家電レビュー
テスコムの水なし低温調理器は失敗知らず。ローストビーフもお手軽でした
2022年12月8日 10:29
肉や魚などを低温でじっくり加熱することで、しっとりとやわらかく仕上げる低温調理。調理法としてはすっかり定着し、各社からいろいろな低温調理器が販売されています。
ところがこの調理方法は温度管理が大切で、厚みや大きさが異なる食材に最適な温度と調理時間を見つけるのはけっこう難しいのです。
低温調理を誰にでも失敗なくできるようにした製品が、テスコムの「芯温スマートクッカー TLC70A」です(直販価格は16,500円)。Makuakeでテスト販売をしたところ、目標金額の635%を達成する人気を得て、11月から一般販売もはじまりました。今回はこの機種を使って、実際に低温調理を試してみました。
食材に温度センサーを刺すしくみで、低温調理で重要な芯温がわかりやすい
低温調理は、肉や魚などをタンパク質が固まらない温度をキープして長時間加熱することで、やわらかく、ジューシーな仕上がりを実現しています。
しかし食材の厚みによって、火の通りは変わってしまいます。レシピ通りに作ってみても、「パサパサだった」「生っぽかった」などの違いがでるのは、レシピの食材と実際に使った食材の大きさの違いがあるからです。
低温調理器として人気のBONIQでは、食材の種類と厚みによって温度と加熱時間を調整できるように「加熱時間基準表」を公開していたりするくらいです。
低温調理が「難しい」「面倒」といわれるのはこのあたりに原因があるのですが、そこで本機の登場です。「芯温スマートクッカー」は、温度を測るセンサーを食材に刺し込み、火の通りにくい芯部温度を正確に測る仕組みで、低温調理の難しさを解消しています。
サイズは112×306×229mm(幅×奥行き×高さ)で、設置面積はA4サイズを縦に半分にした程度とコンパクト。ジップロックなどのチャック付きポリ袋に入れた食材を、ポップアップトースターのような本体に入れて加熱します。また一般的な低温調理器のように水を入れたりする手間がなく、準備も片付けも簡単です。
厚みのある鶏胸肉もしっかり火が通った
さっそくレシピブックに掲載されていた鶏胸肉を使ったサラダチキンを作ってみます。鶏胸肉は厚みのある部分があって、低温調理器を使っても「切ってみたらまだ生だった」ということが起きやすい食材です。
はじめに鶏肉に下処理をします。鶏肉に対して0.8%の砂糖と塩をすり込んで、冷蔵庫で15分寝かせます。鶏肉からしみ出した水分は臭みの元にもなりますので、キッチンペーパーで拭き取ります。
それをジップロックに入れ、芯温センサーを食材に刺し、鶏肉の厚みのある部分にセンサーの先端が当たるようにします。ジップロックのチャック部分をとめて、それを本体の中にセットします。
つぎに液晶パネルで調理モードや時間を設定します。調理方法には芯温センサーを使った「芯温調理モード」と、センサーを使用しない「調理モード」があります。ここでは「芯温調理モード」を使用します。
温度設定には、「芯温」と「庫内温度」があり、「芯温」は食品にセンサーを刺して、その先端部の温度を設定するもの。40〜85℃(1℃単位)で設定できます。今回はレシピブック通りに「70℃」で設定。
「庫内温度」は、設定した芯温の+5℃から95℃まで(1℃単位)設定可能で、今回は芯温より10℃高い「80℃」にしました。
「調理時間」はセンサーが設定した芯温に到達してからの時間です。調理全体の時間ではありません。レシピブックには全体の調理時間の目安も記載してあり、サラダチキンは「1時間30分」となっていました。
調理中の本機は無音です。低温調理器の中には水を循環させる音がするものもあり、調理中ずっと音がして気になることもあるのですが、この製品は音がしないので気になりません。
調理がすむとお知らせ音が鳴って終了です。今回の肉は多少厚みがあったので、実際の調理時間は2時間近くかかりました。調理した肉をジップロックごと氷水につけて、10分間急冷してできあがりです。
調理済みの鶏胸肉をカットして断面を見ると、とてもしっとりとしています。芯温できっちり管理しているからか、どこをカットしても火の通りの悪いところはみつかりません。
皿に盛り付けて、塩こしょうで味を調えたら完成です。しっとりとして、やわらかなサラダチキンになりました。調理するときにハーブもポリ袋に入れてハーブの風味がきいたサラダチキンにするなどのアレンジもできます。
低温調理の王道のローストビーフも失敗なく作れそう
つぎに低温調理の王道、ローストビーフを作ってみます。牛もも肉に塩とこしょうをまぶして、冷蔵庫で30分ほどおいて下味をつけます。あとはジップロックに入れ、芯温センサーを刺して、本体にセットします。
レシピブック通り、「芯温調理モード」「芯温63℃」「庫内温度68℃」「調理時間30分」にセットして、スイッチを入れます。約2時間30分後に調理が完了しました。牛肉を取り出して、フライパンで表面に焼き目をつけて完成です。
カットしてみると、ピンク色に均一に加熱されておいしそうです。皿に盛って食べてみると、とても柔らかく、肉の味をしっかり楽しめる完成度の高いローストビーフができました。
ローストビーフは一見ごちそう風ですが、この作り方なら失敗がなく、手軽に作れます。年末年始のおもてなし料理としてもおすすめです。
半生のサーモンも絶品!
ほかにもレシピブックに掲載されていた「サーモンのミキュイ」を作ってみました。ミキュイは「半分火が通った半生」を意味し、フランス料理でよく見るメニューだそうです。
刺身用のサーモンに塩を振って、冷蔵庫に10分おきます。「芯温調理モード」「芯温40℃」「庫内温度45℃」「調理時間1分」でセット。約1時間30分で完成しました。
できあがったサーモンは、生よりもなめらかでとろけるような食感でした。オードブルに向いた料理ですね。
さらにレシピブックにはこのサーモンのミキュイを活用したアレンジ料理「サーモンとアボカドのタルタル」も掲載されていたので作ってみました。こちらもなんとなく見ためが豪華なオードブルになりそうです。
芯温センサーを使わない「調理モード」でデザートや甘酒も作れる
芯温センサーを使わない「調理モード」も試してみました。「リンゴのコンポート」は下準備として、リンゴの皮をむいて、果肉を半分に切って芯を取り除きます。鍋に砂糖や赤ワインなどを入れた調味液の材料を入れて、リンゴの皮も入れて2分間煮立たせ、粗熱を取ります。
リンゴの果肉とこの調味液をジップロックに入れて、「庫内温度85℃」「調理時間2時間」で調理します。
コンポートを鍋で作ると果肉が柔らかくなりますが、本機で作ったコンポートは味はしみこんでいるのに、さくっとしたリンゴの食感も楽しめます。
そのほか、低温を活かして麹で作る「甘酒」や、おいしさを引き出した「かつお昆布だし」などもレシピブックに掲載されています。
経験や慣れが必要な低温調理を一発でうまく作れる
低温調理は時間はかかるものの、スイッチを入れてしまえばいいだけの調理方法です。ただし冒頭にも記載したとおり、従来の低温調理器は食材によってある程度の慣れや経験が必要になります。
その点、本機は芯温を測定して、それをもとに調理時間を決めているため失敗するリスクの少ない機器です。実際に今回作ってみた料理も、一発でうまく作れました。
しかも調理家電としてはサイズも小さく、キッチンに置いても邪魔になりません。従来の低温調理器では深鍋を用意して、水を入れて、使用後には水を捨てる手間があります。しかし、芯温スマートクッカーであれば使用後はセンサーと本体の中をさっと拭く程度ですむので、手入れも簡単です。
逆にいうと、本体のサイズが決まっているので、一度に調理できる量も限られます。水で調理する一般的な低温調理器なら、容器を大きくすることで一度にたくさんの調理が可能になります。そのあたりは自分の使い方を検討する必要があります。
筋トレやダイエットブームで鶏肉消費が高まっていますが、そうした用途でも低温調理器は有利です。たとえば今回使用した鶏胸肉は400gで200円程度でした。市販のサラダチキンが約110gで200円強ですので、コスト面でも3〜4倍は優位になります。
さらに市販のサラダチキンはいろいろな調味料や保存料が使われています。健康面にこだわりがあり、自分できっちり管理したい人にも芯温スマートクッカーは向いていると思います。
低温調理ってよさそうだけどハードル高そう、と思っている人には本機はおすすめです。使い勝手がよく手軽、失敗も少なくおいしくできるというメリットは大きいです。低温調理器を選ぶ際には、最有力の候補になるのではないでしょうか。