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バルミューダ寺尾社長「なるべく早くクリーナー事業を100億円ビジネスに」
2020年10月16日 15:50
バルミューダは10月15日、新製品としてコードレススティッククリーナー「BALMUDA The Cleaner」を発表した。
既報の通り、「BALMUDA The Cleaner」は、2本のブラシで構成する「デュアルブラシヘッド」と、自由自在な動きを生み出す360度スワイプ構造により、浮いているようなかけ心地を実現したコードレススティック掃除機だ。同社 代表取締役社長・寺尾 玄氏に、新製品への思いを聞いた。
“クイックルワイパー”派が考えるスティッククリーナー
寺尾氏は以前から「自分たちが心から欲しいと思えるものをつくる」と話しているが、掃除機の開発については「当初は気乗りしなかった」と振り返る。そのため、「自分にやる気を起こさせる」ことがひとつのテーマだったのだという。
バルミューダが新しいジャンルへ挑戦するにあたり、社内のヒアリングで最も希望する声が多かったのが掃除機。つまり、寺尾氏が“欲しい”と思って開発したトースターや扇風機などとは異なり、ビジネス視点から決定したプロジェクトなのだ。
「最初は”バルミューダを発展させたい”という思いから始まったプロジェクトですが、見事に欲しいものをみつけたと思っています。全ての商品は必ず自分が欲しいものにします。”欲しい”にたどり着かなかったらやらなかったと思います」と寺尾氏。
寺尾氏がなぜ掃除機を使わないかといえば、掃除する前の掃除機の組み立てや、取り回しに対する不満があったのだという。その不満を解消するべくアイデアを練るうちにホバークラフトに着目。「滑るように、浮いているように動く自然な掃除機があったら買う」と思ったとしている。
さらに「“クイックルワイパー派”が欲しいと思った掃除機なのだから、自然と従来の掃除機との差別化はできている。コンペティターのことは気にしていない。気にしているのはお客様に支持していただけるかどうか」と続ける。
開発期間2年、紙パック式ですすめていたが直前でサイクロン式に変更
「BALMUDA The Cleaner」の開発は約2年かかったというが、その中で最も苦労した点はどのようなことだろうか、という問いにしばらく考えたあと、寺尾氏は2点挙げた。
「直前まで紙パック式で進めていたのですが、サイクロン式に変更しました。サイクロン式にしたのは、吸引力の持続性といったトータルの性能、メンテナンス性、お客様が支払うコストを考えたためです。紙パック式でほとんど完成していたので、やり直しが入ったことでスケジュールや開発費に影響しました」
さらに、次のように続ける。
「開発の最初に、いろいろなプロトタイプを出しました。バカなことをやったせいで時間を無駄にしたともいえますが、最初にいかにバカな夢をみるかが、ものづくりにおいては大事なんです。たまにすごい大当たりがでるので。マーケティングで企画が決まるのではなく、ひとつ前に戻って自由に考えようというのが当社の開発スタイルです。ものすごく苦しいですが。3~4つのチームに分けて毎週1つはプロトタイプを出すということをしていたので、工数としてはものすごい数やりましたね」と寺尾氏。
このプロトタイプの苦労話は同社の公式サイトにも掲載されており、必見だ。
寺尾氏は、「自分たちが欲しいものをつくるという気持ちがなかったら、バルミューダはたたんだほうがいい」とも話す。ちょっと過激で驚くが、胸の内を説明してくれた。
「開発はとても大変です。会社の期待を背負ってつくり、できたモノに対していいだの悪いだの言われて、非常に寂しくて辛くて、できるならやらない方がいいというもの。特にプロジェクトリーダーは、予算、クオリティ、スケジュールをみなくてはいけないし。そのうえ私(社長)からの圧力もある。よく辞めないでいてくれると思う。そんな辛い開発を乗り切るには本当にほしいものじゃないとできないんです」(寺尾氏)
寺尾氏はまだまだつくりたいものがあり、それに向けて事業を拡大していくと意欲をみせる。「今はモチベーションにあふれていて、働いていて楽しくて仕方ない」と続ける。
今後の展望としては、「なるべく早い段階でクリーナー事業を100億円ビジネスにする」としている。現在もクリーナー事業で開発中のアイテムがあるそうだ。
「国内市場は想定以上に好調」
外出自粛期間やテレワークの推進など、家の中で過ごす時間が増えたことで、キッチン家電などを購入する人が増えており、バルミューダの直近の売上は「想定以上に良好」だという。
「家の中で過ごす時間が増えたことで、どうせなら“いい体験”ができる製品が欲しいと思う人が増えたのだと思います。当社は、安さではなく、便利さだけでもなく、時短だけを訴求したのではなく、生活もしくは人生を良化させるための道具、良質な体験を訴求してきました。ここにきて、その考えが受け入れられて来ているのだと思います。
想定以上に(売上が)好調という結果を受けて私たちが考えたのは、これまでやってきたことが正しかったということ。今後も、自分たちの考え方、やり方を変更せずすすめていくというのが、私たちが認識している思いです」と寺尾氏。
バルミューダは、国内のみならず韓国、台湾、ドイツ、米国でも販売しているが、海外市場については、「国内ほどはよくない」としている。
「4月から米国でキッチン家電の販売を始めましたが、社会的情勢などを鑑みて予定したプロモーションを全て取りやめています。その割には善戦している方だと思いますが、国内が良すぎるので、国内と比べるとそれほどでもありません。これから世界情勢は波乱にとんでくると思うので、サーフィンと同じで、きた波に思いっきり楽しんでのるのが海外戦略だと考えています」と語る。
新製品の「BALMUDA The Cleaner」の海外展開については「現時点では積極的な計画をもっているわけではない」としている。