家電トレンドチェッカー

2016年の最新冷蔵庫は食材を長期保存して“フードロス”問題の解決に着目!

 先進国、とくに日本は食料の廃棄量(率)が高いという。食品のロスは環境に悪いのはもちろん、家計にも響く。また、共働き世帯が急増しているという背景からも、買いだめした食材や作りおきした食材を、長期間保存したいというユーザーの声は多い。2016年の最新冷蔵庫は、こうしたニーズに応えるモデルがトレンドとなっている。

2016年、各社が展開する冷蔵庫は長期保存がポイントとなった

 シャープの新製品発表会では、「日本は世界有数の食品廃棄大国で、フードロス問題が顕在化しています。現在、家庭から捨てられる食品廃棄物は年間約302万トンで、1人あたり約25kgにのぼります」とショッキングなコメントがあった。

 この問題は各メーカーの共通認識でもあるだろう。食材を無駄なく保存したいという、ユーザーからのニーズの高まりもあり、「長期保存」をテーマにした冷蔵庫が続々と登場している。

8月に行なわれたシャープの新製品発表会では「フードロス」問題に言及

 長期保存のために搭載されている機能は、各メーカーごとに特徴がある。冷凍室を大容量化し、保存容量そのものをアップさせたのを筆頭に、野菜や肉・魚などの生鮮食料品が鮮度を落とすメカニズムを究明。保存温度などに独自ノウハウを投入して、鮮度の劣化を防いでいる。

 鮮度を保つだけではなく、保存する食材の美味しさを高める機能も充実してきた。真空環境で食品の酸化を抑えて鮮度だけでなく栄養素も封じ込めたり、3色LEDの照射方法にノウハウを投入して野菜に含まれるビタミンCや糖量をアップしたりするなど、業界初の機能まで登場している。

 こういった機能を享受すれば、値段が安いときに野菜のまとめ買いをし、食品を廃棄する機会を減らしながら、美味しく新鮮な味を楽しむといったことが可能だ。ここからは、各メーカーの最新モデルをチェックしていこう。

シャープ「プラズマクラスター冷蔵庫」実勢価格:37万5,840円(容量551L)

 まとめ買いした食材を下ごしらえして冷凍保存するというトレンドがあるが、それに伴い冷凍室の容量も不足しがちになる。シャープのプラズマクラスター冷蔵庫は、大容量冷凍室「メガフリーザー」でその悩みに応える。ただ容量をアップさせただけではなく、通常冷凍よりもさらに低温で保存するモード「新鮮冷凍」を備えており、冷凍やけにつながる霜つきを抑えて食品の鮮度を維持する。

シャープ「プラズマクラスター冷蔵庫」

 また、野菜を雪の下に貯蔵して低温密閉状態を保つ、雪国の保存方法にヒントを得た「雪下シャキット野菜室」を採用。安定した低温制御(約3~5℃)で野菜の呼吸作用を抑制。そうすると、野菜が寒さから身を守ろうとしてでんぷんを糖に分解するため、甘味成分も約20%アップするという。保存することで美味しくなるのだ。

 551Lタイプ「SJ-GT55C」の本体サイズは、685×745×1,820mm(幅×奥行き×高さ)。各室の容量は、冷蔵室が279L、冷凍室が192L、野菜室が80L。

野菜室全体を冷気で包み込む「雪下シャキット野菜室」

パナソニック「パーシャル搭載冷蔵庫 WPVタイプ」実勢価格:46万2,240円(容量665L)

 パナソニックの「パーシャル搭載冷蔵庫 WPVタイプ」は、1週間のまとめ買いをおいしく保存することをコンセプトにしている。生鮮食品や作り置き食材を、チルドより低温の約-3℃で保存する「パーシャル室」を冷蔵室に搭載。

パナソニック「パーシャル搭載冷蔵庫 WPVタイプ」

 例えば、肉・魚がチルドで約4日間、冷蔵で約3日間鮮度を保つところ、パーシャルなら約7日間キープ。しかもパーシャルは解凍が不要なため、うまみが流出しにくいのもポイント。

 加えて、通常比約1.3倍の風量を出す「酸化ブロック冷却W」など、すばやく冷やす機能も搭載。スピーディーに冷やすことで食材の酸化をさらに抑え、傷みやすい常備菜(作り置き)も1週間おいしく保存するという。

 また、「Wシャキシャキ野菜室」は、湿度をコントロールすることで、乾燥と水腐れを防ぎ、野菜の鮮度を保つ。野菜室は買い物カゴ約4.2個分の容量があるうえ、奥まで出し入れしやすい「ワンダフルオープン」を採用している。

 665Lタイプ「NR-F672WPV」の本体サイズは、825×733×1,828mm(幅×奥行き×高さ)。各室の容量は、冷蔵室が339L、野菜室が140L、冷凍室が126L、新鮮凍結ルームが38L、製氷室が22L。

チルドとの切り替えができる「パーシャル室」。約-3℃の微凍結状態で作り置きのおかずも美味しく保存する

日立「R-XG6700G」実勢価格:38万3,108円(容量670L)

 食品を酸化から守るために真空パックがあるように、酸素は鮮度の大敵。そこで日立の「XGシリーズ」は、独自の真空構造「真空チルドルーム」を設計。約0.8気圧(大気は約1気圧)の真空環境で食品の酸化を抑え、鮮度だけでなく栄養素も閉じ込めるという。

日立「XGシリーズ」

 また「新鮮スリープ保存」では、プラチナ触媒の働きで炭酸ガスを生成。生鮮品表面の水分に溶け込んで弱酸性化し、酵素活動を抑えて鮮度低下を防ぐため、肉や魚などの匂い成分の分解にも効果があるという。

 さらに「デリシャス冷凍」を採用。冷凍室に備えられた大型アルミトレイが、食品の熱を素早く奪って凍らせて氷結晶の成長を抑制。食品の細胞を壊さないようにして、食感や風味を保ち美味しく保存する。また、強化処理ガラスの美しいクリスタルドアを採用する。

 670Lタイプ「R-XG6700G」の本体サイズは、825×728×1,818mm(幅×奥行き×高さ)。各室の容量は、冷蔵室(真空チルドルーム)が354L(16L)、冷凍室が191L、野菜室が125L。

「デリシャス冷凍」で保存した牛肉(右)。旨み成分であるドリップが流出していない

三菱電機「WXシリーズ」実勢価格:44万1,180円(容量700L)

 三菱電機「WXシリーズ」に採用されている、「朝どれ野菜室」は、朝収穫したばかりように、みずみずしく野菜を新鮮に保ち、栄養素を増やす野菜室。赤、緑、青の3色のLEDを使い、照射する色の組み合わせや時間帯を制御することで、野菜に含まれるビタミンCや糖量をアップ。この業界初の機能で、まとめ買いした野菜を最後まで美味しく消費できるようにしている。

三菱電機「WXシリーズ」

 また、氷点下なのに凍らせない過冷却現象を利用した「氷点下ストッカーD」は、生のまま食材をストックできるので、調理を楽にし、料理を美味しくしてくれる。いっぽう、約-7℃で凍らせる瞬冷凍室では「切れちゃう瞬冷凍」が可能。食材を解凍することなく手早く調理できるようにしているのだ。

 700Lタイプ「MR-WX70A」の本体サイズは、800×738×1,821mm(幅×奥行き×高さ)。各室の容量は、冷蔵室が378L、野菜室が134L、製氷室が25L、瞬冷凍室が45L、冷凍室が118L。

3色のLEDで野菜に含まれる栄養素などをアップ

東芝ライフスタイル「VEGETA(ベジータ)」実勢価格:22万3,635円(容量410L)

 野菜や果物は、収穫後も成熟ホルモンであるエチレンガス等を放出している。このガスが野菜の呼吸を促し、葉緑素を分解させることで萎れや黄変、さらにカビの発生や腐敗を促進する原因となる。そこで東芝ライフスタイルの「VEGETA(ベジータ)」は、庫内冷気を除菌・脱臭する可視光応答型光触媒である「ルネキャット」を搭載。従来比で約1.3倍のエチレンガス分解性能で、野菜の保存環境を向上させている。

東芝ライフスタイル「ベジータ」

 加えて、冷却器の除霜時に発生する水分を利用した高湿度の冷気で、野菜室・冷蔵室・チルドルームを加湿する「うるおい制御」で野菜や食材の鮮度を保つ。また、従来の約1.6倍明るいフロントブライト照明や、手で軽く触れると自動でドアが開くタッチオープンも搭載している。

 410Lタイプ「GR-K41GXV」の本体サイズは、600×692×1,833mm(幅×奥行き×高さ)。各室の容量は、冷蔵室が214L、野菜室が92L、製氷室が14L、冷凍室が90L。

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