トピック

「外とつながる」パナ補聴器 LE Audio対応で駅や施設の案内もクリアに

パナソニック 耳かけ型補聴器「R5シリーズ」

10月26日にパナソニック補聴器から発売された耳かけ型補聴器「R5シリーズ」は、実に6年ぶりの最新モデル。機能や電池の持ちといったところがアップデートされたそうだが、具体的にどのような点が変わったのか、取材してきた。

まず基本的な仕組みとして、補聴器はマイクから音を拾い、その入ってきた音が「雑音」か「会話」かを判断して、必要な「会話」の音だと判断した時に、音を大きくしてくれる。それをワイヤレスで実現し、鮮明にはっきりと音声を聞くことができる製品が昨今多くなっている。

2つの黒い穴がマイクになっており、ここから音を拾う

日本の補聴器普及率はわずか15.2%

装着すれば効果が分かりやすい補聴器だが、日本補聴器工業会の調査によると、日本国内の補聴器の普及率は15.2%。補聴器を使用しない理由として「恥ずかしい」「形やデザインがよくない」などの声が挙がっているという。

パナソニック R5シリーズはメカニカルで金属的な印象を払拭する、先進性とやさしさを兼ね備えた形を採用。豊富なカラーバリエーションを用意し、ファッションアイテムとしても楽しめるようにした。

見た目の良さだけでなく、スイッチやボタンを本体表面からなくして密閉構造にすることで、汗や水、ホコリに強く、故障しにくい高い耐久性も実現している。

初見で箸置きかな? と思った筆者。それくらいいい意味で補聴器に見えない
着用写真。肌なじみの良いカラーで目立ちにくく、眼鏡をかけていても邪魔にならない形状

前述したとおり日本の普及率が低い一方で、欧米諸国は4~5割と高い数値となっている。これは日本より海外のほうが補聴器に関する福祉制度が整っていることが理由と考えられ、日本では障害者手帳を持っている人や一部の自治体での取り組みによって補助金を受給できるケースがあるものの、欧米と比べたらやはりハードルは高いといえる。

LE Audioの普及で、駅や映画館などのアナウンスも直接クリアに

最近はワイヤレスでつながるBluetooth機能を搭載した補聴器自体は特段珍しくないものの、パナソニック R5シリーズの機能面での最大のポイントは、Bluetoothの新規格「LE Audio」に対応している点にある。

「LE Audio」は今後、劇場や電車などの公共施設での活用が期待される次世代音声規格で、将来的には駅のアナウンスや映画館の上映音声なども無線で受信し、周囲の雑音の影響を受けずに聞きたい音をよりクリアに聞くことができるという。現状、国内の施設ではまだ「LE Audio」に対応していないが、今後は対応した設備が増える見通しとのこと。

Wi-Fiのように「AURACAST」から聞きたい音声を選択して聞く

また最近の補聴器で可能になっているのが、スマートフォンやタブレット、テレビとも直接繋がり音声を聞けること。

パナソニック製品は、iOS 14以降を搭載したiPhone/iPad/iPod touch、Androidの「LE Audio」に準拠した機種をサポート。テレビは「LE Audio」対応のものであれば直接接続できるが、まだあまり対応している製品がないため、テレビアダプター(WH-R57、WH-R55には同梱。別売33,000円)を経由して接続する。

テレビアダプター

実際に補聴器を装着し、テレビアダプター経由でタブレットの映像を視聴してみると、確かにクリアな音が、直接耳の奥に入っていく感覚があった。画面とのタイムラグもなく、快適に視聴できると感じる。

自宅でテレビを観ている時に近くで家族が新聞をめくったり、映画館で隣の人がポップコーンを咀嚼している音を補聴器が拾ってしまって集中できないといった、これまで補聴器ユーザーが抱えていた悩みが解消されるであろう「LE Audio」の普及に、今後も期待が高まる。

そのほかR4シリーズと比較して動作時間が1.5倍になり、スマホアプリや音声通知で電池残量が確認できるなど、より使いやすい仕様にアップデートされている。

スマホアプリ画面。音量操作や紛失した補聴器を探すこともできる

厚生労働省が2015年に発表した「新オレンジプラン」の中で、認知症の危険因子の一つとして“難聴”が挙げられている。これは予防できる原因の中で最も影響力のあるものといわれており、早期ケアが認知症の予防に大切だという。

決して安くない補聴器だが、日常生活を支障なく、健康的に過ごせる“健康寿命”期間を延ばすためにも、聞こえづらさを抱える人には、早い段階で補聴器の導入を検討したほうが、より快適な生活を手に入れられそうだ。

松川 叶実