家電トレンドチェッカー
心地よい風で省エネ性もバッチリ! 進化した最新エアコンは何が違う?
(2015/7/14 06:00)
梅雨の中休みで急に暑くなった。これから本格的な夏を迎えると、昼間はもちろん深夜になっても気温が30℃前後の日が続く。そうなると、多くの家庭で深夜帯でも冷房を稼働させるので、室外機からは常時温風が放出され、結果的に都市全体が温められ……という悪循環が巻き起こる。
エアコンを長時間使い続けることに、まだまだ抵抗のある人も多い。冷房が苦手で風邪を引いてしまう人、高齢者など暑さに鈍感で冷房を使わない人。また、エアコンは消費電力が大きく、電気代が掛かるからなるべく使いたくないという人もいる。
ただ、それらの悩みというのはすべて、実は最新のエアコンを手に入れるだけでほぼ解決するのだ。今回は、各メーカーの最新モデルとともに、進化したエアコンの機能を紹介しよう。
最新エアコンは空調メーカーと総合メーカーで特徴が二分
エアコンの売り上げについてダイキン工業に聞いてみたところ、前年比140%~150%と一見かなり好調のようだ。とはいえ、金額ベース、台数ベースともに実は例年並みで、その理由として、昨年の5月ぐらいは、ちょうど消費税が導入された直後で販売の落ち込みが激しかったことが考えられる。また、業界全体では約800万台のシェアがあり、その売り上げの7割強が買い替え&買い増し需要とのことだ。
現在のエアコン市場は、メーカーの動向によって大きく2つに分かれている。1つはダイキン工業や富士通ゼネラルなど、空調専業メーカーグループ。部屋全体の気流を生み出し、空気の調和や温度だけでなく、湿度を第一に考えることで、快適性や節電性を考慮するグループだ。
もう1つがパナソニックや三菱電機、日立など、家電総合メーカーグループ。高機能センサーを多数搭載することで、ムダなくピンポイントに気流を送ることで、快適性や節電性を考慮するグループだ。
まずこの両グループに共通するトレンドとして挙げられるのが、風をコントロールするフラップ(ルーバー)の進化である。効率的に気流を遠くまで送るために、各メーカーとも大型化しているのはもちろん、左右が独立して動くなど、より自在に気流を操ったり、可動域が広がったことで、前方だけでなく、本体左右の壁際にもしっかり冷風や温風を送り届けることができるようになった。
センサーの数が大幅に増えたことや、高機能化している点も特徴だ。メーカーにより呼び方はさまざまだが、人の位置や、部屋の間取りや、日射の加減などを検知する複数のセンサーを搭載。十人十色な間取りや生活スタイル気流の制御がより多彩になったことも、ユーザーにとっての快適性を高める要因となっている。このあたりのセンサーの進化は、特に後者の家電総合メーカーグループのほうで、より顕著に見られる傾向だ。
エアコンの肝! 最新エアコンは気流を細かくコントロール
フラップの進化とセンサーの複数化&高機能化によってもたらされるのが、気流の制御がより細かく多彩になったことだ。かつては、温風は上昇してしまう分、下方へ送り出し、逆に、冷風は下に溜まってしまうため、上方へ送り出すというのが基本だった。しかし現在は、センサーがサーモグラフィーにより人の体温を検知するため、人のいる場所に送風することもできる。
例えば、帰宅直後で汗だくの火照ったユーザーの体温を検知すれば、冷たい風を人のいる下方に自動で送ったり、逆に冬の暖房でも、暖め過ぎなどをエアコンが自ら防止するなど、気流をコントロールして快適な空間を作り出す。さらに、人のいない場所には温風や冷風を送風しないなど、細かな制御をエアコンが自動で行なってくれる。
こういった細かな気流の制御というのは、当然エアコンにムダな電力を消費させない、つまりはエアコンの電気代を下げるための機能的措置だが、先に言及したグループのうち、前者の空調専業メーカーグループは、効率的に気流を回し続けることで、トータルで節電に繋げる傾向がみられる。
これは空調を専門に開発しているからこその考え方だが、例えばダイキン工業の場合、部屋の快適性を温度や気流だけで考えるのではなく、常に湿度との関係性を考慮。例えば、28℃設定でも湿度をぐっと下げてあげることで、体感温度はそれより2~3℃下がるため快適性は増すといった考え方で、長時間使い続けても快適性を一切損なうことなく、知らず知らずに大きな節電効果を享受できる。
空気清浄機やスピーカー機能も搭載
一方、こういったエアコンのいわゆる根幹の機能以外にも大きなトレンドがみられる。それは、+αの本格的な機能が搭載されていることだ。たとえば東芝は、エアコンに本格的な空質センサーやプラズマ空清ユニットを載せ、空気清浄機の代わりとしても使うことができる。
パナソニックは、間接LED照明と、左右に2つのスピーカーを内蔵。音楽や光といった人間の五感に訴えかけることで、より高いリラックス効果を得られ、トータルで快適性を高めることを実現している。また、同社が提供するスマホアプリ「おやすみナビ」との連携も可能。眠りを管理し、寝返りなどの動きによる振動や傾きをスマホが検知して、エアコンを強めたり弱めたりすることができる。
ダイキン工業は世界で初めて、屋外の空気からピュアな水分子だけを取り込み、水を入れずに加湿できる無吸水加湿を実現。つまり、いつでも加湿器を使っているかのように最適な湿度をキープして、特に冬場などは部屋や肌などにうるおいを与え続けるといったことも可能だ。
スマートフォンとの連携も各社が取り入れている機能のひとつ。外出先から帰宅前にエアコンを遠隔操作でオンしたり、消し忘れを防止するため外出先からオフにするなど、使い勝手に関する利便性を高めるのがもっとも大きな狙いだが、先に少し触れたように、パナソニックなどはアプリで眠りを管理しつつ、それをエアコンと連動させるといった新しい取り組みを始めている。
外気温45℃にも対応する室外機や、新たな冷媒で環境にも配慮
また、環境面に対しても配慮している。2012年、ダイキン工業がルームエアコンでは世界ではじめてHFC冷媒R32を採用したことを皮切りに、ほとんどのメーカーがこれに追随した。冷媒とは、熱エネルギーを運ぶ役割を果たす物質で、液体が気化するときに周囲の熱を奪うという性質を利用して温度をコントロールするガスのことだ。
エアコンの場合、室外機から室内機へ繋がるパイプ内で使用されているガスであり、その環境負荷が低いのがHFC冷媒R32である。従来使われていたR-410Aという混合冷媒よりも、地球温暖化係数が低く、エネルギー効率も高いのが特徴。まさに一石二鳥の冷媒だ。
さらに地球全体の温暖化に比例するより、日本国内の温度もどんどん高くなっている。かつては30℃を超えれば真夏でも暑い部類だったが、それも今は昔。現在は35℃を超える日も珍しくなく、内陸部や盆地などでは、40℃を超える気温を記録する日も出て来た。
そんな気候の変化に対応するように、ダイキン工業の新モデルの室外機が、業界で初めて外気温45℃での冷房運転に対応。今後、HFC冷媒R32同様、空調専門メーカーのダイキン工業の動きに、他社が追随していく可能性は高く、このあたりはネクストトレンドとしてぜひ抑えておきたいところだ。
心地よい風や空気清浄機能など、各社の最新モデルをチェック
ここでは、各社の最新モデルを紹介する。
・富士通ゼネラル ノクリアX(実勢価格:20万9,000円/14畳モデル)
本体の両サイドに“室温気流”を生み出す「DUAL BLASTER(デュアルブラスター)」を備えるルームエアコン「ノクリアX」。人感センサーで人の不在を検知し、10分で節電運転、30分で停止する。温度と速さが異なり役割の違う2種類の気流で、部屋全体をワンランク上の快適空間に。
集じん能力が持続する電気集じん方式で、PM2.5を含む微小粒子物質や花粉、ウイルス、ハウスダストなど、フィルターを通り抜ける小さな汚れ物質を、静電気の力で集めて除去。エアフィルターに付いたホコリを自動的に清掃。
ホコリはダストボックスの中に収納され、そのホコリは定期的に捨てるだけ、効率運転で節電にも貢献。手になじみ操作しやすいデザインに、大画面で情報が見やすいフルドット式液晶画面を採用する。HFC冷媒R32を採用。
・東芝 SDRシリーズ(実勢価格:約19万6,000円/14畳モデル)
空気清浄機能「プラズマ空清」を搭載し、花粉やPM2.5、ホコリ、カビ、細菌などを集じんできる「SDRシリーズ」。2枚の大きな羽で上下左右にパワフルに届ける「ダブルビッグルーバー」を搭載し、パワフルな気流で広いリビングでも25m風が到達するので安心。
空気の汚れを検知して集じんパワーをコントロールする「空質センサー」や、空気がきれいになったことが視覚的に分かる「エアモニター」も便利。熱交換器の表面を特殊コーティングし、付着した汚れを洗い流して屋外へと排出できる「マジック洗浄熱交換器」を採用。
スマートフォンでエアコンをコントロールできたり、機器の異常をメールで知らせたり、クラウドを利用して、スマート家電が毎日をサポートする。HFC冷媒R32を採用。
・ダイキン工業 うるさら7 Rシリーズ(実勢価格:約21万7,000円/14畳モデル)
新冷房方式「プレミアム冷房」を採用した「うるさら7 Rシリーズ」。サーキュレーション気流によりワイドリビングの奥まで気流を循環する。コアンダ構造により、気流を天井に沿って遠くまで送り出し、室内の湿度ムラを抑える。
プレミアム冷房とは、設定温度達成後の湿度上昇を抑え、安定した湿度を保つ「デシクル制御」と、運転ON/OFFの繰り返しによる温度変動を低減する「PIT制御」により、長時間の運転でも安定した温度と湿度を保つ冷房方式のこと。設定温度に近づくにつれて冷房能力が弱まり、長時間運転していると徐々に湿度が上昇するという、従来の冷房運転での弱点を解消する。
外の空気中の水分をエアコンが取り込み、無給水で冬の肌や部屋のうるおいをキープする「うるる加湿」も搭載。室外機は、外気温45℃での運転にも対応し、「高外気タフネス冷房」を実現。HFC冷媒R32を採用。
・パナソニック NXシリーズ(実勢価格:約22万5,000円/14畳モデル)
冷気が直接あたらない「天井シャワー気流」を採用する「NXシリーズ」。前方だけでなく斜め、180°真横と、大きくなって風量がアップした「ビッグファン」と「ビッグフラップ」が、気流を目的の場所へ届けることができる。
Bluetooth対応のワイヤレススピーカーと、「暖かい色」「白い色」の2種類から選べるLEDライトを本体に搭載し、音楽、天井を照らすLEDの間接光で、就寝前のくつろぎ空間を演出する。
スマートフォンアプリ「おやすみナビ」との連動で、就寝中の寝室温度を4つの温度制御パターンを自由に選べるほか、1時間ごとに温度をカスタム設定することも可能。就寝中の体動に合わせて空調を制御する「体動連動」モードが、スマホの加速度センサーを使うことで、寝返りなどを独自に解析し、エアコンを自動制御する。HFC冷媒R32を採用。
・三菱電機 霧ヶ峰 Zシリーズ(実勢価格:約17万1,000円/14畳モデル)
360度センシングで、窓の冷気を防ぐ三菱ルームエアコン「霧ヶ峰 Zシリーズ」。前後左右4枚のフラップを独立して制御する「匠(たくみ)フラップ」と、頭や手足などの身体の部位を判断し、0.1℃単位で身体の温度を測るセンサー「ムーブアイ極(きわみ)」、人の不在を感知して自動で運転をストップする「スマートストップ」など、独自のセンサー技術を搭載。
送風運転と冷房運転を自動で切り替える「ハイブリッド運転」により節電効果も高い。リモコンデザインは業界初となるタッチパネル液晶を搭載。外出先からも、自宅のエアコンをオン/オフ。寝室や子供あらかじめ設定した温度よりも上がったとき、もしくは下がったときにアラームメールでスマホに知らせてくれる。HFC冷媒R32を採用。
・シャープ プラズマクラスターエアコン SXシリーズ(実勢価格:約18万6,000円/14畳モデル)
エアコン内部のカビを予防し、吹き出す風を清潔にする「風クリーンシステム」を搭載したプラズマクラスターエアコン「SXシリーズ」。目の細かいエアフィルターを搭載し、ホコリの侵入を防ぐほか、埃の付着を防ぐチタニアコートを、ファンなどの風の通り道に設置する。
さらに、エアコンを使用しない期間に、カビが発生しやすい温度20℃、湿度70%を上回ると、自動でファンを逆回転。エアコン内部の空気を動かすと同時に、効果的に高濃度プラズマクラスターイオンを充満させ、カビの発生を抑制する。
部屋の温度と湿度をみはり、冷房運転と扇風機モードを自動で切り換え、冷やしすぎない「やさしさ冷房」など、ママの声に応えた機能が多数搭載されている。運転状態や季節に合わせたアドバイスを、音声でお知らせする「ココロエンジン」搭載。HFC冷媒R32を採用。
・日立 白くまくん Xシリーズ(実勢価格:約17万9,000円/14畳モデル)
家具の位置も検知して、気流をコントロールする「ステンレス・クリーン 白くまくん Xシリーズ」。在室者の位置や室内の間取りを検知する「画像カメラ」と、在室者の周囲の温度を見る「温度カメラ」にくわえ、ソファやテーブルなどの位置や形状を見る「ものカメラ」、3台のカメラを搭載。
3分割フロントフラップが、独立した3枚のフラップにより、遠いところから近いところまで、気流の通り道に向けてきめ細かく気流を制御。「カラッと除湿」ボタンで「自動除湿」を設定すると、設定湿度約50%で除湿。室温を自動設定して、寒くならずにジメジメ感を抑制する。
エアコン内部の清潔さを保つ「ステンレス・クリーンシステム」も引き続き搭載する。運転時間に応じて「ステンレスフィルター」に付いたほこりを自動で掃除する機能も継続採用。HFC冷媒R32を採用。