長期レビュー
シャープ「プラズマクラスターエアコン B-SXシリーズ」最終回
今回レビューする、シャープの「プラズマクラスターエアコン AY-B40SX」 |
これまでレポートしてきたシャープの「プラズマクラスターエアコン B-SXシリーズ」は、今回が最終回。前回までの連載で、次のような特徴があることが分かった。
・[1回目]超大型ルーバーの採用で、床暖房のような足元の暖かさ
これまでのエアコン暖房の弱点とされていた足元の寒さを克服し、床暖房のような暖かさを実現した。
・[2回目]霜取り運転中でも、吹き出す温風の温度が下がらない
霜取り運転中のノンストップ暖房は、各社が凌ぎを削っているが、こまめに霜取りを行ない高温のガスを室内と室外機の両方に循環させることで、霜取り運転中の室温低下がない。
・[3回目]プラズマクラスターの美肌効果は、継続利用すると効果がある
従来から言われているプラズマクラスターの静電気除去、消臭効果はもちろん、最近になって謳われだした美肌効果も効果がある。特に、肌の水分量と柔らかさに効果が現れやすい。
ここまでをレビュー結果をまとめれば、エアコン暖房の弱点を克服しつつ、プラズマクラスターという付加価値で空気のキレイさと健康にこだわったエアコンと言えるだろう。
一般で販売されてるのは100Vのワットチェッカーだが、今回は200V仕様のワットチェッカーを利用して消費電力を測定する |
最終回のテーマは、気になる省エネ性能。消費電力や自動で省エネするセンサー機能などを紹介する。また、過去3回では紹介しきれなかった、便利な機能についても取り上げよう。
■省エネ性能はどのぐらい? “素”の暖房運転で比較
まずは、シャープのB-SXシリーズの暖房運転と、2年前の他社製高級エアコンの暖房運転で、消費電力と室温の変化を測ってみた。他社製エアコンは、シャープのエアコンを取り付けた部屋とは異なるが、部屋のサイズはほぼ同等となっている。
まずは、他社製高級エアコンの消費電力と室温の変化を見てみよう。ここでは、エアコンの“素”の運転を比較するために、自動運転ではなく、暖房運転させたときのグラフとなっている。
2年前の他社製高級エアコンの暖房運転における、消費電力(青線)と室温(オレンジの線)の変化。外気温が低かったため、運転開始直後の消費電力は1,400W以上になっている |
実験を行なったのは、15時~17時の間。気温や日差しも変化しており、部屋への人の出入りもあるという状態だ。なお温度計は、消費電力系と併せて撮影する必要があったので、床からの高さが180cmと高い位置に設置している。
室温が17℃からスタートしているため、運転開始直後は1,400Wの電力を消費しているが、部屋が暖まるにつれ、およそ250W程度で運転を行なっている。運転開始の17℃から室温が22℃程度で安定しているので、部屋の空気をおよそ5℃暖めたことになる。
次のグラフは、シャープのB-SXシリーズを暖房運転したときのグラフだ。こちらも自動運転ではなく、通常の暖房運転を行なっている。
シャープのB-SXシリーズ(AY-B40SX)の消費電力と温度変化。この日は比較的暖かかったため、消費電力は最大でも1,000W程度だった。エアコンの実験は気象条件がなかなか揃わないので、ひと目見ただけで比較できるデータを取りづらい |
この日は比較的暖かかったため、室温は19.5℃からのスタート。最初は運転開始直後の消費電力は1,000W程度だったが、足元も温めるため常に温風を吹き出しているのだろうか、その後もコンスタントに消費電力が400Wと高めに推移した。
B-SXシリーズの場合は、設定温度が22℃でも、天井付近は設定温度以上に上がる傾向があるようだ。スタート時の室温は19.5℃と高かったが、2時間半後には25℃付近まで上がっている。つまり、部屋の空気を4.5℃暖めたということになる。つまり、先の他社製高級機とほぼ同じだけ空気を暖める仕事をしたといっていいだろう。
省エネ機能を使わなかった場合の総消費電力は、以下の表のようになった。実験した2時間の料金で比較してみると、省エネ機能を使わない場合の消費電力は、ほとんど差はないと思われる。
モデル名 | 消費電力 | 電気代(2時間半運転) |
シャープB-SXシリーズ(AY-B40SX) | 0.83kWh | 18.26円 |
2年前の他社製高級機 | 0.93kWh | 20.46円 |
■「おすすめエコ自動」運転は省エネ優先運転、その消費電力は?
次に、B-SXシリーズの自動モードである「おすすめエコ運転」で、消費電力と室温を測定してみよう。結果が、以下のグラフだ。
自動モード「おすすめエコ運転」での運転結果。しかし、データを取った日は特に冷え込んでしまい、先に調査した暖房運転より消費電力が多いという結果になってしまった |
実はこのデータを取った日は、天気が優れない曇天で、気温も低かった。そのため、残念ながらおすすめエコ運転よりも省エネ効果は見られなかった。
おすすめエコ自動で2時間暖房した消費電力は1.05kWhとなり、電気代に換算すると23.1円という結果になった。先に暖房運転したときは、0.83kWhだったので、27%も消費電力が高い計算になる。メーカーでは、おすすめエコ自動運転について、通常の暖房運転に比べおよそ30%省エネになる、と謳っているのだが……。
しかし、今回省エネモードの効果がうまく測定できなかったのは、大きな理由がある。シャープのB-SXの「おすすめエコ自動」運転は、雨天や曇天の場合は省エネ運転になりにくいのだ。B-SXシリーズのおすすめエコ運転では、以下の4つが省エネになる条件となる。
(1)運転開始時を除き、パワーを抑えた運転を行なう
(2)冷房時は湿度が低い場合に設定温度を上げ、暖房時は湿度が高い場合に設定温度を下げる
(3)冷房時は日差しが弱くなると設定温度を上げ、暖房時は日差しが強くなると設定温度を下げる
(4)就寝時など照明を消すと省エネ運転を行なう
エアコンの全面パネルを外したところ。中央のブルーに光っている部分はプラズマクラスター機能がONを示すサイン。その左にあるのが部屋の明るさセンサーになる。右側にあるのはリモコンにデータを送信する赤外線LEDと思われる |
今回、特に注目すべきは(3)の日差し。雨天や曇天の場合は一日中薄暗いので、太陽光が部屋に入ってこないと判断し、省エネ運転になりにくいようだ。晴天で日中部屋に陽が差し込めば、エアコン本体の中央部にあるセンサーが感知して、設定温度を下げて暖房するため省エネ運転になる。
今回は気象条件の都合で、日差しの違いによる省エネ運転は実証できなかったが、代わりに(4)に挙げた、部屋の照明を消したときの省エネ運転を調べてみた。この結果、消費電力と室温の違いは、グラフに顕著に現れた。
おすすめエコ運転では、消灯時に省エネ運転となる |
明かりが付いている場合は、青い線の省電力が示すように、定期的に電源を切りオレンジ色の室温を徐々に下げ、1時間後に再び照明を灯すと再び室温を設定温度まで上げている。例えば、夜に近所のコンビニまでちょっと買い物に出かけるような場合は、わざわざエアコンの電源を切らなくても、部屋の照明さえ切れば自動的に節電してくれることになる。
■真夏や真冬の夜は「ねむリズム」で快眠運転
リモコンのカバーを開けると「ねむリズム」運転のスイッチが出てくる |
シャープのB-SXシリーズの特徴には、省エネ運転のほかにもう1つの運転モードがある。それは、真夏の寝苦しい夜や、寒さの厳しい冬の眠りを快適にしてくれる「ねむリズム」運転だ。
通常のエアコンでは、切タイマーで電源を切ってしまう。しかしB-SXシリーズの場合は、人間の眠りのサイクルに合わせて、夏は冷房の温度を1℃高くして寝冷えを防ぎ、冬は温度を徐々に3℃下げて寝汗をかくのを防いでくれるというものだ。
運転方法は簡単で、冷暖房や除湿、おすすめエコ自動運転中にリモコンの「ねむリズム」ボタンを押すだけ。あとは1時間後以降に、エアコンが自動で眠りのサイクルに合わせて温度を調整をしてくれる。
そこで「おすすめエコ自動」における、運転からねむリズム運転に切り換えたときの温度変化を調べてみた。これまでは足元1cm、頭部は150cmの高さで温度を測っていたが、今回はベッドで寝ることを想定し、床上40cmの温度を測定している。
ねむリズムでは、最初の3時間は設定温度をキープし、1時間半おきに1℃室温を下げている |
人の眠りは、寝入ってから2~3時間の深い眠りがあり、その後は浅い眠りと深い眠りのワンセットで90分のサイクルがあるとされるが、ねむリズムの室温の変化も、これに合わせているようだ。ねむリズム運転を開始してから3時間は設定温度を保つようにしているが、グラフの3時間後~4時間半後、4時間半~6時間後にかけて室温を1℃ずつ下げていることが分かる。
このようにシャープのB-SXは、人の眠りのサイクルに合わせた室温調整を行ない、快適な眠りをサポートしてくれるのだ。
■普段使うボタンは2つだけ。電気代も教えてくれる賢いリモコン
ボタンの色分けはもちろん、大きさにも工夫が見られるリモコン。通常使うのは、中央の緑の大きな「おすすめエコ自動」ボタンと「停止」ボタンぐらいだ。大型液晶パネルも非常に見やすい |
最後に紹介するのはリモコンだ。最近のエアコンは基本的な冷暖房運転はもちろん、イオン発生機能や換気機能、自動清掃機能などを備えている。なので、リモコンの操作が難しくなる一方。そこで各社とも、リモコンの一部にカバーを付け、あまり使わない機能はカバーの中に隠すという方法を取っている。どのボタンをカバーの外に出し、どのボタンをカバーで隠すかで、各社が試行錯誤しているようだ。
B-SXシリーズのリモコンを見て、まず感じたのは「表に出ているボタンが最小限に抑えられている」という点。しかも、ボタンの大小によってよく使うボタンが一目瞭然になっているのだ。
リモコン表面に出ているボタンは10個(細かいことを言うと、停止ボタン横のバックライト点灯ボタンを含めると11個になる)。しかし、よく使うボタンは大きな「おすすめエコ自動」ボタンと「停止」ボタンだけだ。
通常は「おすすめエコ自動」ボタンを押すだけで、とくに温度調整もすることなく快適な空間を作ってくれる。もし「暑がり」「寒がり」の人は、温度ボタンを使って標準設定温度から±2℃の設定が可能だ。
中央に見える「ぶどうの房」のようなボタンは、冷暖房とは別に、エアコンをプラズマクラスターイオンの発生器として運転するボタンだ。
おすすめエコ自動は黄緑、冷房は青、除湿は緑、暖房はオレンジ、それ以外はグレーで表示される。感覚的に分かりやすい |
上部の「冷房」「除湿」「暖房」ボタンは、手動で運転を切り替えるが、非常にわかやすい仕掛けがある。冷房運転に切り替えると、リモコンの画面がブルーに光り、除湿では緑、暖房ではオレンジになり、視覚的にどのモードになっているのかが一目瞭然なのだ。また「おすすめエコ自動」の場合は黄緑になり、それ以外の設定画面などでは紫っぽいグレーになる。
一番下についている3つのボタンは、それぞれ次のように機能する。
ボタン名 | 機能 |
電気代 | ボタンを押すと、今日の電気代、昨日の電気代、1週間の電気代(グラフ)、 今月の電気代、過去3カ月の電気代(グラフ)が表示される。 |
簡単 切タイマー | 就寝前などに使うタイマー。ボタンを押すごとに 0.5、1、2、3、5時間後に電源を切る。 |
お知らせ | 運転モードと設定温度、室内の気温と湿度、室外の気温、 プラズマクラスター発生ユニットの交換目安などが表示される。 |
電気代ボタンを押すと、今日、昨日、1週間、今月、3カ月の電気代やグラフが表示される。左から、今日、昨日、1週間 |
左が今月の電気代、右が3カ月毎の電気代 |
お知らせボタンを押すと、運転モードと設定温度、室内と室外の温度、そしてプラズマクラスター発生ユニットの寿命が表示される。外気の温度計としても使えて重宝する |
単にエアコンを操作するリモコンとしての機能だけでなく、電気代などが簡単に見られるので、電気の無駄使いが一目瞭然。また外気の温度も調べられるので、「今日はすごく寒いから、厚着をして出かけよう!」なんて使い方もできて便利だ。
■シャープのエアコンB-SXは、こんな人にぜひオススメしたい
これまで4回に渡ってお伝えしてきたシャープのプラズマクラスターエアコンB-SXシリーズだが、最後にこのエアコンがオススメと思われる例を、具体的に挙げていこう。
・冷え性や冷房の風に弱い人に絶対オススメ
冬はエアコン暖房やファンヒーターに加え、足元の寒さ対策にホットカーペットを併用しているような、冷え性の方には足元まで暖かいB-SXシリーズをぜひオススメしたい。
また夏場の冷房のときは「冷気を直接浴びると調子が悪くなる」という人にも進めだ。大型ルーバーで、冷気は天井を這うように流れ、部屋全体を快適にしてくれる。
・赤ちゃんや小さな子どもがいるファミリー世帯の居間用に
とくに石油やガスファンヒーターを使っている家庭にオススメしたい。石油やガスファンヒーターは吹き出し口が高温になるため、小さな子供がいる場合、ファンヒーターガードが必須になる。しかし、B-SXシリーズにすれば、床はすっきり片付き、子どもがやけどする心配もない。
・冷暖房を使うとお肌のカサカサが気になる人に
実験の結果、プラズマクラスターを継続的に浴びていると確かに肌の水分量が増し、肌も柔らかくなったので、付加価値の美容効果が期待できる。
・寒い地域にお住まいで本当のノンストップ暖房が欲しいという人に
極寒冷地では、ノンストップ暖房が可能かどうかを実験できなかったが、寒冷地で霜取り運転の寒さが気になる場合は、霜取り中も吹き出す温風の温度がほとんど変わらないB-SXシリーズがオススメだ。
・アレル物質やウィルス、冬の静電気が気になる方に
プラズマクラスターの効果で、菌やウイルスなどの活動を抑えることができる。また部屋の臭いを感知して自動的に換気するため、窓を開けられない黄砂や花粉のシーズンでも、エアコンを運転しておけば最低限の消費電力で部屋の空気をキレイにできる点が◎。またプラズマクラスターは静電気除去能力が高いので、冬にドアノブを触ってバチッ! と来るのが気になる場合にも有効だ。
■シャープ
http://www.sharp.co.jp/
■エアコン 製品情報
http://www.sharp.co.jp/aircon/
■B-SXシリーズ 製品情報
http://www.sharp.co.jp/aircon/product/bsx/
2012年2月22日 00:00