カデーニャ

学習型アルコールガジェット「TISPY」は酒好きの生活改善となるか

 思えば子供の頃、本家が酒造に酒米を卸していた関係で、お盆や正月で本家に行くたびに周りの大人は酒を飲んでおり、鉄缶とアルミ缶とビンのどれがウマいか」で盛り上がる日常を過ごしていました。といってもこちとら子供、「お米のジュースだ」といわれたって、コーラ(骨が溶けるといわれてまず買ってもらえなかった)のほうに興味津々ですよ。学生時代まではアルコールと縁遠い生活でした。

 一変したのは働きはじめてから。先輩たちに連れられていろんな飲み屋に顔を出すようになり、いろんな酒を嗜むように。ポジティブな酔っぱらいの戯言を聴くのが好きにもなり、1人で全国酒場めぐりの旅にもでかけたものです。

 さて現在。週に3~4のペースで、友人たちと飲み歩く生活を送っています。履歴書を書くとしたら、趣味欄には真っ先に「飲酒」、次に「地焼酎探し」と書くこと間違いありません。

 そんないちフリーライターのもとに、学習型アルコールガジェット「TISPY」のレビューをしてくれ、というオーダーが届きました。これは呼気中アルコール濃度を測るアルコールチェッカー(ガスセンサー)に、学習機能をもたせたもの。使い続けていくと学習機能が働き、二日酔いになる前にアナウンスしてくれるガジェットです。

TISPY

Wi-Fi搭載SDカード「FlashAir」連携でスマホで情報を視覚化

 単体でもアルコール濃度を測り、学習し、酔いが覚めるまでの時間を教えてくれる「TISPY」ですが、Wi-Fi機能を搭載したSDカード「FlashAir」を使うことで、スマートフォンと連携させることが可能です。操作そのものはシンプルですが、飲んだ量や飲みのペースなどをスマートフォンの画面上で視覚化してくれるので、FlashAirと合わせて使うことをオススメします。

 酒のミニボトルというかは香水のボトルのようですが、ともあれキャップを模した部分を回転させて、ガスセンサーを露出させます。チェック時はこの状態で息を吹きかけます。

 わざとセンサー部(キャップ部)を口の中に入れて計測してみたところ、呼気中濃度2.06mg/l(アルコール血中濃度は約0.4%)というスコアが出てしましました。酔いの度合いとしては昏睡期に入る数字です。日本酒だとしたら1升以上飲んでいる計算になります。

 飲んでいると楽しくなってしまい、よりハイスコアが出るような使い方をしてしまうかもしれませんが、本当にアルコール血中濃度が高くなってしまったときに危険。正しい使い方を心がけましょう。

初期設定を行って「TISPY」を使える状態にする

 では初期設定を行いましょう。SDカードスロットにFlashAir(スマホ連携機能を使わないのであれば、通常のSDカードでもいい)を差し込み、電池ボックスカバーを開け、単4電池2本を入れます。

 「TISPY」に向かって左側のボタンを長押しして電源を入れます。左側のボタンをもう一度押して「FlashAir」モードに切り替え、上部のボタンを押して無線LANの機能を有効にします。

 手持ちのスマートフォンのWi-Fi設定画面から「tispy_wlan」を選択。「tispy001」のパスワードを入力して、ブラウザアプリを起動。http://flashair/にアクセスします。SSIDの設定画面が表示されるので、お好きなSSIDに変更しましょう。なおパスワードは変更ができないのでご注意を。

 いったん「FlashAir」の電源を切り、再度投入。スマートフォンとWi-Fiで接続して、ブラウザアプリからhttp://flashair/にアクセスします。「設定」をタップして「TISPY時刻同期」をタップ。そして「ユーザ情報」で身長、体重、性別、年齢を入力します。これで「TISPY」の初期設定は終了です。

居酒屋で実際に「TISPY」を使ってみる

 行きつけの居酒屋に持ち込んだ「TISPY」がコチラになります。カウンター席の端に陣取って、ホッピーの黒セットを頼み、さあ、試合開始です。

 この日はほぼ満席で、空気中にアルコール成分が含まれていたのでしょうか。無飲状態でも呼気中濃度0.11mg/lとなってしまいました。だいたいビール中瓶を半分くらい飲んだときの数値でしょうか。

 構造上、警察官が飲酒運転取り締まり時に使うアルコールチェッカーほどの精度は見込めません。「TISPY」のマニュアル上は飲み始める直前からチェックすることが推奨されていますが、気になる人はお店に入る直前にチェックするといいのかも。

 1杯目を終えてナカ(焼酎)をおかわりするタイミングで計測すると、呼気中濃度は0.18mg/lにアップしました。だいたい中瓶1本を終えたくらい。日本酒だと1合の計算になります。ホッピーに入れる焼酎の量にも寄りますが、やや多めの数値といえるかもしれません。

 続いてもう1杯のみ、さらにチューハイを追加。計3杯飲んだところで店を出ました。呼気中濃度の結果は0.60mg/l。アルコール血中濃度は約0.12%。酔いとしては酩酊初期段階となります。

 まだまだ夕方宵の口? いえ、「TISPY」には「すごーく酔っています。今日の飲酒はやめましょう」と指摘されてしまいました。気分的にはほろ酔いなのですが、なるほど、自分では真の酔状態を把握できていないんですね。

 店から歩いて2分。帰宅してから酔いが覚めるまでのタイマーを表示しました。約4時間あれば、スッキリすると教えてくれました。

 結果として翌日朝。まったく酒は残らず。いい目覚めでしたよ。

TISPYアプリで結果を確認

 さて「TISPY」とスマートフォンをWi-Fiでリンクさせ、http://flashair/にアクセスします。この日は短時間で飲み干し、短時間でチェックしたためにグラフのかたちが扇状になっていますが、トータルスコアはわかりやすい。酒場の雰囲気もありますが、グラスを干すごとにチェックしていくといいなと感じました。

 各項目をタップすると、飲んだ量を中ジョッキ換算してくれたりと、わかりやすく解説してくれます。適切な飲みのペースは体調によっても変わりますが、自分を見てくれるガジェットとしては信頼できるものでした。

 肝心の学習機能は、ぶっちゃけ不明瞭。というのも僕は、アルコールの分解速度が速い人間のようなんですよね。

 TISPY WEBアプリが3時間51分という酔い覚め予測をしてから41分後。「TISPY」で呼気を計測したら0.18mg/lにまで下がり、酔い覚め予測の1:12にまで低減。10日ほど、飲みにいったときは極力忘れないようにチェックしていたのですが、「あなたは肝臓が強いからまだ飲めるかも?」みたいなメッセージには出会えませんでしたし。

 たぶん、この機能は酔いが醒めにくい人向けにチューニングされているのではないでしょうか。二日酔いしやすい人の情報を記録し続けて、通常より早い段階で飲酒を抑制するための学習機能なのでは、と想像しています。

酒飲み本人よりもパートナーが持つべきガジェット

 酒好きにとって、お酒が飲めるタイミングで「ストップ」といわれるのは悲しいものです。だから「TISPY」があったとしても、積極的戦略的に“使わない”という選択肢を選んでしまうココロの弱さがあります。透明感があり綺麗な外装というのも、印象がちょっとマイナス。もっと道具っぽいデザインなら持ち歩くかもしれませんが、これでは傷が付くのが怖くてケースに入れっぱなしになりそう(という言い訳をしそう)。

 しかし、お酒が好きな人と一緒にいるパートナーであれば話は別。適宜「TISPY」でチェックを促せば、泥酔する前にアルコール度数の少ないお酒に切り替えて、と言いやすいし、表示されたスコアによっては香りづけだけした強炭酸水を出してもらうのもアリでしょう。

 彼氏、彼女の飲酒をコントロールする。その目的であれば「TISPY」はパーフェクトと言い切れます。

この記事は、2017年12月11日に「カデーニャ」で公開され、家電Watchへ移管されたものです。

武者良太

1971年生まれのガジェットライター。AV機器、デジタルカメラ、スマートフォン、ITビジネス、AIなど、プロダクトとその市場を構成する周辺領域の取材・記事作成も担当する。元Kotaku Japan編集長。 Twitter:@mmmryo