ぼくらの自由研究室

ソーラーパネルを掃除するロボット掃除機、甘いレタスを栽培する植物工場など、農業がスゴすぎる件

このコーナーを始めるにあたって、日ごろは縁のない展示会にでも足を運んでみよう! と検索していたところ、「植物工場・スマートアグリ展2017」という展示会が6月7日(水)~9日(金)まで開催されていたので、さっそく社会科見学的な感じで行ってきました。

ニュースなどを目にする機会が増えていると思いますが、農林水産省のページを見ると、「植物工場」とは、施設内で植物の生育環境(光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、養分、水分等)を制御して栽培を行う施設園芸のうち、環境及び生育のモニタリングを基礎として、高度な環境制御と生育予測を行うことにより、野菜等の植物の周年・計画生産が可能な栽培施設のこと。

そして、「スマートアグリ」とは、ICT化した農業のこと。2000年には約61億人だった世界人口は、現在では約74億人まで増加し、2050年には約96億人になる見通しとなっています。人口が増え続ければ、食料需要も増えます。また、日本に限ったことではないですが、世界でも異常気象が多発していますし、そうすれば食料生産も落ちてきます。ということで、「植物工場」や「スマートアグリ」への期待が高まっているわけです。日本でも電機メーカー大手をはじめ、さまざまな企業が市場に参入していますね。

すごい甘い野菜が誕生する!?

そんな基本的なことしか知らないわけですが、せっかくの機会なので、いざ東京ビッグサイトへ。初めて目にするブースが並ぶ中、いつもの見慣れたロゴを発見して、なぜかホッとひと安心! まずはパナソニックのブースへ。

パナソニックのブース

家電事業で培った照明や空調、ネットワークや省エネなど、すべてのノウハウを社内で保有し、植物工場に導入するパナソニック。植物工場は運営コストによる赤字も多く、「高効率」「簡単栽培」「低コスト」で黒字化できるソリューション提案をしていました。

プラント内で栽培されているレタスは、パッと見た感じでも肉厚な感じがします。蛍光灯の熱を浴びるよりは、LEDのほうが断然おいしい野菜が育つそうです。また、赤青LEDを交互に浴びせることで成長も早まり、出荷の短縮にもつながるとのこと。無農薬栽培で衛生管理も徹底されているため、野菜は洗わなくても食べることができ、しかも糖度8のレタスの試作に成功しているそう。ちなみに糖度8は、イチゴ並みの甘さだとか。イチゴの甘さ!? 食べてみたいっ!! そんなレタスを低価格で販売できるようになったら、野菜嫌いの子どもがいなくなりますね。

栽培された野菜。肉厚な葉となっています

また、スリムなパーテーション型プランターを展示していたのがアルミスという企業。こちらはホテルやレストランで新鮮野菜を飾って、食欲を誘ったり、サラダバーの演出などに使用できるアイテムとのこと。我が家には置けるスペースもありませんが、自宅での使用も可能です。

レストランなどに導入されるパーテーション型プランター

こちらの野菜も無農薬栽培なので、サッと水洗いで食べることができます。さまざまな野菜を簡単に栽培できるのも特徴となっています。また、ほかにも収穫後の配送などを楽にしてくれる「電動三輪車」や「電動式手押し車」なども展示されていました。クルマ、自転車、手押し車も電気の時代なんですね。ちなみに電動式手押し車は「電動猫吉」という製品名で、楽天市場で138,000円(税込)で購入できます。

電動三輪車「KAITO」
電動式手押し車「電動猫吉」

ベルギーの植物工場に太陽光パネル用ロボット掃除機まで!

そして、日本だけでなくベルギーのアーバン・クロップ・ソリューションという企業がブースを出展していました。世界では農業に適した土地の8割がすでに使用されていることもあり、限られたスペースを有効に使うために、LED照明を重ねて栽培面積を立体的に倍増させて、収穫率とコストの効率を高めているのが特徴です。実際の製品は展示されていませんでしたが、巨大な植物工場内のVRデモを体験。高所恐怖症の人はちょっと無理……な高さの工場でした。

植物工場内の動画その1
植物工場内の動画その2

この植物工場では180種類以上の野菜が栽培でき、その中に無い種類の相談も可能とのこと。しかも、オプションで種まきや苗の移植、収穫、パッケージングなども自動化できるそうです。すごい! 植物工場のことはよくわからないけど、たぶんすごい! そして、駐在員の方の日本語がとても堪能で驚きました!

太陽光パネル用ロボット掃除機「リソラ」

最後にご紹介するのは、「ルンバ」のような太陽光パネル用ロボット掃除機「リソラ」。ロボット掃除機は、ついに太陽光パネルまで掃除を始めたんですね。すごい! スマホやタブレットを操作して埃や水垢、花粉などの汚れを掃除し、太陽光パネルをキレイにして、低下した発電効率を改善してくれるとのこと。操作も簡単なので、注意するのは、人間が本体をパネルまで運ぶときくらいでしょうか。なにせ価格は1,480,000円(税別)ですから。ちなみに、基本的には法人向けの製品となっていますが、販売代理店によっては個人への販売が可能なケースもあるそうです。

製品の特徴は以下のとおり。

・洗浄水タンクを搭載し、洗浄水を散水しながら、回転ブラシとワイパーで毎時100㎡を清掃
・各種センサーが位置検出や補正を行い、軌道なしでも確実に自立走行
・パネル角度は5~20度、段差走行は±10cmまで対応
・着脱式バッテリーで5時間駆動し、交換時間は3分以内
・バッテリー切れ、水切れ時にはパネル最下点で待機。交換後に元の位置に戻り掃除再開

「リソラ」のデモ動画

もう「経験」と「勘」はいらなくなる!?

農家の方の高齢化、後継者不足、異常気象、TPP、人口増加……etc。農業を取り巻く環境は厳しく、こうして農業がICTで進化すると、「経験」と「勘」に頼らず、安定生産・安定供給が可能になるのだとは思います。でも個人的には、自然と対峙してきた農家の方の「経験」と「勘」は、いつまでも大切な存在であってほしいと感じます。

あらゆる面でICT/IoT化すれば、農業のネガティブなイメージも払拭されて、農業を始める人も増えるかもしれません。でも、それでも予期せぬことが起こったら……? そのときに「経験」と「勘」で動ける熟練者がいなかったら……? なんてことも考えてしまいます。

AIやドローン、自動操縦など、技術の進化は目まぐるしく、「消える職業」「なくなる仕事」「生き残る職業」なども話題になります。日経ビジネスの記者がAIに勝負を挑んだ記事もありましたが、農業に限らず、どんな職業でも「経験」と「勘」は絶対に大事! なんて自分に言い聞かせる展示会でした。

「経験」と「勘」で仕事がうまくいったら、最高に気分がいいですよね……?

清水英行