家電レビュー

バルミューダの「サラマンダー」トースタープロが料理をもっと面白くしてくれた

バルミューダ「BALMUDA The Toaster Pro」(37,400円)。サイズや外観は、同社トースターのスタンダードモデルとほぼ同じで、サラマンダー機能の搭載が最も大きな違い

仕事柄さまざまな家電を使っている中、この10年で最も進化した家電の1つがトースターだと感じている。そのきっかけとなったのは間違いなく、2015年の「BALMUDA The Toaster」の登場だ。それまで、ただ、ヒーターで焼くだけだったトースターにスチームや温度制御機能を持ち込み、それまでにないおいしさを実現。高級トースター市場をも作り出した。

そして2022年に「サラマンダー」という新機能を搭載した上位モデル「BALMUDA The Toaster Pro」が登場。さらに新しい使い方を提案した。それから1年。「BALMUDA The Toaster Pro」と、サラマンダー機能を使い倒してみた。

なお、紹介していく前に一つお断りしておかなければならないのは、直近11月にBALMUDA The Toaster Proの新モデル(K11A-SE)が登場したこと。

いま販売されているのは、筆者が試した2022年モデルではなく新しい2023年モデル。本レビューのメインテーマである「サラマンダー」機能については同等のものを継承しており、この機能に関していえば新モデルでも同じと考えてよさそうだ。なお、新モデルと従来モデルの違いは、温度制御のプログラムや庫内の広さなど。詳しくは発表時のニュース記事で紹介されている。

関連記事:バルミューダ、サラマンダーで焼き上げる「トースター プロ」リニューアル発売(2023年の新モデル)

元祖「水を入れて焼く」トースター

初代モデルの登場から約9年。改めてBALMUDA The Toasterシリーズについて、基本の部分からその良さを説明したい。

最も特徴的なのが5ccの水を入れてトーストすることだ。加熱をスタートすると水が高温の水蒸気に変わり、トーストの表面に付着する。これでトースト内部の水分が失われず、表面をカリッと焼き上げられる。

本体上部に水を入れる給水口。口が大きいので水が入れやすい

「BALMUDA The Toaster」の登場以降、同様に水を入れて焼くトースターは多くのメーカーから発売されており、現在ではあまり珍しい機能ではなくなっている。

それでも「BALMUDA The Toaster」で焼いたトーストはおいしい。それを実現しているのが、もう1つの特徴である緻密な温度制御機能だ。立ち上がりから焼き上げまで1秒単位で温度を制御することで、モードごとに最適な温度でパンを焼き上げることができる。スチーム機能とこの温度制御機能の組み合わせで「BALMUDA The Toaster」はおいしくパンを焼き上げることができるのだ。

搭載するモードはトースト、チーズトースト、フランスパン、クロワッサン、マニュアルの5種類。中でも一番おいしく焼けると感じているのが、クロワッサンモードだ。

Proモデルのモードダイヤル。一番右側にサラマンダーが追加されている

個人的にクロワッサンが好きで、よく購入する。「BALMUDA The Toaster」のクロワッサンモードで焼くと、ドアをオープンした瞬間にバターの香りが広がる。クロワッサンは焼くと乾燥して表面がカサカサになったり、焦げてしまったりしやすいが、クロワッサンモードならそういった失敗も起きにくかった。

カリッとサクッと焼けるクロワッサンモードは至福。香り豊かなクロワッサンが楽しめる

上面だけカリッと焼き上げるサラマンダー

そして「BALMUDA The Toaster Pro」にのみ搭載するのが、サラマンダー機能だ。これは上火で食材の表面をすばやく加熱する業務用の調理器具である「サラマンダー」からとった機能名のこと。

ずいぶん前になるが、筆者が学生時代にアルバイトしていた飲食店の厨房にサラマンダーがあり、よく使っていた。食材にチーズをかけてサラマンダーに入れると短時間でチーズが溶けて焼き色が付けられるのだ。「BALMUDA The Toaster Pro」のサラマンダー機能もそんな使い方ができる。

グラタンの表面を焼くのにも使える。上火だけなので食材が焦げ付きにくい

基本の使い方が、トーストの追い焼きだ。普段より少し短めに焼き、その後、30秒ほどサラマンダーで追い焼きするだけでいい。通常よりもトーストの表面がカリッと焼ける。しかも、表面だけを短時間で焼くため、パン内部の水分が失われにくく、より強いコントラストが楽しめるわけだ。

サラマンダーで少しだけ追い焼きしたところ。表面のカリッと感が増す。ただし攻めすぎると一気に焦げるので注意だ

そしてもうひとつの使い方が料理。食材の表面だけを焼きたいといったときにサラマンダーが活用できる。ただし、使ってみるとちょっとコツがあるようだ。サラマンダーは上ヒーターだけを最高パワーで発熱させるモード。このため、食材の下側は焼けない。基本的には調理のフィニッシュで活用することになる。

例えばチーズチキングリルは、魚焼きグリルやフライパンでチキンを焼いた後、チーズをかけてサラマンダーで焼く。2分ほど焼くだけで表面のチーズにおいしそうな焦げ色が付いた。

チキングリルにチーズをかけてサラマンダーで焼く。蒸し焼きと違って焦げ目が付けられる

フライパンでの蒸し焼きでもチーズは溶けるが、チーズを焦がせるのがサラマンダーの魅力。しかも身には火が入りすぎないので固くなる心配もない。

コツは先に1~2分、オーブンをから焼きして、ヒーターを温めておくこと。そうすると短時間で表面をカリッと焼ける。また、オーブン調理の最後にサラマンダーで追い加熱する使い方も面白い。

「ズッキーニのチーズ焼き」は200度のオーブンモードで5分焼いた後、サラマンダーで約2分。表面においしそうな焼き色が付いたら完成だ

食材をセットした後、温度を設定して加熱。しっかり焼けたら最後に1~2分、表面を追い焼きする。「BALMUDA The Toaster Pro」のサラマンダーの魅力は大きな窓から焼けていくのが見えること。ジリジリと表面が焼けていくのを見て、最適な焼き加減で止めることができる。

白身魚のグリルでは皮目がパリッと炊けた。身のプリプリ感とのコントラストが最高だった

なお、業務用のサラマンダーのように食材とヒーターの距離を変えることはできないので、チーズを溶かしたり、焼き色を付ける場合2分程度かかった。

料理をさらにおいしく楽しくしてくれる「プロ」

サラマンダー機能の面白さと使い方のコツはここにある。BALMUDA The Toasterシリーズはモードに応じた緻密な温度コントロールでさまざまなパンがおいしく焼ける。それに対して、サラマンダーは強力な上火で一気に表面を焼く機能だ。このため、手動での制御が必要になる。

サラマンダーでトーストを追い焼きする場合も、タイマーを回した後は焼き色を見ながらベストなタイミングで止める必要がある。その瞬間を逃すと焦げすぎることもある。だからこそサラマンダーは面白いともいえる。じっと表面を見ておいしい時間を判断する。それはまさに料理の面白さだ。

左手前からトースト3分のみ、右手前サラマンダー10秒、左奥サラマンダー20秒、右奥、サラマンダー30秒。表面の焼ける早さがわかる

Proモデルだからといって、毎日サラマンダーで追い焼きをする必要はない。例えば平日の忙しい朝は、通常のトーストモードで焼き、週末など、ゆっくりできるときだけサラマンダーでよりおいしく焼く、といった使い方ができる。また、おかず作りもディナーメニューの調理で楽しめる。

トルティーヤチップスにチーズをかけてサラマンダーで溶かしたところ。ここにサラダやサルサ、アボカドディップなどをのせるとメキシカンサラダに

おいしくパンが焼ける機能にプラスして、サラマンダーという「料理が楽しくなる」機能が追加されたのが、「BALMUDA The Toaster Pro」のよさだ。手軽においしくパンを焼きたいなら、通常の「BALMUDA The Toaster」で十分。価格は新しいProが37,400円、通常モデルが29,700円で、その差は7,700円。

「BALMUDA The Toaster Pro」は、料理そのものをもっと楽しみたい人にぴったりのトースターといえる。

コヤマタカヒロ

フリーランスライター。1973年生まれ。学生時代より雑誌ライターとして活動を開始。PC、IT関連から家電製品全般までに造詣が深く、製品やビジネスを専門的ではなく一般の方がわかるように解説するスタンスで執筆活動を展開している。近年は、デジタルとアナログ、IT機器と家電が交差、融合するエリアを中心に取材活動を行なっている。雑誌やWebに連載多数。企業のアドバイザー活動なども行なっている。 Twitter: @takh0120