藤本健のソーラーリポート

実際、太陽光発電は儲かるの!? 富士山麓での太陽光発電所、運用開始 その2

「藤本健のソーラーリポート」は、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電・ソーラーエネルギーの業界動向を、“ソーラーマニア”のライター・藤本健氏が追っていく連載記事です(編集部)

その1はこちら

富士山麓の太陽光発電所

 「太陽光発電っていいよね!だって、何もしなくたって発電してお金が入ってくるんでしょ?」とよく言われる。基本的にはその通りだし、それが自然エネルギー、再生可能エネルギーの魅力ではあるが、本当に何もしなくてもいいのだろうか? そう聞かれれば、そこまで単純、簡単ではないのが太陽光発電なのだ。

 5月に発電を開始した富士山麓での太陽光発電所。スタート時点から、メンテナンスにおいて、いろいろと難しいことに遭遇したので、今回はそんなメンテナンスについて考えてみることにしよう。

太陽光発電は本当にメンテナンスフリー?

自宅の屋根に設置した3.6kWのソーラーパネル

 メンテナンスフリーという印象が強い太陽光発電。確かに、ソーラーパネルに太陽の光が射せば勝手に発電をして、その出力は自動的に電力会社へと売電される。持ち主は昼寝をしてても収入が得られるし、仕事をしながらだって副収入が入ってくる、まさに夢のようなシステムだ。それが確かであることは、規模は小さいながらも筆者の自宅の屋根に設置した太陽光発電システムがこの10年間で実証し続けてきてくれた。

 2004年に自宅を建てると同時に200万円ほどかけて設置した3.6kWのソーラーパネルが、今でも日々発電し、毎月のように数千円〜1万円程度の収入が入ってくるのだから。

 よく「パネルを拭いたりしないの?」と聞かれるけれど、基本的に掃除は不要。ソーラーマニアを自称する筆者ではあるが、実のところ、まだ一度も屋根に上ったこともなく、設置したソーラーパネルに手を触れたこともない。だって、屋根に上るなんて怖いし、落ちて怪我でもしたら一大事だからだ。

 それでも10年前とほぼ変わることない出力で発電してくれているので、その意味では、確かにクルマのようなメンテナンスは不要だし、車検も法定6か月点検もない。まさに放置状態のままで10年以上が経過し、それでも発電が続いているのだ。

 では、まったく何もしてないのかというと、そうでもない。前回も書いた通り、毎日の発電量をノートに記録し、1カ月ごとの発電量も必ず確認するとともに、月々の変化をチェックしているのだ。また、設置前からNPO団体である太陽光発電所ネットワークのメンバーとして参加し、自分の家の発電量が、近隣の人と同じ推移をしているのかもチェックしている。

 そのような日々のチェックによって問題を発見したことが過去2回あった。発電した電気を100Vの交流に変換するパワコンに不具合が起きて出力が低下していたのだ。その事実をその日のうちに発見し、即修理を依頼したために事なきを得た。だが、もし放置していたら、長期間トラブルに気づかなかった可能性だってある。完全に出力ゼロであれば、いずれ故障に気づくだろうが、2〜3割の出力ダウンだと「そんなものなのかな?」と見過ごしてしまう可能性も高い。

 またサービスセンターに「ちょっと出力が減っているようなのだけど……」と訴えたところで「それだけの出力があれば、特に問題ありませんよ」なんて言われて終わってしまうかもしれない。常に出力をチェックすることは非常に重要であることは、身をもって体験しているのだ。

 それが、自宅に設置するソーラーパネルの10倍以上の規模の太陽光発電所となれば、なおさら。1,000万円以上の投資をしているのだから、不具合は死活問題となるのだ。

雑草や雪が太陽光発電の障害になる

 では、屋根ではなく、地上に設置する発電所の場合、何か違いはないのだろうか? 筆者も今回設置するのが初めてなので、あまり経験的なものはないが、明らかな違いがまず1つある。それが雑草問題だ。屋根であれば、基本的に光を遮るものは存在しないはずだし、仮に存在するとしたらあらかじめわかっているはずだ。たとえば隣の家の影であったり、2階を超える木や電柱といったものがあると影になり、障害となる。シリコン太陽電池の場合、すべてが直列で接続されるため、ちょっとした影でも大きな影響をおよぼす。そのため影がないようにパネルを設置するのが鉄則だ。

 ところが、地上に架台を設置し、その上に乗せる野立て型の太陽光発電所の場合、雑草が生えてくると非常に大きな障害となる。そのため、雑草の状況を監視し、もし発電に支障をきたすような場合は、伐採、抜根するのが非常に重要だ。もちろん、防草シートなどを張って雑草を避けるのも手だし、除草剤をまいて雑草を枯らすのも手ではあるが、個人的にはあまり除草剤に頼りたくはないところだ。となると、やはりある程度現地を見回って、雑草があれば除去するのが重要な任務となる。もし放置しておいたら、屋根とは比較にならないほど重大な問題となるはずだ。

 もう一つ気になるのが、停電。発電所設備が落雷の被害にあったりすれば、それこそ大きな問題だが、そうでなくても近隣で落雷などがあって停電すると、発電所がシステムダウンする恐れがある。まあ、基本的には停電が復旧すれば、自動的にシステムも復旧する仕組みにはなっているものの、状況によっては手動で復帰が必要になるケースがある。自宅に設置しているシステムならすぐに復旧が可能だが、遠く離れた富士山麓ともなると、そう簡単に再始動させることもできない。となると、やはり発電所の近くで見守ってくれる人の存在は不可欠。幸いなことに、この発電所の設置業者がメンテナンスを行なってくれることになっており、そのことが発電所購入の付帯条件となっていたのは、こちらとしては願ったり、叶ったり。ただ、そのメンテナンス内容にはどうも不可解なことがあったのだ。

発電所の売り主の管理体制に感じる、大きな不安

 そう、以前の記事にも書いた通り、この富士山麓の発電所は千葉県にある不動産会社経由で購入するとういちょっと妙なものであった。その不動産会社の社長は別に太陽光発電関連の会社も経営していたのだが、聞くところによれば、社長が山梨の売主と友人関係にあったため、その販売を委託されたようなのだ。ただ、こちらの問い合わせ窓口は、不動産会社の営業担当者でしかなく、なかなかコミュニケーションがスムーズにいかないという問題があった。たとえば、「発電状況をモニタリングする『エコめがね』のようなシステムの設置は可能か?」と聞くと数日経ってから「つけるのは勝手だが、こちらではオプションとして用意はしていない」といった返事が来たり、「管理体制がどうなっているのか?」と聞くと、やはり何日かして「除草と、雪下ろしをする」といういい加減な返事が返ってくるという具合。この辺に不安はあったもの、グリーン投資減税という制度を利用したいという意向から、契約を急ぎ今年の3月末までに支払いも済ませてしまったのだ。

 さて、契約し、購入した後は、本来なら売主であり、今後の管理をしてくれる会社と直接やりとりをすべきだが、さまざまな不安があったことから、しばらく不動産会社経由でコンタクトしていた。メンテナンス関連で一番心配していたのは、その詳細な内容だ。月々8,000円を支払うのはいいけれど、そこをハッキリ示してもらえなければ、いくら付帯条件だといっても頼むことができない。以前、九州に発電所を作ろうと計画していた際、その業者から提案を受けたメンテナンス体制は表1のようなものだった。しかもエコめがねも標準で装備されているので、常にリモートで監視できるし、いざということがあっても、発電所からクルマですぐのところに管理担当者がいるので、すぐにかけつけてくれる。これなら遠く離れていても安心だと思ったのだ。

表1:九州の物件で提案を受けたメンテナンス体制

 さらに、その九州の物件では保証がしっかりしているのも安心材料の一つとなっていた。その内容は表2のようなものだ。高島という商社から仕入れていたので、25年のモジュール保障や10年のシステム保証などの、メーカー保証だけでなく、工事に問題があった場合の工事補償、火事や台風、落雷などで壊れた際の物損補償が10年用意されているほか、異常気象などで本来の性能が発揮できない事態になれば5年間で最大25万円分までの補償をしてくれるという立派なものだった。これらすべてがセットで月額1万円のメンテナンス料金というのは十分納得のいくものだったので、自分の頭の中では、これがリファレンスとなっていた。

表2:九州の物件で提示された保証内容

メンテナンスについての契約段階で、ひと悶着……

 話を富士山麓の太陽光発電に戻そう。不動産会社経由でやりとりを続ける中、感じたのは売主側はまったくの未経験で、サポートメニューもまったく考えてなさそうであること。そこでこちらは先手を打って、上記2つの表を渡した上で、こうしたサポート内容を要求する旨を伝えたのだ。

 ところが、なかなか返事はなく、発電開始後にようやく届いたのが、以下の契約書だった。契約書類などに疎い筆者でも、これを見て「バカにするな!」と思う内容であり、共同所有者である友人Aも「ふざけるな!」と激怒する内容だった。そう、ここに記載されていたのはたった数行。

富士山麓の太陽光発電で提示された契約書

1.異常発生時の点検、状態確認、オーナー報告
2.正常発電を妨げる雪の除雪処置。ただし大雪により公道が通行止めになった場合は通行止め解除後速やかに除雪するものとする
3.正常発電を妨げる草の除去、防草処置

 とあるだけなのだ。つまりもし異常が発見されても、こちらに連絡がくるだけで何の処置もしてくれないし、どこに原因があるかの追及もしてくれない。雪が問題になるのは大雪のときだけで、その時動いてくれないなら、何の役にも立たない。草の除去といっても具体的にいつ、どのくらいの頻度で行なうのかすら明記されていないなど、いい加減にもほどがあるというものだったのだ。

 さすがに、こんな内容では、月額8,000円どころか1,000円だって払うに値しないので、その旨を不動産会社に伝えたところ「確かに、この内容では契約できませんよね。よりしっかりした内容にするよう依頼します」と担当者も言っていた。そこで、新たな管理メニューや契約書が届くのを待っていたが、1週間待っても2週間経ってもやってこない。その担当者も売主とは主にメールでやりとりをしていたようだが、そのうちメールの返事も来なくなったというので、もう話にもならない。

 こちらはすでに1,111万円も出してシステムを購入しているので、後には引けないが、この売主にメンテナンスを頼むことは不可能と判断。不動産会社も売主側の不誠実な対応により、当初の付帯事項としていたメンテナンス契約は無効であると言ってくれたため、これで一旦終了となったのだ。

発電所の売り主とは違う業者にメンテナンスを依頼することに

 とはいえ、こちらとしてはどこかに管理をお願いする必要はある。九州ほど遠くはないが、クルマで行って3時間近くかかる場所なので、雪についてはともかく、雑草の除去や電気的問題が生じた場合の対処はお願いしたいところ。どこかいいところはないものだろうか……と考えつつ、決裂後にすぐに連絡をとってみたのは、系統連系の日に立ち会ってくれた電気設備会社の社長のGさん。社長といっても1人会社の社長で、気さくな電気屋さん。個人でも自宅にソーラーパネルを設置して20年近く発電しているというし、ここの設備はすべてGさんが設計したとのことなので、何かトラブルがあったら、Gさんに頼むのが一番近道であるのは間違いない。もともと、売主側の管理体制には不安を感じていたので、系統連系当日、初めてお会いしたときも「何かトラブルがあったら、よろしくお願いします」と口頭で伝えたところ、「何でもやりますから言ってください」と答えてくれたのは、すごく安心できたところだった。

 通常であれば、管理をしてくれるという売主経由でGさんにお願いすべきところなのだろうが、そもそもコンタクトすらできない状況だったので、Gさんに直接電話をして状況を伝えところ「できる範囲でやりますよ」と気軽に答えてくれたのだ。もっとも、電気屋さんに草刈りまでお願いするのは気が引けるところではあるが、年に何回か見回ってもらって、もし草刈りの必要が出たら、その際にシルバーセンターなど草刈りをしてくれる業者にお願いしてもらえればいい話だ。また停電などによるシステム障害が起きても、Gさんであれば間違いなく対処できるので、安心だ。

 あとは定期点検などを行ってくれれば完璧なので、その点も聞いてみたところ「正式な点検を行なうためには、専用の測定器が必要になるのですが、そうしたものは持っていないのでできません。知り合いの電気主任技術者にも聞いてみたけれど、メーカーでないとなかなか難しいと言ってましたよ」とのこと。まあ、ウチの屋根に設置したシステムも点検なんてしてないので、それはエコめがねなどのモニタリングシステムを設置して監視しておけばいいだろうと判断した。

表3:電気設備会社と取り交わした内容

 その内容をまとめたのが上の表3だ。1区画につき月額4,000円、2区画分だから8,000円でお願いしたい旨を伝えたところ、快諾いただけたので、これで契約することになったのだ。その後、しばらくして「こんな感じでいいですか?」といってメールで届いたのが以下の写真。見た感じ妨げになる草も生えてないし、問題はなさそうで、これならとっても安心だ。

電気設備会社から送られてきた点検時の写真

 あと、必要となるのはモニタリングシステムと保険。これについても、とてもいい形で設置、契約することができたのだが、これについては富士山麓発電所報告の最終回となる次回に紹介することにしたい。

藤本 健