家電製品レビュー

捏ね~発酵もおまかせ! 多彩なパン作りが楽しめるデロンギのコンベクションオーブン「パングルメ」

 熱風を対流させて、食材にヒーターの熱を均一に加熱できるコンベクションオーブン。最近では各社からさまざまなモデルが発売されているが、デロンギは日本で20年以上コンベクションオーブン発売している老舗メーカーだ。今回は、パン生地の捏ねから発酵、焼き上げまでできるベーカリー機能を搭載した「デロンギ パングルメ ベーカリー&コンベクションオーブン EOB2071J-5W」を紹介する。

デロンギ「パングルメ ベーカリー&コンベクションオーブン EOB2071J-5W」
メーカー名デロンギ
製品名デロンギ パングルメ ベーカリー&コンベクションオーブン
品番EOB2071J-5W
価格(編集部調べ)53,020円

 パン好きの人がホームベーカリーを購入して、焼きたてパンを楽しむケースはよくある。だがその先、パン作りが面倒になってホームベーカリーが使われなくなり、使わないから邪魔になってしまわれてしまい、さらに使わなくなる。

 その逆で、パン作りが趣味になってきて、食パンだけでなくいろいろなパンを楽しみたいというケースもある。その場合、ホームベーカリーはおもに生地を捏ねる機械としか使われず、別のオーブンでパンを焼くという使い方をされるはずだ。

 この製品は、ベーカリー機能+コンベクションオーブンということで、パン作りに興味のある人や、ホームベーカリーを活用しきれなかった人にとって、おもしろいアイテムだ。

 基本仕様をざっと紹介すると、コンベクションオーブンとしては庫内容量20Lで、内部は広く、直径30cmのピザも焼ける。庫内のワイヤーラックの位置は4段から選べ、オーブンやグリル機能では2段調理にも対応できる。本体の大きさは、約515×405×300mm(幅×奥行×高さ)で、重さは12kg。さらに設置には、左右に50mm、背面に100mm、上に200mmの余裕が必要なので、設置スペースの確保には注意が必要だ。

 対応温度は、100~220℃で、加熱の機能としては、上下ヒーター+ファンの「コンベクション」、上下ヒーターの「オーブン」、上ヒーターのみ180℃の「グリル」、下ヒーターのみ130℃の「スローベーク機能」、ファンのみの「解凍」、80℃の「保温機能」の6種類が用意されている。電子レンジの機能はない。

横に張り出した持ち手などが用意されているなど、コンパクトに収めようとする日本製とは異なるデザイン
20Lの庫内は広く、横幅は30cmで、30cmのピザストーンが入るように奥行きにくぼみがある
本体の右側にあるスイッチ類はシンプルな表示で、見ればすぐにわかるようなアイコン表示になっている
液晶周りにあるスイッチ類は、おもにベーカリー機能で使う。メニューを選択すると残り時間が表示される

 操作系統はシンプルで、本体右に並んだ3つのダイヤルで、温度、時間、調理機能を選ぶ。一番下にあるレバーで、ベーカリー機能とオーブン機能を切り替える。本体下部の中央にある液晶部分はおもにベーカリー機能で使用する。メニューや量、焼き色調整ボタンなどが用意される。

 付属品はトレイ2枚(深さ2/4cm)、ワイヤーラック2枚、直径約30cmのピザストーン、容量0.5kgのパンボウル、計量カップ、計量スプーン、レシピブックだ。

 まずは目玉機能でもあるベーカリー機能を使ってパンを焼いてみる。

クオリティの高い食事系パンができる

 一般的なホームベーカリーは、食パンの型になっているが、この製品ではヨーロッパ系の丸型パンの型が付属している。ちなみに同様のベーカリー機能がついた、日立「ベーカリーレンジヘルシーシェフ(MRO-SBK1)」では食パン型が採用されている。ヨーロッパ系のみっちりしたハード系の食事パンは丸い形をしていることが多いので、これはこれで正解な気がする。

 レシピブックを見ると、さまざまな種類のパンが掲載されている。捏ね・混ぜから焼き上がりまで自動でできるオートメニューのものと、途中で成型するようなセミオートメニューのものがある。

 写真はきれいでどれもおいしそうだが、メニューのラインナップはやはりハード系のパンが多く、ふわふわのロールパンみたいなメニューはない。使われている材料もわりとシンプルなものが多く、特別入手が難しい材料が使ったメニューもないので手軽にチャレンジできるだろう。

パンの食材を捏ねて混ぜる付属のパンボウル。付属のパンボウルは0.5kg用で、別売りで1kgのパンボウルも用意される
本体の下部にある金具部分にパンボウルを装着。上から押し込むだけでつけられる

オートメニューのホワイトブレッド

 まずは最初に紹介されているイタリアパンを作ってみる。デュラム小麦を使うタイプと、普通の強力粉を使うホワイトブレッドがあるので、後者を選択。材料を揃えたら、パドルを取り付けたパンボウルの中に、レシピ記載順に材料を入れる。それをゴムへらなどでさっと混ぜ合わせて、粉っぽさがなくなったら本体に取り付ける。

ホワイトブレッドに使う材料。水、小麦粉(「春よ恋」使用)、オリーブオイル、砂糖、塩、ドライイースト
材料をパンボウルにレシピブックの記載順に入れる。材料を同時に入れるストレート法で作る
ゴムへらなどでパンボウルに入れた材料を粉っぽくならないくらいまで、混ぜ合わせる
MENUボタンを押してホワイトブレッドの「AU:2」に合わせる。焼き色は初期値では標準になっている
START/STOPボタンを押すと、調理が始まる。攪拌の様子を見ているのもかなり楽しい

 本体にパンボウルを取り付けたら、メニューを選ぶ。イタリアパンのホワイトブレッドは「AU:2」で、設定すると調理時間も「1時間55分」と表示される。さらに焼き色を「薄い」「標準」「濃い」から調整も可能。START/STOPボタンを押せば、調理は開始される。なおタイマー機能を使うと焼き上がり時間を最大12時間後まで設定可能だ。

 調理が始まると、パドルが回転して、こねと混ぜが始まる。回転時の音はわりと大きいが、ホームベーカリーも運転時にはけっこうな音がするので、その点は大差ない。参考までに回転時の様子を動画にしたので、音を確認してみてほしい。

材料を混ぜているときの様子。それなりに大きな音がする

 オートメニューのホワイトブレッドだが、1時間25分後に発酵工程が終わると、運転が一時停止して、5分間ほど表示時間が点滅する。このときに一度パンボウルを取り出し、パン生地の表面に小麦粉をまぶしたり、クープ(切れ目)を入れたりもできる。そのままにしておいても自動的に焼きが始まるのでスルーしてもいい。

 だが、きれいな焼き上がりにするなら、このとき生地を取り出し、中に入っているパドルを外して穴を埋めて成型するといい。ホームベーカリーで作ったパンは、自動で作るとパドル部分が穴になってしまうのが難。発酵が終わればあとは焼くだけなので、この一時停止中にパドルを外すときれいな仕上がりになる。

 1時間55分たったところでパンが焼き上がる。焼き上がったパンはきれいに膨らんで、焼き色もちょうどいい。パンをカットすると表面は薄皮で、中がみっちりつまっている。食べてみると表面はぱりっとして、中はもちもち。そのまま食べてもおいしいし、食事パンとしておかずと一緒に食べても合う。

攪拌と発酵が終わった状態。取り出して生地の中に入っていたパドルを取り出して成型する
表面に小麦粉をふりかけ、ナイフでクープを入れて、またオーブンに戻した
これが焼き上がった状態。発酵後よりも膨らんで、いい感じの焼き色になっている
カットしてみると、皮の薄い感じがよくわかる。ぱりっとした皮の部分とみっちりとした中身で美味だった

 パンボウルのサイズは直径約16cmなので、できあがったパンは小ぶりに見えるが、思ったよりボリュームがある。一般的なホームベーカリーの食パン1斤分のは、小麦粉を250g程度で作るのに対し、このパンは350g使っている。にも関わらず、1個くらいはラクラク食べられるくらいおいしい。かなり危険だ。

セミオートメニューで作るフォカッチャ

 筆者イメージでは、イタリアのパンといえばフォカッチャということで、つぎにセミオートメニューで作るフォカッチャを選んだ。このメニューは本機で捏ねた生地を自分で成型してから、トレイに載せて焼くという手順。フォカッチャのできあがりは2時間5分。一次発酵工程が35分で終わった時点で一度取り出して、平らに成型。オリーブオイルを塗ったトレイに生地を置いて本機に戻す。今回は形をきれいにするためホーローのバットに生地を入れて戻した。START/STOPボタンを押すと二次発酵が始まる。

 さらに、25分間の二次発酵後に再度停止するので、もう一度取り出す。コーティングのオリーブオイルを塗って、表面に菜ばしのうしろでくぼみをつけて、ハーブと塩をちらして、オーブンに戻してSTART/STOPボタンを押して焼き上がりを待つ。できあがったフォカッチャは、お店レベルの仕上がり。表面はオリーブオイルが塗られているのでかりっとして、中の食感はふわふわ。ハーブと塩がきいていて、焼きたては格別のおいしさだ。

フォカッチャはメニューから「SEE:8」を選択して調理する
一次発酵が終わった時点で一度停止するので、取り出して、打ち粉をした板の上で平らに成型してオーブンに戻す
今回は形を整えるためにホーロー製のバットに入れてからオーブンに戻した
二次発酵の工程が終わるとふたたび一時停止するので、オリーブオイルを塗って、くぼみをつけてハーブと塩を散らす
最後にオーブンに戻して焼き上がったフォカッチャ。表面に焼き目がついてふっくらと仕上がった
8等分にカットしてみた。表面はかりっとして中はふわふわのとても素晴らしいできあがり

 一般的にホームベーカリーで食パンを作る場合、4時間くらいかかるものが多いが、本機のイタリアパンやフォカッチャなら約2時間ですむ。ほとんどおまかせで、このレベルのパンができるなら、本機でのパン作りを日々の生活に取り入れてもいいと思ったほどだ。

コンベクションオーブンの機能を検証

 つぎにオーブン機能を使ってみよう。まずはグラタンを焼いてみた。20×12cmのグラタン皿は2つ余裕で入るスペースがある。コンベクションオーブンで温度200℃、30分で設定した。焼き加減を見ると、今回は20分くらいのところでちょうど良い仕上がりに。どちらのグラタン皿も均等に焼き目がついてきれいにできあがった。

庫内が広いのでグラタン皿2つはラクラク入る。丸型のココット皿なら4つ一度に焼けるくらいの広さだ
コンベクションオーブンは、グラタンなど焼き目をつける料理が早くムラなく焼けるので最適

 続いてハンバーグを焼いてみた。ハンバーグはフライパンで焼き目をつけたあとにオーブンで焼く方がふっくらと仕上がるので、絶対においしい。今回はスキレットを使ってハンバーグを強火で両面を焼き付けて、付け合わせの野菜を載せて、そのまま本機に入れて加熱。

 庫内が広いので、20cmのスキレットでもそのまま入った。200℃で10分加熱して完成。スキレットならそのままテーブルに出せるのもいい。今回は一人前をスキレットで作ったが、家族分を作るなら、トレイに入れてまとめてオーブン調理しよう。ワンランク上のハンバーグが完成するので、これはぜひ試してほしい。

ハンバーグの両面をフライパンの強火でしっかり焼き目をつけておく
今回は20cmのスキレットで焼いてそのまま庫内に入れてオーブンで加熱した
付け合わせも一緒に焼いて、最後にソースをかけて、そのままテーブルにサーブ

 つぎに付属品のピザストーンを使って、ピザを焼いてみた。ピザストーンはあらかじめ加熱しておくと食材がくっつきにくくなる。200℃で10分くらい加熱してから、市販のチルドピザを載せて5分程度焼いてみた。加熱中するとピザがふつふつと膨れ上がるくらいになり、見るからにおいしそうな状態に。焼き上がったピザは生地がぱりっとサクサクして軽い仕上がりだ。これも何枚でも食べられそう。

付属のピザストーンは30cmと大きめ。先にピザストーン自体をしっかり加熱しておく
十分加熱したらピザを載せて200度で5分程度の加熱。途中で表面のチーズがふつふつと膨れておいしそうに
焼き上がったピザに付属のバジルオイルをかけてできあがり。ピザストーンのせいか生地もぱりっとして軽い食感

 コンベクションオーブンは、揚げ物など惣菜の温め直しにも力を発揮する。コロッケの温め直しを電子レンジとで比較した。本機では衣の部分はかりっとして、中はホクホクで、できたてに近い再現性。電子レンジでは表面がべったりとしてしまい、形崩れを起こしてしまった。できあいの惣菜でも本機で温めればおいしいおかずになる。

市販のコロッケを電子レンジと本機で温め直した比較。電子レンジではべっとりとして形が崩れた
コンベクションオーブンなら、パン粉のカリカリ感が再現できて、揚げたてに近づくのでおかずとして十分

 今回いろいろと機能を試してみたが、コンベクションオーブンとしては、サイズも大きいので使い勝手が良く、いろいろな活用ができるだろう。ただし電子レンジ機能を持たないので、この一台で全部解決、というわけではない。サイズの点で設置場所を選ぶ家庭もあるだろう。

 だが、この製品の大きなメリットはやはりパン作りに使えるということだ。コンベクションオーブンでありながら、手軽にいろいろなパンが作れて、自分で成型して作りたいという人もこの一台で完結するところがいい。もし丸型でなく食パンの形状で作りたいなら、食パン型を用意すればいいだけだ。一度に大きなパンを焼きたい人には、1kgのパンボウルが別売りで用意されているのもうれしいところ。

 パン作りの用途を重視して考えるなら、この製品の魅力はかなり高い。多種多様なパンを作りたいときに、1台で完結しないホームベーカリーよりも、ずっと合理的で先進的だ。ある意味ホームベーカリーの正常進化といえるかもしれない。パン作りの楽しさと、コンベクションオーブンの便利さを実感できるユニークな商品だ。

栗山 琢宏