シャープ、プラズマクラスターイオンに肌の保湿効果があることを実証


プラズマクラスターイオンは肌の保湿効果もあるという。写真は2009年12月に発売した、プラズマクラスター加湿イオン発生機「IG-BK100」
 シャープは、同社のイオン技術「プラズマクラスターイオン」について、肌の保湿効果があることを実証したと発表。第三者機関の株式会社総合医科学研究所によって認められたという。

 プラズマクラスターイオンは、空気中の水分子と酸素分子を電気分解して作り出したプラスとマイナスのイオンが、ウイルスや菌、ニオイ成分などを無力化するというもの。同社では第三者機関と連携し、新型インフルエンザウイルスや鳥インフルエンザウイルスなどへの効果を実証、その結果を発表しているが、今回、新たに肌の保湿効果があることが発表された。

 実証実験には、同社のイオン発生機「IG-B100」などでも使用されている、1立方cmあたり25,000個のプラズマクラスターイオンを発生するデバイスを使用。洗顔後の被験者13人が6畳の部屋で横になり、プラズマクラスターイオンを発生したときと、発生していないときで肌の水分量を比べた。1時間経過後で、イオンなしの場合で実験開始時の水分量に対し97%だった一方、イオンありの場合は103%だった。実験に当たった総合医科学研究所の杉野友啓氏によると、「一般的な保湿クリーム相当の効果」があるという。

 さらに23~41歳の女性25人を対象にした社内モニターでは、「肌が潤う」「化粧の乗りがよい」「皮脂が抑えられる」「口の周りのカサつきが減った」といった意見が得られたという。ただし、効果が出るまでの期間は3日~1週間と回答にばらつきがあり、個人差も大きいという。

実証実験での、肌水分量の変化。イオンありのほうが、水分量が多くなっている実証実験のイラスト。6畳の部屋で行なわれてたという

 現在、25000の濃度に対応した家庭用のイオン発生機は、ポータブルタイプ「IG-B20」「IG-BA15」、車載用「IG-BC15」、パーソナルタイプ「IG-B100」リビングタイプ「IG-B200」加湿機能のついた「IG-BK100」の6製品がある。

 電機メーカー各社は、独自のイオン技術を開発し、ウイルスやカビなどへの効果を謳っているが、肌の保湿効果を盛り込んだものとして、プラズマクラスターイオンのほかに、パナソニックのイオン技術「ナノイー」がある。

 プラズマクラスターイオンは、同社の空気清浄機やエアコン、冷蔵庫などに搭載される基幹技術となっている。同社は今後、ウイルスやアレル物質への効果など健康面だけでなく、静電気除去や消臭、そして今回新たに発表した肌の保湿効果といった、暮らしをサポートする機能についてもアピールしていくという。




 プラズマクラスターイオンとその関連ビジネスについて、健康・環境システム事業本部空調システム事業部 副事業部長兼国内商品企画部長の鈴木隆氏に、技術面について健康・環境システム事業本部 デバイス開発部チーフの西川和男氏に話を聞いた。

――販売店のデータによると、2009年はさらに空気清浄機のシェアを伸ばしたようですが、どのような要因が大きかったでしょうか。

鈴木氏 
シャープ 健康・環境システム事業本部空調システム事業部 副事業部長兼国内商品企画部長の鈴木隆氏
2008年10月に発売したイオン発生機が受け入れられた、という下地があったのは大きいと思います。高濃度25,000の製品が世に出て、「ニオイが取れた」など効果をお客様に実感頂けた。目に見えない技術と言うこともあり、なかなかメーカーからはアピールしづらい製品ですが、実際に効果を体感したお客様が2台目、3台目を買う、口コミで広がる、といった動きが拡販につながったと考えています。

――今回、新たに“美容”という側面を押し出しましたが、イオンスチーマーなど美容系の機器を出す可能性はありますか?

鈴木氏 メーカーとして「可能性はない」とはいいません。ですが、「IG-BA15」や「IG-B20」は、デスクの上に置いて使うスポット型の製品なので、肌の保湿効果を訴求したいと考えています。

――昨年の“新型インフルエンザ特需”を受けて、今年は反動が予想されるが、どのように戦っていきますか。

鈴木氏 もともと、ウイルスへの効果を謳っていたわけですが、昨年は“ウイルス対策”という部分ばかりが注目されてしまいました。しかし、プラズマクラスターイオンはそれだけではない、消臭や静電気の抑制、肌の保湿といった機能もあるんだ、ということを知って頂きたいですね。

――プラズマクラスターイオンの特徴は、濃度をスペック値としているところだと思いますが、7000、25,000と進化し、今後もこの数は増え続けますか。

鈴木氏 数が増えれば増えるほど、効果が現われるのが速くなり、お客様に効果を実感して頂きやすくなるのが事実です。デジタル家電とは違うので、来年は倍、再来年はさらに倍、というものではないと思っています。

――濃度が濃くなったときの安全性については検証できていますか。

シャープ 健康・環境システム事業本部 デバイス開発部チーフの西川和男氏
西川氏 安全性については、吸入による毒性試験で1立法cmあたり700万個、目に対する試験では1,300万個まで濃くしても影響がないことをすでに実証しています。今現在、25,000個ですから、問題はまったくありません。

鈴木氏 プラズマクラスターイオンは、もともとウイルスの表面に対して作用するもので、細胞そのものに影響を与えるものではないので、安全面で問題はありません。

――今回の肌の保湿効果ですが、たとえば濃度が7,000の機器だとしたら、効果は見られますか。

西川氏 おそらく、7,000ではしんどいでしょう。25,000の濃度だから可能なことだと思います。

――プラズマクラスターイオン関連製品のヒットは、第三者機関との実証など、数年がかりによる地道なマーケティングによるものだと思いますが、今後の展開についてはどう考えていますか。

鈴木氏 これはもう、本当に地道に育ててきた結果だと自負しています。我々は「水をお金を出して買うのは当たり前の時代になった、次は空気を買う時代だ」と信じてやってきました。

 とはいっても、ミネラルウォーターとは違って、何万円もする製品です。調子がよいからと突っ走るのではなく、お客様のフィードバックを元に次の展開を考えているところです。実際、この1年間の普及スピードがすさまじく、頂いたフィードバックやデータの検証すら追いつかない状態です。普及していないときは、自分たちでデータを取ってアピールしてきたので、新しい段階に来たなと感じています。

 お客様にご支持いただけるよう、これからも大切に育てていきますよ。


2010年2月17日 18:00