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空気清浄機にアルコール消毒すると性能が落ちる? 冬のウイルス対策

10月26日に発売した「Dyson Purifier Hot+Cool Formaldehyde(ダイソン ピュリファイヤ ホット アンド クール ホルムアルデヒド) 空気清浄ファンヒーター HP09 WG」もセミナーで紹介された

ダイソンが28日にプレス向けに実施した「Dyson ウイルス対策セミナー」において、国立大学法人 電気通信大学の石垣陽特任准教授は「ウイルス除去とHEPAフィルター」について解説した。

国立大学法人 電気通信大学の石垣陽特任准教授

石垣特任准教授の専門は市民による環境の可視化。エアロゾルの除去、マスクの開発や医療機器の開発などに携わるほか、JICAのプロジェクトにより、アフリカやインドなど途上国での環境教育にも力を入れている。

「ウイルスが近づいてくる経路は接触、飛沫、エアロゾル(空気中を漂う微粒子)の3つ。中でも注目されているのがエアロゾル。エアロゾルの対策はマスク、換気、空気を清浄するの3通りの方法があります。1つだけのリスク防護だけでは抜け漏れが出てくるので多重防護することが重要。少なくとも2つ、3つの防護壁を組み合わせるのがリスク学の常識です」

「咳をした人の口から出る飛沫と呼ばれる大きな粒子と、エアロゾルと呼ばれている小さな粒子があり、小さな粒子は何時間も空気中を漂います。冬は、大きな粒子(飛沫)が乾燥して小さな粒子になって漂いやすくなるため、ウイルスが空気中に分布しやすくなります」(石垣特任准教授)

今回のセミナーではエアロゾルがテーマ。対策は、マスク、換気、空気の清浄などが大切
咳をした時には、大きな粒子と小さな粒子が飛び出す

これからの季節は乾燥するため、エアロゾル対策が必要というわけだ。対策の1つが換気。

「換気はエアロゾル対策に有効ですが地下だったり、換気扇がなかったり、窓が開かないなど、換気ができないという場合もたくさんあります。そういう時はHEPA(フィルター)で空気をろ過するしかない。HEPAは高効率なフィルターの総称。日本ではJISで定められています。ほかに、欧州規格もあります。HEPAフィルターは、エアロゾルがほぼ100%とれるので、特に窓が開けにくい冬はウイルス対策の切り札だと思っています」(石垣特任准教授)

2003年に改正建築基準法が施行されたが、それ以前の建物は医療・福祉施設でも24時間換気設備を備えていないものが多い
HEPAフィルターにはJIS規格と欧州規格があり、欧州規格は放電後の捕集効率で基準を定めている

石垣特任准教授は、続けて空気清浄機を使う時の注意点も説明する。

「最も大切なことは、空気清浄機にアルコールをかけたり、近くで使わないことです。日本のHEPAフィルターの場合、静電気で空気中の粒子をとっているのですが、アルコールをかけると放電してしまいます。微粒子の除去性能が半分以下になってしまうため、絶対にアルコールを近くで使わないでください。特に、医療従事者の方は、空気清浄機をアルコールで消毒することがあるので、やめてくださいとお伝えすることが多いです」

石垣特任准教授はさらに続ける。

「JIS規格と欧州規格では、捕集効率や粒子の大きさはほとんど同じですが、欧州は“除電後の”という点が異なります。今はアルコールで手指の消毒をすることが多いので、欧州規格のものを使うのがいいのではないかと個人的に思っています」

最近では玄関近くに空気清浄機を置く人も増えていると思うが、玄関でアルコールを使って手指消毒をした時の影響について石垣特任准教授に質問したところ

「アルコールは揮発性なので、消えてなくなることはありません。玄関のような狭い空間で空気清浄機があるとそちらに吸入されやすいと思います。どれくらいの濃度で何時間で除電されるかというような実験はしていませんが、アルコールの影響で除電される方向にあると思います」とのことだった。

除電前後の捕集効率をグラフにまとめたもの。唯一下がっていないH1は、欧州規格のグラスファイバーのHEPAフィルター。欧州規格のHEPAフィルターはアルコールの影響を受けにくいとする
このほか、「99%除去」という文言だけでなく、条件も確認した方がいいなど、空気清浄機を選ぶポイントを教えてくれた
空気清浄機は首振りモードを使い、特定の人に当たらないようにすることも大切
窓を開けて換気をする際は、外の空気が汚れていることがあるため注意が必要

欧州規格のH13 HEPAフィルターを使ったHP09 WG

セミナー後半ではダイソンエンジニアのDai Jin Lee(ダイ ジン リー)氏がマレーシアの開発センターからオンラインで登場。10月26日に発売した、同社の新製品「Dyson Purifier Hot+Cool Formaldehyde(ダイソン ピュリファイヤ ホット アンド クール ホルムアルデヒド) 空気清浄ファンヒーター HP09 WG」について説明した。

Dai Jin Lee(ダイ ジン リー)氏
新製品のHP09 WGと、フィルター。写真奥から酸化分解触媒フィルター(本体に装着)、H13 HEPAフィルターと活性炭フィルター、プレフィルター

HP09 WGは、空気清浄機、ヒーター、扇風機として使える1台3役の製品。価格はオープンプライスで、同社直販サイトでの価格は92,400円。

「ダイソンは2015年にPM0.1の粒子まで99.95%除去する空気清浄ファンを発売して以来、空気清浄ファンヒーターや加湿空気清浄機などの製品を拡充しています。H13 HEPAフィルターがそれを可能にしています」と、ダイ ジン リー氏。

HEPAフィルターは通常PTFEやグラスファイバーでできており、ランダムに並んだ繊維のマット状になっているという。

「HEPAフィルターを折ってプリーツ状にすることで、より多くのHEPAフィルターメディアを一定のスペースに収めることができ、汚染物質を捕捉するための表面積を増やせます。ダイソンのHEPAは全長9m、200回以上のプリーツ加工が施されています。さらに、ダイソンの空気清浄機は活性炭フィルターも使用しています。活性炭層はVOCやNO2などのガス状の汚染物質を捕集し、カーボンの結晶はガス、ニオイ、VOCを吸着します」(ダイ ジン リー氏)

同社は欧州規格のH13 HEPAフィルターに加えて、製品全体の密閉性を高めたことで、気流の経路を適切に密閉し、吸引した汚れをもらさず清浄して製品から排出している。

「密閉性を高めることで0.1μmの汚染物質を99.95%除去しています」(石垣特任准教授)

新製品のHP09には、これらのフィルター技術を搭載したほか、ホルムアルデヒドを検知する固体ホルムアルデヒドセンサーを搭載。専用のVOCセンサーにより、他のガスも正確に識別してLCDディスプレイにリアルタイムに表示。

独自の酸化分解触媒フィルターを備え、ホルムアルデヒドを捕らえて分解する。

8畳を清浄する目安は27分、暖房能力は最大10畳。LCDディスプレイに空気の状態をリアルタイムで表示する
左がホルムアルデヒドを分解する独自の酸化分解触媒フィルター

このほか、独自のAir Multiplierテクノロジーを採用。これは気流を増幅させる送風口で、遠くにある空気の汚れも引き寄せる循環力を持ち、部屋全体の空気をキレイにする。

同社では、ホルムアルデヒドを除去できる製品として、「Dyson Purifier Humidify+Cool formaldehyde 加湿空気清浄機 PH04 WG」を2021年に発売しており、今回のモデルで、ホルムアルデヒドを除去できる製品は2製品めとなる。

ゲストにモデルの福田萌子さんが登場。現在妊娠中の福田さんが「子供のためにタンスを購入した」というと、石垣准教授は「新しい家具からもホルムアルデヒドが放出されている。タンスを開けて(ホルムアルデヒドを除去する)空気清浄機を使うのがいい」とアドバイスをした
ホルムアルデヒドを除去する製品は本機で2モデルめ