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ダイキン、通期営業利益を1,980億円に上方修正。'20年度の住宅用空気清浄機販売は前年比2倍超へ

ダイキン工業が2020年度の通期業績見通しを上方修正

ダイキン工業は、2020年度(2020年4月~2021年3月)の通期業績見通しを上方修正した。売上高は8月公表値に比べて500億円増となる前年比5.9%減の2兆4,000億円、営業利益が280億円増となる同25.4%減の1,980億円、経常利益は280億増となる同26.4%減の1,980億円、当期純利益は160億円増となる同23.9%減の1,300億円とした。

十河政則社長は、「攻めと挑戦の姿勢で施策を徹底実行することで、年間営業利益では2,000億円以上の達成に挑戦する」と、さらなる上乗せに意欲をみせた。

新型コロナウイルス影響が拡大するも、拡販などがプラス要因に

新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、5月時点では、多くの企業が通期業績見通しの公表を見送っていたが、同社の十河社長は、「不透明ながらも現実を直視し、そのなかで定めるべき目標は定め、決めるべきことを具体化し、実行に移すのが経営である」とし、5月には「実行計画」として、状況に応じて計画を見直すことを前提としながら、具体的な数字を発表。変化する状況に柔軟に対応して計画を変更し、8月の第1四半期決算発表時には、業績見通しを上方修正。そして、今回の上方修正した発表値を「確定」と位置づけた。

「通常ならば、上期業績が固まった11月上旬に確定値を発表することになるだろうが、1カ月早く年間予算を確定し、これをコミットメントとして公表した。経営の責任としてこの数字をやり遂げる」と宣言した。

営業利益は、5月時点では1,500億円としていたが、8月には1,700億円に上方修正。今回は、1,980億円にさらに上方修正した格好だ。5月公表値に比べると480億円のプラスとなるが、コロナ影響はマイナス70億円、為替でマイナス30億円と想定よりも影響が拡大。しかし営業力強化や販売力強化、空気・換気製品の拡販といった「拡販」要因で395億円のプラス、固定費などでは170億円のプラス、コストダウンや原材料で15億円のプラス効果があり、まさに、実行力による上方修正となっている点は特筆できる。

十河社長は「年間営業利益では2,000億円以上の達成に挑戦する」と意欲をみせる

2020年度の住宅用空気清浄機販売は前年比2倍超へ

同社では2020年5月に、コロナウイルスの感染急拡大を踏まえた経営の構えとして、「守りの施策」43テーマ、「攻めの施策」31テーマ、「体質強化・体質改革」として17テーマを打ち出したほか、重要経営課題として、スピードと瞬発力をあげてトップ経営陣が自ら入り込んで取り組む「6つの緊急プロジェクト」に取り組んだ。今回の業績見通し修正会見では、十河社長が6つの緊急プロジェクトの成果について時間を割いて説明した。

1つめの「全グローバルでの調達・生産・在庫・物流の
構えの強化」では、グローバル5極(日本、欧州、中国、アジア・オセアニア、米国)における調達、生産、販売の情報を瞬時に把握する体制を敷き、需要の変動や、物流・生産の規制などの状況変化に柔軟に対応。機会損失を回避して、販売拡大につなげたという。

「新型コロナウイルスの影響でサプライチェーンが混乱するなか、必要な部品を確保、生産し、販売の第一線に商品を送り込むことができ、品不足になることがなかった。現在、中長期的な発展に向けて、グローバルで、柔軟で、強靭なSCMの構築を具体化させている」とした。

「需要の減退・縮小と世の中の変化の中でライバルに打ち勝ち、価格を維持しながらシェアアップを実現するための販売力・営業力の強化」とする取り組みでは、「需要が減退するなか、顧客密着で需要をきめ細かく取り込んだ。この取り組みをもとに、下期は、日本、欧州、中国、アジア・オセアニア、米国の空調主要5地域で、前年以上の実績を達成する見込みである」とした。

日本では、業務用では需要の回復が遅れているものの、この分野での圧倒的なナンバーワンシェアの維持とともに、住宅用でもシェアナンバーワンを目指すと宣言。日本における上期売上高は前年同期比91%であったが、下期は101%を見込み、通期で市場全体を上回る96%を見込んでいる。

欧州では、環境意識の高まりを追い風にして、得意とする環境技術を活かしながら、住宅用および業務用での拡販に加えて、「需要が急拡大しているヒートポンプ暖房を大幅に拡販する」と述べ、年間では欧州市場全体で、前年比103%の売上高を見込む。また中国では、「最も早く市場が回復しており、年間売上高でも前年度を上回る」とし、強力な独自の販売網を活用したオフラインでの営業活動に加えて、オンラインでの営業活動や、eコマースでの販売を促進したという。「中国でのベストプラクティスを、他地域に展開していく」とする。

5月公表「コロナ危機に立ち向かう経営の構え」

3つめの「空気質・換気への意識の高まりにより、新たに生まれる需要を徹底的に刈り取るための全世界横串での空気・換気商品の拡販、差別化新商品の開発・投入、ソリューションメニューの具体化・展開」においては、世界的な空気質への関心の高まりを捉えて、空気・換気商品をいち早く投入した結果、売上高は、前年度比160%を達成する見通しであり、2020年度の住宅用空気清浄機の販売は前年同期比205%になる見込みであることを示した。

【訂正】初出時「10月の住宅用空気清浄機の販売は前年同期比205%になる見込み」としていましたが、正しくは「2020年度の住宅用空気清浄機の販売」でした。お詫びして訂正いたします(10月7日15時02分)

「住宅用空気清浄機は、生産の構えも強化していく。現在は中国で生産しているが、2020年内にマレーシアでの生産を開始し、今後は日本国内での生産も必要であると考え、国内生産を決定した。空調トップメーカーとして、潜在的な顧客ニーズを把握し、スピーディな商品開発やソリューション提案をグローバルで展開し、将来の一大事業につなげていく」と述べた。

空気清浄機については、「さらにバージョンアップし、差別化商品の開発に徹底的に取り組んでいる」としたほか、ソリューション分野にも力を注いでいることに言及しながら、「センサーによって、換気や気流の状態を見える化することができる。たとえば、CO2濃度を測ることで、換気がどの程度できているのがわかる。CO2と連動させた商品は、いち早く展開しているが、今後は、病院は病院用、保育所や幼稚園などにはそれらのニーズに適応した形で、顧客価値を創出するようなソリューションを作り上げたい」と述べている。

なお、日本国内での空気清浄機の生産については、滋賀製作所を予定。15万台を最低数量として、さらに上乗せを計画しているという。「現在は、100%が中国での生産委託体制となっており、12月にはマレーシアの自社工場で生産を開始し、年間15万台の規模から開始する。アジアでは、約20万台の販売が見込める。また欧州では、今年度は5万台増が見込め、2021年度以降は、10~15万台の規模の販売を見込んでいる。さらに欧州での生産も検討している」と述べ、「空気清浄機の全世界での販売規模は78万台を見込んでいる。今後、100万台以上の規模に拡大したいと考えている」とした。

ダイキン工業の十河政則社長

2022年には新型コロナ流行以前の営業利益水準へ

日本では、換気機能を搭載したルームエアコンのラインナップ拡充と、空気清浄機の新商品の投入を予告。後づけ可能な全熱交換器の新機種を投入するという。

日本市場向けのルームエアコンについては「換気に対する関心が高まっている。そうしたニーズに対して、唯一、換気ができるエアコンを提供しているのがダイキンの特徴である。他社には真似ができない。『うるさらX』だけでなく、ミドルゾーンやボトムソーンまで、すべてのゾーンにおいて、換気ができる商品を出す」とした。

さらに飲食店や美容院といった店舗、クリニックや保育所などにも「換気」の提案を行なっていく姿勢を強調。「店舗における換気と言ったら、いままでは換気扇だけであり、換気扇を回せば、夏ならば熱風が入ってきてしまう。省エネで、かつ快適性を失わずにどう換気をするかといった提案が必要である。コロナ禍において、もっと換気に関与していきたい」とし、「2020年9月には、全熱交換器の露出形ベンティエールを開発し、投入した。さらに、2021年3月には、屋外据え置き形も開発する予定だ」と述べた。

そして、「空調ナンバーワンメーカーとして、換気や空気清浄機の市場を牽引し、さらに事業を大きく発展させたい」と語った。

緊急プロジェクトの4つめとなる「固定費の抜本的削減(損益分岐点・売上高固定費比率の抜本的低減)」では、いまがチャンスと捉え、中長期的な観点で固定費構造を見直し、身軽で強靭な体質を目指すとしたほか、「事業環境の先行きが従来に無く、不透明な中での大型投資(設備投資、投融資)の優先順位付け」では、いまだに厳しい状況にあるとしながらも、先行投資については、強くなるチャンスと捉え、事業環境や市場動向を踏まえて、積極的に実行する姿勢を強調。

6つめの「グループ全体の資金需要をきめ細かく把握した資金調達の構え」については、「新型コロナウイルスの感染拡大の長期化に対応するための資金はすでに確保している。提携、連携、M&Aの資金需要にも柔軟に構えることができる」とした。またサービス事業の売上高は前年比102%となっていることを示しながら、「厳しいなかではあるが、サービス事業も伸ばしていける」と述べた。

一方で今後の事業成長に向けて十河社長は、「リーマンショックの影響を受けた2009年度は、2007年度に比べて営業利益が3分の1になった。そこからもとに回復するのに4年かかった。今回の新型コロナウイルスの影響によって、2018年度から営業利益は28%減少した。今年は従来とは異なる1年であり、まだ不安定である」と前置きしながらも、「ダイキン工業の強みである挑戦力と、攻めと守りの実行力によって、2022年には、新型コロナウイルスの流行以前の営業利益水準に戻す。2024年に迎えるダイキン工業の創業100周年には、売上高、営業利益において、最高業績を更新し、大きく成長発展しているなかで迎えたい。換気に対する需要や空気清浄機、省エネ、ヒートポンプなど、手元に持っている成長のドライバーは数多くある」と意欲をみせた。売上高では2019年度の2兆5,503億円、営業利益では2018年度の2,763億円が過去最高だという。

創業100周年に向けさらなる成長を目指す