長期レビュー

パナソニック「NA-FR70S2」

~夜でも雨でもいつでも洗濯/乾燥、頼れるパートナー
by 正藤 慶一

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)




パナソニックの縦型洗濯乾燥機「NA-FR70S2」。最終回は乾燥機能に注目する
 長期レビューとして連載してきた、パナソニックの縦型洗濯乾燥機「NA-FR70S2」。初回は静かな運転音、2回目はさまざまな衣類も洗える洗濯モードを紹介した。最終回となる今回は、最後のピースである「乾燥」機能を見ていきたい。
 

省エネ性能はドラム式と比べて圧倒的に不利。“普段は洗濯だけ”という人向け

 NA-FR70S2の乾燥機能を見ていく前に、ひとつ言っておきたいことがある。それは、縦型洗濯乾燥機はドラム式洗濯乾燥機と比べて、省エネ性能において明らかに劣っているという点だ。


【NA-FR70S2とななめドラム式の選択~乾燥スペック比較】
洗濯乾燥機のタイプ縦型ななめドラム式
2009年モデル
ななめドラム式
2006年モデル
メーカーパナソニック
品番NA-FR70S2NA-VR5600LNA-VR1100
実売価格(ヨドバシドットコム 10/1)119,800円298,000円生産終了
洗濯~乾燥運転時間約2時間50分約2時間28分約2時間25分
消費電力量2,150Wh860Wh1,450Wh
電気代の目安(1回)47.3円18.92円31.9円
年間の電気代の目安
(週3回使用で換算)
7,378円2,951円4,976円
使用水量119L56L63L


 まずは電気代。ドラム式洗濯乾燥機は、縦型の洗濯乾燥機と比べて極端に乾燥時の消費電力量が少ない。例えば、同じパナソニックのドラム式洗濯機の最新モデル「NA-VR5600L」は、洗濯~乾燥で消費電力量が860Wh。その一方で、このNA-FR70S2は2,150Whと、倍以上の差がついている。さらにいえば、NA-VR5600Lの方が洗濯~乾燥が20分ほど早い。3年前のドラム式洗濯乾燥機「NA-VR1100」でも、洗濯~乾燥の消費電力量は1,450Whだったのだから、縦型とドラム式の省エネ性能の差は歴然としている。

 ここまで数値が違う理由には、「ヒーター式」「ヒートポンプ式」という乾燥運転の構造の違いがある。ヒーター式は、ヒーターで暖めた空気を衣類に吹き付けて乾燥するというもので、NA-FR70S2もヒーターを使用している。一方、ヒートポンプ式はエアコンのような機構をしており、ヒーターを使わなくともより少ない電力で温風を送り乾燥できる。このヒートポンプ式はドラム式で多く採用されており、パナソニック製のドラム式には全機種がヒートポンプ式となっている。

 また、ドラム式は衣類が乾きやすい構造になっていることもある。ドラム式はドラムを回転し衣類を持ち上げるため、衣類全体に風を当たる。一方で縦型は横方向の動きが中心のため、衣類が持ち上がりにくく、風が当たりにくい。そのため、縦型はより強い温度で衣類を熱したり、運転時間も長くなるため、その分電気代もかかってしまう。


やっぱり省エネ性能はドラム式洗濯機の方が高い(写真左はパナソニック「NA-VR5600L」、右が「NA-VR3600L」)
 次に、使用水量の違いだ。NA-FR70S2は、洗濯運転時は98Lの水を使用するが、洗濯~乾燥ではさらに多い119Lの水を使用する。“乾燥”とはいいつつも、しっかりと水を使用しているのだ。これは「水冷除湿式」という乾燥方式を採用しているため。NA-FR70S2では、乾いた温風を洗濯物に当てて乾燥させるが、その後温風は湿気を伴ってしまう。それを水で冷やし、気を水分として回収することで、再び乾いた温風で効率良く乾かすというもの。湿気や温風が洗濯物の外に出ないため、室内で使っても大丈夫、というメリットがある。


 しかし、NA-VR5600Lの洗濯乾燥の使用水量は、これまた半分以下となる56L。NA-VR5600Lでは「ヒートポンプ」により湿気が回収できるため、水を使わずとも乾いた風で乾燥できるのだ。

 というわけで、毎回洗濯~乾燥まで通して使いたい、という人は、ドラム式を選んだ方が良いということになる。悲しいかな、これが縦型洗濯乾燥機の現実である。

 しかし、逆に考えれば、「普段は洗濯だけで良い」「雨が降ったときだけ使えればよい」など、乾燥機能をたまにしか使わないという人には、縦型も十分だろう。何しろ、NA-VR5600Lの実売価格は、NA-FR70S2の倍以上。全体的に高価な傾向にあるドラム式と比べて、縦型の洗濯乾燥機は購入しやすい。というわけで、乾燥機能はたまに使えれば良いという人には、縦型の方が都合が良いことになる。

 なお、“縦型の方がドラム式よりもシワが多い”というのも良く聞く話だが、それについては実際に乾燥した衣類を見て判断したい。


生乾きはなくホッカホカ、厚手のものほどシワが少なめ


洗乾切替ボタンを押して、洗濯~乾燥に切り替える。乾燥のみの運転も可能
 前置きが長くなったが、いよいよNA-FR70S2の乾燥機能を見てみよう。操作は「洗乾切替」ボタンを押して、表示を「洗濯~乾燥」(乾燥のみの場合は「乾燥」)に合わせればスタートだ。

 今回の洗濯~乾燥で使用したのは、Yシャツ3枚、Tシャツ4枚、バスタオル1枚。あとは靴下や下着など小物類だ。容量は何kgかは量っていないが、説明書にあった「洗濯槽のステンレス部分の上端を超えない程度」という条件をクリアしているため、おそらく大丈夫だろう。スタートボタンを押すと、運転時間はスペック表よりも30分短い2時間20分と表示された。

 しばらくゲームをしてヒマをつぶしていると、あっというまに2時間20分をオーバーしていた。槽内から取り出した衣類はホッカホカに温かい。手で持てないというほど熱すぎるというわけではなく、むしろ天日干ししたかのようなフワフワ感がある。衣類乾燥後は、衣類のふんわり感を保つため、5分に1回、自動的にパルセータを回転する「ふんわりキープ」のおかげかもしれない。

量が少なめだったせいか、洗濯~乾燥の運転時間はスペック値の約2時間50分よりも30分短い2時間20分と表示された洗濯物の量が多いと、スペック値を超える「3時間」と表示された洗濯終了後にフタを空けると、ヒーターによる熱気がムワッと伝わってくる。ただし、水冷除湿方式を採用しているため、運転中に乾燥時の熱は排出されない

 取り出した衣類を見てみると、すべての衣類が問題なく乾燥できていた。まずは第一関門はクリアである。

 次の関門はシワ。全体的にシワはどうしてもできてしまうが、生地の厚さによって仕上がりに差がある模様。厚手の生地のものがシワが少なく、逆に薄手のものでシワが多く発生する傾向にあるようだ。特に、袖において差が出ているように見える。生地が薄いと、シワを延ばす間もなく早く乾きすぎてしまうのかもしれない。

 Tシャツや柄が派手なものはシワがさほど目立たないため、このまま着ても特に問題のない仕上がりだった。Yシャツだと、厚手のものならそのままでも着られるレベルにある。ビシっと仕上げたいなら、この後にアイロンがけをすれば大丈夫だ。

GAPで買った綿100%のシャツを洗濯~乾燥。シワが強く付いてしまい、このまま着るのは辛い綿とポリエステルが半々の柄シャツ。生地は割と厚め。シワはできているものの、かなり派手なガラのおかげでごまかせている。これなら着ても問題ないだろう綿100%のTシャツ。下の方にシワが寄り気味だが、この程度なら問題ないだろう

綿100%の薄手のシャツ。袖が完全にヨレてしまっている。これでは辛い綿100%のYシャツ。生地はやや厚め。ふんわりと仕上がっており、シワもそこまでひどくはない。着られるレベルには十分にある綿とポリエステルが半々のYシャツ。左のシャツよりも生地が薄め。袖と胸部分にかなりしっかりとシワが入ってしまっている。

 下着類はまったく問題なしの完璧な乾き具合。バスタオルもフカフカに仕上がったが、使用開始直後は何やら独特のニオイが付いていたのが気になった。何とも表現しづらいが、熱風が吹き付けられたニオイ……とでも言おうか。ただし、使用するとともにニオイは少なくなっていたので、今は気にならなくなった。なお、乾燥機では「衣類が縮む」という話も良く聞くが、これも現在のところまったく問題ない。

靴下など下着類はまったく問題なし。縮むなどの話も聞くが、現在のところそのような兆候はないバスタオルはふんわりとした仕上がり。使用当初はヒーターで乾燥することによるニオイが感じられたが、徐々に薄くなっている

 ここで、同僚が所有するドラム式洗濯機「ビッグドラム」で、いくつかの衣類を洗濯~乾燥してもらった。比べると、全体的には袖の絡みが抑えられている印象があったが、一方でシワが多いものもあり、仕上がりに決定的な差は見られなかった。もちろん、電気代や水道代は当然ながらドラム式の方が安いため、総合的に見ればやはりドラム式の方が有利なのは間違いない。だが、ドラム式よりも安い縦型で、しかも仕上がりに差がそれほどないのであれば、NA-FR70S2は十分な乾燥機能を備えていると判断して良いのではないだろうか。

同僚が所有するドラム式洗濯乾燥機「ビッグドラム」で洗濯~乾燥運転をしてもらった。袖のシワがやや抑えられている気もするが、一部でNA-FR70S2よりもシワシワのものがあったりと、見た目では決定的な差は見られなかった。やはり省エネ性能の差がもっとも大きいのだろう

 なお説明書によれば、「おうちクリーニングモード」で洗ったコートも乾燥できるとのことだったが、試してみたとこシワが多く、ビシッと仕上がらなかった。これは普通に干した方が良さそうだ。


夜でも雨でも大丈夫、いつだって使える便利なパートナー

 さて、今回3回に渡ってNA-FR70S2の機能を見てきたが、やはり一番感動したのは静音性だ。私はベランダで使用しているのだが、室内にはほとんどと言って良いほど運転音が聞こえてこない。近所迷惑になっていないかと、屋外から運転中の様子を見たが、運転しているのかしていないのかがまったく分からなかった。室内置きでも何ら問題はないだろう。

 細かいことを言えば、水を注ぐ/排水する際にジャバジャバとした音がする点、または乾燥中の運転音がもう少し静かになれば本当に文句の付けようがない。

ベランダで「NA-FR70S2」が運転しているところを、道ばたから撮影(2階)。動いているのかどうか分からないほど静か。水を注ぐ/排水する際の音(動画後半)が抑えられればもっとよかったが

 以前は夜中遅くに洗濯するのを控えていたが、今では夜中に帰宅しても、まったく気兼ねなく洗濯できてしまっている。たとえ雨が降っていても、乾燥機能があるのでまったく問題ない。おかげで洗濯物を無理にため込むこともなくなった。それだけでも、生活がラクに感じられた。まるで暮らしに新たな力強いパートナーが加わったかのようだ。本当に購入してよかったと思っている。

普通に洗濯するだけでも静音なので、夜でも使いやすい雨の日は乾燥運転。いつだって洗濯可能できる頼れるヤツだ


 私のように夜中に帰宅することが多く洗濯ができない、運転音が大きくて困っているという人には、本製品はきっと役に立ってくれるはず。暮らしの頼れるパートナーとして、長く活躍してくれそうだ。 



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2009年10月2日 00:00