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バルミューダの寺尾代表が、子ども用デスクライト「The Light」に込めた想いとは
2018年9月7日 12:56
バルミューダが、GreenFanを始めとする空調家電、The Toasterを始めとするキッチン家電に続き、照明家電に本格参入することを発表。同時に、子供向けLEDデスクライト「BALMUDA The Light」をリリースした。発売は10月下旬。価格は37,000円(税抜)。
BALMUDA The Lightの発表会では、同社の寺尾 玄代表が登壇し、プレゼンテーションを行なった。
「はじめに見た夢が鮮やかであればあるほど、その夢は強くなります。何かに憧れるということは、その対象を、目で見ることから始まるのではないでしょうか。
どんなアーティストも野球選手も宇宙飛行士も、自分がそうなりたいと思った対象を、写真や映像などで、まずはじめに見て、その姿に憧れるんだと思います」
そして寺尾氏は、子どもたちが何かに興味を懐き、夢中になる過程で、何かを書くということに注目した。文章や絵を書いて本や写真を見る、あるいは勉強するうちに、子どもたちは知らず知らずと机にかじりつく。そうした姿を見る親が、共通して心配するのが、子どもたちの視力の低下だ。
「子どもたちが前かがみになってしまう理由は、子どもの視界は大人よりも狭いこと。さらに身体が小さい。しかも夢中になります。だから、どうしても顔を机に近づけないと、彼らが見たいものが見られないのではないでしょうか? 姿勢を良くしなさいという、私たち大人の言い方は、必ずしも正しくなかったのかもしれません」
そんな仮説から、子どもたちにとって最適な照明、子どもたちの視力低下を防ぐ照明を考えたという。
同氏は、従来のデスクライトでは、子どもの頭上に光源が位置することが多いという。すると、自分の頭が影になって手元が暗くなる。これを回避するために、光源を前方にずらすと、今度は前方から照らすことになり、光源が視界に入ってきて眩しいという状態になる。
「新しいデスクライトを開発する上で我々が空想したのが、前方のなるべく低い位置から、手元に向かって斜めに差し込んでくる光です」
そこで、BALMUDA The Lightでは、光源であるLEDを真上に向かって配置し、ミラーを使って反射させているという。特殊なミラー形状で光の方向と広さを制御し、光源を手元に向けることなく手元を照らす。
「手探りの状態で照明の開発をする中で、世界で最もモノがよく見えなくてはいけない現場はどこかを考えました。おそらく手術灯の下だろうということで、山田医療照明と共同開発させていただきました」
光源となるLEDを、いくつ、どんな間隔で、どう配置するか、光を反射させるミラーの角度など、デスクライトを開発するなかで様々な想定を行なった。そうした数千のアイデアを、山田医療照明でシュミレーションし、効果的なものだけに絞り込んでいったという。そして絞り込まれた1/10ほどのアイデアだけを試作した。
「アイデアを一つ一つ試作していくと、コストが掛かりすぎてしまいます。山田医療照明には優れたシュミレーターと、長年培ってきたノウハウを持った技術者がいます。山田医療照明と共同でなければ、BALMUDA The Lightは完成しなかったでしょう」(寺尾氏)。
太陽光LEDの採用で、モノの色を正確に見られる
BALMUDA The Lightの演色性は、Ra97と非常に高い。それだけ、太陽の光の下で見るモノの色と近いということ。
「光源に太陽光LEDを採用しています。一般的な青色LEDでは、ブルーの光源に蛍光体を乗せることで白色と感じる光となります。もとが青色ですので、青色が非常に強いです。網膜に影響を与える恐れがあると言われているブルーライトが、極端に強いのです。
対して、BALMUDA The Lightの太陽光LEDでは、ブルーライトのエネルギーが約半分です。目に優しく、かつ従来よりも本来の色がはっきりと再現できます。
モノ本来の色を子どもたちに見せることができるのです」(寺尾氏)。
子どもたちがBALMUDA The Lightを自分のモノとして好きになる仕掛け
デザインについても語られた。BALMUDA The Lightのデザインコンセプトは「90%までのデザイン」だという。同社がデザインの90%までを形作ったけれど、子どもたちに残り10%を仕上げてほしいという。
「完成した形は、鉢形のベースとシンプルすぎるヘッド、これらを簡単なアームでつなげているだけです。これだけだとデザイン的にはシンプル過ぎてNGです。
これに、子どもたちの個性が表現される、ステッカーをセットにしています。彼らがとても好きなシール貼りを、自分のモノで自由にしてもらいたい」(寺尾氏)。
それぞれの子どもが好きなステッカーを貼り、もしくはペンで色を塗る、そうすることでBALMUDA The Lightは完成していくという。
「開発していく中で、我々が子どもに何を望むのかを何度も考えることになりました。結局はクリエイティブになってもらいたいんです。勉強なんかできなくてもいいから、クリエイティブであってほしい。
クリエイティブがなぜ凄いかというと、魅力だけでなく、他の何でも作る可能性がある。こんなに凄い力を作れる可能性があります。
例えば素晴らしいアートや革新的な技術、人を楽しませる瞬間、人と仲良くなる力など、色んなものを作り出す可能性を秘めているのがクリエイティビティです。我々が使えるものの中で、一番強い力なのではないかと思っています」(寺尾氏)。
そうしたクリエイティビティを育む上で大切なのではと考えているのが、「何かに強い興味を持ち、所有して自分のものだと思って好きになること」だと寺尾氏は語る。
「自分のことを振り返ると、まず感動があるんです。何かを好きにならないと、何か別のモノを作り出す必要がないんですよね。だから好きになるっていう心を育てたいなと思っています。それがクリエイティブのもとになるものだと思っているからです」(寺尾氏)。
BALMUDA The Lightには、ステッカーを貼ってもいいし、落書きをしていってもいい。子どもたちが自らアレンジしていくことで、デスクライトを“自分のモノだ”と思いはじめる、愛着を持つ、好きになることが重要だという。
子どもたちにBALMUDA The Lightを好きになってもらうための仕掛けは、ステッカー以外にもある。例えば、照度を調節するダイヤル。ダイヤルを回すと、電子ピアノの音で「ドレミファ♪」と奏でられる。また、ベース部側面のボタンを押すと、ベース内部のライトが点灯し、ベースに自分たちが差したペンやハサミなどの文具がキレイに照らされる。
もちろん「一台のデスクライトで、子どもたちがクリエイティブになるとは到底思っていません」と続ける。
「なんですけど……自分のモノに対して愛着を持って使うということを通じて、彼らの持っている個性やクリエイティビティを少しでも刺激できればと思って作ったのが、このBALMUDA The Lightです」
発表会では、来年には新たな照明家電を複数発表するとも宣言している。どんな光で照らす商品が発表されるのか、今から楽しみだ。