家電製品レビュー
技術的にガチでスゲー! ロボット掃除機「新型ルーロ」はここまで進化した
2020年4月20日 06:00
国内大手メーカーのロボット掃除機としては後発で、2015年にリリースされたパナソニック製の初代ルーロ。それから改良を重ねること4年。ルーロのフルモデルチェンジと位置づけられる、革新的な進化をとげた新型ルーロ「MC-RSF1000」が今日4月20日に発売された。
他の国産ロボット掃除機は、何年も前に発売したものをまだ売り続けているか、すでに製造を中止しているものも多い。しかしパナソニックのルーロだけは、コンパクトタイプや新モデルを出し続け、日本のロボット掃除機のオピニオンリーダー的な存在だ。
新型ルーロの特徴は、なんといっても業界トップクラスのレーザーセンサーを使用した、空間認識技術「レーザーSLAM」を搭載した点。千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター「fuRo」が開発したSLAM技術で、とにかくレーザーSLAMの間取り解析の精度がパネェ! 家の設計図とピタリ一致! って怖すぎるでしょ!
一足お先に量産モデルを借りられたので、実際に掃除させてみた。どこが進化したのか? 他の一般的なロボット掃除機との違いは何か? などを検証してみよう。
メーカー名 | パナソニック |
---|---|
製品名 | RULO(ルーロ) MC-RSF1000 |
実売価格 | 154,000円 |
360度部屋全体を見通すレーザー探索!
新型ルーロで目を引きがちなのは、段差で「ヒョコ!」っと前足を伸ばす「アクティブリフト」。なんか動物的で可愛いし、見た目にも分かりやすいので評判だ。
しかしそれ以上に革新的なのは「レーザーSLAM」という間取り把握機能。ちょっと難しい名前だが、今後のルーロシリーズを左右する技術だ。「SLAM」ってのは「マップ作成とその位置把握」という意味の流行り言葉なのであまり気にする必要はない。ポイントは「レーザー」を使って間取りを把握するという点だ。
これまでのルーロをはじめとしたロボット掃除機のほとんどは、ランダム走行か、壁伝いに走行して間取りを把握するというものだった。前者は部屋をランダムに走行して、時間をかければ掃除し残しがないという「確率に賭けている」もの。後者はハイエンドモデルに多い。
しかし新型ルーロは、より人に近い掃除スタイル。実は本体から出ている煙突のすき間からは、360度回転するレーザーが放たれている。船や潜水艦、航空管制などで、360度を見渡す全方位レーダーが使われているのを見たことがあるだろう。
全方位レーダーは360度に電波(音波)を発射して、その反射から周囲を把握する。新型ルーロは電波の変わりに光のレーザーを発射して、その反射から周囲を把握している。
つまり新型ルーロは壁伝いに走行しなくても、充電台を出発した瞬間から、見える範囲の部屋の間取りを把握できている。しかも「自分の左側の3m先に壁、前はすぐ壁、右側は6m先に壁があるが、その前に小さな障害物が点々とある」というように、まだ自分が走行していない場所の空間や障害を把握できるのだ。
レーザーの反射具合から、部屋に立ち入らなくてもそこに部屋があると認識できるため、マンションなど同じフロアに何部屋もあるような複雑な間取りでも、複数ある部屋の全体の掃除プランを立てて、効率良く全部屋を掃除してくれるようになる。
従来の間取りの把握の仕方は、充電台から1歩進んで右に向き、直進すること20歩、突き当たりで左に曲がって、今度は10歩というように間取りを記憶する。だから曲がり角の角度も距離もかなりあやふやだ。まさに五里霧中を掃除するイメージ。
新型ルーロは、レーザーを使って間取りを調べるので、従来のマップより緻密で正確だ。さらにまだ通っていない場所の障害物の有無を把握できるので、何もないところは速度を上げてスイスイ走り、障害物近くでは慎重に走る。
障害物に当たらないから「部屋のモノを動かさない」という大きなメリットもある。床におもちゃなどがある場合は、それらを避けて掃除するのでロボット掃除機が押して動かしてしまうといったことがない。
段差越えが楽々! 萌え萌え! 和室の掃除も確実なギミック!
先程紹介した、新型ルーロだけの機能「アクティブリフト」も詳しく見てみよう。
ロボット掃除機に部屋を掃除させるには、「ロボット掃除機が走りやすいように、ある程度片付けが必要」というのはよく聞くだろう。しかしどんなに片付けても、どこかで立ち往生していて「がっかり」というのは、ロボット掃除機ユーザーのあるある。
多くのロボット掃除機は、だいたい2cmの段差を越えられるようになっているが、これが実に微妙で、毛足の長いラグだったりすると、昨日はうまくお掃除できたのに、今日はラグの端で引っかかってたなんてことも。また段差は乗り越えたけど、掃除機の向きがおかしくなってしまい、変な取り残しが出てしまったりする。とくに和室と洋室が混在する間取りでは、ふすまの段差をうまく乗り越えられず、ラグ同様の立ち往生や取り残しが出てしまう。
そんなロボット掃除機あるあるの「ガッカリ」を解消してくれるのが、アクティブリフト機能。ロボット前方には、障害の高さを見分けるセンサーがあり、2.5cm未満の高さなら、前足(タイヤ)をヒョコ! っと持ち上げて、段差を確実に乗り越えるという。この挙動というか仕草がすごくペットっぽく、ついつい段差を作って楽しんでしまうほど萌え萌えなのだ。
この機能により、従来のロボット掃除機では立ち往生してしまったり、何とか乗り越えたものの進行方向がおかしくなったりということが、かなり少なくなる。
一方2.5cmギリギリの段差では、センサーが障害物として認識するので回避してくれる。ただ薄型のペットトイレは、乗り越えてしまう可能性がある。そんなときは後述の通り、スマホで進入禁止エリアに指定したり、ちょっと囲いの高いトイレに替えてみるといいだろう。
ぶつからない! 引きずらない! でも際まで攻める高精度に驚き
ロボット掃除機としての全体的な性能を見るために、いつものように部屋のアチコチに、いろんな種類のゴミを撒いてきちんと掃除できるかをテストしてみた。
次の図は、部屋の間取りと、どこにどんなゴミを撒いたかを示したものだ。
これまでに何十台もロボット掃除機をテストしてきたが、いちばんホコリに近いのは、ハムスター用のおがくずだ。そこでおがくずを中心にしてみた。砂ゴミは、金魚用のサンゴ礁の砂を利用。湿気は少なくサラサラとした砂になっている。
ネコ砂やペットフード、子どもの食べこぼしに似た挙動をするのは、ハムスターのエサ。小さい粒から大きな粒、転がりやすいものなどもある。最後は花粉の微粒子。ここで使ったのは、果物などを人工授粉させるときに使う、擬似花粉を使っている。ピンクに着色され分かりやすく、粒子もほぼ花粉と同じサイズになっている。
運転は自動運転、すべて工場出荷時の標準的な設定で掃除させてみた。
特徴的なのは掃除のパターン。まず充電台を出発するとレーザー探知で部屋の大枠を掴み、充電台に一番近い区画から輪郭を掃除し始める。新型ルーロはおそらく4~5mの区画単位で掃除をするようだ。まずはレーザーで探査した大まかな間取り図を元に、その輪郭となる壁際の掃除をしながら、レーザーでは探知できなかったテーブルやイスの足、その他の障害物がないかを確認している。
輪郭走行中は、常にサイドブラシが壁際に当たるように際の際まで詰めて走っていて、目で見ているかのように壁際ギリギリを攻める点に驚かされる。
一般的なロボット掃除機だと、何度か壁にバンパーを当てながら進むため、床から3~4cmの部分に黒い線が残りがち(通称、ロボット掃除機痕)。しかし新型ルーロはほとんど壁に当たることがないので、壁が白い部屋にもオススメしたい。
輪郭の掃除を終えると、今度はその領域の中を塗りつぶすように、ジグザク走行しながら合理的に掃除していく。輪郭部分から内側におよそ30cmはすでに掃除済みで、壁に当たらないように注意して走る必要がないので、塗りつぶし走行は非常に早い。
とはいえレーザーで予め探知している障害物らしきものに近づくと、速度を落とし慎重に走る。したがって、とにかく部屋のものをバンパーで引きずらないというのが印象的だった。
コーナーを発見した場合は、従来と同様に頭を数回振り、サイドブラシで隅にたまったゴミをかき出し丁寧に掃除する。また汚れセンサーを内蔵しているので、ゴミが多い場所では本体上部のランプが赤くなり、その部分を数回前後してゴミを集めるようになっている。このあたりのきめ細かさが、さすが日本製と思わせる部分だ。
こうして充電器近くの区画を掃除し終えると、レーザー探知でその奥にも部屋があることを把握しているので、次の区画を掃除しにいく。
もし部屋のドアが開いていれば、その先も同様にして区画ごとに掃除をしていくようになっている。なお途中で電池が切れそうになった場合は、いったん掃除を打ち切り自動で充電台に戻り、再びフル充電になると中断した場所から掃除を続ける(設定によって、掃除を再開させないことも可能)。
このように充電器周りの区画から掃除するという特徴をうまく利用して、リビングのダイニングテーブル近くに充電台を置いておくと、急な来客時にまずはその回りを掃除して、時間があればキッチン周りも掃除するという使い方もできる。
後述するが、一度マップを作ると、どの場所を掃除するかという設定もできるので、これを併用してもいいだろう。
汚し放題の子どもやペットがいても掃除漏れなし!
実際の部屋掃除の結果は! 結論からすると新型ルーロの掃除機としての機能は、国内で最優秀! 世界レベルで見ても上位3機種に入ると思われる。
特に優秀なのは、ネコ砂やペットフード、食べこぼしなどの掃除能力だ。他のロボット掃除機は、これらをサイドブラシで跳ね飛ばしてしまい、部屋全体に広げてしまうものが多い。しかしルーロは、両サイドのブラシで上手に集めながら、内蔵のV字ブラシで端のゴミも中央に集めてうまく吸い取ってくれる。
実はV字ブラシを採用しているのはパナソニックだけ。他社は斜めに配置されたブラシを使っているため、端のゴミを中央に集めるのが不得意なのだ。
さらに新型ルーロは段差に強いだけでなく、5mm程度の高さのある食べかすでも、きちんと吸い込んでくれる。この手のゴミを一般的なロボット掃除機で掃除すると、そこに引っ掛けて部屋のアチコチに広げてしまうので、かえって後の掃除が大変というものもある。
各所に撒いたホコリゴミ(おがくず)は、ほぼパーフェクトに取り逃がしなく、掃除漏れもほとんどないので100点。
またペットの毛の絡みが若干認められたが、V字ブラシに巻きつくほどではなかった。なのでペットのいるご家庭向けの掃除機としても◎。
砂ゴミは、靴下やスリッパを履いて生活する分にはまったく気づかない程度までキレイにできる。ただし裸足であるくと「ん?」と感じる場所がところどころ残る程度。
一方花粉などの細かい粒子は、フローリングの表面はキレイにできるが、溝に溜まった箇所は標準の吸引力では吸い込めなかったようだ。ただしこれは、ピンクに着色されている上に、実際の何十倍かの量を散布しているから目立っているという点に注意してほしい。
砂ゴミなどの粒子の吸引は、土足で家に上がる海外勢の方に軍配があがる。でも海外勢はホコリと食べこぼし系に弱い。
少し残った砂ゴミや花粉などの微粒子が気になる場合は、パナソニックの回し者ではない(これ大事!)が、ローランなどの床拭きロボットで仕上げをするといいだろう(笑)。もしくは軽くクイックルワイパーで仕上げをするといい。
スマホ連携でメイドさんにお掃除の指示をしているような便利さ!
新型ルーロはスマホと連携させることで、さらに便利さを発揮できる。スマホをリモコン代わりにして、家にいるときでも、出先からでも掃除を開始させるのはもちろん、運転予約や進入禁止区域の設定も可能だ。
スマホアプリから設定できる機能はこの通り。
機能 | 内容 |
---|---|
予約運転 | 曜日と時刻を指定し、自動的に掃除するか、一部の間取りを指定して掃除、徹底的に掃除するを指定可能 |
音控えめ設定 | 夜に掃除させる場合など、吸引力を控えめにして静かに掃除する |
お手軽運転モード | これまでに掃除した結果から、ゴミの溜まりやすい部分を中心にサッと掃除する |
履歴マップ | 掃除開始時刻や掃除にかかった時間、ゴミの多かった部分と少なかった部分を表示する |
ゴミ累積マップ | 過去の掃除から、ホコリの溜まりやすい部分をマップに表示 |
進入禁止・許可エリア設定 | 過去に掃除したマップから、掃除をするエリア、しないエリアを指定する |
スマートスピーカー設定 | スマートスピーカー(Google Home)との連携 |
間取りのマップを活用して時短掃除上手に!
ルーロのスマホ連携の中でいちばん便利に使えるのが、間取りの汚れ状況図。ルーロでお掃除させた後には、かならずマップが記録され(スマホの電源を切ってあっても)、部屋のどこにゴミが多くあり、逆にきれいだったのはどこかが表示される。
また、たまたま宅配便の荷物が置いてあってお掃除できなかった場所、子どもがゲームをしていてテレビの前が掃除できなかったなど、その把握も一目瞭然。
地図は間取り図が色分けされていて、グレーで囲まれた部分が壁や障害物があって掃除しなかった箇所。部屋が黄色から赤に色分けされているところは、キレイさを示している。赤が最も汚れていた場所で、黄色がきれいだった場所だ。筆者の見た限りでは、20cm角で汚れのレポートをしてくれるので、かなりピンポイントにその場所が分かる。
出先からルーロに掃除をさせて帰宅したら、スマホのお掃除マップを確認して、掃除できなかった部分をルーロやスティック掃除機でサッと掃除してやれば、掃除漏れ一切なしの完璧なお掃除完了!
さらに予約運転などでは、これまでのお掃除履歴から部屋の汚れが溜まりやすい箇所を中心に、簡単にお掃除を済ませる「お手軽」運転モードが選べるようになっている。
掃除を予約する場合は、曜日ごとにどの部屋を掃除するかも指定できる。たとえば、キッチンとリビングは毎日お掃除して、廊下は火曜と木曜だけという、複雑なスケジュール設定も可能だ。
手が離せないときのOTOMO機能も隠れたヒット!
新型ルーロ“オンリーワン”の機能が他にもある。それが「OTOMO」モードだ。ルーロを掃除したい場所までつれていき、直径1.5mの範囲をスポット掃除させられるという機能である。
たとえば子どもを抱っこしていて、床に寝かせたいとき。床の汚れをサッと掃除したいけど、手が塞がっているという場合だ。こんなときはルーロのレーザーが格納されている煙突部分を足で3回ソフトにタッチ。これでOTOMOモードが起動。
すると充電台を出発して、自分の足元で「ピポ!」と待機するので、ゆっくり歩くとルーロがついてくるのだ。こうして掃除をしたい中心部までルーロを誘導したら、5秒待つとスポット掃除が始まる。
このようにOTOMOモードは、手が塞がっていてもサッと掃除ができて、非常に便利な機能だ。
バツグンの賢さと可愛らしさの新型ルーロ
これまでの壁伝い探索から、レーザーを使った間取り探索に切り替えたことで、ルーロの進化がお分かりいただけただろう。
人間が目で見て部屋を掃除するのと同じように、効率的に掃除する姿はかなり革新的。それに加え、従来からある、コーナーを見つけると首を振ってゴミをかき出したり、ゴミが多い場所は前後に動いてシッカリ掃除するなど、見ていても楽しい機能美を持っている。
スマホと連携することで、複雑な予約運転もでき、新型ルーロはまるで有能なメイドさんがいるかのように掃除を任せられる1台に仕上がったのだ。