長期レビュー
シャープ「プラズマクラスターエアコン B-SXシリーズ」その3
シャープのエアコン「プラズマクラスターエアコン B-SXシリーズ」について、全4回にわたってご紹介するこの連載。第1回では超大型ルーバーの搭載で、エアコン暖房なのに床暖房のように足が温かいことを紹介。第2回では、暖房運転を止めずに室外機の霜取り運転をするノンストップ暖房で、吹き出し口から出る温風に変化がないという点がわかった。
今回は、エアコンに搭載されているプラズマクラスターイオンの放出機能の効果を、色々と調べてみよう。
シャープの家電製品に搭載されているプラズマクラスターイオンは、当初は静電気の除去効果、カビ菌などが繁殖しにくくなるといった効果が謳われていたが、最近は「肌がうるおう」という効果も、大きく宣伝されている。そのプラスマクラスターイオンって、本当に効果があるのか? を調べてみた。
■静電気は楽勝で除去! 金属に触れても服を脱いでも「バチッ!」とこない!
プラズマクラスターの効果で一番分かりやすいのが、静電気の除去効果だ。冬は乾燥している上に、重ね着をするので静電気がとっても起こりやすい季節。上着を脱ごうとするとバチバチッ! と静電気の痛い目に合うし、女性ならスカートのまとわり付きが気になる季節だろう。
でもシャープのエアコンを運転しておけば、通常運転でもプラズマクラスターイオンが放出されるため、静電気のバチバチから開放されるのだ。
……と言ったところで、なかなか信じてもらえないと思うので、ちょっと実験をしてみた。
ペットボトルで作る子供用のパンデグラフ実験キットを使って、静電気除去効果を調べてみる。左が静電気を帯びていない状態で、右が静電気をたっぷり溜め込んだ状態 |
写真は「パンデグラフ」という、静電気を発生する装置で、子供用の実験キットを使って組み立てた。ペットボトル内のゴムと樹脂で静電気を発生し、クシのような電極から静電気を集めて、アルミ箔を貼った丸い玉に静電気を溜めるというものだ。静電気がない状態だと、玉に貼り付けた細い紙は垂れ下がった状態だが、静電気が溜まると、頭の毛が静電気で逆立つように浮かび上がる。
パンデグラフの動画の撮影風景。エアコンの風は写真左方向に向かわせ、パンデグラフに直接風が当たらないようにしている |
まずはパンデグラフに思いっきり静電気を溜め、プラズマクラスターを放出せずに暖房運転したのが次のムービーだ。なお、パンデグラフはなるべく直接風が当たらない場所に設置している。
プラズマクラスターなしで運転した場合のバンデグラフ |
静電気が完全に除去(自然放電)するまで20分ほどかかった。ちなみにムービーは、時間がかかるので30倍速になっている。
次に暖房運転と同時にプラズマクラスターも放出する設定にして、同様に撮影したのが次のムービーだ。
プラズマクラスターありで運転した場合のバンデグラフ |
こちらは10倍速再生で、プラズマクラスターなしよりも遅いスピードで再生している。なぜなら、静電気を除去するまでの時間はわずか2分と、とにかく短かったから。静電気で浮かび上がっていた細い紙は、あっという間に、垂れ下がった。
ちなみに上の動画では、エアコンから放出される風が直接当たらない位置で使ったが、風を直接当てると、1分もしないうちに静電気を除去できてしまったことも付け加えておこう。
女性ならスカートがまとわり付いたまま帰宅しても、わざわざ静電気除去スプレーをするまでもなく、プラズマクラスターが満たされた温かい部屋に入るだけで、まとわり付きがすぐ取れるというワケだ。またドアノブに触れた瞬間に来るバチッ! というヤツも、プラズマクラスターで解消されるはずだ。
もちろん、服を脱ぐ場合にバチッ! とくる静電気も除去できるが、その際はプラズマクラスターを浴びながら徐序に服を脱いでいくのが良い。一気に脱いでしまうと、プラズマクラスターの静電気除去効果が間に合わないからだ。
■カビとニオイについては、過去のプラズマクラスター実験をおさらい
静電気除去効果が分かったところで、カビの抑制効果や、ニオイの効果も調べてみたい。しかし、乾燥したこの季節はなかなかカビが生えない。そこで、過去にほかのプラズマクラスターイオンを搭載した機器で実験したレビューを例に出し、こうした効果も期待できる、ということを紹介させていただく。
カビの抑制効果については、過去のレビューで自動車車内用のプラズマクラスターイオン発生器で実験を行なった。実験は、水で湿らせた2つのパンについて、1つを室内に放置し、もう1つをプラズマクラスターを1週間当て続けて放置するというもの。結果、プラズマクラスターありの方はカビはまったく発生しなかったが、なしの方は下の写真のように変わり果ててしまった(笑)。かなり衝撃的なので、食事前などに見ないほうがいいかも? とにかく、その効果は一目瞭然だ。
過去のレビューで、プラズマクラスターイオン発生器でカビの発生具合を実験したもの。写真のプラズマクラスターを1週間あて続けたパンは、まったくカビていない | こちらはプラズマクラスターなしで1週間放置したもの。カビでいっぱいのカラフルな(?)パンになってしまった。食事前などに見ないほうがいいと思われるので、サムネイルにはぼかしを掛けている |
脱臭効果については、これも過去にプラズマクラスター加湿空気清浄機のレビューで実験したものを見ていただこう。リビングで焼肉を調理し、臭いの強さを数値化する「臭い測定器」で計測した。
家族5人で焼き肉を開始したときの臭いレベルは、開けたてのキムチを鼻先5cm程度で嗅いだときのとほぼ同じ「353」。しかし、プラズマクラスター空気清浄機の運転により、徐々に臭いレベルが下がっていく。食事を終える頃には「217」、片付けを終えた1時間後には「105」まで下がった。プラズマクラスターを使わなかった普段の焼き肉では、1時間後の部屋に入っても臭いはキツイかったが、この時はさほど臭わなかった。
プラズマクラスター加湿空気清浄機のレビューでは、家族で焼き肉をしたときの臭いの減り具合を紹介した。焼肉時のニオイレベルは「353」 | プラズマクラスター加湿空気清浄機の運転を続けることで、徐々にニオイレベルは下がっていく。片付けを終えた頃には、臭いレベルは105まで降下した |
もちろんこれらは、エアコンのプラズマクラスター運転による効果ではないので、これらがすべて、今回レビューしているB-SXシリーズに当てはまるとは言い難い。しかし、このエアコンには換気機能もついているため、プラズマクラスターの消臭効果と換気によって、脱臭効果も期待できそうだ。
■衣類のイヤなニオイを取る「衣類脱臭」や、室内機内部の洗浄など、プラズマクラスターが活躍
さて、このB-SXシリーズでは、プラズマクラスターイオンの脱臭効果を利用した機能を搭載している。それが「衣類脱臭」機能だ。
これは、エアコンの下に衣類を置いて、リモコンの「衣類脱臭」ボタンを押し、風向きを調整するだけで、なかなか洗濯できない制服、宴会などで臭くなってしまった背広、久々にクロゼットの奥から引っ張り出したらカビ臭いよそ行きの服……などが脱臭できるというもの。
試しに6時間ほどプラズマクラスターを当ててみたが、確かに臭いが弱くなっているような感じだ。完全に無臭になるまでは脱臭できないが、洗いづらい衣類には便利だろう。
ちなみに、B-SXシリーズが放出するプラズマクラスターイオンの濃度は、1立方cm当たり25,000個となっている。
衣類をエアコンの近くに置いて衣類脱臭機能を使うと、制服や背広、クロゼットの奥にしまってあった衣類の脱臭ができる | リモコンの「衣類脱臭」ボタンを押すと、暖房や冷房が解除され、衣類脱臭運転となる |
また実験はできなかったが、梅雨どきはプラズマクラスターを放出しながら除湿運転すると、部屋干し独特の臭いも抑えられるだろう。
さらにB-SXシリーズでは、次のようなシーンにもプラズマクラスターを応用している。
(1)プレクリーニング
24時間以上エアコンを使わなかった場合は、吹き出し口を閉じたままプラズマクラスターを放出して、エアコン内部を消臭し、エアコン独特の臭いを吹き出さない機能。
(2)運転後の内部洗浄
冷房や除湿運転の後には、エアコン内部を乾燥させる運転を行なった後プラズマクラスターを60分間、それ以外では20分間内部に放出してエアコン内部に充満させカビ菌などを抑制する。
(3)プラズマクラスター単独運転
冷暖房などを行なわずにエアコンをプラズマクラスター発生器として動作させたり、換気運転と同時に行ない、部屋の空気を洗浄する。
このほか、室内機の「ニオイセンサー」が、タバコやペットのニオイを検知して、自動的に換気運転を行なう機能もある。このようにB-SXは、部屋の空気のキレイさにこだわったエアコンと言えるだろう。
タバコの臭いなどを検知すると、自動的に換気運転を行なう | 「クリーンサイン」は、空気がきれいな場合は緑色に、汚れに応じてオレンジ→赤に切り替わる |
■本当に美肌効果にも期待できるのか?
数あるプラズマクラスターイオンの効果の中で、筆者がどうにも気になっているのが「美肌効果」だ。当初はそれほど謳われていなかったが、最近になって携帯用イオン発生器やドライヤーなどにも搭載され、美肌効果があるとされている。メーカーによれば「肌の水分を閉じ込める“水分子コート”効果によって、お肌にツヤ、ハリを与え、キメを整える」というのだ。
プラズマクラスターイオンが肌の角質層に浸透し、肌の水分を保つ「水分子コート」の働きをするため、肌にツヤとハリを与え、肌のキメを整えるという。シャープのWebページより抜粋 |
市販されている「スキンチェッカー」なる装置を使って、プラズマクラスターの美肌効果を検証してみよう。この装置は、肌の水分、油分、柔らかさを-5~5の段階で示してくれる |
これについては当初、「肌の感覚なんて体感だから、マユツバものだな」と半信半疑だった筆者。しかし、「スキンチェッカー」なる、肌の状態を数値化する美容機器があるということを知り、早速購入して、プラズマクラスターイオンによる美肌効果を実験してみた。ただ自分の肌状態を測るのは気色悪いので、奥さんを被験者にしてみた。
使ったスキンチェッカーは、肌の水分と油分、柔らかさを-5~+5までの範囲で表示してくれるもの。プラズマクラスターの効果は水分に対して有効なので、水色のグラフに注目して欲しい。
およそ3週間プラズマクラスターを浴びた肌状態の変化 |
徐々にではあるが、1~9日目にかけて水分が上昇傾向にある点が分かる。が! ビックリするのは、9日目と15日目の違いだ。
この間、奥さんは実家に戻っていて、B-SXシリーズのプラズマクラスターイオンを浴びていなかったのだが、9日目は水分の値が「3」だったのに、実家に帰ってるうちに15日目には水分「1」に戻ってしまった。その後プラズマクラスターを浴びてウチで生活していると、再び水分が増えている。
美肌効果は本当かも!
また水分と同じように上昇している、肌の柔らかさにも注目したい。肌が柔らかくなる原因が、キメが細かくなるといいのか、水分が多くなるといいのか不明だが、データではB-SXシリーズが放つプラズマクラスターイオンを浴び続けることで、柔らかくなっているようだ。
ただ、どうも継続的に浴びていないと、その効果が持続されないかもしれない。今回の実験では、プラズマクラスターの美肌効果が出るまでにおよそ2週間かかり、5日間浴びないとリセットされて元にもどってしまうという結果になった。
最初は美肌効果にマユツバだった筆者だが、データを見る限りプラスマクラスターは効果がある、という結果になった。
■最終回は省エネ性能をチェック!
最終回のテーマは「省エネ性」。一般で入手できるのは100Vの「ワットチェッカー」だが、200V仕様のワットチェッカーを使って消費電力を調べてみる |
最終回は、省エネ性能について見てみよう。最近の高級エアコンは、センサーを搭載して、自分自身で節電する機種が多いが、もちろんB-SXも各種センサーを搭載して、自分自身で賢く節電するようになっている。それが本当なのかどうか、ワットチェッカーを使って見てみよう。
2012年2月15日 00:00