家電製品ミニレビュー
文系はオシャレさに! 理系はしくみにクビったけ! パナソニックの次世代「創風機Q」
by 藤山 哲人(2015/6/18 07:00)
「何コレ? サッカーボール?」と聞かれるのがコレ。少し家電に詳しい人だと「これスピーカー?」となるが、どちらも間違い。正解はパナソニックの「創風機Q」だ。実はこれ、超オシャレで理系にはたまらないオモチャになる扇風機なのだ。
メーカー名 | パナソニック |
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製品名 | 創風機Q F-BL25Z |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 36,700円 |
買って損することはない優等生の製品が多いパナソニック。
だがコイツは話が違う。ネーミングセンスもパナソニックらしからぬ抜群のセンスで「創風機」とキタ。しかも「Q」は「球」とかかっていたりする。何があったんだ! パナソニック!
今回は、ベンチャー企業なみにとんがったデザインと、王者パナソニック技術者の本気を見せてもらおうじゃないのっ!
扇風機としてもサーキュレーターとしても使える不思議なQ
羽がないので、どこから風が出てくるか分かり難いが、吹き出し口は正面の大きな穴。周りの小さい穴から風は出ない。また吹き出し口の反対側には小さな穴がたくさん開いていて、こちらから空気を吸い込むようになっている。
フタを空けると吸い込み口にはフィルターがあり、ホコリなどを除去してくれるようになっている。目詰まりすると風量が落ちるので、寝室や居間などホコリが多い部屋で使うときは、こまめに掃除機で吸い込んでやるといいだろう。
本体はQの名にふさわしく球体なので、床に置いておくとどこかに転がってしまう。そこで添付されている輪っか状の台に本体をセットする。扇風機として使うなら、Qを自分の方に向けてスイッチONすればOKだ。
おそらく何人かの人はお気づきかと思うが、この創風機Qにはほとんどの扇風機についている首振り機能がない。おそらくパナソニック内部でもモメたことだろうが、潔く首振りをなくしたから洗練されたデザインになったと筆者は高く評価したい。
風量は1~5段階まで選べるが、5で普通の扇風機の最大風量と同じ程度、3で弱より少し弱い程度となっている。1と2は、夕暮れ時に網戸から入ってくるようなやさしい微風だ。そのしくみは後述するが、普通の扇風機に比べてより自然の風に近いのが肌で感じられるだろう。
さらに自然の風を演出しているのが「1/fゆらぎ」モード。風量ボタンを長押しすると、その風量を最大にして強弱を付けてくれるというものだ。しかし規則的に強弱をつけるというわけではなく、風がなくてもロウソクの火が揺らぐように、リズムと強弱の両方がランダムに変わるようになってる。
そのため従来の扇風機にあった「弱」より弱い「おやすみ風」のような機械的な規則性はまったくなく、より自然に近い涼しい風を感じられるのが特長。パナソニックによれば「蓼科高原の風」を再現したという。筆者は夕暮れに散歩する近所の土手の風と変わらない気がするが(笑)。
また最近の扇風機選びで重要視される「音」は、ほとんど無音と言っていい。さすがに最大風量の4や5にすると、エアコンを強風にしたときのような音を出すが、2以下では耳を澄ましても音は聞こえず、寝室用の扇風機としても最適だ。
Qは夏のエアコンの冷気、冬の暖房の暖気を部屋全体に行き渡らせるサーキュレーターとしても最適だ。なぜなら扇風機に比べるとより床に近いところに置けるので、足元から天井まで空気を攪拌できるからだ。
ただ部屋の空気を攪拌して電気代を安くするサーキュレーターとして使う場合は、エアコンや暖房機器が作る気流を乱さないようにするのがポイント。最近のエアコンは部屋全体の気温を見張って、エアコンから吹き出す気流を制御するので、その気流を乱すとかえって不経済になることもある。
サーキュレーターは、家具の陰になったりL字の間取りなどでエアコンの風が直接届かない場所に設置するのがベストだ。
ネイチャーでナチュラルで超自然な風がスゲェ!
「Qが普通の扇風機とは違う自然に近い風を送る」と書いても、言葉ではなかなか伝わりにくい。なんとかして視覚化できないか? と試行錯誤しながら行なったのが、紙風船をQと扇風機の上に浮かべてみるという実験だ。
まず1つ目の違いは、扇風機の風は旋回しているという点。
Qの紙風船は、天井から吊っているように一点で静止している。対する扇風機の紙風船は、扇風機の羽とほぼ同じ大きさの円を描くような動きを見せるのだ。このように扇風機で作る風は「旋回流」と呼ばれるもので、ちょうど洋式トイレの水を流したように螺旋を描く風が送られるのだ。
一方Qの方は、息を吹くのと一緒で風が一直線に進む。どちらが自然に近いか? と言ったら、Qであることは明らかだろう。
次に注目してもらいたいのは、風の安定性だ。言葉にすると難しくなってしまうが、ビデオを見れば一目瞭然。合わせて風が旋回しているのも見て欲しい。
一般的な扇風機は旋回流に加えて、空気の密なところとまばらなところがあり、音で表現するならボッボッボッ! 見た目だとダンゴのような空気の塊ごとに風が送られる。なので扇風機の羽は一定の速度で回転しているのに、風に強弱が生まれてしまうのだ。
この強弱を少なくするために、最近の扇風機は羽の数を10枚近くまで増やしているものがあるほど。昔の扇風機は羽が3枚、多くて4枚だったのに、最近では5~7枚になっているのは、少しでも滑らかな風を送ろうとするメーカーの努力の表れなのだ。
一方Qの風は非常に安定しているので、紙風船がいつまでも空中に留まっている。
さて不思議な創風機Qの風は、羽もないのにどうやって起こしているのか? が気になって眠れないヒトも多いだろう。しくみを簡単に説明するなら「吹き出し口にミニ台風を作って、周りの穴からたくさんの空気を巻き込んで吹き出している」。これがQの原理だ。
難しく言うと「コアンダ効果」。興味がある理系のヒトはネットで検索すると、なるほど! とうなづけるはず。
内蔵されているファンで起こしている風はごくわずかで、吹き出し口の周りの数ミリのスリットから出てくる。でもここを出た空気は小さいながらも台風の目のような低気圧を作り出すのだ。
台風の目をその目で見たヒトは少ないと思う。実は台風の目に入ると上空は快晴で、風もほとんど吹いていないのだ。でも小さな目の台風でも強い風が吹くのは、周りから空気をたくさん巻き込んでいるから。
Qも同じで、内蔵ファンで作り出す低気圧は小さいが、その7倍もの空気を周りの穴から吸い込んで、吹き出し口から出しているのだ。
この周りにある穴は単なるデザインじゃなく、機能を追求したらこういう形になったのだ。単純な丸い穴ではなく、厚みやカーブ、Qの中の起伏やカーブもすべて計算して、この形になっている。いわば機能美ってヤツだ。
最後は自然の風を演出する「1/fゆらぎ」モードのムービーを見てもらおう。
どうだろう? 一般的な扇風機が持っている「おやすみ風」や「リズム風」と言ったものと少し違い、より自然な感じで紙風船が上下するのが分かるだろうか?
羽がないからお手入れ簡単で、小さな子供やペットがいても安心
創風機Qをまずおすすめしたいのは、小さなお子さんやペットがいる家庭。駆動部がない(正確には見えない)ので、これ以上に安全な扇風機はない。
たとえ床に置いてあったとしても、高さがないので転倒することもなく、ペットが体当たりしたとしても床を転がっていくだけだ。