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シャープのプラズマクラスター、オミ株の減少効果を実空間に近い環境で実証
2022年10月14日 07:30
シャープは、同社独自のプラズマクラスター技術について、「空気中に浮遊する新型コロナウイルスの減少効果の実証」と「喘息症状緩和につながる可能性を確認」したことを、10月13日に発表した。
プラズマクラスター技術は、自然界にあるのと同じ+(プラス)と-(マイナス)のイオンを、プラズマ放電により作り出して放出するもの。同イオンを放出することで、浮遊ウイルスや浮遊カビ菌の作用を抑制するとしている。またこれまでも、カビや水中菌の抑制や、美肌、育毛などの効果が実証されてきた。
今回の、空気中に浮遊する新型コロナウイルスの減少効果の実証と、喘息症状緩和につながる可能性の確認については、ともにアメリカのコロンビア大学医学部で試験が行なわれた。
空気中に浮遊する新型コロナウイルスの減少効果を実証
新型コロナウイルスの感染経路を大別すると、空気中の浮遊ウイルスによる「飛沫感染」と付着ウイルスによる「接触感染」の2つがある。シャープはこれまでも、長崎大学や島根大学と共同で実証試験を行ない、それぞれ「空気中に浮遊する新型コロナウイルスの減少効果」と「付着した唾液に含まれる新型コロナウイルスに対する効果」を実証している。
今回は、より実生活に近づけた環境で試験を行ない、新型コロナウイルス(オミクロンBA.1株)に対する減少効果が認められたという。
これまでの検証との具体的な違いは、長崎大学での試験が3Lの空間だったのに対して、今回のコロンビア大学では102Lへと、広い試験空間で行なわれている。また長崎大学での試験では、イオン濃度が1,000万個/cm3の発生デバイスを使用したが、今回は市販製品に搭載されているデバイスと同等の、25,000個/cm3で試験したという。
試験の結果、ウイルス感染価の顕著な減少(15分の照射で99.3%減)が確認され、空気中に浮遊する、変異して感染力の高いオミクロン株に対してもプラズマクラスター技術が有効に作用することが実証されたとする。
以上の試験を行なったコロンビア大学医学部アービング医療センター 感染症内科学の辻守哉教授は、オンライン発表会で以下のように感想を述べている。
「市販されているプラズマクラスター発生装置を使って、たった15分間照射しただけで、99.3%(のウイルス価の減少を確認できた)。その結果に、僕は正直言ってびっくりしました」
さらに、今回は102Lという大きな箱の中での試験で、上記の結果を得られたことで、次のように期待を示していた。
「この先、もっと大きな空間で試験した場合、体積に応じて時間はかかるので15分とはいきませんが、ある程度、何時間もプラズマクラスターを照射したら、かなり効果を示すだろうと、僕はそう感じました」
喘息症状緩和につながる可能性を確認
今回、コロンビア大学では「喘息症状緩和につながる可能性」を検証する試験も、同大学医学部 アービング医療センター 呼吸器アレルギーおよび集中治療医学部門 内科学の森宗昌准教授によって行なわれた。試験は、人工的に培養したヒトの気道上皮細胞に、プラズマクラスターイオンを照射する形で実施された。その結果、喘息症状緩和に繋がる可能性を確認したという。
発表会で、プラズマクラスターが喘息症状の緩和につながるメカニズムについて問われた森准教授は、「メカニズムについては、実はまだ検証中です」としつつ、次のように続けた。
「具体的になぜなのかに関しては、よく分かっておりません。そこは研究のおもしろいところでもあり、今後、今回の結果をどう解釈するかというのは非常に重要なところです」
さらに、メカニズムを解析していくために、今後必要になる試験方法を語った。そうした試験と解析を繰り返していくことで、プラズマクラスターがどう作用したのか、そのメカニズムが明らかになっていくだろうと述べている。
「実際に僕らがやっているのは基礎実験なので、具体的に患者さんに対して症状の緩和があるかについては、臨床試験が必要です。ただ、シャープさんは以前、小児喘息のモデルで効果を実証されたと聞いているので、それと今回の結果は、関連性があるだろうと考えています」
森准教授は最後に、プラズマクラスターの可能性に、さらなる期待を寄せていた。