パナソニック、彦根工場で“日本でしか作れないシェーバー”ラムダッシュをアピール

 パナソニックは25日、同社が販売する高級シェーバー「ラムダッシュ」に関する報道関係者向けのセミナーを、生産工場である滋賀県彦根市の彦根工場にて開催。ラムダッシュの技術説明や製造工程の一部を公開したほか、9月から発売される新製品をアピールした。

9月1日から発売される新しいラムダッシュ「ES-LV82」セミナーが行なわれた滋賀県彦根市の彦根工場。ラムダッシュなど理美容家電製品を中心に製造している

ラムダッシュを国内で作り続けている理由は「彦根工場の職人」

 パナソニックでは男性用シェーバーの工場として、彦根と中国・広州の2拠点を構えているが、彦根工場では高級モデル「ラムダッシュ」シリーズの開発から製造を一貫して行なっている。1962年に創業し、今年で50周年を迎えた。

 同社は、ラムダッシュを日本で生産する理由に「技術力」と「技能・人」を挙げている。刃の製造に当たって、高度な加工技術と職人による特殊な技能が重要な要素になるという。

彦根工場は1962年に創業を開始。当時は松下電工の工場だったパナソニックのシェーバーの生産拠点は、彦根と中国の広州にあるが、ラムダッシュは彦根で生産しているラムダッシュを日本で生産する理由としては、「技術力」と「技能・人」があるという

 ラムダッシュでは刃の素材として、島根県安来市で作られた「安来鋼」を採用。この安来鋼を、日本刀と同様の“叩く、焼く、研ぐ”という製法で、独自の「ステンレス刃物鋼」に加工したうえで製品に使用している。ステンレス刃物鋼は、通常の電気シェーバーで使用されているニッケルを電鋳加工した刃に比べ、強度があり、摩耗に強いというメリットがあるとされる。

ラムダッシュの刃には、安来鋼を加工した「ステンレス刃物鋼」を使用ステンレス刃物鋼は、一般的なニッケル電鋳加工の刃に比べ、強度があり摩耗に強いというステンレス刃物鋼とニッケル電鋳刃の素材寿命の比較
ステンレス刃物鋼の元となる素材。ペラペラの紙のようだこれに加工を加えることで、内刃や外刃に成形していく

会では刃を成形している製造工程の一部が公開された。元々は平べったい板をプレスしている

 しかし、強度の高いステンレス刃物鋼に穴を開けるためには、元となる金型を作る必要がある。この金型には、特に高度な技術が要求されるという。パナソニックではラムダッシュの金型作りのために、先端が70μmという細い切削工具「エンドミル」を手作りし、その上で技術者の手によって金型を作るという手順を踏んでいる。このエンドミルが作れるのは、20~30年の鍛錬を積んだ、同工場の数名の技術者に限られるという。

ステンレス刃物鋼の刃を作るには、そこに穴を開けるための金型を作る必要がある。写真はその金型会では、金型を作るための切削工具「エンドミル」を作る工程が公開された
エンドミルの先端はわずか70μm。これが作れるのは、20~30年鍛錬を積んだ数名の技術者に限られるというエンドミルを作った後は、金型に細かな穴を開けていくできあがった金型

 またラムダッシュのモーターには、毎分約14,000ストロークの高速小型リニアモーターを採用。彦根工場ではモーター製造工程の75%が自動化されているという。リニアモーターの高速振動を受け止める樹脂部品は、樹脂成形の職人によって作られている。

 パナソニックでは、ラムダッシュの新しいコミュニケーションテーマとして、「MADE IN 彦根」、「日本でしか作れないシェーバー」というキャッチコピーを採用。今後は日本のみならず、アメリカやヨーロッパ、アジア各国に対しても、ラムダッシュブランドを広めていくとした。

ラムダッシュの刃を動かすリニアモーターは、製造工程の75%が自動化されている。写真は年々小型化が進んでいるリニアモーター金型の製造やリニアモーターを受け止める樹脂の成形、また作られた刃の検査など、高品質を保つために、日本で製造をしているという今後は世界にラムダッシュブランドを広めていくという

9月発売の新製品では、洗浄充電器の設置面積をコンパクト化。運転音も抑えた

 会場では、9月から発売する新製品「ES-LV92」「ES-LV82」「ES-LV72」「ES-LV52」も公開された。

9月1日から発売される新しいラムダッシュも公開された。写真は最上位モデルの「ES-LV92」ES-LV92に次ぐ高級モデルの「ES-LV82」。電池残量表示は5段階
「ES-LV72」は、電池残量表示が3段階「ES-LV52」は、本体のみで洗浄充電器は付属しない。なお、シェーバー本体の機能は全機種で共通している

 シェーバー本体の機能は前年モデルと同じ。外刃は肌への密着面積を拡大することで圧力を低減する5枚刃を採用。また、くせヒゲを掬い上げて剃り残しを防ぐ「くせヒゲリフト刃」、薄い刃でヒゲを深剃りする「フィニッシュ刃」、長い毛をカットする「スリット刃」という3種類の刃を用いている。

 変更点としては、本体に付属する全自動洗浄充電器の設置面積を、洗面台の棚にも置きやすいよう、従来から約30%削減した。また、洗浄時のポンプ音も抑えた。加えて、洗浄剤は従来のカートリッジ式からパウチパック式に変更。価格と廃棄物量の削減を図っている。なお、ES-LV52には洗浄充電器は同梱されない。

 価格はいずれもオープンプライス。店頭予想価格は順に、45,000円前後、39,000円前後、35,000円前後、30,000円前後。

基本的な機能は従来モデルと同じ。5枚の刃で肌への負担を軽減する刃には深剃りの実現を狙う「フィニッシュ刃」と、剃り残しを防ぐ「くせひげリフト刃」を採用
新製品では、洗浄充電器を省スペース化した従来モデルでは洗面台の棚に入らなかったが(写真右)、新製品では収納できるようになった(写真左)また、洗浄剤はパウチパックに変更された(写真右)

彦根仏壇の職人の手作りによるハードケースが200名にプレゼント

 新製品の発売と同時に、「日本でしかつくれないキャンペーン」も実施される。5枚刃のラムダッシュ購入し、愛用者登録したユーザーのうち、抽選で2,000名に、ラムダッシュ5枚刃専用の名入れハードケースがプレゼントされる。応募期間は8月22日から、2013年1月10日。計4回の抽選が行なわれ、各回の当選者数は500名ずつ。

 さらに上記キャンペーンに当選した人のうち200名に対し、彦根市の伝統工芸「彦根仏壇」の職人による手彫りの名入れと、蝶の蒔絵が刻まれたハードケースがプレゼントされる。

新製品の発売に合わせて、「日本でしかつくれないキャンペーン」も開催される抽選で2,000名に、ラムダッシュのハードケースがプレゼントされる。うち200名には、彦根の伝統工芸「彦根仏壇」の職人による、蝶の蒔絵と手彫りのネーム入りのハードケースが贈られる

 このほか、日本各地から選ばれた伝統工芸品が総計100名に贈られるオープン懸賞「世界に誇る『ジャパンテクノロジー』プレゼント」も、同期間に実施される。プレゼント品は、ブナの木を用いた照明器具「BUNACO」(青森県弘前市)、江戸伝来のガラス工芸品「江戸切子」(東京都江東区)、高純度の錫(スズ)を使用したアクセサリースタンド「錫鋳物」(富山県高岡市)、生産量日本一の「熊野筆」(広島県安芸郡熊野町)の4種類。

オープン懸賞「世界に誇る『ジャパンテクノロジー』プレゼント」では、日本各地の伝統工芸品4品がプレゼントされる。写真はブナの木を用いた照明器具「BUNACO」(青森県弘前市)江戸伝来のガラス工芸品「江戸切子」(東京都江東区)
高純度のスズを使用したアクセサリースタンド「錫鋳物」(富山県高岡市)筆の生産量日本一の「熊野筆」(広島県安芸郡熊野町)

 また、プレゼント品ではないが、ES-LV92に彦根仏壇の職人による龍の装飾を施した「彦根工場50週年記念モデル」が、彦根仏壇事業協同組合からパナソニックへ贈られた。

彦根仏壇の職人が、ES-LV92に龍の装飾を施した「彦根工場50週年記念モデル」が、彦根仏壇事業協同組合からパナソニックへ贈られた記念モデルの贈呈には、彦根市のキャラクター「ひこにゃん」も登場

“「海外に移転してコストを求めるものづくり」は取り組みなおすべき”

獅山向洋 彦根市長

 会には獅山向洋彦根市長が登壇。「電気シェーバーも彦根の地場産業のひとつ。彦根に進出されて50年になるが、生活を支えるものをたくさん作っていただいた。私も毎朝パナソニックさんのシェーバーを使っている。地元としては、パナソニックさんにはよそへ行ってもらったら困る」と、今後も彦根の地での生産をパナソニックに呼びかけた。

 また、会の最後に登壇したパナソニック アプライアンス ウェルネス マーケティング本部の原昭一郎本部長は、ラムダッシュを国内で生産することの重要性を指摘した。

パナソニック アプライアンス ウェルネス マーケティング本部の原昭一郎本部長

 「海外に移転して、コストを求めるものづくり、というのが当たり前になっているが、パナソニックとしては、このようなものづくりを見直し、取り組み直すべきではないかと考えている。

 例えば、金型を作るには職人の力が必要だが、その職人を育てた職人がいる。その職人を育てる職人もいる。彦根工場では、この技術の伝承が50年間続いているから、はじめてものづくりが完成している。職人まるごと海外に移す、ということを言う人もいるが、一時的には作れるかもしれないが、その先の伝承という点ではリスクがある。もう一度、日本でのものづくりというものを考え直したい」

 また、自身がラムダッシュユーザーであることから「私も毎朝、宿泊出張の時に持ち運んでいる。たまに持っていくのを忘れて、ホテルのT字型のカミソリを使うと、あちこちが切れて血がにじむ。そういった時にラムダッシュの威力を感じる」と使用感を説明。最後に「1日の始まりをラムダッシュで使っていただき、スピリットと情熱を持って作っている人がいるというのを思い出していただけば」とアピールした。






(正藤 慶一)

2012年7月26日 14:54