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バーミキュラ、手持ちの鍋を違うサイズに作り変える新サービス。最新型への「進化」も

愛知ドビーが新サービス「リクラフトプログラム」を開始。写真は同社 代表取締役社長の土方邦裕さん(左)と、代表取締役副社長の土方智晴さん(右)

愛知ドビーは、手持ちのバーミキュラ製品のサイズ変更などができる新サービス「リクラフトプログラム」を9月26日より開始する。公式オンラインショップおよびフラッグシップショップで26日10時より申し込みが可能。

使用者から預かったバーミキュラ製品を自社で鉄に溶かしなおし、サイズ変更やアップデートを行なうサービス。従来のオーブンポット(オーブンポット1)から新発売のオーブンポット2に生まれ変わらせるといったことも可能。同サービスを利用することで、「子供が生まれたから18cm鍋を22cmにサイズアップしたい」など、ライフスタイルの変化に柔軟に対応できるようにした。

リクラフトプログラムの工程。製品を再溶解・再製造する

費用は内容によって異なるが、目安として従来のオーブンポットからオーブンポット2へ、同サイズ同士のリクラフトの場合で定価の8割程度。約2週間程度で仕上がるという。

鋳物製品の主原料である鉄はリサイクル効率のいい原料だが、バーミキュラ製品には鉄以外にも希少金属が含まれており、それらはリサイクルが困難なため通常は廃棄されてしまう。リクラフトプログラムでは、バーミキュラ製品からバーミキュラ製品へとリサイクルすることで、原料を100%再利用できるようにした。

リサイクルが困難な金属は廃棄されてしまうが、バーミキュラからバーミキュラにリクラフトすることで100%再利用可能に

現時点での対象製品はオーブンポット、フライパン、オーブンセーフスキレットで、オーブンポットからフライパンといった別製品への作り変えには対応しない。

なお、従来から提供しているホーローの再加工サービス「リペアプログラム」は引き続き展開する。

新製品で既存客が置いてきぼりにならないか。葛藤の末に生まれた「リクラフト」

「リクラフトプログラム」と同時に新製品「バーミキュラ オーブンポット2」を発表した同社。新たなサービスと製品を展開するに至った経緯を、代表取締役副社長 土方智晴さんが語る。「バーミキュラ オーブンポット2」の詳細については別記事で掲載する。

土方さんは家電製品や車などが毎年モデルチェンジを繰り返すことに疑問を抱いており、バーミキュラブランド誕生当初から「10年間モデルチェンジの必要がない、完成度の高い製品を作る」ことを心掛けていたという。

しかし、2010年の初代オーブンポットの発売以降、ライスポットやフライパンなどを開発する過程で技術が向上し「今だったらもっと素晴らしい鍋を作れるのではないか。新しい製品を作りたい」という気持ちが生まれた。一方で、モデルチェンジをすると既存のオーナー達を置いてきぼりにしてしまうのではないかと葛藤することになる。

よりよい鍋を作りたい気持ちと、既存のオーナーを大切に思う気持ちのあいだで葛藤があったという

そうしたなか、同社は2022年に原材料の高騰などにより、製品を10%値上げ。苦渋の判断だったが、値上げに対して「もっと企業努力をするべきだ」という厳しいメールが届いた。土方さんは「すごくショックでした」と語りながらも、そのメールをきっかけに全社を挙げてコストダウンに取り組んだと当時を振り返る。

結果として同社は2023年に10%以上の値下げに成功する。コストダウンに取り組む過程で大きな課題となったのが「戻り材」。製品にはならない部分、プラモデルでいう枠のようなもので、製造工程で必ず発生してしまうものだそうだ。

バーミキュラ製品は製造、材質管理の難しさから戻り材の約半分しか再利用できていなかった。コストダウンにあたって、構成を一から見直すことで、戻り材を100%再利用できる仕組みを確立。こうして、値下げの成功とともに生まれたのが「リクラフトプログラム」だ。

従来は戻り材の50%しか再利用できていなかった

土方さんは「リクラフトはバーミキュラに含まれる金属を100%再利用できるので通常よりも安い価格で製品を提供でき、お客様と当社にもメリットがある持続可能なプログラムになっています。ライフスタイルの変化に応じてサイズを変更したり、ソフトウェアのように新しいモデルにバージョンアップすることが可能で、既存のオーナー様を置いていってしまうことなく、新製品を発売できるようになりました」と語る。

「バーミキュラからバーミキュラに」水平リサイクルするのがリクラフトプログラム