家電レビュー

低温調理器を使い始めたらいつもの食卓がワンランクアップした。ローストビーフもお手の物

人生初の低温調理器を約3週間使ってみました

突然ですが、筆者はローストビーフが大好きです。ホテルビュッフェなどでローストビーフがあれば、切ってくれる人に認知されるレベルでおかわりに行きますし、自宅でクリスマスや誕生日を祝う際には、ローストビーフを求めて必ずスーパーへと向かいます。

いっそ自分で作ってしまおうと思った時期もありましたが、レアっぽい焼き加減の肉ってちょっと怖くないですか? 加熱が不十分だと食中毒になってしまうかもしれませんし、何より筆者はプロの料理人ではないので、自分が全く信用なりません。

そこで今回は、公式サイトで「誰が調理しても失敗せずにプロの味が実現します」と謳っていた葉山社中の低温調理器「BONIQ(ボニーク) 2.0」を試してみました。価格は22,000円。

低温調理器にもいろいろな製品がありますが、その中でも使っていて気分が上がりそうなデザインと、広くないキッチンでも使えるコンパクトさ、そしてテレビでも紹介されていたことでも気になっていたので選びました。

なお、こちらは飲食店での使用は保証外とのことですが、プロの現場でも即戦力になるという「BONIQ Pro」(33,000円)もあります。

本体のほか、着脱可能なホルダーが付属します

水を入れた鍋にセットして使うタイプの低温調理器で、食材をジップ袋に入れて密閉し、湯煎温度と時間を設定した本体を一緒に鍋に入れてほうっておくだけで調理ができます。温度は5℃~95℃、加熱時間は1分~99時間59分まで設定可能です。

本体サイズは約5.5×10×31cm(幅×奥行き×高さ)と、低温調理器の中では比較的小さいサイズ感。筆者のキッチンは、調理家電を置きっぱなしにできる広さではないため、コンパクトサイズなのがありがたいです。また、重量も1kgと軽めなため、使用時や収納の際の扱いで重さのストレスもあまり感じません

付属のガイドブックには、調理の際に役立つレシピや、牛肉や豚肉など食材の種類と厚さによって推奨される温度と時間をまとめた「低温調理 加熱時間基準表」が載っています。この基準表によると、安全に低温調理をするには、各食材の「加熱温度」と食材の「厚み」によって、 必要な加熱時間が変わるとのこと。 加熱時間の選択は食材の重さではなく厚みによって変わるので、表では加熱温度と厚さで加熱時間を算出しています。表をよく確認して温度や時間を設定すれば、安全レベルまで加熱殺菌ができると思うとかなり心強いです。

BONIQ「低温調理 加熱時間基準表」(PDF)

取扱説明書とガイドブックが付属します
設定温度表示。操作パネルはシンプルなつくりなので、直感的に操作できます
設定時間表示は「時間:分」で表示されます

低温調理器を使用するにあたり、深さ15cm以上で容量5~15Lの大きな鍋が必要になるのですが、手持ちで丁度良いものがなかったため、同社の深型ホーロー鍋を購入しました。ホーローは蓄熱性が高く、低温調理に適しているといいます。あと、低温調理器本体の底にマグネットが付いており、ホーローにくっつくため、ホルダー無しでも自立するのも嬉しいポイントです。

同社製品だからか、セットにするとなんかしっくりくる感じ。ホルダー無しでも自立します

ほったらかしでプロ級のローストビーフができた。鶏むね肉もしっとりすぎ!

こうしていろいろと揃えたので、いざローストビーフを作っていきます。BONIQ公式レシピサイトに掲載されていたローストビーフレシピの中から、より安心感を得るために加熱時間が長めのものを参照しました。

はじめに鍋にたっぷりの水を入れ、BONIQの温度を「55℃」、時間を「24時間」に設定してセットします。牛もも肉(厚さ5cm程度)を、しっかりと空気を抜いてジップロックに入れ、設定温度に達したら食材全体がお湯に浸かるように鍋に入れます。

その後24時間、継続して熱を加えることになるので、水位が下がるのを防ぐためにアルミホイルで蓋をして放置します。

肉をチラ見せ。温度「55℃」、時間「24時間」に設定。鍋の中に肉を投入し、アルミホイルを被せて1日放置します

設定温度に達するまではしっかり機械音がしていましたが、その後の調理中の本機は無音です。あまりにも静かすぎて、止まっていないかを何度か確認しに行くほどでした。

そして24時間後、肉を取り出し、全ての面に焼き色を付けていきます。フライパンにオリーブオイルを熱し、強火で表面を焼きます。フライパンから肉を取り出し、アルミホイルに包んで7~8分置いたらできあがりです。

肉の全面に焼き色を付けていきます
アルミホイルに包んで余熱でさらに火を通します

カットして断面を見てみると、しっとりとしたほんのりロゼ色に仕上がっていました。お恥ずかしながら、手先が不器用なため薄くスライスすることができなかったのですが、食べてみると非常にやわらかく、肉肉しい旨味が感じられるローストビーフができました。

むしろ少し厚めに切ることで、メインディッシュっぽくなり、まるでレストランの良いローストビーフを食べている気分です。スーパーの安いローストビーフは、厚さが薄くて少量だったりして、メインというよりはサラダのちょっと豪華なトッピングくらいにしかならなかったので、家庭でもローストビーフがメインディッシュで出せるんだ(しかも自作)と、ちょっとした感動さえ覚えました。

初の手作りローストビーフは大成功! ロゼ色の断面が美しいです。市販のステーキソースをかけていただきました

ほかにも、付属のレシピブックに掲載されている料理に挑戦してみます。続いては「鶏むね肉のオニスラのせ」です。

たっぷりの水を入れた鍋に、温度「63℃」、時間「1時間」に設定したBONIQを入れます。余分な水分をキッチンペーパーで取った鶏むね肉を、空気をしっかり抜きつつジップロックに入れ、鍋の中に投入してしばらく待ちます。

余分な水分をキッチンペーパーでふき取ります
1時間程度なので、アルミホイルなどの蓋はせずにそのまま放置します

1時間後に取り出しカットしたら盛り付けて完成です。レシピブック通り、たっぷりのオニオンスライスと醤油・ごま油をかけていただきます。

生っぽい部分は見当たらず、しっかりと中まで火が通っていました。食べてみると本当にしっとりとした仕上がりです。ちょっとパサついている印象の鶏むね肉がやや苦手で、値段が高かろうが脂質が多かろうが、とにかく鶏肉ではもも肉を選んでいた筆者ですが、これはもう革命的に美味しいと思いました。パサつきのパの字もありません!

たっぷりのオニオンスライスと醤油・ごま油をかけてできあがり。肉の旨味を引き出せているからこそ、シンプルな味付けでも美味しくいただけるのだと思います

余談ですが、その後、筆者はまとめ買いした1kgの鶏むね肉を一気に低温調理して冷凍保存し、少しずつ毎日食べるようになりました。よだれ鶏風にアレンジしたり、サラダのトッピングに使ったりと、汎用性が高くコスパも良い料理なので、とても便利です。

肉が続いたので、魚料理にも挑戦したいと思い「赤ワイン漬けまぐろのコンフィ」を作ってみました。コンフィとは、食材を低温の油でじっくりと煮た料理のことだそうです。

ジップロックにまぐろの柵と醤油、煮切った赤ワインを入れて、温度を「46℃」、時間を「30分」に設定した鍋の中に入れます。鍋にはお湯を張っており油で煮ていないのでコンフィと呼んでいいのかはさておき……30分後、取り出してカットをしたら完成です。レシピブック通りに、エクストラバージン・オリーブオイルやハーブ、黒胡椒、ピンクペッパーを散らしていただきます。

調味料をまぐろの柵に馴染ませ、一緒にジップロックに密封します

見た目も食感も肉っぽいけど、醤油で風味付けをしているのもあってか、噛むとしっかりマグロの旨味も感じられて美味しい料理ができました。こんな洒落たものがお家で作れてしまうなんて、驚きです。

魚の独特な臭みが抑えられ、旨味をより感じることができました。自分では作れないと思っていた料理でも、低温調理器があれば簡単に作れてしまいますね

毎日でも使いたくなる手軽さ&使用感

はじめて低温調理器を生活に取り入れてみましたが、高クオリティな料理が失敗せずに、ほぼほったらかしで完成することにとても感動しました。低温調理をしながら同時並行でほかの家事をしたり、趣味の時間に充てたりと、日々の時間にゆとりが持てたようにも感じています。加熱殺菌をすることで安全に食事を楽しむことができるようになる点も嬉しいポイントでしたね!

汚れが目立ちそうな白を使いましたが、完全防水で丸洗いも可能なため、汚れがついても洗って綺麗な状態を維持できます。

1点だけ、遠隔コントロールで外出先から操作ができるアプリ連動機能があったのですが、特に必要な場面が訪れず今回は使用まで至りませんでした。本体のスイッチを押し忘れて外出してしまった! という時には便利そうな機能ではありますが、そのようなこともしょっちゅうはないかと思うと、筆者はあまりアプリ機能は使わないかもと思いました。遠隔操作だけでなく、経過時間に応じて自動で温度を変えるなど、細かなマニュアル設定もできるとのことなので、もっとこだわった料理に使いたい場合は活用できそうです。

とはいえ、シンプルな操作性やコンパクトで場所を取らないサイズ感など、機能やデザイン面でかなり満足しています。飲食店やプロにも使用されている本機ですが、低温調理器に初挑戦したいと考えている方にもおすすめの1台です!

松川 叶実