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シャープ、プラズマクラスター技術の結核感染リスク低減効果を世界で初めて実証

 シャープは、プラズマクラスター技術の新たな効果検証として、結核病院における結核感染リスク低減効果を、世界で初めて実証したと発表した。

会見はインドネシアの会場を結んで行なわれた

 WHOのGlobal Health Workforce Alliance(世界保健人材アライアンス)パートナーであるジョージア国立結核病院とシャープが共同で研究を行なった。

 ジョージア国立結核病院のZaZa Avaliani(ザザ・アヴァリア)委員長は、「WHOでは、換気やUV殺菌灯などの環境整備によって、結核予防を行なうということを提示してきたが、結核病院の現場では、新たな機器を求めていた。

 今回のプラズマクラスター技術による臨床試験は、新たな機器による効果を実証したものである。本試験は先駆性が高い。プラズマクラスター技術が、結核病院での結核感染対策のひとつの有効な手段として大きな可能性があることを見いだした」としている。

ジョージア国立結核病院のZaZa Avaliani(ザザ・アヴァリアニ)委員長

 試験対象フロア全体の空気イオン濃度が、空間平均イオン濃度10万個/立方cmとなるように、140台の臨床研究専用イオン発生装置を設置。結核病院において、医療従事者への結核リスク低減や、結核患者の薬剤耐性獲得の予防に効果があることを実証したという。

研究に使用された臨床研究専用イオン発生装置

 具体的には、医療従事者88人を対象に、QFT法により、結核菌の保菌状況を調査。結核菌を保有していなっかた医療従事者32人に対して、6~8カ月後に、結核菌の保菌状況を調査。臨床研究専用イオン発生装置を設置したフロアの医療従事者は、同装置が設置されていなかったフロアの医療従事者に比べて、約75%も結核菌感染リスクが低減されたという。

医療医療従事者への結核リスク低減を実証

 「臨床研究専用イオン発生装置を設置していないフロアの医療従事者は、4倍以上の感染リスクがあるという結果になった。プラズマクラスター技術は、予防や感染リスク低減に効果が高かったという結果が出ている」(ジョージア国立結核病院 臨床研究部門ディレクター兼WHO感染管理テクニカルアドバイザーのNestani Tukvadze氏)。

ジョージア国立結核病院 臨床研究部門ディレクター、WHO感染管理テクニカルアドバイザーのNestani Tukvadze(ネスターニ・ツクヴァッヅェ)氏

 また、一般結核病棟滞在の結核患者155人を対象に、DST検査により、治療開始から約3カ月後に結核菌培養検査が陽性だった49人に対して、再びDST検査を行ない薬剤耐性獲得(薬剤が効かない状況)を調査。臨床研究専用イオン発生装置を設置したフロアの患者は、設置していないフロアの患者に比べて、約78%の薬剤耐性獲得を防ぐことができたという。

 「結核菌は空気感染であるため、空気の浄化が重要になる。結核には、よりよい治療、よりよい予防が大切であるが、薬剤での治療という方法のほかに、プラズマクラスター技術は、予防、感染管理に活用できる点は大きな意味がある」とした。

結核患者の薬剤耐性獲得の予防に効果があった

 シャープ 取締役常務 健康・環境システム事業本部長の沖津雅浩氏は、「結核は、過去の病気と考えている人も多いが、全世界で年間150万人が死亡し、単独の病原体による死亡としては1位である。全世界では22カ国が結核高蔓延国に指定されており、日本も中蔓延国に指定。毎年約2万人の結核患者が発生し、約2000人が死亡している。

 今回、会見を中継しているインドネシアは、インドに次いで2番目に新たな結核を発生した患者が多い。シャープにとっても、インドネシアは海外事業の3割を占める市場であり、インドネシアにおいてプラズマクラスター技術によって貢献できることはうれしい」とし、「シャープでは、プラズマクラスターイオンそのものの効果検証、実使用相当の空間での効果検証、そして臨床試験という3つのステップで実証を行なっている。これまでにも、付着結核菌の抑制効果を2009年に実証しているが、新たに人に対する効果実証が大切だと考えた。

 実際の現場において、医療従事者に対する結核感染リスク低減と、一般結核患者に対する獲得耐性予防を世界で実証できた。実生活、実環境における人への効果の検証を行なうことで、より快適な空気環境を世界に届け、この技術を世界のために活用したい」とした。

シャープ 取締役常務 健康・環境システム事業本部長の沖津雅浩氏

 ジョージア国立結核病院のZaZa Avaliani(ザザ・アヴァリアニ)委員長は、「全世界の人口の3分の1は結核菌に感染しており、全世界で約960万人(2014年実績)の結核を発生し、そのうち、約150万人が死亡している。ジョージアは、多剤耐性結核高蔓延国の一国であり、超多剤耐性結核の割合が11.6%、多剤耐性結核は39.2%を占める。超多剤耐性結核の治療が成功している例は27%に留まっているのが現状である。

 また、フルオロキノロン系感染症薬剤が効かない結核が30%を占めている。プラズマクラスター技術は、こうした問題を解決できる技術のひとつといえる。我々の病院のなかでの利用だけでなく、世界レベルの幅広い領域で使用されることを期待している」とした。

 プラズマクラスター技術は、水分子で囲まれた自然界にあるのと同じプラスとマイナスのイオンを放出。カビ菌や浮遊菌の表面に付着し、非常に酸化性が強いOHラジカルに変化。水素(H)を抜き取り、OHラジカルが結合し、水(H20)になって空気中に戻り、空気を浄化する仕組みだ。

実証実験に携わった関係者