ニュース

シャープのエアコンAirest、ウイルス飛沫に高い捕集効果。空気清浄機の最適な設置場所も検証

シャープのAirest「AY-L40P」

シャープは29日、プラズマクラスターイオン対応の空気清浄機を備えたエアコン「Airest(エアレスト)」が、一般的なエアコンと比べてウイルス飛沫粒子を効果的に捕集できることを確認したと発表。ウイルス飛沫粒子解析の専門家である京都工芸繊維大学の山川勝史准教授と共同で行なったシミュレーション結果について説明した。同社製空気清浄機についても、検証により同様の結果が得られたという。

一般的なエアコンでは、本体に引き込まれた飛沫粒子がエアコンの風に乗って再び部屋中に飛散したのに対し、空気清浄機付きのモデルは部屋の空気を循環させ空気清浄フィルターで飛沫粒子を捕集し、部屋内にはほとんど飛散しなかったという。

また、一般的なエアコンと当社製空気清浄機を併用した際の、設置場所によるウイルス飛沫粒子への影響についても検証。エアコンの風向を上向きにし、空気清浄機をエアコンの下に設置することが有効であることを確認したという。

なお、今回の結果はシミュレーション上のもので、実使用環境とは異なる。

シャープのAirestと空気清浄機の特徴

空気清浄機機能付きエアコンと、斜め後ろに気流を作る空気清浄機で効果

今回の検証は、十分な換気ができない室内などの空間で、エアコンの気流がウイルス飛沫粒子にどう影響するかについて関心が高まっていることなどを受けて行なったもの。山川勝史准教授と共同で、居住空間内においてエアコンや空気清浄機の気流がウイルス飛沫粒子に与える影響についてシミュレーションした。

京都工芸繊維大学の山川勝史准教授

空気清浄フィルターを搭載していない同社製の一般的なエアコンと、'19年12月に発売した空気清浄フィルター搭載エアコン「Airest L-Pシリーズ」を比較。また、機器の真上方向に風を送り出す空気清浄機と、シャープ独自の“後ろななめ20°(コアンダ)気流”に対応した空気清浄機「KI-NP100」を使用し、解析/比較した。

プラズマクラスターイオンと気流の流れ(イメージ)

シャープは、エアコンと空気清浄機の気流の速度や方向を計算し、実使用を想定した居住空間内での気流の動きを解析。山川准教授は、同社が解析したデータに基づきウイルス飛沫粒子を放出した際の動き(機器での捕集、周囲への付着)の解析を行なった。リビングダイニング(14畳)において、ダイニングテーブルに座った人の位置/高さからウイルス飛沫粒子が飛散された状況を想定している。

暖房運転と冷房運転において、一般的なエアコンでは、気流に乗ってエアコンに吸い込まれたウイルス飛沫粒子が捕集されず、エアコンの風に乗って再び部屋中に飛散。空気清浄機搭載エアコンAirestは、部屋の空気を循環させ空気清浄フィルターでウイルス飛沫粒子を効果的に捕集できることが確認されたという。なお、フィルターに付着した一般的なウイルスは、乾燥により、長くても数日後に不活性化すると見られている。

山川勝史准教授は今回の検証結果について「空気清浄機によって飛沫が捕集できることは分かっていたが、密閉した空間でも今回のような機器で飛沫を減らせることが見いだせたのは、想像以上に大きな成果」と述べている。

暖房運転時(風向は下向き)におけるウイルス飛沫粒子の動き。ウイルス飛沫粒子は、浮遊しているものを赤色、付着したものは青色で表現
冷房運転時(風向は上向き)におけるウイルス飛沫粒子の動き

次のシミュレーションでは、「真上吹き出し気流」の空気清浄機と、シャープ独自の「後ろななめ20°(コアンダ)気流」の空気清浄機を比較。

一般的なモデルでは、天井面に当たったウイルス飛沫粒子が多方面に飛散しているのに対し、後ろななめ20°(コアンダ)気流の製品では、壁や天井をつたって空気が循環し、飛沫粒子を飛散させずに効果的に捕集できたという。

シミュレーション結果(気流の異なる空気清浄機の比較)

さらに、一般的なエアコンと、後ろななめ20°(コアンダ)気流対応の空気清浄機を併用した際の、空気清浄機の最適な設置位置も検証した。

エアコンの風向を上向きにし、空気清浄機をエアコンの真下に設置すると、部屋の空気を素早く循環する気流が生まれ、ウイルス飛沫粒子を効果的に捕集できることが確認されたという。

シミュレーション結果(空気清浄機をエアコン対面/真下に設置した時の比較)

山川勝史氏のコメント(京都工芸繊維大学 准教授、「富岳」プロジェクトメンバー)

ウイルス飛沫粒子は空気中を漂うため、吸い込んでしまう恐れがあります。そのため、その浮遊ウイルスを捕集するか室外へ排出させることが重要となります。特にエアコンを使用する夏や冬は換気頻度が下がるため、換気以外の対策が必要になります。今回、室内におけるウイルス飛沫粒子の振る舞いをシミュレーションし、窓開け換気が困難な環境下においても、浮遊ウイルスを減らす方法が見えてきたと考えられます。

エアコン販売台数は6月に3倍の伸び。空気清浄機はPM2.5流行時以上の成長も

日本電機工業会の統計によれば、空気清浄機の出荷台数は例年4月~8月にかけて落ち着く傾向にあるが、今年は8月時点でも前年比2倍の伸びを記録。昨今の新型コロナウイルスの影響で関心が高まっていることを示している。

シャープの空気清浄機販売も2ケタ成長が続いており、同社は市場全体の今後について、PM2.5が注目された298万台を上回る、300万台規模まで拡大すると見込んでいる。また、同社エアコンについては、5月から6月にかけて販売台数が3倍に伸びたという。

既報の通り、同社は「プラズマクラスター技術が、空気中に浮遊する新型コロナウイルスに対して減少効果を持つことを実証した」と9月7日に発表。こうしたプラズマクラスターによる空気浄化に加え、今回検証した独自の気流技術を含めた空気に関する検証を、今後も進めていくとしている。