-3(表計算)に悪戦苦闘していたころだろう。そしてCMは時代を風刺する「24時間戦えますか? の栄養ドリンク リゲイン」や「さわやかテイスティ♪ I feel coke」のCMがよく流れていた。
そんな古い歴史を持つパナソニックの最新エアコンは、温度が最大10℃異なる空気を同時に出せる「Eoria(エオリア) WXシリーズ」。つまり、リビングに寒がりの奥さんと熱がりの旦那さんがいても、2人に快適な異なる温度調正ができるというものだ。2000年あたりから「Eoria」ブランドを使っていなかったので、久々の復活となる。
温度差を持たせた2つの気流を同時に送る三菱のエアコンは、左右の熱交換器の温度を変えているが、パナソニックは手前と奥の熱交換器の温度を変えている。
それを可能にしたのが写真の特殊バルブ。これで熱交換器の手前と奥の冷媒(エアコンのガス)の圧力を変えることで、熱交換器に温度差を作るというものだ。う〜む、なかなか賢い!
「でも送風口は1つしかないのでは?」と思う方も多いだろう。確かに数年前までのエアコンは、吹き出し口が1つのものが多かった。しかし最近のモデルは、上下に風を送るフラップが大型2枚化され、このフラップの幅を絞ることで、部屋の奥まで気流を届ける製品が主流になっている。ちょうどホースで水を撒くのと同じで、蛇口を開けなくても、ホースの先を絞ると水をより遠くまで飛ばせるというしくみだ。
最新のEoriaは、3枚のフラップの隙間を使い手前からは温めの温風を、奥の隙間からは熱い温風を出すようになっている。普通のエアコンと違うのは、左右に風を振るフラップは手前と奥の隙間で独立しているという点。これで手前の温い温風は熱がりに向けて左へ、奥の熱風は寒がりに向けて右へと気流を分けている。既存のものにチョット手を加えて新技術を作るエンジニアのアイディアに脱帽だ。
さらにこのエアコンには、簡易サーモグラフィー(温度検知カメラ)が搭載されており、部屋のどこに人がいるかも認識している。さらに一歩進んでいるのは、その人の周囲の温度と人の肌の表面温度を調べ、肌からの放熱量が多く「寒い」と感じているヒトと、放熱量が少ない「熱い」と感じているヒトも見分けて、送風をコントロールする。
「熱がりと寒がりの共存」が今年から来年にかけてのテーマになりそうだ。
40℃の温水で一晩つけ置き洗いすると驚きの汚れオチ!
三菱の洗濯機事業からの撤退、シャープへの海外資本の注入や、東芝の白物家電撤退など、日本の白物家電には逆風が吹いている。そんな中、まさに白物家電の代表「洗濯機」で切磋琢磨しているのが日立とパナソニックだ。
なかでもハングリーなのがパナソニック。先ごろは、乾燥機能はそこそこながら、デザイン性を重視したCubleが大ヒット。とても洗濯機とは思えない、立方体のデザインに丸マドが家電量販店でもひときわ目立っている。
今回注目するのは、9月末に発売されたばかりの機能重視タイプの洗濯機(一般型:NA-VX型番)だ。10月末に発売の新Cubleにも搭載される機能で、最も目を引くのは、黄ばんでしまった衣類が、真っ白になるという「温水泡洗浄」。漂白剤でも取れないような皮脂の黄ばみやシミが真っ白になる。実際のブツを見れば、その白さに驚くだろう。
その秘密は「黄ばみの元となる皮脂は、37℃で溶け出す」という原理と、夜中(0:00)につけ置き洗いをしておけば、翌朝(7:00)までドラム内の水を40℃にキープできるという洗濯機ならではの機能だ。時間とともにお湯の温度が冷えてしまう普通のつけ置き洗いでは太刀打ちできない。
そのぶん電気代はかかってしまうが、普段の洗濯を毎回つけ置き洗いするわけではなので、押し入れの奥から出てきたお気に入りの服をクリーニングしたと思えば安いものだろう。
また「洗ったのに何だかにおう」というタオルに困っているヒトには、ニオイスッキリコースというモードが追加された。これはつけ置きの温水ヒーターの機能+2倍の洗剤+2回の洗浄で、ニオイの元となる菌を徹底的に死滅させるというものだ。結果タオルに付着している菌をシャーレ(ペトリ皿)で培養すると、こんなに違いが出る。
さらに近年、布団についたダニを吸い取る掃除機が流行っているが、シーツや布団カバーの洗濯でもダニ退治をするモードが搭載された。このモードを利用すると、まず乾燥機能で65℃の熱風を当ててダニを死滅させる。ダニは50℃以上の熱を20〜30分当てると死滅するというデータに基づいたひと手間だ。
こうして死滅したダニは、洗濯することですべて洗い流せるという。アミ戸についた虫を剥がすのは一苦労。お風呂に侵入した虫にシャワーを当てても、スグ元気を取り戻す。でも殺虫剤で退治した虫なら、水を流せば排水口にハイさようなら! だ。
これを分かりやすい実験映像で見せてくれるのが、次のムービーだ。パナソニック提供だが、当日会場で同様の実験を見せてもらえた。
なかなか店頭では見られない性能実験を、この目で確かめられる面白い実験を見せてもらった。
コレが見たかった! 上部配置コンプレッサのパナソニック冷蔵庫!
パナソニックの冷蔵庫の特徴は、なんと言っても最上段に設けたコンプレッサ。おかげで野菜室や冷凍室が広々としている。
さて冷蔵室の最上段は、カレーやジャム、チョコレートなど細々したものが奥に入ってしまい、かなり年代モノの食品が発掘されるときがある。一方、最下段にある野菜室(冷凍室)は、買い置き野菜に加えて冷蔵庫から追い出された飲みモノや余ってしまった焼きそば1個など、あらゆるものがカオス化して満杯。
パナソニックは、それまで冷蔵庫の常識だった10kg近くあるコンプレッサ(冷凍機)ユニットを、最下段から最上段に移設。これにより最上段で秘宝が眠るデッドスペースを小さくし、かつ野菜室を大きくした画期的なアイディアだ。
が! 実際に店頭でそれを見てみようと思っても、最上段の奥なんてモノは脚立を持ってこなきゃ見られないので、なかなかそれを実感することはできなかった。多くの家電マニアのみなさんも、筆者と同じようにもどかしい思いをしたことだろう。
しかし、この会場にすごいモノを発見! なんと内部のコンプレッサが見えるカットモデルが展示されていた! スゲェ! これ、めっちゃ見たかったヤツ♪
まあコンプレッサの位置は、カタログにイラストで描いてあるんだけど、やっぱりカットモデルの説得力は段違い。単純にコンプレッサを上に置いただけでなく、小さいコンプレッサを左右の中央に配置してるのだ!
さらに驚かされるのは断熱材の薄さ。最近の冷蔵庫って、こんなに断熱材薄いのに高断熱なのだ。その素材が気になるのはもちろんだが、上部のコンプレッサから冷気をどう通して、温度管理しているのか? とさらに分解希望! と欲がでるモデルだ。
また各社が差別化を図るために日夜研究している、「チルド」だったり「真空」だったりする冷蔵室最下部。パナソニックのパーシャル室は、-1〜-3℃の完全に凍るちょい手前の微冷凍で保存する。冷蔵よりも冷たく、冷凍のように細胞を壊さないので肉や魚をより長期間保存できるとして定番だ。
チルドは少し温度が高い0℃で保存。凍らないで、細胞がそのままで保存でき食感が変わらないという触れ込みだ。とはいえ各社切磋琢磨しているので、なかなか違いを見ることは難しいが、パナソニックはこんな比較実験をしていた。
野菜室もここ数年で大きく機能が進化している。特に葉物野菜は適度な水分を持たせることで長持ちするようになっている。が、やはりこれも各メーカー切磋琢磨している野菜室なので、メーカーの違いを見出すのはなかなか難しいが、これも比較実験。
土日で1週間分の食材をまとめ買いするという、現在のライフスタイルに合わせた冷蔵庫と言っていいだろう。まあ、ウチも毎週日曜日は、スーパーまで車運転させられますからね〜(笑)。
丸いパナソニックがとんがりパナソニックに!
これまで何を作っても平均点。買って損はしないが、惚れ込むほどの機能はなかったパナソニックだが、ここ数年で大きく変貌を遂げている。それどころか、アチコチ尖りだして、そのさまはまさに「頭角を現す」といった感じだ。
おそらくエンジニアひとりひとりがハングリーに、製品に関わるスタッフ全員がナショナルカンパニーではなく、世界のパナソニックとして、知恵と技術とアイディアを出し合って製品を開発しているのがよく分かる。
それは製品にも顕著に現れており、「そうきたか!」「なるほど!」と唸らせる製品を全世界のすべてのヒトに届ける、波のようにジワジワと確実に、ときに大きく小さくなりながら製品を届けている。おそらく今のパナソニックは、いい波長が重なりあって、一躍進化している時代にある。