長期レビュー
パナソニック「NA-FR70S2」その2
パナソニックの「NA-FR70S2」。今回は洗濯機能を中心に注目 |
しかし、静かであっても、洗濯機である以上はしっかりと洗えていなければ意味がない。そこで第2回目では、洗濯機能に絞って見ていきたい。
●使用水量は98Lの節水仕様。でもちゃんと洗えるの?
このNA-FR70S2の洗濯機能を語るうえで欠かせないのが、使用水量の少なさだ。洗濯時に限ると、標準使用水量は98L(乾燥を含めると126L)。これは、私が今まで使っていた無印良品「M-AW70A」の123Lよりも25Lも少ない数値となる。縦型洗濯機の業界全体で見ても、8kgタイプのNA-FR80S2とともに、少ない部類に入る。使用水量を抑えられるのは、「エコウォッシュシステム」という独特の洗浄機能を備えているからだ。このエコウォッシュシステムとは、「循環ジェットシャワー」と「ダンシングかくはん」という2つの洗浄機能を合わせたもの。前者は、洗濯槽を回転させた遠心力により、洗濯槽内部の水や泡をかき上げ、槽の上から滝のように水を降らすというもの。高濃度の洗浄液を衣類全体にしっかり浸透する効果があるという。
また後者は、パルセーター(縦型洗濯機の洗濯槽の底にある、回転する羽根)を素早く反転することで、衣類を動かし、もみ洗い効果をプラスするというものだ。なるほど、洗濯中に槽内を透明の窓からのぞき込むと、水が滝のように注ぎ込まれる姿や、洗濯槽がクルックルッと力強く回転する姿が分かる。これらの機能により、98Lという少ない水での洗濯が可能になる、というわけだ。
洗濯運転中は、写真のように洗濯槽内に滝のように水が流れる。なお、写真は製品の内覧会で展示された特別モデル。実際の製品では、運転中にフタは開かない | 洗濯中に運転を中止し、洗濯槽の中を撮影。中には洗濯槽を溶かした泡が残っている |
運転中は、洗濯物がクルックルッと勢いよく回転している |
Yシャツに汚れを付着させ、どれだけ汚れが落ちるのかを実験してみた。汚れはケチャップ/めんつゆ/カレールー/お好み焼きソース |
この結果、めんつゆ、ケチャップ、お好み焼きソースの3つはキレイに取ることができた。いずれも水溶性で、比較的取りやすかったのだろう。「M-AW70A」で取れにくかったソース汚れがしっかりと落ちているのにはびっくりした。
ケチャップ、めんつゆ、お好み焼きソースの汚れは見事に落ちた。しかし、カレールーの黄色い跡は、残念ながら残ってしまった |
というわけで、結論としては音が静かでで節水でも、しっかりと汚れを落とすことはできた。しかし、カレーに関してはしょうがないところだろう。
●普通の洗濯機では洗えない衣類も洗える――「上質おうちクリーニング」に感動
「上質おうちクリーニング」は、「洗えない」「手洗い」のマークが付いている衣類でも洗えてしまう(写真は説明書より) |
ニットやセーターなどは、洗濯機でそのまま洗うのではなく、ネットに入れたりつけ置き洗い、または手洗いするのが通常。そうしないと、縮んだり伸びたりしてしまう。しかし、この「上質おうちクリーニング」では、パルセータを回転せずに、洗濯槽だけを回転することで、衣類にやさしい運転ができるというのだ。つまり、クリーニングに出さなくても、デリケートな衣類が洗えてしまうというわけだ。
使用できるのは、タグに「ドライ」のマークが付いているもの、あるいは「手洗い」のマークが付いているもの。セーターやにニット以外にも、学生服やジャケットなども洗えるとのことだ。一方で、芯地を使っているものは使用できない。このほか、革や絹、レーヨン素材のものも使えないなど、細かく規定されている。
さっそく試してみようと、ニットとジャケットを洗ってみることにする。冬が終わった時にクリーニングに出そうと思っていたが、忘れてそのままになっていたものだ。ちなみに、ジャケットには「手洗い」マークが付いている。
洗濯物を平らになるよう投入し、コースを「上質おうちクリーニング」に合わせ、スタートボタンを押して洗濯開始。なお、洗剤は必ず「アクロン(ライオン)」や「エマール(花王)」などの液体中性洗剤を使用する。一般的な洗濯用の液体洗剤である「アタックNeo(花王)」や「トップ クリアリキッド(ライオン)」などは「液体合成洗剤」となるので使用できない。
「上質おうちクリーニング」で洗えるのは、セーター、スラックスなど。ホームページでは、ジャケットも洗えるとあった |
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洗濯後、乾かしたニットとジャケットを見ると、見た目ではあまり洗濯前とは変わっていない。特に縮んだということはなさそうだ。その一方で、昨冬に着慣らしたニオイがしっかりと消えており、かすかに洗剤の良い香りが漂っている。どうやら問題なく洗濯できたようだ。ジャケットは洗濯機では洗えないため、クリーニングに出すのが面倒だが、これなら自宅でキレイにできる。この手軽さには、素直に感動してしまった。
なお、取扱説明書では、シワが気になる場合の対処法として、平干しにする、軽く叩くなどを紹介している。
縮みやすかったニットも問題なく洗えた。洗剤の香りがさわやか。シワもできていない | ジャケットも型崩れなく洗えた。シワが発生しやすいので、軽く叩くなどで伸ばしておきたい |
ところで、パナソニックのお客様相談センターに確認を取ったところ、ジャケットを洗う場合は、タグに「手洗い」マークが付いているものに限られるとのこと。それ以外のものは使用が保証されていないため、自己責任となってしまう点には注意したい。
ここではあえて、手洗いマークのないダウンジャケットとコートを同モードで洗ってみたが、両方とも縮みもなく問題なく洗えた。しかし、コートでは表面にシワが発生してしまい、あまりキレイには仕上がらなかった。シワがなくビシッと仕上げたい場合は、素直にクリーニングに出す方が良いだろう。
クリーニングに出すまでもないが、少しニオイや汚れが気になる……といった場合の対処法として使うのが賢いだろう。だんだんと寒くなり、セーターやジャケットなどを着る機会が多くなるこれから季節の季節にはピッタリの機能だ。
敢えて手洗いマークなしで、適用外のコートを洗ってみた。しかし、シワが多く、ビシッと仕上がらなかった | ダウンジャケットは問題なく洗えた。こちらも手洗いマークがないので、自己責任となる |
●洗剤のボトル要らず、詰め替え用がそのまま使える「洗剤自動投入」
もう1つ面白い機能があった。洗剤をあらかじめ本体内に入れておくだけで、自動的に洗剤を投入してくれる「液体洗剤自動投入」機能があったのだ。パナソニック(旧ナショナル時代も含む)の製品を使っている人には、従来からも搭載されて機種があるため馴染み深いかもしれない。
この機能、あらかじめ液体洗剤を入れておくだけで、自動的に洗濯物の量に従った洗剤を投入してくれる。つまり、洗剤の容器をイチイチ持ち出すこともなく、また洗剤の分量をいちいち量る必要もない。それだけのことだが、かなりラクだ。
ということは、最初からボトルタイプの洗剤を買わずに、詰め替え用の洗剤を買って本体内に溜めておけば良いことになる。つまり、節水に続いて、ここでもランニングコストを省けるというわけだ。最初から狙っていた機能ではないだけに、何かトクした気分だ。
ただし、使い始めの頃は、自動投入であることを忘れて、粉末の洗剤を入れてしまった。これまでの洗濯機の使い方が体に染み付いてしまっているようだ。自動投入はOFFにもできるので、従来のやり方が良い、という人でも大丈夫だ。
なお、自動投入される洗剤の量は、標準が20ml、多めで25ml、少なめで15mlとなる。そのため、最近登場した濃縮タイプの洗剤だと、投入量が多すぎることがある。濃縮洗剤を使用している方は注意していただきたい。
【お詫びと訂正】初出時に本機で使用できない液体中性洗剤の写真を誤って掲載しておりました。お詫びして訂正させていただきます。本機で自動投入に使用できる洗剤は、“液体の合成洗剤であり、液性がアルカリ性のもの”に限られております。中性洗剤は使用できませんのでご注意ください。
普通の大きさの詰め替えパックなら、余裕で全部入ってしまう |
音が静かで、かつ節水、しかも手軽なクリーニング機能や洗剤の自動投入機能まである。洗濯機能については、全体的に非常に満足している。特に、「上質おうちクリーニング」は、洗いにくいジャケットが簡単かつ無事に洗えたので、ちょっとした感動を覚えてしまった。
最終回となる次回は、乾燥機能を紹介して、本稿を締めくくりたい。
2009年9月18日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)