家電製品ミニレビュー

パナソニック「NP-TR1」 (後編)

~洗浄力は充分。エコナビは節水効果と時短に効果
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NP-TR1
 前編では、なぜ今、食洗機(食器洗い乾燥機)なのかを説明した。後編では、食器の洗い上がりや消費電力、食洗機を導入する上で必要な心構えなどについて触れたい。

食洗機を選ぶなら迷わず「大きめ」を

 食洗機を使い始めて、おそらく誰もが感じるであろうことは、「意外と入らないなー」ということ。購入する前は、食洗機が必要な家庭というと大家族を想像するだろう。というのも、この機種も含め、たいていの食洗機が5~6人用と銘打たれているからだ。だが、これは大きく事実とは違う。前編でも伝えたことだが、私は二人暮らしだし、一日に三度、家で食事をすることはなく、せいぜい週に4回、というところだが、「5~6人用」のサイズがオーバースペックだとは全く思っていない。

 

これだけスペースがあっても占拠してしまう。だが、それでも大きいものを薦めたい
 そもそもこの5~6人用、という表示自体、同じ形のお皿やお椀、コップを入れたときの数値である。しかし実際の利用シーンでは、大小様々な食器や調理器具、鍋、炊飯器の内釜、柄の付いたマグカップなど、一様ではない。こうしたものを格納していくと、すぐにスペースが埋まってしまう。

 では現実的にはどのくらい入るのか。感覚的には家で料理をすると、2人分で毎回、2回転が必要だ。1回目に食器類。2回目に鍋、ザル、包丁、まな板といった調理器具類だ。もし、もっと小さなサイズの食洗機だったら3回転、必要になるだろう。

1回目は実際に使った食器で……2回目は調理器具+αといった感じ

カレー、トマトソース、納豆、ごはんつぶ、なんでもござれの洗浄力

 さて、気になる洗い上がりだが、前編でも述べたとおり、日数の経ったカレーの鍋を一度も水で流さずに放り込んでも、きれいさっぱり落としてくれる実力がある。その後も、納豆をかき混ぜたあとの容器や、乾いてしまうとやっかいなトマトソース、空気に触れて固まったチーズのついたナイフなどもそのまま入れて洗っているが、常に満足のいく結果が得られている。

 

明太子スパゲティを食べた皿
麻婆茄子を入れた皿
赤ワインを飲んだ後、放置したグラス
前回も紹介した、カレーを作った鍋を3日ほど放置したもの

 べったりとソースが付いていた皿がウソみたいにキレイになっていたり、グラスの輝きが手洗いとは明らかに違うことがわかったりするなど、乾燥まで終了したあと、フタを開けて仕上がりをチェックする行為は慣れるまでは毎回、見入ってしまうほど楽しい瞬間だ。

DWS-600A
 私がかつて使用していた2006年モデルの東芝の「DWS-600A」と比較すると、茶碗やしゃもじにこびりついたご飯粒の落ちが格段にいい。DWS-600Aでは、茶碗を一晩放置すると固まったご飯粒が端っこの方にこびりついて取れなかったことがあるが、NP-TR1にしてからは、そういったことはすっかりなくなった。

 ところで、手洗いには手洗いのコツがあるように、食洗機を使う上でも、一定の洗い上がりを得るコツがある。説明書にも必ず書かれていることだが、(1)汚れている面を本体中心に向ける、(2)皿の重なりをなるべく避ける、といった工夫だ。食洗機では、ノズルから噴射されるお湯で皿の表面の汚れを落とす。手洗いの場合、まんべんなく水をかけることができるが、食洗機は一度セットした食器は動かないので、噴射されるお湯が当たらないと、まったく汚れが落ちない。使い始めのユーザーは、庫内の中にきっちりと食器を収める方に気を取られて、スキマを置かずに配置して、結果、洗い上がりに不満を持つケースも多く見られる。この2つを頭に置いておくだけで、ずいぶんと洗い上がりがよくなるだろう。

むりやり詰め込んで失敗するケース。一番右の皿が、柄付きの皿に隠れてきちんと洗えないワイングラスはくびれているため、横に寝かすとすすぎの水が溜まってしまう。皿を差す棒に差し込むとキレイに仕上がる

エコナビを試す。消費電力は大差なく、時間と水の使用量に差が

 このNP-TR1のウリは、食器の汚れと量を検知して、運転状況を自動制御するエコナビ機能だ。

 本来、食洗機は、あらかじめ洗わずに残飯だけを捨てて入れることを前提に設計されている。しかし、手洗いの習慣の名残で目に見える汚れをとりあえず水で流してから、食洗機に入れるユーザーが多かった。あらかじめ水で流しておくと、食洗機で汚れを落としきることが簡単にはなるものの、結局、手間が省けていない上に、節水効果も薄れてしまう。こうした問題を回避するため、これまでメーカーではあらかじめ洗った食器を洗う専用の「予洗い」モードを設けて、水と電力のムダを削減してきた。しかし、モード切替をせずに勝手に汚れ具合と量を判断して運転を制御してくれれば、そうしたモード切替の必要すらなくなる――そういう発想だ。

 実際に、前回も紹介した汚れのひどいカレー鍋、そしてカレーを食べた皿を洗ったときと、脂汚れがほとんどない、マグカップやコップ、ティーポットなどをまとめて洗ったときの消費電力量を比較してみた。結果は以下の通り。


汚れの量乾燥までの消費電力量かかった時間
多い1,205Wh92分
少ない1,180Wh89分
スペック値1,165Wh84分

 消費電力量はほとんど変わらなかったが、すすぎの回数がカレー鍋の場合で3回、ティーポットの場合で2回となり、結果、3分ほど洗浄工程にかかる時間が短かった。使用水量については正確なデータが取れないが、すすぎの回数が違うため、確実にティーポットのときのほうが少ないだろう。やはりエコナビは、皿の汚れをきちんと見ていたわけだ。

 消費電力がほとんど変わらなかったのは気になるところ。食洗機は高温のお湯で洗うのが特徴だが、電気を使うポイントが2つある。お湯を沸かすときと、乾燥するときだ。いずれもヒーターを使って水や食器を温めるためだ。このうち、前者に関しては、洗うのに使う水を温めるという仕組み上、食器の量や汚れ具合はほとんど影響を及ぼさないと思われる。後者に関しても、洗い上がったあとの乾燥工程なので、量の差はともかく、汚れの差は出ないだろう。とすると、大きく消費電力に差が出るのは、すすぎの間の運転にかかる消費電力だけ、ということになる。仮説でしかないが、これが消費電力の差が出なかった理由と考えている。エコナビは、節水、時短のための機能と考えた方がよさそうだ。

「機械におまかせ」を追求した新しい世代の食洗機

 

本体右下に残った食べ物のかけらが集まる。やはり、固形物はなるべく落としてから入れた方がよい
 と、基本的には機械におまかせでキレイになる優等生なNP-TR1だが、不満も少しはある。皿に残っていた食べ物のかけらがごくまれに食器に付着していることだ。これはNP-TR1が悪いというわけではなく、機種を問わず食洗機の抱える弱点で、同じ水を循環させて何度も何度も食器に吹きかける構造になっていることが原因だ。水に関しては汚れがひどければ入れ替えれば済むが、中に閉じこめられた固形物はどこにも排出されない。よって、水と一緒に庫内のなかをグルグル回ることになる。大きく構造が変わらない限りこの問題は解決されないだろうから、使い手側でフォローするしかない。先ほどの「あらかじめ洗うな」と矛盾するようだが、皿に残った固形物、つまり残飯はなるべく取り除いておくことが、食洗機を気持ちよく使う上で重要なポイントと言えるだろう。

 この後編の掲載日時点では、すでに後継機が発表されたNP-TR1だが、使用していてありがたいのはやはりエコナビの存在。運転モードがいくら充実していても、だいたい考えるのが面倒でいつも同じモードを使ってしまうことが多いだけに、ユーザーがモードの使い分けの判断をせずに、無駄なく運転してくれるこの機能はやはりこれまでの食洗機とは一線を画していると思う。汚れだけでなく量にも対応しているので、共働きの二人暮らしといった環境でも導入しやすいだろう。後継機ではさらに、泡だちを判定するセンサーを備え、さらに精度を磨いているようだ。今、買うならこのエコナビ搭載機しかない、と断言したい。





2010年3月16日 00:00