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宇宙からタイガーの真空断熱容器が帰還。ISSの実験サンプルを格納

タイガー魔法瓶の真空二重構造断熱・保温輸送容器が宇宙から帰還(写真はファルコン9ロケットにより打ち上げられるドラゴン補給船運用22号機)

タイガー魔法瓶は、宇宙実験サンプルを保冷状態で格納する「真空二重構造断熱・保温輸送容器」を、宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)、テクノソルバと共同開発。同社は29日、国際宇宙ステーション(以下、ISS)での実験サンプルを格納した本容器が、日本時間7月10日12時29分(米国東部夏時間9日23時29分)に宇宙から帰還したことを発表した。

日本時間6月4日2時29分(米国東部夏時間3日13時29分)に打ち上げられた、SpaceXの宇宙船「ドラゴン22号機」に搭載された「真空二重構造断熱・保温輸送容器」。ISSで約1カ月におよびタンパク質の結晶などの実験を行なったサンプルを格納し、再びドラゴン22号機に搭載され、日本時間7月10日にフロリダ州タラハシー沖のメキシコ湾に着水。無事に帰還した。本容器は米フロリダ州のNASAケネディ宇宙センターを経由し、JAXA筑波宇宙センターに輸送され、実験試料の分析や温度データの解析が行なわれる予定。

今回開発された真空二重構造断熱・保温輸送容器
ドラゴン22号機の宇宙での様子

同社は2018年11月、ISSから実験試料を地球へと回収する日本初の技術実証において、宇宙ステーション補給機「こうのとり」7号機が運ぶ小型回収カプセル内に搭載された真空二重断熱容器をJAXAと共同開発した。当時は、保冷剤を用いて「4℃±2℃の範囲で4日間以上の断熱性能、かつカプセル内に入った状態で、最大40Gという着水時の衝撃に耐える強度」という条件をクリアし、宇宙実験サンプルをダメージなく地球に持ち帰ることができたという。

今回、第2フェーズとして新たな保冷性能条件や容器再利用などの要求事項を満たした真空二重断熱容器の開発をJAXAが依頼。ISSとの往復時に、恒温での輸送が必要なタンパク質サンプルを12日間以上に渡って、20℃±2℃に保つという厳しい条件を求められた。JAXAやテクノソルバと議論を重ね、複数回にわたる温度実験を経て完成に至ったとしている。

第2フェーズで新たに設定された要求事項は次の3つ。

・厳格な保冷温度管理
打ち上げからISSまでの実験試料の温度維持のため、保冷剤を同梱することで20℃±2℃を12日間以上保つ。ISSから地上に回収するまでの期間も、20℃±2℃で7.5日以上保つ。

・複数回利用に耐え得る設計
長期的な利用を想定し、1回限りの使い切りではなく、3年以上または6回以上の再利用を可能にする。

・大幅な軽量化、サイズダウン
真空断熱技術による高性能の保冷機能を保ちながら、容器の重さを3.16kg以下と容器サイズをコンパクトに製作する。

これらの要求をクリアした新開発の真空二重断熱容器「NPS-A100」は重さ約2.9kg、外径約130mm。2018年納品の「NPL-A100」が重さ約10kg、外径約290mmであったため、7kg以上の軽量化を実現した。

新開発の真空二重断熱容器「NPS-A100」(左)と、2018年の「NPL-A100」