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日立の家電が4月以降に値上げへ。ネットにつながる家電を強化
2022年3月8日 07:05
日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS)は、2022年4月以降、白物家電の卸価格の値上げを検討していることを明らかにした。今後、取引先への通知を行なうことになる。
対象となるのは、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジ、炊飯器の主要5製品が中心となり、空調機は除く。値上げ幅は製品ごとに異なる。また、同社直販サイトでの販売価格も、4月以降に順次値上げしていくことになるという。
日立グローバルライフソリューションズ 常務取締役COO ホームソリューション事業部長の伊藤芳子氏は「これまで生産の効率化、サプライチェーンの見直し、取引先との交渉の見直しなどによるコスト低減を図ってきたが、材料費の高騰分を吸収しきれない状況になってきた。部材高騰の影響、輸送コストの上昇はしばらく続くと見ており、これ以上、事業活動によるコスト削減が難しくなっている。苦渋の選択として値上げを検討することになった。単に価格を引き上げるだけでなく、低環境負荷、循環型社会、QOL向上に貢献する新たな製品価値を届けていきたい」と述べている。
引き続き“攻め”の姿勢。家電のネット接続で新しい価値
2021年度の国内白物家電事業については「主要5製品については前年並で推移しており、目標達成のため、年度末に向けてラストスパートをかけている」と説明。主要5製品の国内市場全体では、前年度の給付金需要による反動減などがあって前年比4%減と見られており、それを上回る実績であることを示した。
日立GLSでは、2021年度業績見通しとして、前年比12%減の売上高4,000億円、調整後営業利益では53億円減の282億円を見込んでいる。海外家電事業の売却による減収や減益影響があるものの、EBIT(利払前税引前利益)は前期比478億円増の877億円と増益の見通しだ。
2022年度は、在宅時間の増加などのプラス影響が続き、生活必需品である家電の需要は堅調であると見ており、白物家電では、前年並みの売上計画を策定する考えだ。
「2021年は、スマートストッカー(編集部注:スマホアプリで在庫が分かるIoT冷蔵庫)の発売や、冷蔵庫の大容量化、クラウドファンディングへの取り組みなど、新たな挑戦を行なってきた1年であった。だが、コロナ禍の長期化、部品価格の高騰、部品調達の遅れ、生産における苦戦など、想定外のことが数多く発生した。想定外のリスクの対応に追われた1年だったともいえる。想定外のリスクを吸収し、レジリエンスを維持できるバッファを組織のなかに作らなくてはならないことを感じた」とする。
一方で「2022年も、引き続き攻めの手は緩めない。コネクテッド家電では技術的革新に取り組み、お客様への新たな価値の提供に挑戦していく。サービスを強化し、コネクテッド家電の接続率も高めたい。デジタルによるコミュニケーションも強化していく。また、グリーンという観点では、再生材を採用した商品づくりにも挑んでいきたいと考えている。レジリエンスに対応する力をある程度備えてきたが、これをさらに強化したい」と述べた。
カメラ付き冷蔵庫など新しい取り組み。モノよりソリューションの価値を
今後の方針として、「グリーンとデジタルの強化」、「ライフソリューションの強化」、「パーパスの経営」の3点を挙げる。
グリーンとデジタルの強化では、資源循環型社会に対応したモノづくりの強化、サステナブルな社会の実現に向けた各種取り組みを推進する。2030年度までに、自社の事業所、工場におけるカーボンニュートラルを実現。2050年までにバリューチェーン全体でのカーボンニュートラルの実現も目指すという。また、日立インターナルカーボンプライシング(HICP)制度の導入も積極化。デジタル技術を活用した環境配慮型の製品およびソリューションの開発、製品のリサイクル強化などにも取り組むという。同社では、冷蔵庫のガラスドア部分のリサイクル処理において、ガラス板を自動で分離するシステムを日立製作所とともに開発し、これを導入している。
ライフソリューションの強化としては、「モノを売り切るモデルから、ソリューションとして価値を販売する方向へと舵を切る。変化した社会環境や新たな生活に対応したライフソリューションに取り組む」とした。
2月にはカメラを搭載した冷蔵庫を発売し、スマホアプリで冷蔵庫内の食材をチェックでき、買い忘れや二重購入を減らして、食材管理を手軽に行なえるようにサポートしているという。「2月から店頭展示を行なっているが、想定以上に好評。カメラに対する期待が大きい。また、同じ寸法で容量を拡大した点も評価されている。計画台数を上回る販売台数で推移している」(日立グローバルライフソリューションズ 取締役CMOの宮野譲氏)という。
同社では2021年4月に策定したパーパスとして、「ひとりひとりに、笑顔のある暮らしを。人と社会にやさしい明日を。私たちは、未来をひらくイノベーションで、世界中にハピネスをお届けします」を掲げている。
経営の取り組みについて伊藤常務取締役は「パーパスを起点に、変革と成長を実現する。SDGs時代に対応した革新的な製品開発や、顧客への販売体制やアフターサービスの強化、アライアンスパートナーとの協創を通じて、社会価値や顧客価値を創出し、提供していく」と述べた。
同社では、新コンセプトの小型冷蔵庫「Chiiil(チール)」を、クラウドファンディングで先行予約販売(編集部注:GREEN FUNDINGでの先行予約販売)し、わずか6日間で目標額に到達している。「食品を保存するためだけでなく、寝室で化粧品を保存するといったこれまでの冷蔵庫の既成概念を崩した形での使い方が想定される。キッチンで食品を保存するだけの使い方ではないのが特徴である。また、10色展開にも高い評価があり、どこにでも設置できる家具のようなデザイン性の高さも受けている」とした。
伊藤常務取締役は「成長における渇望感を常に持つ組織にしたいと考えている。ソリューションを提供する企業としてはまだまだ道半ばである。社名にグローバルライフソリューションズとついているからには、モノを売る価値よりも、ソリューションを提供する価値の方が大きい状況にしたい。まだ、ソリューシュンの売上比率が低い。グローバルライフソリューションズの名前に似合う企業になっていきたい」と述べている。