e-bike試乗レビュー
初心者がe-bikeで距離約35km・獲得標高約2,200mの富士山ヒルクライムに初挑戦!! バッテリーとアシストの実力を体当たり検証
2019年8月9日 00:00
こんにちは!! e-bikeに興味はありますか? どーも、e-bike部の清水です。e-bike部の関連記事でたまに写真で登場しておりますが、e-bike部の活動は皆勤賞で、最近は家電ライターの藤山氏や家電 Watch女性編集者をe-bikeに入部させようと日々暗躍しております。
それにしても長かった梅雨が明けたら、急に猛烈に暑いですね!! 子どもの頃の夏といえば「金鳥の夏、日本の夏。」というキャッチコピーを覚えていますが、もう数年すると「猛暑の夏、日本の夏。」になりそうな感じですね。そして、個人的に今年は「e-bikeの夏」です。各メーカーが続々と2020モデルのe-bikeを発表しており、ますますe-bikeの人気が高まっていることを実感しております。
そんな「e-bikeの夏」に挑戦したいことがあります。それは富士山ヒルクライム。実際にe-bikeを購入したり試乗経験がある方は、それまでは行けなかったような場所に上って行ける、その登坂力の高さに驚かされたはずです。自分の身体能力が拡張されたような感覚を覚えた人も多いでしょう。まさにe-bike恐るべし!! のひと言に尽きます。最近ではe-bikeという言葉も定着しつつあり、このブームに乗っかって電動アシスト自転車をe-bikeという名前で販売しているメーカーも見かけますが、e-bikeとは「電動ドライブユニットを搭載するスポーツタイプの自転車」のこと。お間違えないように。
話を戻しますが、昨年の春にe-bikeという存在を知ってからすっかりハマってしまい、イロイロなモデルを試乗したり、ロケで各地に出かけてe-bikeを楽しんでおります。どこへでも上って行ける登坂力、誰でもロングライドを楽しめる大容量バッテリーを体感した今となっては、逆に普通のスポーツサイクルでの激坂はどれだけキツいのかに興味を持ち始めています。すっかり弱虫ペダルにハマってしまい、全巻を一気に2周してしまうほど。
そしてe-bikeなら素人でも富士山ヒルクライムも可能かもしれない。ずっと上り続けることで、あらためてe-bikeの登坂力やバッテリーの持続性もチェックできるだろうと、富士山ヒルクライムに初挑戦することにしました。
どのe-bikeで富士山ヒルクライムに挑戦する!?
しかし、どうやって挑戦するかが問題です。小学生時代にモトクロス、大学生時代にMTBを乗っていましたがサイクリストではなく、ごくごく一般レベルの自転車経験しかありません。だから一人でチャレンジするのは絶対に避けたい。e-bike部のメンバーに声をかけても忙しそうだし、そもそも興味がなさそうな感じ……。どうしようか悩んでいると、とある施設がe-bikeでの富士山ガイドツアーを将来的に検討しており、何度かテスト走行しているとの噂が!!
その施設が「富士山ゲストハウス掬水」(以下、掬水)。静岡県富士宮市の浅間大社すぐそばにある旅館「掬水」をリノベーションしたゲストハウス。富士山と富士宮市をより楽しんでもらうために、e-bikeのレンタルを7月からスタートしています。そして将来的には、富士宮口の富士山マイカー規制実施中の期間に、e-bikeでの五合目までのガイドツアーを検討しており、これまでにスタッフや関係者で何度かテスト走行を行なっているそう。今回はそうしたテストの意味も含めて、ガイドツアー付きで特別にチャレンジさせていただけることに。
すでに掬水ではガイドツアーを見据えて、クロスバイクタイプでのミヤタ「CRUISE」(レビュー記事)とフカヤ「DAVOS E-600」(レビュー記事)が導入されており、周辺観光用としてもミニベロタイプのe-bikeが数種類ラインナップされています。
今回は「CRUISE」か「DAVOS E-600」で挑戦することになりますが、どちらも搭載するドライブユニットはシマノSTEPS「E8080シリーズ」。さすがハイエンドモデルのドライブユニットで、非常に乗りやすいe-bikeです。先日もこの2台で、藤山氏と沼津でラブライブ! サンシャイン!! 聖地巡礼をしましたが、走りやすさも実感していました。
「DAVOS E-600」にはMTB用の504Wh(36V/14Ah)大容量バッテリー「BT-E8010」が搭載されています。そして、クロモリフレームの美しいe-bikeです。弱虫ペダルで小野田 坂道くんが最初に与えられたバイクがクロモリロードだったという理由もあり、フカヤ「DAVOS E-600」で挑戦することに!! 目指せ、e-bike界の山王!?
ちなみに掬水のスタッフや関係者が何度か実施したテスト走行では、スペアバッテリーがないと辿り着けないことも少なくないそうです。実際にガイドツアーを始める際にはスペアバッテリーを持って走ることを想定しているとのこと。1充電あたりECOモード:140km/NORMALモード:130km/HIGHモード:95kmの走行距離なのに……。
調べてみると、この拠点から富士山五合目までは、距離にして約35km・獲得標高約2,200m。日本最大級のヒルクライムイベント並みの厳しいコース。クルマが通行できる日本一高い峠の大弛峠(おおだるみとうげ)ヒルクライムのコースでの標高差2,000mが国内屈指と言われているようで、それを200mも上回るとか!! しかも行きは下りが非常に少なく休めるポイントも少ない。体格や走り方でも変わりますが、1,000m上ったあたりでバッテリーを使い切ってしまう人もいるそうです。ちょっと不安に思いながらも、せっかくならスペアバッテリーを使わずに走破してやろうと新たなミッションも追加しました。
富士山五合目を目指して出発!!
出発前には掬水のスタッフとガイドの小野 剣人氏が入念にe-bikeをチェックしてくれます。そしてスペアバッテリーも念のためフロントのバッグに収納。重量2.6kgが加算されるわけですが、絶対に使わないと決意しながらも置いていけない小心者……。
まずは出発して約5km先の山宮浅間神社を目指します。そこまでアシストOFFで走ってバッテリーを節約しようかとも思いましたが、標高約370m地点までずっと上り続けるので素直にECOモードで走ることに。山宮浅間神社で成功を祈願して、斜度がここまで4~5%から7%以上になる道をひたすら上って行きます。
しばらくは一本道な感じで同じような景色の中をひたすら上っていきます。ECOモード&ローギアでも十分上って行けますが、あまりスピードが遅くなるとアシスト力が強くなってバッテリーが減りやすくなるので、12~13kmのスピードを目安にしてグイグイと上っていきます。これくらいなら全然平気!!
この日は「本当に標高が高いところを走っているのか?」と思うほど非常に蒸し暑く、ガイドの小野氏がこまめに水分補給のタイミングをつくってくれ、本来なら美しい景色が見えたであろうポイントなども案内してくれました。そして、走行距離やバッテリー残量などの証拠写真を撮影するわけですが、このこまめな休憩時間があるおかげで疲労が軽減できていた印象です。
そして、10kmを越えるあたりからカーブが増えてきて、最初の難関的なコースへと入っていきますが、ペダルを回し続けていると1合目の標識も過ぎて、休憩ポイントの西臼塚駐車場に到着。マイカー規制のため一般車ではここまでしか来れません。かなりきつい道になると聞かされていましたが、けっこう疲れたけれど想像よりは疲れてないかも……。でも一人で来てたらここで下っていた可能性は大。ガイドの小野氏が絶妙なタイミングで話しかけてくれたり、出発してからも随時私にぴったりの速度を探りつつ、楽しく走らせてくれたのも大きなポイントでした。
まだゴールしたわけではないですが、距離にしてみれば残り半分を切った状態。軽いノリで始めたチャレンジ企画ですが、ここまで来れたのもけっこう凄いことだと思います。また大容量のバッテリーで選んだフカヤ「DAVOS E-600」ですが、細いフレームとハンドルで操作性もよく、振動の吸収も高く疲れにくく、ドライブユニットのアシストにサッと反応して加速してくれる印象で、やっぱりe-bikeすごい!!
残り約17km。スペアバッテリーの出番はあるのか!?
西臼塚駐車場で補給食を取り、五合目目指して再度出発。ここまで走った距離は18.9kmで残りは約17km、バッテリー残量は67%。ガイドの小野氏にも「バッテリー持ちそうですね。ここからさらにきつくなりますけど、がんばりましょう!!」と言われて気合を入れ直します。
西臼塚駐車場から3kmほど上り、富士山スカイラインの旧料金所に到着。平地の3kmならスイスイあっという間ですが、やっぱり上りの3kmはなかなか遠い。地図上の斜度的には前半と大して差がないものの、疲労、走行時間、エネルギー消費、標高などが重なり、きつくなるとのこと。……ここまで初心者が上ってきたのだから、できればチャレンジを成功させたい。
ここからの上りは確かにきついです。ロードバイクで走ったらどれほどきついんだろう? というか、絶対に上れないはず。ただ、私が乗っているのはe-bike。「やっぱりe-bikeすげー!!」と思いながらひたすら上って行きます。そして遠かった「二合目」や「三合目」の標識、残りの距離などが見えると、グッと足に力が入ります。さらに青空でも見えようものなら、「美しい景色に出合えるかも」と疲労が回復した気になります。ガイドの小野氏もめちゃめちゃテンション上がっていました。
そしてようやく三合目・標高2,000mに到着。最後の難関のつづら折りに突入していきますが、さすがに激坂できつい。ここでECOモードからNORMALモードにアシスト変更。これまでECOモードに慣れていたので、NORMALモードでアシスト力が上がったのが実感できます。「よし、これで行けるぜ!!」と思いきや、このつづら折りは本当にきつい……。
先に待ち構えるカーブが下っているように見えるのに、近づくと上っている……の繰り返し。もしかして四合目を気づかずに通り過ぎて、あのカーブを抜けたらゴールなのかもしれない!! とか思いながら走っていると、ちゃんと四合目の標識もあるのですね……。ちなみに延々と続くつづら折りでは、斜度がきついイン側を走りすぎると、体力もバッテリーも消費してしまうので、なるべく傾斜が緩いラインを狙うとよいとアドバイスされました。
四合目まで来てもうバッテリーの心配もなさそう!! ここで伝家の宝刀「HIGHモード」にアシスト変更!! ガイドの小野氏とHIGHモードでゴールを目指します。ペダルにグッと力を入れて走り出すと、あっという間に15km/hほどのスピードに。さっきまでうんざりしていたつづら折りをグイグイ上って行く! 疲れているはずなのに、超楽しい!! ペダルがまわる!!! 「HIGHモード、すげー!!」と小野氏も非常に楽しそう。ゴールが近づいて限界まで力を出すときに、背中に天使の羽が生える感覚っていうのはコレなのか。もっと早くHIGHモード使っておけばよかった……とか考えながら、無事に五合目到着!! バッテリー残量は26%。無事にミッションクリア!!
これで雲海が見えたらもっと最高な気分になれたでしょうが、ロードバイクに乗り慣れた人にとっても難易度が高いコースであることを考えると、初心者の挑戦としては快挙の部類に入るかも。もしかして俺ってすごい!? いや、e-bikeがすごいだけか!!
そして少し休憩したら、雷予報が出ていたため、一気に下っていきます。私は下りがあまり好きではなく、道によっては怖くなってしまうのでわりと慎重に下って行きます。ですが五合目からの下りは、マイカー規制中のため観光バスが少ない時間帯で見通しもよく、油圧式ディスクブレーキなので安心して下ることができました。ただ、下りの路面状態がけっこう悪く、また風切り音で後ろを走るクルマの音などが聞き取りにくいことも。こうした点もガイド小野氏がきちんとケアしてくれるので安心して走れます。なので、富士山五合目にチャレンジする際には、きちんとガイド同行ツアーをオススメします。
またガイドの小野氏に教えてもらったのですが、標高の高い地点での雷は縦でなく横に飛んでくるので、避難するのが難しいそうです。高所に行くときは雷にご注意を。
まとめ
正直に言いますと、スペアバッテリーを使えば走り切れる自信はそこそこありました。サイクリストではないですが、e-bikeのロケでほぼ毎月長距離を走っていて、激坂なども体験し、e-bikeの乗り方に慣れてきたこと、わりと根性野郎であることなどが理由に挙げられます。とくにスポーツで体を鍛えているわけではありませんが、毎日1万歩歩いているし、確たる根拠もない自信ですがe-bikeなら「きっと行ける」だろうと。
初めてe-bikeに乗るような人には難しいチャレンジになりますが、この達成感はなかなか経験できるものではありません。天気が良ければ雲海や富士山と出合えるご褒美もあり、ガイドツアーがスタートすればスペアバッテリーの用意もあるので、チャレンジする価値はあると思います。ガイドツアーを務める小野 剣人氏も以下のように語ってくれました。
「私も30年近く自転車に乗っていますが、正直、富士山五合目までの登頂は簡単なものではありません。富士宮の街中から上るのであれば気合を入れて、事前準備をしっかりしてから挑戦します。過去には準備不足で残り3km地点でどうにも進めなくなり引き返した苦い経験もあります。e-bikeであれば、そんな難しい場所にでも多くの方が辿り着くことができ、素晴らしい体験や達成感を得られるのではないかと感じています。クルマでサッと上るだけでは、なかなか感動を得ることはできません。富士山五合目を始め、これまで行けなかった場所を自分の足で目指したいという人が増えてくれると嬉しいです」
自転車歴の長いガイドの小野氏でも失敗経験があるように、ロードバイクでも上り切ることが難しい、距離約35km・獲得標高約2,200mの富士山ヒルクライム。いやー、ガイドの小野氏にも何度も凄いと言われて嬉しい。早く東京に戻ってみんなに自慢したい!! 驚かれたい!!「e-bikeがすごいだけ!!」とか言われたらちょっと寂しいかも。
そして、今回のチャレンジであらためてe-bikeのドライブユニットとバッテリーの実力を実感しました。e-bikeのロケや試乗会などで、バッテリーがここまで減るほど走る機会もなく、NORMALモードやHIGHモードを切り替えながら走ることが多いのですが、今回はECOモードでもしっかりアシストされていることに驚かされました。
なので、長い距離を上り続けるときは、最初はNORMALモードでしばらく走って、疲れてきたところでHIGHモードにすると驚くほど上って行けます。逆に最初からHIGHモードにしてしまうと、最初はラクかもしれませんが、体がHIGHモードに慣れてしまうため、スペアバッテリーがあっても最終的にはきつくなってしまうはずです。また富士山でなくとも、きつい上りが続くようなときは、アシストモードやギアの切り替え次第で、よりe-bikeの特性を活かした走りを楽しむことができます。そうやって慣れていくことで、もっと長い距離やきつい上りも走れるようになると思います。
ちなみに今回はECOモードでかなり頑張って上ったため、ゴール後はかなり疲れてしまいましたが、翌日は筋肉痛にもならず普通に仕事をしていました(当然個人差はありますが)。あえて挙げれば、いつもよりお腹が減ったこと、帰りの駅で飲んだビールが最高に美味だったことでしょうか。