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家電は“みせる”時代へ。蔦屋家電に聞いた、いま本当に選びたい家電

隠してしまうのはもったいない。見せたくなるデザインの家電を蔦屋家電で見てきた

最近、ある編集部員から、SNSで気になるキーワードを見つけたと聞いた。「#️家電 #️隠す」というものだ。家電を隠す……。確かに一昔前までは「家電は生活感が出るから」と、隠す傾向があったかもしれない。でも、せっかく便利な家電を買ったのに、隠してしまうなんてもったいないし、なんだか切ない……。

一方で最近は、家電のデザインもどんどん洗練され、むしろ見せたくなるような家電も増えているはず! では実際、近年の家電のデザインはどのように進化しているのだろうか。そこで今回、家電を通してさまざまなライフスタイルを提案している「二子玉川 蔦屋家電」を訪問し、家電のトレンドとおすすめ製品を聞いてきた。

商品選びのベースにあるのは「万博」「美術館」「博物館」

蔦屋家電は一般的な家電量販店とはコンセプトが異なる、全く新しいスタイルの家電店だ。取り扱っているのは、バイヤーが国内外から見つけてきた製品がメインで、最先端の技術を駆使した製品からクラシックなデザインまで幅広い。これらを各ジャンルに精通したコンシェルジュたちが、ライフスタイルに沿った形で提案してくれる。

今回、取材に応じてくれたのは、取り扱い製品を見つけてくるバイヤーの山口史朗氏と、住フロアでコンシェルジュとして接客を担当する佐藤正人氏。2人とも、蔦屋家電がオープンする2015年以前より家電に携わってきた業界通だ。

――蔦屋家電で取り扱う製品はどのように見つけてこられるのですか。

国内外問わず、ユニークな家電をリサーチし発掘するバイヤー、蔦屋家電エンタープライズ 商品部 商品企画ユニットリーダーの山口史朗氏

山口氏:まずは情報収集ですね。コロナ禍前は国内外の展示会に足を運ぶことも多かったですが、今はネットで探すことが多いです。家電 Watchさんも毎日見ていますよ(笑)。そのほかクラウドファンディングでは、ユニークな製品も多いので要チェックですね。

取り扱いを決めるポイントは、蔦屋家電に展示してある様子を想像して「しっくりくるか」、お客様が蔦屋家電に求めているものと「マッチしているか」、他ではあまり扱っていない「掘り出しもの感があるか」ということ。基本的には各バイヤーの経験と感性に任されていますが、共通認識としてあるのが、2015年のオープン時から蔦屋家電の「品揃えの基準」として掲げている「万博」「博物館」「美術館」です。

万博では最新テクノロジーを見て技術の進化を目の当たりにし、博物館には古くから愛される銘品が愛でられる。そして美術館には、デザインが美しいものが並んでいます。蔦屋家電に来たら、そんなワクワク感を味わってほしい。という思いで製品を選んでいます。

佐藤氏:私たちコンシェルジュも、本当にいいと思ったものでなければ、自信を持ってお客様に勧めることはできません。そういう意味で私たちもモノ選びの一端を担っている意識でバイヤーと意見交換したり、お客様の声を共有するようにしています。

店頭でお客様に製品の魅力を伝えている、二子玉川 蔦屋家電 住フロアリーダーでコンシェルジュの佐藤正人氏

――蔦屋家電で扱ったことで知名度が上がった製品も多いのではないでしょうか。

佐藤氏:当店が扱ったから、というのはおこがましいですが(笑)、今人気の家電の中で、最初に扱ったのは当店、という製品はたくさんあると思います。

例えば愛知ドビーの「バーミキュラ ライスポット」は、もともと食担当のコンシェルジュが、バーミキュラの鍋の大ファンで。ライスポット初お披露目の展示会初日の朝、開場するやブースに走っていき、バーミキュラ愛を語って、他販路に先駆けて扱わせてもらえることになりました(笑)。

あとディンプレックスの電気暖炉(後述)もそうですね。フルラインナップで大々的に展開したところ、インテリア性の高さが評価されて、今では人気になっています。

山口氏:そういう意味で、韓国・LG社の「LGスタイラー」は、蔦屋家電から始まったと自信を持って言える製品かもしれません。そもそも日本で販売予定がなかったものを、当時の担当者が韓国まで行き、「絶対売れるからやりましょう!」と説得してきたのですから(笑)。今では家電量販店でも販売していますし、CMも見かけますよね。

デザインが洗練され、隠す家電から見せたくなる家電へ

店舗入り口付近では、べランピングをイメージしたライフスタイルを展開(「空の下で過ごす。」5月30日まで)

――最近は家電のデザインもだいぶ洗練されてきたように思いますが、蔦屋家電が2015年にオープンしてから、感じられる変化はありますか。

佐藤氏:確かに以前は、家電は収納するモノ、隠すモノという感覚はあったと思いますが、この5〜6年でデザインを意識するようになったメーカーさんが増えてきましたね。おそらく家電自体の基本性能が一定の水準まで達したため、今度はデザインで差別化を図っていきたい狙いがあるのではないかと思います。

山口氏:そもそも二子玉川という立地特性もあって、蔦屋家電に来られるお客様の中にはおしゃれなインテリアにマッチするデザイン家電を求める方も多いのですが、実際にご紹介できるのは、高級家電がメインでした。それが最近は、いわゆるジェネリック家電と呼ばれるものでも、デザインが洗練されてきたものが増えており、デザインへの意識が高まっていることは確かです。

佐藤氏:家電にもデザインが必要だと思わされたきっかけとしては、やはりバルミューダの存在も大きいのではないでしょうか。扇風機が数千円で買えた時代に、いきなり4万円の扇風機を出してきたときは、正直業界内もざわつきましたが(笑)、結局お客様に受け入れられ、かなり売れました。

これはつまり、「金額は高くても、質とデザインが良ければ、受け入れられる」ということ。これをきっかけに、性能一辺倒だった開発から、デザインにも注力していく流れが出てきたのではないでしょうか。

「バルミューダの登場が、家電デザインの波を大きく変えたのではないでしょうか」と話す佐藤氏
質とデザインの良さが受け入れられたバルミューダの高級扇風機

佐藤氏:この流れに、SNSの普及も拍車をかけていますよね。今までは、家電は隠していたかもしれませんが、今はおしゃれな家電を購入したら、それをSNSで発信する。おしゃれな家電なら映えるアイテムの1つになってきた現れだと思います。

山口氏:最近は、デザインも機能のひとつである、という考えもありますね。余計なものを削ぎ落として、必要な機能のみを残したほうが、見た目がスタイリッシュで直感的に使いやすい場合もあると思います。

コロナ禍で丁寧な暮らしを意識する人が増えた

住フロアの入り口では、べランピングとプロジェクターを組み合わせた、アウトドアの新たな楽しみ方を提案(「空の下で過ごす。」5月30日まで)

――コロナ禍でおうち時間が増え、家電を新たに購入した人も多かったそうですが、購入する製品に何か傾向はありましたか。

佐藤氏:そもそも家電はおうちで使うものなので(笑)、おうち時間の増加に比例して家電全般が売れましたが、求められた傾向としては2つのパターンがあったと思います。1つは、在宅時間が長くなって家事が増えたことから、家事が楽に、時短になる家電。もう1つは丁寧な暮らしが楽しめる家電です。

特に売れたのがプロジェクター。おうち時間が増えたことで、今までスマホで済ませていた動画鑑賞を、家で大画面で楽しみたいという人が増えたようです。最近のプロジェクターは4Kで画質もよく、100インチの大画面でも見られますからね。100インチのテレビを置こうと思ったら、よほど広い部屋が必要です(笑)。

山口氏:コロナ禍が始まったころは、価格が安いものをとりあえず買ってみた、という人も多かったですが、今は本格的に導入する人が増え、求められるクオリティも上がってきています。プロジェクター自体、以前に比べておしゃれになったので、インテリアとして出しておいてもかっこいいですし。

「以前は海外メーカーのほうが洗練されたイメージがありましたが、最近は国内メーカーも引けを取りません」と話す山口氏

佐藤氏:丁寧な暮らしでいえば、低温調理機が売れたのも顕著でしたね。時間がかかるけれど、ほったらかしで作れるし、在宅ワーク中に完成するので、今のライフスタイルにマッチしていると思います。あとはコーヒーを豆からゆっくり挽いて淹れるとか。

山口氏:ユニークなところでは、酵素玄米炊飯器が非常にヒットしましたね。酵素玄米は自分で作るととても大変で、手に菌が残っていると失敗しがちなのですが、この炊飯器を使えば簡単にできるんです。蔦屋家電は書店でもあり、発酵に関する本がブームになっていることから、健康意識の高まりを反映しているのかもしれません。

蔦屋家電が発信し続けるライフスタイル

――最近、おしゃれな家電をSNSで発信する人が増えていますが、家電の上手なコーディネートのコツはありますか。

山口氏:コツと言っていいかわかりませんが、蔦屋家電は商業施設でありながら、家にいるような居心地の良さを味わってもらいたいと、おもに住宅などを手掛けているデザイナーが設計しています。床や什器に木材を使い、家のようなくつろぎの中で、家電がどのようにライフスタイルになじむかを感じていただけるのではないでしょうか。

佐藤氏:店内は、食や住など、テーマごとに展示していますが、ただ並べているわけではなく、この家電はどのように置いたらおしゃれに見せられるか、常に考えながら陳列しています。ゴチャつきがちな配線もできるだけ見えないようにしているので、そういうところも参考になると思います。

蔦屋家電2階では、e-bikeを取り入れたよりアクティブな楽しみ方を紹介(「空の下で過ごす。」5月30日まで)

蔦屋家電おすすめ! 使うたびにときめく家電5選

ここで蔦屋家電で人気の家電や、これからの時期に活躍する家電を5つ、コンシェルジュの佐藤氏に紹介してもらった。

バルミューダ「The GreenFan」

バルミューダのThe GreenFan

「バルミューダが手がける高級扇風機。内側から生まれる早い風と外側から生まれる遅い風がぶつかることで、上下左右に風が広がります。柔らかく優しい風質なので、家にいながら自然の風を味わえるのが人気の理由。ユニークなのが首振り機能で、首振りさせたい範囲を覚えさせたら、その範囲でしか動かないので、状況に合わせて使えます。オプションのバッテリー&ドックを使えばポータブルとしても使え、べランピングや洗濯物の乾燥など、さまざまなシーンで活躍しますよ」。

本体サイズは330×320×871mm(フロア時、幅×奥行き×高さ)、卓上時の高さは497mm、重量は約4.1kg
2重構造の羽根が柔らかな風を生み出す

カドー「LEAF 320i」

カドーの空気清浄機「LEAF 320i」

「カドーの空気清浄機は、スタイリッシュなデザインが人気です。円柱形のフィルターを搭載し、360度全方位から空気をパワフルに吸引し、天面から吹き出す仕組み。さらにフィルターには、ニオイや菌を吸着する活性炭と、それらをLED光で分解・除去する光触媒技術を利用した『セルフクリーニング機能』を搭載することで、フィルターの長寿命化も実現しています。花粉やニオイが気になる人におすすめです」。

本体サイズは242×652mm(直径×高さ)、重量は6.4kg。適用床面積は〜26畳、最大機器風量は360m3/時
デザインだけでなく、フィルターが長持ちするセルフクリーニング機能もポイント

ゴレニア「Retro Mini Single door collection」

ゴレニアのRetro Mini Single door collection

「スロベニアのレトロな冷蔵庫です。日本にはない丸みを帯びたフォルムやカラーが人気で、デザイン事務所やリビングに置くなど、インテリアにこだわる人が購入されています。冷凍室付きのワンドアタイプで、機能としてはシンプルですが、260Lの容量で消費電力量180/214kWh(50Hz/60Hz)と省エネなのは珍しいですね。取り扱いカラーは、ブラック、シャンパンホワイト、ブルー、レッドの4色で、今はフォルクスワーゲンとのコラボモデルもあります。冷蔵庫を開けるたびにワクワクする喜びを味わっていただけるのではないかと思います」。

本体サイズは600×670×1,540mm(幅×奥行き×高さ)
丸みを帯びたフォルムが人気だそうだ
2ドアタイプも。ハンドルのデザインも美しい

kalita Black 復刻版ナイスカットG

kalita Black 復刻版ナイスカットG(KB-12)

「電動コーヒーミルとして根強い人気のカリタ・ナイスカットGを蔦屋家電オリジナルのブラックで作りました。少ない摩擦で豆を挽くため、コーヒーの風味を損なわず、粒度の揃った豆が挽けるのが特徴です。ほかドリッパーやメジャー、スプーンなども同じブラックで揃えた蔦屋家電プロデュースシリーズを用意していますので、コーヒータイムをよりスタイリッシュに演出できるのではないかと思います」。

本体サイズは218×120×337mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約2.3kg
コーヒーの風味を損なわずに豆を挽ける

ディンプレックス「電気暖炉 オプティミスト フォートローズ2」

写真中央下がディンプレックスの電気暖炉 オプティミスト フォートローズ2。本体サイズは660×390×620mm(幅×奥行き×高さ)、重量は28㎏。消費電力は最大1,200W(炎イルミネーションのみの場合200W)、暖房目安は3~8畳(写真提供:蔦屋家電エンタープライズ)

「イギリス・ディンプレックス社の電気ファンヒーター。LEDが演出する炎の再現度が非常に高く、本物の暖炉のようなインテリア性と炎がゆらめく癒しの時間が味わえます。特にこのオプティミストシリーズは、スチームが煙のように湧き上がり、リアリティ抜群。暖炉に憧れるけど、住宅街やマンション住まいで現実的に無理、と諦めていた人におすすめです」。

(撮影:阿部 吉泰)

田中 真紀子

家電を生活者目線で分析、執筆やメディア出演を行なう白物・美容家電ライター。日常生活でも常に最新家電を使用し、そのレビューを発信している。専門家として取材やメーカーのコンサルタントに応じることも多数。夫、息子(中学生)、犬(チワプ―)の3人と1匹暮らし。