藤本健のソーラーリポート
実際、太陽光発電は儲かるの!? 富士山麓での太陽光発電所、運用開始 その3
~モニタリングシステムの設置は必須!!
by 藤本 健(2015/11/11 07:00)
「表面利回りは10.2%。金融商品として見れば、ほかには絶対にない有利な物件ですよ」などと怪しい売り文句で販売している50kW未満の太陽光発電システム。彼らも別に嘘を言っているわけではないし、実際にそうしたリターンがある程度見込めるからこそ、筆者自身も、借金背負って数千万円をこの世界に投資した。しかし、断言できるのは、これは決して金融商品なんかではない、ということ。
自然を相手に発電する装置を自ら設置し、それを運営していくので、さまざまなトラブルがやってくる可能性を持ったリスクあるシステムなのだ。富士山麓の発電所の運用に関する最終回は、そのリスクをどう回避するのか、という観点から見ていくことにしよう。
モニタリングシステムの設置は必須!!
その2の記事でも、メンテナンスの重要性について書いた。できる限り、トラブルが起こらないようにチェックをするとともに、何かあれば、すぐに駆けつけてもらえる体制を整えるのは、太陽光発電所を運営する上で非常に大切なポイントなのだ。そのため、家の隣で発電所を設置し、毎日見守り、状況をチェックする、というのがベストだとは思うが、首都圏に住んでいると、そういうわけにもいかない。そこで、誰かにメンテナンスを委託するわけだが毎日、見回ってもらうなんてことはできない。実際、今回、筆者が契約した電気屋さんのGさんも、年に4回見てもらうだけなので、その間にトラブルが発生すると大問題、大損害になってしまう。
では、実際どんなトラブルが発生し得るのだろうか? 考えられるトラブルを列挙してみると
1.システム故障が生じて、発電が止まったり、発電量が低下する
2.停電などが原因で、そのままシステムが止まってしまう
3.雑草などが成長して、影が生じて発電量が低下する
という、大きく3つだろうか。また、システム故障も原因を分類すれば
・機器の不良によるもの
・台風や突風、地震、噴火などによる災害によるもの
・泥棒によるシステム障害
などが考えられるが、これらをどう回避するかはしっかり考え、対策をとる必要がある。
その対策として、いずれのケースにおいても、絶対的に役立つのがモニタリングだ。つまり、いまどのくらい発電しているのかをリアルタイムにチェックして監視するというもの。現在はネット経由で監視するためのシステムが販売されているので、それを使うのは、太陽光発電を運営する上での必須条件といえるだろう。そのモニタリングにおいて、国内トップシェアを持つのが、この連載でも何度か取り上げてきたNTTスマイルエナジーの「エコめがね」だ。
「エコめがね」は、太陽光発電業界においてモニタリングシステムの代名詞的存在になっているが、こうしたシステムを設置する意義は大きい。これがあれば、現地にいなくても、リアルタイムに1時間ごとの発電量をチェックできるので、何か異常がおこれば1時間以内にはわかるし、明らかなトラブルが発生するとメールでアラートもやってくる仕組みになっている。原因がハッキリしなくても、問題が起こっていることを確認したら、そこで駆けつければいいわけだ。
例えば停電などが原因でたまたまブレーカーが落ちて、気がつかないまま約40日間放置した場合、50kWの発電所で25万円以上の損害になってしまう。太陽光発電を運営する上で、モニタリングシステムというのは、それくらい重要なものなのだ。しかし、「エコめがね」を運営するNTTスマイルエナジーの昨年の発表によると、同社以外のものも含め、モニタリングシステムを設置しているのは約2割程度で、8割が未設置であるとのことだったので、いかに認識不足で運営している人が多いのかと心配になってしまうほどだ。
やはりモニタリングシステムの設置は必須。富士山麓の発電所を折半で購入した共同運営者である友人Aにも以前から伝えてあり、その点は承諾済み。ただ、最初から問題があった。このシステムの売り主が、かなりいい加減な会社であることは前回書いた通りだが、通常オプションとして用意されているモニタリングシステムはなく、購入前にその点を確認したところ「勝手につけてくれ」ということだったのだ。
仕方なく、NTTスマイルエナジーに問い合わせたところ、ユーザーへの直販はしておらず、基本的には設置業者に卸しており、そこが工事することになっている、とのこと。また取引のない会社だと、卸すことができないが、近所の取引先を紹介することはできなくはない。とはいえ設計、施工をした業者でないと、詳細が分からず、設置が難しいだろう、というのだ。そこで、「エコめがね」はこちらで入手するから、設置だけはなんとかお願いしたいという旨を購入窓口である不動産屋に伝えたところ、1週間近くして了承の返事を得られた……という具合だったのだ。
+1円での電力買取と無料のモニタリングシステムが魅力の「みえるーぷ」
「エコめがね」とのやり取りは、3月末のシステム購入直前だったのだが、そこで少し頭をよぎったのが、LOOOPという会社のモニタリングシステム、「みえるーぷ」についてだ。3月に書いた「PV EXPO 2015」のレポートでも紹介した通り、LOOOPはPPS(新電力会社)として+1円での電力買取を行なうとともに、その契約をした場合は、「みえるーぷ」というモニタリングシステムを無料提供するというサービスを発表していたのだ。
一方で「エコめがね」設置にかかる費用は、10年分の通信費などを合わせると約50万円。友人Aにその話をしたところ、「今は少しでもキャッシュの支出を減らしたので、LOOOPを選択したい」という。筆者自身は、自宅でも「エコめがね」を使っている安心感から、「エコめがね」がいいだろうとは思っていたが、確かに50万円の差は大きいし、+1円の買い取りも魅力的だ。まあ、+1円の買い取りについては「エコめがね」も、「エコめがねPLUS」というサービスを行なっているので、その点は同様であったわけだが……。
といったことを考えていたら、たまたま某雑誌からの仕事の依頼で「LOOOPを取材する」というものがやってきたのだ。取材内容は「みえるーぷ」とは関係のないものではあったが、これは絶好のタイミングだったので、取材が終わったら、「みえるーぷ」担当者と話をしたいという旨を編集部経由で伝えておいた。その結果、詳しい話をきくことができたのである。担当者の話によると、40円もしくは36円の売電をしている人を対象に+1円の買い取りを行なうことができるということで、まさにその対象であることが確認できた。
正式に書類などを書いて提出すれば「みえるーぷ」を無償提供してくれる上、通信費も含めすべてLOOOP負担である、という。しかも、「お友達紹介プレミアム」なるサービスもあり、+1円の買い取りサービスを友達に紹介して制約すれば、パネル1kWあたり500円のキャッシュバックを本人と友人の双方にしてくれる、というのだ。まさに願ったり叶ったりとはこのこと。
そう、友人Aは筆者と折半で50kWのシステムを1つ購入したのと同時に、もう1つ購入している。また、筆者との折半のほうは、名義上は筆者のシステムとなっているので、こちらを先に契約し、友人Aを紹介すれば、一挙両得というわけだ。そこで、これについては即答で申し込むことにした。
ここでLOOOPから営業を受けたのが「まもるーぷ」というもう一つのサービス。こちらはメンテナンスに関するサービスで、定期点検が付いているほか、何かがあったら駆けつけるというもの。またオプションで除草作業があったり、損害保険も用意しているとのことだったが、オプション抜きで初年度31万円、2年目以降23万円とのことで、これは見送ることにした。ただし、損害保険のみの申し込みは可能とのことだったので、これについては見積もりをしてもらうことにした。
というのも、以前購入しようとして暗礁に乗り上げた九州の発電所の場合、月額1万円のメンテナンス料金の中には損害保険が含まれており、火災・落雷、台風、暴風による損害に対する保障をしてくれるほか、盗難によるシステム故障も保険と対象となっていたが、今回の富士山麓のシステムの場合、保険も完備されておらず心もとない状況だったのだ。
また最近はパネル泥棒よりも、電線泥棒が国内に横行しており、これが大きな問題になるケースがある、というので、心配でもあったのだ。地震と津波、噴火は保険対象外とのことだったが、富士山が爆発したら、太陽光発電どころの話ではない大惨事ということになるのだろうから、まあ、そこは諦めることにする。ここに載せた見積書は、その後、細かな情報をやりとりした結果の最終見積もりだが、年間46,660円と、結構な金額ではある。とはいえ、保険に入らないで、あとで後悔しても困るので、友人Aとも相談の上、損害保険を申し込むことにした。
システム使用料は無料だが、工事費は別途で払う
さて、5月に運転スタートした発電所。一日も早く「みえるーぷ」でモニタリングしたいところなので、早々にさまざまな書類を提出したわけだが、本来50万円程度するものを無料で受け取るには、多少の審査が必要であった。
LOOOPとして、モニタリングシステムを無償提供する以上、発電状況が不良な発電所であった場合、大きな損害を被るので、まずは正常に運転するシステムなのかをチェックするというのだ。そのチェックとは、東京電力の検針結果の伝票を3カ月程度確認するというもの。
6月10日が最初の検針日で手元に届くのがその数日後。3カ月分となると、8月半ばを過ぎないと入手できないわけだ。その間に、故障やトラブルがないことを祈りつつ、日々を過ごしていたわけだが、8月分の検針結果をスキャンしてメールで提出したのは、まさにお盆休み中。まだかまだかと思いつつ、待っていたところ、休み明けの8月20日に、「これで、書類も含めすべて整いました。ただ、現在、「みえるーぷ」が品薄で、納品までに少し時間がかかりそうです」との連絡が。やはり無料提供だと、だいぶ時間がかかるのだろうか……なんて心配をしていたら、翌日には「在庫がなくなる前に引き当てがつきました。8月27日発送、8月28日納品予定です」という嬉しい連絡をもらった。「みえるーぷ」は、実際に設置をしてくれる電気屋さんのGさんに送ってもらった。もちろん、その工事には立ち会うつもりでおり、Gさんにも日程の調整を電話でお願いしていたのだ。
ところが、こちらの認識不足もあり、ちょっと想定外のことが発生。8月29日にGさんから電話で連絡があり、「これ、エコめがねと違って、CT取り付けるだけではダメですね。すべてのパワコンとの配線工事が必要だから、そのケーブルを取り寄せる必要もあるし、さすがに工事費もかかっちゃう。近々に見積もりを送っておきますよ」というのだ。パワコンに直接つないでモニタリングするのであれば、各パワコンごとの出力の違いも検知できるはずで、問題点を洗い出す上でも大きな力になってくれるはず。多少の出費は仕方がないところだ。数日後Gさんから見積もりが届き、確認したところ工事費込みで129,600円。想定外の出費ではあったが、これでお願いすることにし、電線類も揃う9月28日に工事を行なうことになった。
5月19日の系統連系日以来、2回目となる現地訪問となったが、約束の時間である13時に到着したところ、生真面目なGさん、朝から工事を進めていたのだった。「かなり長時間かかるので、すでに2日かけて、配線は済ませています。あとは、最後にモジュールを取り付けて、スイッチを入れれば動くはずですよ」とGさん。
筆者が趣味で見学に来ることを理解しているGさんは、すべてお膳立てをして待っていてくれたのだ。「みえるーぷ」からのデータ伝送は3GのモバイルWi-Fiを使うのだが、電波強度のチェックもすでに終えてある。さっそくLOOOPの工事担当者に電話をしたところ、問題なくデータが届いているということで、無事完了だ。ついでに、9台ある各パワコンの発電状況や、これまでの累積発電量をチェックしてみたところ、すべて問題なく動作していることも確認できた。
ただ、ある程度のバラつきはあった。太陽の当たり方に違いはないはずなのに発電量の少ないものと、多いものでは1割程度の差が出ているのだ。その結果、友人Aの発電所に対し、微妙に引けを取っているのは悔しいところだが、まあ誤差のうち。まずは1年間通してみた結果どうなるかを比較したいところだ。
発電量をチェックするのは楽しい!
さて、筆者からもLOOOPへ連絡し、稼働開始した「みえるーぷ」へアクセスするためのURLやID、パスワードを教えてもらい、モバイル環境からアクセスしてみた結果、無事動作を確認することができた。友人A側のシステムも問題なく動作しているので、これで工事は無事完了となったわけだ。当日は、工事終了後、だんだん曇っていったので、発電量は21kWhで終了。その売電金額も表示され、その額は809円とわずかで終わってしまった。
そして翌日からは、この「みえるーぷ」を見るのが日課というか時課。どのくらい発電しているのかをチェックするのは、単純にとても楽しいのだ。頻繁にアクセスしてチェックしているとわかるのは、グラフ上は1時間ごとの表示だが、実際は20分毎にデータが更新されており、まさにリアルタイムでデータが反映される。その日の発電量と売電実績を見ながら、一喜一憂。まあ、そんなに見ていても意味がないことは十分わかっているけれど、“マニア”としては楽しいわけだ。
もちろんグラフ表示は時間ごとだけでなく、日ごと、月ごと、年ごとの表示も可能。現時点だと丸1カ月のデータが取れているのは10月だけだが、その結果を現したのが下の図。10月7日に最高記録である266.7kWh、10,369円を記録している。その後は、当然日照時間が短くなってくるので、快晴であっても、日を追って発電量が少なくなっていくのは仕方のないところ。冬至を迎える12月がどの程度になるのかが気になるところだ。
ところで、故障や不具合を見つける上で、大きく役立つのが、ほかのシステムの発電状況との比較だ。今回は、幸いにしてまったく同じシステムが2つ並んであり、それぞれ、同じように比較することができるので、ここに相違があれば問題が生じていることがわかる。友人Aとはお互いで、相手のシステムにもアクセスできるようにID、パスワードを共有しているので、それを今、改めてチェックしてみたところ、ちょっと困った問題が起きていることが発覚してしまった。
友人Aが持っている発電所のほうが、なんとなく発電量が多いな……というのは当初から気になっていたのだが、この10月の結果を見てみると、発電量で1,000kWh、金額にして4万円もの差が出ていたのだ。20%近い違いなので、これは看過できない問題。多少のバラつきがあるのは仕方ないとしても、もし月に4万円の差が出続けたら年間で48万円、20年間で1,000万円近い差が出てしまう。これは何か不具合があるのでは……と改めて、「みえるーぷ」でチェックをしてみた。
前述のとおり、パワコンごとの発電量をチェックできるので、これで見たところ、どれかが特別少なくなっているわけではない。それぞれのパワコンの出力が、すべて友人A単独で持つシステムに微妙に負けているのだ。
原因はハッキリしないが、こうなると考えられるのは設置場所の問題だ。我々が購入したのは、まさに太陽光発電所分譲地の二区画分であり、最終的には40区画分程度の発電所が設置される予定となっている場所。現時点、整地は済んでいるけれど、設置されたものはまだ4区画分であり、まだ、その大半は基礎工事しかできていない状況なのだ。
そして筆者が所有するのは、4区画のうちの真ん中で、友人Aのものは端っこ。もしかしたら、まだ設置していない土地からの乱反射などによって友人Aの発電所の発電量が多いのかもしれない。この辺は、今後の他区画が設置されてからでないと、何とも分からない。しかし、このような差を発見できたのも、モニタリングシステムを設置したからこそ。やはり、太陽光発電の設置にはモニタリングシステムが必須だということを改めて認識できた。
以上、3回に渡って、富士山麓の発電所の運用状況についてレポートしてみたが、いかがだっただろうか? 自分自身でも、まさに初めてのことばかりで、アドベンチャーな毎日。楽しいけれど、不安もいっぱいな発電事業である。表題の「儲かるのか?」については、せめて1年間は運用してみないと、どうにもわからないけれど、それなりに収益はでるだろう、と踏んでいる。この富士山麓発電所については、また1年程度経過した時点で、検証レポートをしてみようと思っている。