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東西おもしろ家電の巨塔、サンコーとライソンが初の対決!?

サンコー 執行役員 広報部長のえき晋介さん(右)と、ライソン 商品部 広報の三上紅美子さん(左)が直接対決!?

話題の家電製品を連発する「サンコー(THANKO)」と「ライソン(LITHON)」。製品がおもしろいだけでなく、東のサンコー(東京)、西のライソン(大阪)という地域性の違いもあるのだろうか、両社の広報戦略も実に独特だ。

そこで、「ekky」(エッキー)として多数テレビ出演しているサンコー 執行役員 広報部長のえき晋介さんと、ライソン 商品部 広報の三上紅美子さんの直接対決(対談)が実現。両社がメディアなどに接する“顔”である2人に「お互いをどう思っている」などのぶっちゃけた話をいろいろ聞いてみた。

さらに、両社がいま、イチ押しの家電も見せてもらったので、記事の最後で紹介したい(以下敬称略)。

お互いを意識しちゃう部分はある?

――これまで2人で直接お話ししたことは?

えき:このような形で1対1でお話しするのは初めてです。

三上:番組などでご一緒する機会は何度かありましたね。

――お互いに意識していたりするんでしょうか?

三上:めっちゃ意識してます。全部が大先輩なので。創業からの年数も、売上も、商品をリリースするスピードもそうですし、広報としてのekkyさんも全部。

ライソン 商品部 広報の三上紅美子さん

えき:僕はやっぱり商品が気になりますね。うちがやってこなかった、たとえば「たべっ子どうぶつ」や「ペヤング」などのコラボ商品は、うまいなと感心しています。

三上:ライソンは、クレーンゲーム景品の企画と販売をする会社(ピーナッツクラブ)の第二営業部が分社化した会社でして、そこでのお菓子や食品メーカーさんとの関係がコラボにつながっています。

えき:なるほど。家電メーカーとして分社化した理由は?

三上:その前から「わたあめメーカー」などの家電も作っていたのですが、ゲームセンターに卸す商品は法律で上代が定められていて(現在は1,000円)、家電量販店やホームセンターにも販路としてビジネスの可能性を見出したのが、もっとも大きな理由です。

――サンコーさんが、今のような家電メーカーになったターニングポイントは?

えき:元々はパソコンやスマホの関連商品を主に扱っていて、初めてコンセントタイプの商品として発売したのが、2015年末のハンガー型の乾燥機。輸入ではあったんですけど、それがそこそこ売れたので、2016年から家電を少しずつ増やしていきました。オリジナルの家電としては、2017年8月発売のシワを伸ばす乾燥機「アイロンいら〜ず」が第1号です。

サンコー 執行役員 広報部長のえき晋介さん

――そこからネッククーラーや糖質カット炊飯器、お弁当箱型炊飯器などのヒットが連発しましたね。

えき:ネッククーラーは2015年から始めて、その後も何度かバージョンアップを繰り返しました。2020年の「ネッククーラーNeo」で売上が加速し、シリーズ累計で100万台を超えました。

――サンコーさん発のトレンドは多い。

えき:おかげさまで、いろいろなメディアさんで取り上げていただくので。それを見て他のメーカーさんが「これは売れてるぞ」と翌年ぐらいから参入してこられるパターンが多いです。

――ライソンさんは、トレンドというよりは、他社が真似しないものを作りますよね。「ギガたこ焼き器」とか。

三上:我が道を行く、自分たちの熱狂で商品を作るところがあります。「ギガたこ焼き器」「焼きペヤングメーカー」「せんべろメーカー」の3つは、あるメーカーさんから「弊社だとまず企画が通らない」と言われました。

――芸人のギャグを芸人がパクったら恥ずかしいのと同じで、なかなか真似できない。

三上:とはいえ、おかげさまでと言うと変なんですけど、たまに真似されることも出てきました。我々としては、その会社さんのライソンを真似しようとなった経緯や社内の雰囲気を想像するに、逆に心配してしまいます(笑)。

実は両社の商品ってバッティングしない? その理由とは

――サンコーさんとライソンさんで商品がバッティングすることは?

三上:ほぼないですね。

えき:本当に同じような商品はないです。

――うちでもちょっと考えてたのに、先にやられたみたいなのは?

えき:「ホームロースター」(現在、生産終了)です。コンパクトなコーヒー豆焙煎機はうちもやりたかった。

三上:着るコタツ(商品名「こたんぽ」)は、すごい素敵だなと思いました。

――テスト用にお互いの商品を購入することはありますか?

えき:ないですね。類似の商品が出た場合は、機能を比較するなどの検証用に買わせていただくことのですが、ライソンさんとはかぶらないので。

三上:テストではないですが、プライベートで「ネッククーラー」を買わせていただきました。お弁当箱型の炊飯器を使っているスタッフもいます。

えき:ありがとうございます。僕も何か買わなきゃいけないみたいな(笑)。個人的にキャンプが好きなので、ライソンさんのアウトドア商品はいいなぁと思ってますね。テントウ虫のテントとか、かわいいな〜と。

ライソンのドーム型テント「テンテン」

――商品のアイデアもさることながら、コスパの良さも両社に共通しています。

えき:海外の工場との関係性もありますし、直販の比率が高いことで価格を抑えられています。普通のメーカーさんは、卸先さんの取り扱い数が予想できて初めて商品化できるんですけど、うちは卸先さんが扱わなくても、直販の販売が見込めれば世に出せるんです。そこはかなり強みですね。

三上:そこは、うちは真逆ですね。自社ECサイトは、ようやく去年の夏にリニューアルして本格的に動き出したばかりです。今はオリジナルの家電メーカーを名乗ってるんですけれども、もともとは、卸からスタートしているので。

――ライソンさんは、大阪商人らしく「値切ってなんぼ」みたいな?

三上:いやいや。コストカットは、本当に細かいコツコツの積み重ねです。うちの会社は日本一の一点突破メーカーを目指しているんですが、そのために、その商品が誰のための何なのかを分かりやすくしています。その結果として機能もなるべく削っていく。何でもかんでも盛り込むとどんどん原価が上がってしまうので。

えき:機能の絞り込みは、うちも同じ考えですね。

社内には、元大手家電メーカーの人材も?

――こんなにユニークな商品を出す会社はどんな人たちがいるのか気になります。社員の年齢層はどれくらいの方が多いでしょうか?

えき:以前は30代後半、40代のスタッフが多かったのですが、ここ2〜3年で20代などの若い人が入ってきて、社内がだいぶ活性化しました。若いスタッフと一緒に遊びに行くことも多いですね。僕自身は、スノボやキャンプなどを企画しています。

三上:ライソンは社長や部長などの中核メンバーがアラフォー世代と若く、平均年齢は30歳ぐらいでしょうか。

――若いですね。どんな経歴の方が会社に入られてきますか?

えき:デザイナーやWeb制作は未経験のスタッフが結構います。あと開発のスタッフには家電メーカー出身の人間が一人もいません。

あまりに家電メーカーバリバリの人を入れちゃうと、その人の言うことが当たり前になってしまい、新しいものが作れなくなってしまいそうという理由です。なので、ATMの設計をしていた人、音響メーカー出身の人、ラジコンの製作していた人など、あえて様々な分野から採用しています。

アパレル出身の人間もいて、ヒーターベストやクーラーベストをはじめ、アパレル出身だからこそのファッションの感覚をデザインに取り入れることができています。

三上:ライソンには、大手家電メーカー出身の人が4人います。ライソンの前身の、第二営業部の初期は、開発のスタッフもおらず、卸して売った商品の不具合がお客様から報告されても、その原因が分からないこともあったのです。

これはいかんということで、大手メーカーを退職された方に設計に問題がないか、不具合があったときの対応をお願いしています。大体60歳台の方々で、4人のうち1人は、ズボラ家電を作るのが好きなお父さんで、企画も担当してもらっています。

ニュースリリースの書き方にも違いが

――三上さんは、広報としてはホテルや遊園地という他業界からの転職ですが、家電メーカーの広報になって戸惑ったことなどはありますか?

三上:転職したときに、大手家電メーカーのニュースリリース(報道向け資料)を見て、一回その通りに書いてみたんですが、すぐにこれは(ライソンでは)違うと気づきました。「せんべろメーカー」みたいな商品で細かいスペックや社会的背景を書いても、受け取った皆さんはモヤモヤすると思うんですよね。

最初にホテルに入った時に教えられたことが、バックヤードの人間もエンターテイナーたれということでした。リリースでも読んでもらった人に何か発見があったり、ワクワクしてもらいたい。そのために、自分が新商品を最初に見た時のワクワクを伝えようという気持ちで書いています。

――えきさんは、リリースなどの資料で何を大事にされていますか?

えき:分かりやすいのが一番ですね。分からない言葉が出てくると読む気がなくなるので、難しい専門用語などは入れていません。あと、「これは何の商品か」を一言で伝えるようにしています。それまで世の中になかったものが多いので、自分で定義するんです。商品に2つ機能があった時、たとえば弁当箱なのか炊飯器なのか、どちらがメインなのかを定義することが結構大事なポイントだと思っています。

――読む人が迷わないように。

えき:新製品のニュースリリース以外には、これから来そうなテーマを企画書にしてメディアさんへアプローチしています。たとえば電気代が上がるというニュースがあれば、節電に役立つグッズを使うと1時間あたりでどれくらい違うのかをまとめてお送りしています。

「会社で朝食」ショート動画が1,500万再生! バズる企画はどう作る?

――ライソンさんはYouTubeの公式チャンネルも話題です。一番再生回数が多い動画は?

三上:ショート動画では、「会社で贅沢な朝食作り始めたらどうなる!?」が1,521万回、「会社で焼肉とビール始めたらどうなる!?」が1,158万再生(いずれも取材日時点)です。朝食ネタがなんで1,500万再生も行ったのかは、誰もよく分かってないのですが。

会社で贅沢な朝食作り始めたらどうなる!?

――社内で料理をいきなり作り始めて、周りがワーワー言うスタイルは、どうやって思いついたんですか?

三上:社内で突然誰かが何かを作るのは、それまで別に珍しいことじゃなかったんです。テレビなどの取材に備えての練習であったり、レシピの開発であったり、工場から送られてきた製品の検品であったり、スーツを着たおじさんが2人が突然キッチンに立って仲良くカステラを大量に作りだすなんてことは、普通の光景なんです。

しかし、2021年に動画担当として入社した佐藤にとっては不思議だったみたいですね。彼曰く、2020年入社の私も“すでにライソンに毒されてしまった人間”だそうで、会社の普通が世の中にとって普通じゃないと思えない感覚になってきている。

――感覚がマヒしてしまった(笑)。サンコーさんは、動画ではどのような戦略を?

えき:この4月ぐらいからTikTokに力を入れ始めました。広報部には2名いるのですが、その方のメインの業務をTikTokにしたこともあり、30万〜40万再生されるようになってきました。スタッフは映像編集の経験はないのですが、「こういう風なイメージで」と伝えると、それを超えてくるんですよ。

――えきさんのテレビ出演の経験が役立っている?

えき:というよりは、一昨年に僕が個人でTikTokのチャンネルを作って試行錯誤したことが役立っています。TikTokでは、早く場面が切り替わって、気がついたらもう一回見ていたっていうような繰り返し再生され、勝手にシェアされていく。秒単位で調整していき、また投稿する時間も30分ごとに変えていって、動きがある時間帯を見つけていきました。個人のチャンネルでは220万再生までいきました。

@thanko.official

テレビではだいぶ紹介いただいていますが、まだまだSNSの認知度は低く、テレビの視聴者層ともかぶらないので、SNSでの認知度をとにかく上げていかなきゃいけないと考えています。またテレビと違ってYouTubeやTikTokの動画は蓄積されるので、1回バズると前の動画の再生回数が増えるのも大きな利点だと思います。

明るいキャラvs謎の集団

――テレビ出演を楽しそうにこなしているえきさん。会う前は「絶対この人は元子役とかだよ」と思っていました。

えき:違います(笑)。サンコーだけでなく僕個人も知られたいと思っているのは事実で、モチベーションもそこにあります。ただ僕個人が目立つことで番組の視聴率が下がるなどの影響があれば意味がないので、そう考えた時に、ネクタイを締めた普通のおじさんが喋るよりも、わけわからない明るい人が出てる方が面白がって見続けてもらえるのでは? というところから、このキャラクターを作りました。

サンコーのオレンジ色のシャツと、オーバーオールの組み合わせで、一目でえきさんと分かる

そして、どういうスキルが必要なのかを考えて、発声やトークのスキルを学んだり、見た目も不快にならないようにメイクしたりしています。

――ほんと努力と勉強の人ですよね。三上さんも、これを受けて社長をプロデュースするとか?

三上:社長がですね、あまりメディアに出たくない人間で。「狙われるからやだ」とか言うところを「社長の仕事ですからお願いします」とお願いしてテレビに出しているのが現状です。ただ、ライソンの広報活動としては、誰か一人ではなくて、変化し続ける謎の集団として見せていこうと思っています。面白いユニーク家電の会社のイメージだけで走ると、いずれどこかでメディアさんに飽きられるだろうと思っているので。

先ほどのYouTubeも、ああいう形でバズるとは誰も思っていなかった。ライソンのことを知ってもらいたいなと思って始めたものの、あれがバズったおかげで、逆にますます“謎の会社”になっている。

 実際、ライソンの毒が体の半分以上回っていると思われる私の目から見ても、まだ謎なところがあります。ライソンという東大阪にある会社を毎日ウォッチしてて、不思議だなと感じるところをレポートする人間になろうと思っています。

これから目玉の製品、3番勝負!

今回の対決にあたり、サンコーとライソンそれぞれ今後イチオシの新製品を3つずつ教えてもらったので、紹介したい。

サンコーとライソン、それぞれのおすすめ製品とは? なお取材は終始和やかムードでした

東:サンコー

ネッククーラーSlim

サンコーを語るうえで外せない製品がネッククーラーです。外気温から約17℃冷えたプレートを首にあてることで暑い夏でもひんやりと涼しくなれます。個人でも多く使っていただいていますが、そのほかにも暑い中での交通誘導をする方などの助けになっていることもうれしいです。外出時はもちろん、夏の電気代を抑えるという目的で室内で使うのもおすすめです。今年で弊社は20周年を迎えます。これを記念として、とあるキャラクターの特別モデル、とあるスポーツの特別モデルの発売を予定しております。

西:ライソン

シャカシャカ容器付き ポップコーンメーカー「シャカポコ」

三上:ライソンは、以前のピーナッツクラブの時代からポップコーンメーカーを販売し続け、累計20万台を売っています。これは新作なんですが、本体は今までと同じで、新しくプラスチックのポップコーンバケツが付いてきます。本体にぴったりのサイズなので、ポップコーンが外に飛び散りません。フタもあるので、そのまま保存できますしフレーバーも混ぜやすい。日本ポップコーン協会さんにデザインとレシピの監修をしてもらっています。

東:サンコー

冷却プレートで背中スッキリ涼しい「セナクール」

えき:最大−14℃まで冷えるペルチェ素子のプレートと送風ファンで背中を冷やすアイテムです。装着するとほぼ背中に隠れるので、ネッククーラーよりも目立たないので、女性にもアクセサリー感覚で使っていただけます。内蔵バッテリーで最長約2時間、10,000mAhのモバイルバッテリーで最長約10時間冷たさが持続します。

西:ライソン

ダイヤル式ワイヤレス スピーカー「SP-41」

三上:Bluetoothのネックスピーカーが人気で、実はテレビの声が聞き取りにくくなった高齢者の方に売れています。そこで、操作が簡単でレトロタイプのデザインのワイヤレススピーカーを出しました。Bluetoothの機能がないテレビでも使えるよう、Bluetoothの送信機もお付けしております。実はうちのコールセンターは、高齢者の方からの問い合わせも多く、そのため人員を拡充して、受電率を93%にまで高めています。安心してご購入下さい。

東:サンコー

お風呂あがり全身爽快! のれる扇風機

えき:うちの温泉好きのスタッフの夢を叶えた商品です。夏のお風呂上がりは、どうしても汗がじとじときて不快ですよね。温泉に行くと、よく扇風機が置いてあって、風を浴びると涼しくて気持ちいい。ただ、自宅の脱衣所には扇風機を置く場所がない。そこで、コンパクトなサイズで、しかも濡れた状態で乗れて、全身に風を浴びられる扇風機を開発しました。足を乗せた瞬間に電源が入るようになっていて、風速35mという相当台風並みの風が出るようになっています。

西:ライソン

ひろゆきの論破くん

三上:インターホンごしに男性の声で応答する「応答くん」がおかげさまで大反響です。この「ひろゆきの論破くん」は、ひろゆきさんを好きなうちの営業スタッフの発案で、社長がそのスタッフに「交渉してOKをもらったらいいよ」とGOを出し、本人がダメ元で提案書を送って許諾をいただけました。16種類ある音声は、主に許可を得てYouTubeからの音源を使っていますが、よく知られる「嘘は嘘であるとか、見抜ける人でないと難しい」と「なんかそういうデータあるんですか?」は、実は録り下ろしとなっています。

ひろゆきの論破くん

おすすめの両社各3製品。今後も両社の家電への期待が高まる

小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>