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世界初、シャープのプラズマクラスターが新型コロナウイルスに減少効果

シャープが大学と共同で行なった試験風景

シャープは7日、同社のプラズマクラスター技術が、空気中に浮遊する新型コロナウイルスに対して減少効果を持つことを実証したと発表した。同社は「イオン放出式の空気浄化技術において世界初」としている。

同社は、長崎大学感染症共同研究拠点 安田二朗教授(兼 熱帯医学研究所教授)、同研究拠点 南保明日香教授(日本ウイルス学会理事)や、島根大学医学部 吉山裕規教授(日本ウイルス学会理事)と共同で、プラズマクラスター技術搭載ウイルス試験装置を作成。

他社でも新型コロナウイルスに対する実証効果を発表されたものはあるが、今回の実証の特徴は、固形物に付着した状態ではなく「空気中に浮遊する新型コロナウイルス」に対して行なったこと。プラズマクラスターイオンを約30秒照射し、感染性を持つウイルス粒子の数(感染価)が90%以上減少することを世界で初めて実証したという。

開発された装置での噴霧試験後のプラーク(細胞溶解斑)画像。プラークの数は、感染性ウイルスの数を示す

実験は、ウイルス液の噴霧装置から、シャープが開発したプラズマクラスターイオン発生装置の中にウイルスが入ったエアロゾル(粒形平均2μm)を発生。そこから、ウイルス液回収装置で回収したウイルス液中の感染価を、プラーク法で測定した。

その結果、プラズマクラスターなしの場合は1.76×104pfuに対し、ありでは1.53×103pfuとなり、91.3%のウイルス不活性化が確認された。

試験装置のイメージ図
プラズマクラスターイオンの抗新型コロナウイルス効果

新型コロナウイルスは、米ジョンズ・ホプキンス大が行なっている2020年8月31日時点の集計によると、2019年12月に発生が確認されてから、2020年8月には感染者数が世界で2,500万人、死者は84万人を超えている。

シャープはプラズマクラスター技術について、2004年にコロナウイルス科の「ネココロナウイルス」に対する効果を実証、翌2005年には新型コロナウイルスと姉妹関係にある「SARSコロナウイルス(SARS-CoV)」に対する効果も実証している。

今回の試験装置では、空気中に浮遊する新型コロナウイルスに対する効果を4月より実証。同社は2000年から約20年に渡ってプラズマクラスター技術の効果を世界の第三者試験機関と共同で実証するアカデミックマーケティングを実施。これまで、新型インフルエンザウイルスや、薬剤耐性細菌、ダニアレルゲンなどの有害物質の作用抑制、小児喘息患者の気管炎症レベルの低減効果などの臨床効果を実証してきた。あわせて、プラズマクラスターの安全性についても確認してきたという。

今回の効果検証の内容
プラズマクラスターの基本原理

市販されているプラズマクラスター搭載製品での効果は?

今回の実験は濃度の高いプラズマクラスター発生装置と狭い空間で行なわれたもので、現在市販されているシャープのプラズマクラスター対応機器を使って、どの程度の効果があるかは検証されていない。まだワクチンがない状態で、実空間において同ウイルスを使って検証することは、ほぼ不可能な状態だという。

店頭などで実際の商品に「新型コロナウイルスに効果がある」と表示するためは、医療機器の認定を取る必要がある。シャープも検討はしたものの「ハードルが高く難しい部分があり、現在は認定取得はしていない」という。一方で、シャープによれば「プラズマクラスターイオンは高濃度にしても安全性は確保できる」としており、長崎大学の安田二朗教授は「効果のある濃度を発生させ、維持する空間を実現できれば、実空間でも効果を出せる」との見方を示している。

シャープは今後、可能性のある未知のウイルスなどに対しても「専門家の方々とのネットワーク強化」と「デバイス技術の進化」に取組み、プラズマクラスター技術の効果効能の向上を図っていくとしている。

長崎大学感染症共同研究拠点 教授 安田二朗氏コメント

付着したウイルスへの対策としては、アルコールや洗剤(界面活性剤)等の消毒薬が有効ですが、エアロゾル(マイクロ飛沫)を介した感染を想定した対策としてはマスク等の着用以外に有効策がありません。今回、プラズマクラスター技術が空気中に浮遊した状態の新型コロナウイルスを不活化することが実証されたことは、一般家庭だけでなく医療機関などの実空間で抗ウイルス効果を発揮する可能性があると期待されます。

長崎大学感染症共同研究拠点 教授 安田二朗氏