老師オグチの家電カンフー

東大阪のおもしろ家電メーカー・ライソン社長と「せんべろメーカー」で飲んだ

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
社内のショールームに入ると、「せんべろメーカー」が対面に並べられていた。順調に売れ続けているという

大阪出張の機会があったので、東大阪の家電メーカー・ライソンの山俊介社長に「『せんべろメーカー』で飲んでくださいよ」とお願いしてみました。「せんべろメーカー」とは、1台でおでんの温めや焼き鳥などの炙り、熱燗が楽しめる家飲み家電です。飲むにはちょっと早い時間、16時過ぎに到着すると、本当にショールームの一角に「せんべろメーカー」が2台並べられていました。おひとり様家電でもあるので、コロナ対策もバッチリです。

――無茶振りしてスミマセン。

山社長(以下同)「大丈夫ですよ。昨日も知り合いの会社の方とお昼から飲みに行ってましたから」

飲める人で良かった。全国で気温が40℃近くまで高まっていた時期、正直熱燗という気分ではなく、ビールで乾杯。

――酔っ払う前に取材しておきます。直近で1番調子いい商品は?

「最近発売した『たべっ子どうぶつカステラメーカー』ですね。想定以上に売れています」

――ギンビスさんとのコラボですね。これ、どういう感じでコラボに至ったんですか?

「元々、前の会社(グループ会社の株式会社ヨシナ)でゲームセンターのクレーンゲームに入れるお菓子を扱っていて、そこでギンビスさんをはじめ日本中のお菓子メーカーの賞品を扱っていました。最近、たべっ子どうぶつライセンスでいろんなグッズを作っていて、家電でどうかという話が回ってきて。最初はおっかなびっくりでしたけど、やってよかったと思いましたね」

――パッケージも「たべっ子どうぶつ」っぽい。

「ギンビスさんのブランドマネージャーの方は、たべっ子どうぶつへの愛が強く、この本体のピンク色も何度もやり直したんです。最初は中国で作ろうと思ったんですけどこのピンクが出なくて、結局、日本で作り直しました」

東大阪市にあるライソン株式会社本社
山俊介社長とカンパーイ!
せんべろメーカーで焼き鳥やスルメを炙る。結構火力が強く、すぐ温まる
「たべっ子どうぶつカステラメーカー」4,950円。ビスケット菓子「たべっ子どうぶつ」(ギンビス)とのコラボで、「らいおんくん、かばさん、うさぎさん、ねこさん」の4キャラクターのカステラが焼ける

今年はアプリ対応の家電も登場?

――逆に調子が悪い商品はありますか?

「今年は流しそうめん器がなかなか売れていません。他社さんがたくさん製品を出されている影響もあるのかなと」

――コロナのせいではなく?

「いや、昨年は売れていたので、コロナってわけでもないんです。昨年はコロナで調理家電がよく売れたので、そのぶん今年は今のところ苦戦していますね。もうみんな旅行に行くためにお金を貯めてるのか、円安で消費を控えているのかはわかりませんけど」

――昨年はどの辺が引っ張ってた感じなんですか?

「主に調理家電と、肩にかけるスピーカーもよく売れました。これはスピーカーのコーナーではなくて、耳が聞こえづらくなった高齢者の方向けに、テレビ売り場に置いていただいてました」

「コロナと言えば、もう2年ぐらい中国に行けてないのが辛いところです。今までは必ず年2回、中国で開催される交易会に行って、新しい工場や商品を探していたんですけど、もう2年間ないので、なかなか話が進まないんですよね」

――今年はどんな家電製品が出そうですか?

「最近ちょっとアプリが作れるようになったんで、アプリ付きの家電で何か面白いことがしたいですね。今考えているのは、コーヒー豆を焙煎する『ホームロースター(RT-01、生産終了品)』の後継を作ってるんですけど、それにアプリを付けたいです」

――おお、それは楽しみ。発売はいつ頃?

「目標は年末って言ってるんですけど、まだわかんないですね」

――僕は勝手に、「東のサンコー、西のライソン」っていろんなメディアで言ってるんですが、意識されていますか?

「いや、ぜんぜん規模が違うので」

広報担当の三上さん「(サンコー広報部長の)えきさん、すごいですよね。いつもお世話になっているテレビの放送作家の方からは、そろそろ三上さんもキャラを強く押し出していきましょう、と言われています。大きな帽子をかぶったらどうとか(笑)」

――アパホテル(笑)。

エンジンが温まってきた山社長
おでんも高速に加熱
日本酒は氷水を入れて、冷酒にしていただいた
広報の三上さんもジョイン。かつてライソンは広報対応をデザイナーさんが兼務していたが、忙しくて商品が全然作れなくなり、広報専門の担当者を募集したという

山社長(以下同)「今年は、ほんとにオモチャみたいなものも出します。これは女性向けなんですが、僕が見ても、売れるのか全然わかんない」

――女性向けのオモチャ……。

「この間新卒で入ってきた女性社員の企画なんですが、××××を×××××する時に使うんです。××機能があって、自分の××を×××できるんですよ」

――ああ、これ男性でもいろいろ遊べますね。おもしろい。まぁ、酔っ払ってきたからかもですが(笑)。ドンキとかで売れそうです。

「真面目な商品も出しつつ、6割くらいはふざけていこうと思っています」

この後も、他社製品を含めて家電やガジェットの話題が尽きず、オグチも謎企画を提案するなど、“せんべろ”では全然収まらず。社長行きつけの飲み屋さんに向かったのでした。社長ごちそうさまでした。

小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>