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お風呂とシャワーどっちがお得? 寒くなる前に知っておきたい光熱費の節約術

お風呂とシャワーはどちらがお得か? コロナとリンナイの2社に聞いてみました

夏はシャワーで済ませていた人も、涼しくなってくると湯船に浸かることが増えるのではないでしょうか。そこで気になるのが、昨今、値上げのニュースが多くなっている、光熱費です。浴槽にお湯を張るには、一般的に150〜200Lのお湯が必要。水道代はもちろん、ガスまたは電気代がかかりますよね。

「浴槽にお湯張りするのと、シャワーだけの場合に、どちらが光熱費の節約になるのか」や、「入浴中にお湯がぬるくなってきた時には、追い焚きすべきか差し湯をすべきか」など、気になっていたことも多いはずです。

そんな、誰にも聞けなかったお風呂にまつわる節約術を、給湯器メーカーの、コロナとリンナイの2社に聞いてみました。

お湯張りするよりも、基本はシャワーが安いけれど……

特に少人数世帯では、浴槽にお湯を張るよりも、シャワーで済ませた方が安いのではないか? と考える人が多いですよね。例えば一人暮らしの場合は、計算が単純なので、答えも簡単です。もしシャワーにかける時間が、目安として15分以内であれば、シャワーの方が安いです。

ただし、世帯人数が増えるほど……お風呂に入る人数が多くなるほど、どちらが安いとは断言しづらくなります。以下では、複数人世帯でのシャワーまたはお風呂のコストについて、検証していきます。

まず一般的な浴槽では、1回お湯はりするのに150〜200Lが必要になります。またリンナイによれば「シャワーのお湯を1分間に約12L、15分間流した場合、お湯の使用量は浴槽1杯分(180~200L)とほぼ同じになる」ということです。この条件は、資源エネルギー庁の発表によるもの。なお、実際のシャワー流量は使用水栓などにより異なります。

前述した、一人暮らしで「15分以内であれば、シャワーの方が安い」という回答は、以上の数値を参考にしたものです。もちろん、夏場にサッと汗を流して全身を洗い、5〜10分程度のシャワーで済ませるのなら、シャワーの方が断然安くなります。

ただし、冬場になると単に汗を流して泡を洗い流すだけでなく、体を温めたくなりますよね。そこで15分または20分以上と、シャワーを使う時間……つまり給湯時間が長くなれば、それだけガス代や水道代がかかり、お湯を張って入浴した方が安上がりということになります。

冬場は特に体をゆっくりと温められる入浴がおすすめです

ちなみに「15分間シャワー(180L)」のコストは、ガス代+水道代で約115円になります(関東地域の場合)。

ただしお風呂に浸かりつつ、体を洗う際にはシャワー(5分間で60L/1人)を使うと想定しましょう。すると1人分のコストの総計は約166円になります。

以上を基準として、世帯構成が3人になると、どれくらいのコストがかかり、シャワーのみとお湯を張るのと、どちらが安くなるかを計算したのが下の表になります。1人あたりのコストで考えると、当たり前ですが、15分間シャワーが最も安くなります。ただし、3人世帯で全員が15分間シャワーを浴びると、年間コストは約12万円にもなり、お湯を張った方が年間で約36,000円も安くなります。

入浴方法15分間シャワー(1人)お湯はり(200L)+5分間シャワー(60L/1人)15分間シャワー(3人)お湯はり(200L)+5分間シャワー(3人)
給湯量180L260L540L380L
1回のコスト約115円約166円約345円約244円
年間コスト約41,975円約60,590円約125,925円約89,060円

ざっくりと結果を記すと、「一人暮らしの場合はシャワーが安く」て「3人世帯であればお湯を張った方が安くなる」というもの。

本当に迷うのは、2人世帯もしくは4人以上の世帯です。上の計算式で2人世帯を計算すると、1回の給湯量が「15分間シャワー」の場合は360Lなのに対して、「お湯はり+5分間シャワー」では320Lです。お湯を張った方が安くなるのですが、その差はわずか。1分間に約12Lの水量だとすれば、3分強くらいの違いです。

一方で4人世帯以上になると、1度のお湯張りで、特に冬場には短時間で全員が入浴すれば、お湯を張った方が安くなります。ただし、足し湯したり追い焚きする必要が出てくる可能性が高くなるため、全員が5〜10分のシャワーを心がければ、そちらの方が安上がりになるかもしれません。

以上の通り、入浴するのとシャワーだけにするのとどちらが安いか? については、シャワーの時間や入浴人数によるという回答になります。

前日の残り湯を追い焚きして、2日連続入るのは本当にお得?

特に少人数世帯で、きちんと体を洗ってから入浴するメンバーばかりだと、残ったお湯をそのままにして、次の日も追い焚きして入浴すれば、安上がりなのでは? と考えるのも自然です。

しかし、コロナが4人世帯(給湯量1日約450L)で試算した「1日おきに前日の残り湯を、エコキュートで追い焚きして使用した場合」のコストは、水道料金は年間約12,100円の節約となるものの、電気料金は年間約16,900円の増加となり、全体でも年間約4,800円の増加となります。

またコロナの担当者は、電気でお湯を沸かすエコキュートの場合、浴槽の残り湯や水からの沸かし直しは、エネルギー効率が低下し消費電力量が増えるため、電気代が高くなる傾向があるとし、次のように続けます。

「特に冬期など残り湯が冷たい場合はエネルギー効率が低くなってしまうため、残り湯をすべて排水してから新たに『ふろ自動』で湯はりすることをおすすめいたします」

一方で、ガスを使用するリンナイの回答は、異なるものでした。

まずガス代については、例えば200Lのお湯張りまたは追い焚きをすると、そのガス代は、前者が約75円に対して後者が約78円。わずかではあるものの追い焚きよりも、お湯張りした方が安い。ただし追い焚きの場合は水道代の約52円(年間10,000円前後)を節約できるため、全体としては追い焚きの方が安くなります。

とはいえ、リンナイが指摘するように「一度入浴した残り湯を次の日まで放置すると細菌が増殖している場合がある」ことも知っておきましょう。

「今年は水不足です」などのニュースが流れると、残った水を流してしまうことに、罪悪感を抱いてしまうこともありますよね。そうした人は、洗濯時に残り湯を使用するなど、別の用途に活用した方がよさそうです(なお、すすぎの際は新しい水を使いましょう)。

光熱費を節約するには、給湯時間を短くし、沸かし直しを減らすこと!

とにかく「節約したい!」という人が心がけるべきことは、「給湯時間を短くし、沸かし直しを減らすこと」です。例えば「こまめにシャワーを止める」、「全員ができるだけ間隔を空けずに入り、保温時間を短くする、追い焚き回数を減らす」ことが節約に直結します。

また設定温度を下げることも効果的です。同じくリンナイの試算によれば、200Lのお湯を沸かす際のガス代は、40℃の場合が約75円で、42℃の場合は約83円となり、両者の差は年間にすると約2,920円になります。

設定温度を下げることも節約につながります

「給湯時間を短くする」方法の1つとして、お湯を温め直す際に、追い焚きするのではなく、高温の差し湯を入れた方が良いと、コロナの担当者は指摘します。

そのほかコロナのエコキュート利用時であれば、リモコンで「節水モード」を設定するのも有効。シャワーの流量を自動で抑えたり、お風呂の量を一定量減らすことで節約につなげるといいます。

一方で、リンナイの電気とガスを組み合わせたハイブリッド給湯器の場合は、給湯器が一週間のお湯の使い方を学習し、生活スタイルに合わせて最も効率が良くなるようにお湯を沸かすとのこと。そのため、いつも同じタイミングでお湯を使うと節約になるそうです。

「自動保温」よりも、都度「追い炊き」や「足し湯」をする方が節約に

浴室リモコンを見ると「追い焚き」と「足し湯(差し湯)」というボタンがありますが、前者が「浴槽のお湯を循環させて温め直すこと」で、後者は「浴槽にお湯を追加すること」です。

「追い焚き」は温め直し、「足し湯(差し湯)」はお湯を追加します

リンナイによれば、お湯が冷めた場合には「追い焚き」を使うのが基本だといいます。ただし一部の給湯器には「追い焚き」機能がないため、代わりに「高温さし湯」機能を使用します。

なお「自動保温機能」は、「追い焚き」と仕組みは同じで、浴槽内のお湯を循環させて温め直します。ただし「自動保温機能」の場合は、定期的に湯温を確認し、設定温度まで自動で追い焚きする機能。便利な反面、必ずしも「ぬるくなった」と感じていない時にも、湯温によって自動で追い焚きします。「自動保温機能」は、体感とは関係なく自動で作動するため、もし利便性よりも省エネ性を優先させるならば、「ちょっとぬるくなったな」と感じた時に、その都度、「追い焚き」か「高温さし湯」をする方が節約になります。

自動保温にしておくよりも、ぬるくなったタイミングで「追い焚き」か「高温さし湯」をする方がお得です

より節約につながる機能や新製品は?

コロナとリンナイに、節約につながる製品や機能を教えてほしいと質問しました。

コロナのエコキュートには「ソーラーモード」機能を搭載している機種があるといいます。こちらは太陽光発電を利用している家庭で、昼間に発電した電力でエコキュートのお湯を沸かす機能。発電した電気を自家消費できる点が節約ポイントです。

太陽光発電と連携する「ソーラーモード」を備えた、コロナの「エコキュートAY5」シリーズ

リンナイは、電気ヒートポンプ(エコキュート)とガスの2WAYでお湯を沸かせるハイブリッド給湯器「ECO ONE」シリーズを挙げてくれました。

基本は電気ヒートポンプを使ってお湯を沸かし、お湯はり時など、大量のお湯を必要とするときはガスも使うというもの。効率の良い電気ヒートポンプとパワフルなガスを組み合わせることで、無駄なくお湯を沸かします。

さらにソーラーパネルを設置している家であれば、晴れた日には昼間の余剰電力で、電気ヒートポンプによってお湯を沸かしておいてくれます。こちらも発電した電気を自家消費できるため、より節約になるのです。

なお、リンナイは同シリーズを使えば、従来のガス給湯器に比べて、ランニングコストを約50%削減できるとしています。

リンナイの「ECO ONE X5 PLUG-IN MODEL(エコワン・エックスファイブ・プラグインモデル)」

以上、お風呂にまつわる節約術でした。

節約の基本は「できるだけ給湯時間を減らすこと」が大事だと分かりました。この給湯時間を減らすためにどうすればいいのかを、状況ごとに考える、または対策を練れば、より節約できそうですね。

(イラスト:ツキシロクミ)

河原塚 英信