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第1回:ドラム式洗濯乾燥機



 家電製品のパンフレットや量販店の店頭では、各社ともさまざまなキーワードを駆使して、その製品の良さをアピールしています。しかし、その中には一度聞いただけでは分かりにくい言葉も多く、そのすべてを理解するのは簡単ではありません。そこで家電Watchでは、家電業界のキーワードを解説する連載「現代家電の基礎用語」をスタートします。家電製品に対する理解を深めることで、ぜひ製品購入時の参考として役立てていただきたいと思います。(編集部)





縦型よりも少ない水量で洗濯可能

日立のドラム式洗濯機「風アイロン ビッグドラム BD-V2000」
 水平方向の回転軸を持つ「ドラム」という洗濯槽を利用した洗濯乾燥機のことです。日本では長らく縦型の洗濯槽を持つ洗濯機が主流でしたが、近年ドラム式洗濯機の普及が進んでおり、徐々に主流となりつつあります。

 縦型の洗濯機では、洗濯槽の底に取り付けられているパルセータと呼ばれる羽根を回転させ、それによって発生する水流で洗濯物を攪拌し洗濯を行ないます(噴流式)。それに対しドラム式洗濯機では、洗濯槽が垂直方向に回転し、洗濯物を上に持ち上げて下にたたき落とすことで洗濯します。洗濯機の中で「叩き洗い」が行なわれていると考えるとわかりやすいでしょう。

 特徴としては、縦型洗濯機に比べて洗濯時に使用する水が少量ですむという点があります。縦型洗濯機では、洗濯物全てにしっかり浸るだけの水を張って洗濯しなければなりませんが、ドラム式洗濯機では、ドラム内で洗濯物を回転する「叩き洗い」効果があるため、最低限の水だけで洗濯が行なえます。現在市販されている製品では、例えば洗濯容量9kgの場合、縦型の全自動洗濯機では1回の洗濯で約140Lほどの水が使われますが、ドラム式洗濯機では約80L前後で済みます(乾燥時の消費水量は含まず)。このほかにも、糸くずが出にくい、洗濯物が傷みにくい、シワがよりにくいという特徴もあります。

 ただし、使用水量が少ないこともあり、洗浄力は縦型よりもやや落ちます。そのため、中には縦型よりも洗濯時間が長い機種もあります。さらに、構造上どうしてもサイズが大きくなってしまうために、物理的に設置できないケースも多いようです。ドラム式洗濯機を購入する場合には、あらかじめ洗濯時間が問題ないかをチェックし、搬入・設置できるかをしっかり確認する必要があります。

 一方、乾燥機能については、ドラム式洗濯機のほうが垂直方向に洗濯物を攪拌するため乾きやすく、縦型よりも断然優位です。ただし一部製品では、本体の冷却・除湿のために水を消費するものもあります。洗濯時だけでなく、洗濯~乾燥時の使用水量もチェックするのが望ましいでしょう。


本体内に水平の回転軸を持つ洗濯槽「ドラム」を回転して洗濯物を洗う(写真はBD-V2000に搭載されている、直径60cmのドラム「ビッグドラム」) たたき洗い効果を高めるため、ドラムには窪みが設けられている(写真はナショナル「NA-VR1100」のドラム)

「ななめドラム式」の登場で普及が進む

洗濯物が取り出しやすい“ななめドラム”をはじめて採用したナショナル「NA-V80」
 欧米ではドラム式洗濯機が主流でしたが、日本ではあまり普及しませんでした。その理由は、前述の通り日本ではもともと縦型が主流で、改めてドラム式を導入するとなると置き場所に困るといったこともありますが、これ以外に、洗濯物の出し入れ時にかがむ必要があり腰に負担がかかるといったこともありました。しかし2003年、松下電器産業がドラムの回転軸をやや斜め上方に傾けた「ななめドラム式」を採用したドラム式洗濯乾燥機「NA-V80」を投入。これにより、洗濯物の出し入れが楽に行えるようになりました。以降、節水効果が高いといった利点も注目されるようになり、日本でも徐々にドラム式洗濯機の普及し始めています。

 ななめドラム式洗濯機も登場当初は、ドラムの回転軸を傾けすぎたことで洗濯物がドラムに引っかかり、しっかり洗浄できないという意見もありました。現在では、ドラムの傾き角度を改善するとともに、ドラムを複雑に回転させて洗浄効果を高めるといった仕組みも取り入れられており、洗浄力の問題は解決されつつあります。

 このほか、水を使わずにオゾンを利用して除菌・脱臭を行なう機能や、エアコンのように熱交換機を搭載することで、乾燥時に水を消費しない製品が登場するなど、高機能化も進んでいます。

 日本では長らく縦型洗濯機が主流だったこともあって、洗浄力や洗濯にかかる時間という点ではまだ縦型洗濯機のほうが優位にありますが、ドラム式洗濯機も研究が進み、その差もかなり少なくなってきています。洗濯から乾燥まで一度に済ませたい、というのであれば、ドラム式洗濯機を選ばれると良いでしょう。


【動画】ナショナルの最新モデル「NA-VR2200L」では、ドラムを回転せずに左右に揺らすもみ洗いを取り入れた「ダンシング洗浄」が特徴(WMV形式, 399KB) 三洋電機「AQUA(アクア)」は、ブーツなど洗いにくいものを空気中のオゾンの力で除菌・脱臭する機能が特徴(写真は最新モデルの「AWD-AQ3000」) 東芝「TW-3000VE」などの機種では、本体内に熱交換器を搭載し、本体の冷却・除湿時に消費される水をカットする



【ドラム式洗濯乾燥機】の、ここだけは押さえたいポイント

・縦型洗濯機に比べて洗濯時の水量が節約できる
・ドラム内で衣類を攪拌するため、乾燥効果は高い
・洗濯時間がやや長めの製品も
・サイズが大きいので、あらかじめ設置スペースを確認する必要がある

2008年5月14日 初版





URL
  洗濯機 関連記事リンク集
  http://kaden.watch.impress.co.jp/static/link/washer.htm
  現代家電の基礎用語 バックナンバー
  http://kaden.watch.impress.co.jp/cda/word_backnumber/


2008/05/14 00:10
平澤 寿康
1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。

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