家電製品ミニレビュー

プロジェクター型Android端末「Xperia Touch」はインテリアの一部になるか!?

 先日ソニーから非常に面白い製品が発売されました。超短焦点プロジェクター「Xperia Touch」です。発売前に製品を1週間ほどお借りして使うことができましたので、その使用感をお届けします(なおお借りしたのは試作機のため、製品と一部仕様が異なる場合があります)。

Xperia Touch
メーカー名ソニー
製品名Xperia Touch
実売価格162,302円

壁に密着させて壁に投射でき、操作も可能なAndroid内蔵のプロジェクター

 「Xperia Touch」は、ディスプレイを持たず、代わりに壁や床に投射して使うプロジェクター型のAndroidマシンと思えばいいでしょう。製品の細かい仕様については、ケータイ Watchの記事が参考になります。

 通常プロジェクターというと、スクリーンを用意して数m離れた場所に設置した機械から映像を投射するイメージが一般的だと思います。

 しかし超短焦点プロジェクターのXperia Touchは違います。テーブルや床にも投射できるのはもちろんのこと、壁にぴたりとつけた状態でも壁に投射できます。壁から0cmでは23型(横:約51cm)、約9cmでは40型(横:約88cm)、約18cmで60型(横:約133cm)、約28cmで80型(横:約177cm)と、離せば拡大もできます。

側面。とてもスッキリしたデザインです
手前から電源ボタン、カメラ、奥の小さな点が音量調整ボタン
底面に電源用の端子があります
中はAndroidなので、Androidユーザーならなじみのあるアイコンが並びます

 Xperia Touchで投射するのはAndroid 7.0の画面ですが、拡大なしの状態ならスマートフォンやタブレットを扱うように、壁で、床で、テーブルの上で指で操作できます。赤外線とイメージセンサーを組み合わせることで触った位置を検知。毎秒60フレームのリアルタイム検出により、遅延のないタッチを実現しています。

操作もできます。これは床に投射した状態で、アカウントの追加をしているところ

 1,200mAhのバッテリーを内蔵しているので、ACアダプターなしで約1時間利用できますし、SIMカードは使えませんが無線LANやBluetooth接続はできます。操作する場所が壁やテーブルであること、投射される画面が横に固定されているという点以外、スマートフォンやタブレットとなんら操作は変わりません。

 Android端末ですから、Google Playからアプリをインストールして使えます。Androidスマートフォンやタブレットでできることは、Xperia Touchでもできるのです。

Google Playから好きなアプリをインストールして使えます

 最大10点のマルチタッチに対応しているので、複数人での同時操作も可能。製品発表会では、ピアノの演奏、お絵かき、対戦ゲームなどいろんなアプリのデモンストレーションが行なわれていました。

 本物のピアノがなくても、Xperia Touchがあるところでならいつでも演奏できます。壁や床にクレヨンや油性マジックで落書きしなくても、Xperia Touchがあればどこにでも自由に絵を描いて遊べるでしょう。有効画素数約1,300万画素のカメラもついているので、ビデオチャットもできます。

部屋のどこでもピアノの演奏が!

 また、音声認識機能もあり、Xperia Touchに「Hi Xperia」と呼びかけるとボイスコマンドが起動して、天気予報、今日の予定などの情報検索ができるほか、音楽再生やアプリケーションの起動ができます。

私がやりたかったのは、“賢いインテリア”として活用すること

 プレゼンテーションで提案されていたのは、家族や友達と一緒に楽しむという使い方です。特に家族とリビングで過ごすイメージでした。しかし私は1人暮らしで、我が家に大勢で過ごせるような大きな空間も広いテーブルもありません。ただ、製品を見たときやりたいことがすぐ浮かんできました。

 「これなら大きなテレビなど置けない狭い1人暮らしの部屋でも、壁を使っていろんなことが楽しめるのでは!」

 自分のライフスタイルをアップグレードさせるためのアイテムとして、活用できる気がしたのです。具体的にやってみたことは、キッチン兼リビングの壁に常に映像を投影し続けるという、非常にありきたりなことでした。

 今回インストールしたアプリはDropbox、Ingress、Instagram、Amazon Prime Video、Spotifyなど。あとはGoogleフォトを使って、標準の時計画面、YouTubeのライブ動画、ミュージックビデオ、契約している見放題のドラマや映画のサービス、自分が過去にスマートフォンやカメラで撮影した美しい風景などをひたすら映すのです。これが非常によかった!

動画コンテンツをひたすら流す!

 まず、好きなアーティストのプロモーションビデオを大きな画面で楽しめました。YouTubeのミックスリストを選択して流していると、音楽が楽しめるのはもとより、映像もチラチラ見られて、明かりを落とすとどこかのバーのような雰囲気に。

 その流れで、初めてお酒を飲みながらライブ映像を堪能していたら、夢中になりすぎて明け方になっていました。大画面高画質のディスプレイには及びませんが、音楽と雰囲気を楽しむなら十分です。

大好き名アーティストのプロモーションムービーを連続再生しまくり!

 しかも相手はAndroid搭載マシンです。検索すればコンテンツはインターネット上でいくらでも見つけられます。動画を再生しているのがメイン端末ではないので、動画で占有できるというのも1つのメリットになります。

なんとなくラテン音楽が聴きたくなり、フラメンコの動画を再生しながら音楽を楽しんでみました

 本誌でもご紹介していますが、自宅ではソニーのLED電球スピーカーも使っています。今回、映像は壁に投射しつつ、音楽はLED電球スピーカーを通じて頭上から流しました。

 Xperia Touchには2Wayステレオスピーカーが搭載されていますが、深夜に壁に接触させて再生すると隣家に迷惑がかかるのでは、と思ったからです。音やライティングを手元のリモコンで操作できるようになり、結果的にこれも雰囲気アップに大いに貢献してくれました。このようにBluetoothで簡単にペアリングできるのも「Xperia Touch」のよさです。

Bluetoothで同じソニーのLED電球スピーカーとペアリング。音はLED電球スピーカーから出していました(このときは設定で細かい文字を読むために、画用紙を壁に貼ったので歪んでいます)

位置情報ゲーム「Ingress」の近況をチェック!

 続いて、自分がよく楽しんでいる位置情報ゲーム「Ingress」のIntelMapを映してみました。そんなもの見てどうするんだといわれそうですが、海外アノマリー開催時には、仲間と飲食を楽しみながら観戦会もできそうだと思いました。

IntelMapを壁に投射。このときは23型サイズですが、壁から離せばもっと拡大できます。飲みながら楽しめそう!?

 ただ、画面操作をするためには縮小してから画面を操作するか、いったんテーブルに投射し直して操作するしかないのは少々面倒。パソコンのカーソルで操作するように、投射中の画面が操作できたらよさそうです。

 だったらパソコンとケーブルでつないで画面をXperia Touchで出せばいいじゃないか、といわれてしまいそうですが。確かにそれもできるのですが、Xperia Touchだけですべてを完結させたいとき、リモート操作したいときもあるかと思います。前述の動画再生時も、飲みながら見ていると、手元で動画をコントロールしたくなってくるのですから。

 ちなみに「Xperia Touch」が横画面固定なのに対して、Ingressのゲーム画面が縦固定なので、アプリとして起動することはできても、見るのに首が疲れる状態になってしまいました。アプリによってはこのようなことが起こりえます。

肝心のゲームアプリのほうは縦向きなので、倒れた状態に

お気に入りの写真を飾る

 最後は王道中の王道という使い方、写真の投射です。映し出す写真によっては、そこに窓があるように思えたり、ポスターのようだったりして、これがなかなか楽しい!

窓のない部屋に突然緑の窓が。爽やかな気分に
昔パリで撮った写真を懐かしんだり……
ポスターっぽい投射の仕方をしてもおもしろそう

 我が家のようにピンがささらない、ビニールクロスのためテープを貼り付けてもはがれてしまうような壁に何かを飾るのは大変。現在はフォトフレームも裏に専用のテープを使って壁に貼り付けていますが、いつか落ちてくるのではないかとヒヤヒヤします。

 しかしXperia Touchなら、はがれる心配がありませんし、いくらでも変えられます。なんならスライドショーもOK。壁の凹凸は文字を見るには辛いですが、写真なら絵画のように見える効果も。自分で撮影した写真を空間に活かして、インテリアとして楽しめるいい機能です。

我が家は壁が凸凹しているので、絵画っぽいテクスチャに
綺麗に映そうと紙を貼っても、剥がれてしまうのです……

 今回特に役立ったサービスがGoogleフォトでした。カメラでもスマートフォンでも、撮った写真はすべてGoogleフォトにアップロードしています。おかげでmicroSDカードなどを使わず、クラウドからダイレクトに写真を利用できました。しかも、いつのまにか高精度で写真が分類され、多くのアルバムが出来ていたので、探す楽しさも発見。

 Xperia Touchにはメモリカードスロットもありますが、スマートフォンやカメラのメモリカードを使うと、戻し忘れる危険性がアップ。しかしクラウドサービスを上手に活用すると、外出してから「カード忘れてきた!」とならずに映像コンテンツを楽しめます。

microSDカードスロットはあるので、スマートフォンで撮った写真を直接表示できますが、逆に取り忘れが心配です!

 1点気になったのが明るさでした。ACアダプターを使って投射しても100lm。明かりを落とした部屋では見やすいですが、明るいライトの下ではかなり薄れてしまいます。とくにコードレスにするとさらに半分まで落ちてしまいますから、もう少し明るかったらと思います。

パリの風景写真を明るい部屋で見るとこんな状態。明るい部屋でも映像が楽しめるくらいだと嬉しいですね

テレビではなく「Xperia Touch」を選ぶ理由

 試用期間は1週間足らずでしたが、Xperia Touchなら、場所もとらずにすぐインターネットのコンテンツが大画面で楽しめると実感。壁ギリギリに設置できるので、狭い部屋でも映像を存分に投写できるところもいいと感じました。

 従来のプロジェクターと違って光を遮らないので、周辺を行き来しやすいのもメリットです。人感センサーで逐次表示できますし、稼働音はファンの音が少しするくらいで基本的には静かなので、常に稼働させておけるのではと思いました。

たったこれだけのスペースがあるだけで、大画面で映像が楽しめます

 LED電球スピーカーでは、生活にそれまで以上に音楽を取り入れることに成功しましたが、Xperia Touchは動画との距離が大幅に縮まりそうな予感がしています。おそらく常設したら、もっと気軽に映画やドラマを見るようになりそうです。今回はできませんでしたが、凸凹の壁に無音でモノクロ映画などを映しっぱなしにしたら、アートな感じになるんじゃないかなど妄想は止まりません。

LED電球スピーカーとの相性抜群でにんまりです

 「そんなこと、インターネットに接続した大画面テレビがあればできるじゃないか」と思われるかもしれません。確かにそうともいえますが、私があえてXperia Touchがいいかも、と感じた理由は3つあります。小さくてコンパクトなこと、自由に移動できること、何よりもそれ自体がこちらに向けて光を発しないことです。

 部屋に明かりを落として薄暗くバーっぽい雰囲気を演出したいのに、テレビをつけたら煌々と明るい光を浴びることになります。そもそも我が家では大画面テレビは物理的に難しいのですが、もし設置したらかなりの存在感ですし、つければ相当まぶしいはず。その点Xperia Touchは部屋の空気を“テレビ”で染めることなく、画像や映像コンテンツを部屋に馴染ませながら楽しめます。

40型相当にしても、部屋の明るさは変わりません
一番やりたかったのがこれでした!

ボイスコントロールもできる壁かけ時計やカレンダーとしても

 特に今すぐ見たいものがないなぁ、と思っている方におすすめなのが、単純に壁に時計やカレンダーを表示しておくという使い方。ボイスコントロールを有効にしておけば、離れた場所からでもいろいろ確認できて、これが近未来感がありかっこいいのです。

標準のホーム画面を表示してみたところ。時間や天気などが分かるほか、この状態でボイスコントロールもできます
ホーム画面を横にスワイプすると現れるカレンダー。スケジュールの確認だけでなく、この状態からGoogleカレンダーへの追加も可能

 ボイスコマンドでは「今日は何日?」「今何時?」「今日の天気は?」「東京の天気は?」「次の予定を教えて」「明日10時に予定を作成」「6時に起こして」「タイマーを3分に設定して」「ニュースを読んで」「アーティスト名/アルバム名/**を再生」「設定したアプリ名を起動」「東京から**までのルートを検索して」「地図を見せて」「**さんに電話」「スカイツリーを検索」などの音声コマンドが使えるほか、Googleアプリによる音声検索にも対応しているそうです。

 表示した状態で操作できるので、カレンダーでは予定やメモを思いついたらそのまま追加できるところも魅力。壁に落書きするように、手描きでメモしても面白そうです。好きなデザインを選べるようになったら、この手のウィジェット類ももっと楽しく使えるはずです。

落書きアプリをメモ代わりにしても楽しそう
応答の音声がかなり小さくて聞こえづらいかもしれませんが、実際にボイスコマンドを使ってみたところ。このままタスクリストに買い物メモができるようになったら最高です

壁の材質とアカウント入力に苦労

 今回試用するにあたって悩んだのは、どうやったら壁に綺麗に映せるかでした。というのも、我が家の壁は白いのですが凹凸が多く、文字が見えにくくなって操作しづらいからです。

文字を見るには辛い壁です

 最初は壁に大きな白い画用紙を貼り付けてみました。しかしピン類がまったくささらないうえに、テープ類もすぐはがれてしまう材質で、動画を見ているうちに剥がれるなどして非常に苦労しました。

 ポスターなどの貼り付けに使える両面テープや粘土状の接着剤を使えばいいのですが、壁との間に隙間ができると紙が浮き上がったり、たわみがでやすくなります。梱包用の白いテープをたっぷり使って、紙の四辺をびっしり貼り付ければ多少投射しやすくはなるのですが、紙は湿気を吸うとゆがみがでます。ゆがんだ場所に投射すると、触っていないのに繰り返し設定画面が表示されたりと、誤操作が発生しやすい状態になるようなのです。もちろんアカウントなどの入力もかなりしづらくなります。

紙では四隅をピンと張ったつもりでも、ゆがんでしまって操作しづらいことが多いようです
見慣れたアイコンならすぐ分かりますが、アカウントの入力となると結構大変
写真ならどんなテーブルでも雰囲気は楽しめますが、文字関連はできるだけ明るいほうがいいですね

 試行錯誤の末、最終的には諦めて壁に直接投射しましたが、スクリーンの代わりになるものを導入するなら、壁にピッタリ貼れる硬い白めのボードがいいかもしれません。

 「Xperia Touch」に興味があっても、見やすい壁やテーブルがないというケースもありそうなので、“その中に映すとかっこよく見える”スクリーン用ボードなどが生まれるといいかもしれません。

すずまり