藤本健のソーラーリポート

ソーラーマニア的スマートメーター導入記。裏ワザ? で我が家がスマート化

「藤本健のソーラーリポート」は、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電・ソーラーエネルギーの業界動向を、“ソーラーマニア”のライター・藤本健氏が追っていく連載記事です(編集部)

 電力自由化がスタートして4カ月経過したが、まだ契約切り替えに至ったのは2%とのこと。まあ、確かに各社のサービスメニューを見比べてみても、それほど目立った違いがないために、なかなか進まないのだろう。以前、記事にも書いた通り、自宅屋根に太陽光発電システムを載せている筆者としても、現時点では乗り換えるメリットはない。

 ただ、電力会社を乗り換えると漏れなく付いてくる、スマートメーターにはちょっと興味があった。そう、このスマートメーターなら、電力使用状況に関するさまざまな情報が得られるらしいので、なんとなく試してみたかったのだ。

 が、電力会社を乗り換えずともスマートメーターを入手する方法を知り、実際に交換してもらうことができたので、スマートメーターの活用法などについて、2回に分けてレポートしてみたいと思う。

10年ごとにひっそりと交換されている電力メーター

 各家庭に設置されている電力メーター。ずっと昔から同じものが設置されていると思うかもしれないが、このメーターは計量法というもので有効期間が10年と定められており、10年ごとの交換が義務付けられている。

 もっとも、電力メーターの設置費用はユーザー負担ではなく、電力会社負担となっているので、お金を請求されることはない。交換されたこと自体気づかない人も多いと思うが、古い家ならこれまでに何度か交換がされてきているはずだ。その電力メーターは、さまざまな理由から新型のスマートメーターに変更されることが国によって決まり、2020年までにすべてがスマートメーターに置き換えられることになっている。

 そのため、最近新築した家への設置はもちろん、10年ごとのメーター交換でもスマートメーターに置き換えられている。そして電力会社を乗り換える際にも、スマートメーターへの交換が義務付けられているので、乗り換えを申し込むと、電力会社の人がやってきて、無料で交換工事がしてもらえるのだ。

 そうした中、筆者は微妙なタイミングでスマートメーターへ交換を逃してしまった。筆者の家は、とにかく屋根に太陽がよく当たるところを……という思いから、その条件を満たす安い土地を探して2004年末に建て、当初から太陽光発電をし、売電を行なってきた。

筆者自宅のソーラーパネル

 そのため、一般の買電メーターとともに、売電メーターが2つ並んで取り付けられて、毎月、検針員の人が2つのメーターをチェックの上、伝票が届けらていた

 スマートメーターへの交換という話は3年ほど前から聞いていたので、ウチはいち早くスマートメーターに乗り換えられるのでは……なんて期待していたが、2014年末に東京電力がやってきて取り付けたのは、従来と同じ普通のメーター。「おとくなナイト10」という時間帯別の料金契約をしているために買電メーターはデジタル型、太陽光発電の売電メーターはクルクル回るアナログ型で、10年前の設置時とまったく同じものだったのだ。

買電メーター(左) と売電メーター(右)

 取り付け工事に来た人に「スマートメーターではないのか?」という質問をしたのだが、「もう間もなくなんですが、まだなんですよ。このタイミングですから、スマートメーターへの交換は2020年ギリギリくらいになるかもしれませんね……」と言われてガッカリしたのだった。

スマートメーター入手の裏ワザを知る

 そのため、スマートメーターを入手するには電力会社を乗り換えるか、2020年ごろまでじっと待っているしかない……そう思い込んでいたのだが、先日インターネットプロバイダー大手のIIJの人と話をしているとき、思わぬ朗報をもらったのだ。「東京電力にBルート利用の申請をすれば、スマートメーターにすぐに交換してもらえますよ」と。

 そう、この「Bルート」なるものが何なのか、今ひとつピンと来ていなかったけれど、これがスマートメーター利用のキーワードらしいことは知っていたので、気になっていたところ。しかも、スマートメーターを入手して初めて、そのBルートが何なのかを確かめられると思っていたら、「Bルートを利用したい!」と名乗りでればスマートメーターに交換してもらえるらしい。個人的には驚くべき裏ワザに思え、その日の昼に即インターネット経由で申請を行なったのだ。

 申し込み案内の流れを確認してみたところ、2~3週間でスマートメーターへの設置交換が行なわれ、さらにBルートのためのIDとパスワードが発行されるとのこと。

Bルートサービスについて
スマートメーターのサービス開始までの流れ

 長い間、悩んでいた!? のに、なんとあっさりと解決してしまうのかと驚いた。その後、すぐに自動返信メールが届くとともに「平成28年4月より電力小売の全面自由化が開始となり、スマートメーターに関する工事が大変混みあっております……」という案内も来ていたので、さすがに2週間では無理かな……とは思っていた。

 が、1カ月半を経過しても、まったく音沙汰がないので、東京電力にどうなっているのか、電話で問い合わせてみたのだ。何か所かに回された結果「あれ、まだスマートメーターの交換工事がされていなかったんですか? 至急手配します」という返事があり、結局電話した2日後に工事が完了してしまった。まだ、スマートメーターの工事関連は混乱しているところなのかもしれないが、結果的には1カ月半ちょっとで交換してもらうことができた。

 残念ながら、その工事に立ち会うことができなかったが、こちらがスマートメーター交換後。

スマートメーターに交換完了。1つに集約された

 もともと2つあったメーターは1つに集約され、片方はスカスカになって、ちょっと不格好だが、まあ仕方ないところだろう。当たり前ではあるが、クルクル回転する円盤がなくなってしまったのは、なんとなく寂しく感じたところ。というのも、これまで晴れた日なら、この売電メーターの円盤が勢いよく回っていたので、「今日もよく発電してる」と実感が得られたのに、スマートメーターを外から見る限りでは、数字が表示されているのみ。

円盤はなく、数字のみ表示

無事に設置完了! スマートメーターに変えると確認できること

 では、スマートメーターに変わると、何がどう変わるのだろうか? まず、誰でも簡単に確認できるのは、30分ごとの電力使用状況。電力会社のWebページで見れるようになるのだ。これは電力会社によって対応が異なるようだが、東京電力の場合、「でんき家計簿」のページで表示される。

 従来の電力メーターのときから「でんき家計簿」では月々の電気使用量をグラフで確認することができた。しかし、スマートメーターになると時間別グラフという表示が可能になり、30分ごとの使用電力をチェックできるのだ。

でんき家計簿ページ
スマートメーターにより30分ごとの電気使用状況をチェックできる

 このグラフを見ると、赤い棒と青い棒があるが、前述のとおり筆者の家では「おとくなナイト10」という時間帯別の料金体系になっているため、昼と夜での電気料金が異なる。高い単価の昼が赤、安い単価の夜が青となっているのだ。また昼間の時間帯を見ると、何の表示もないので、不思議に思えるかもしれない。

 が、これこそが太陽光発電が行なわれている時間帯であり、電気を買ってないから何も表示されていないのだ。ただし、ここには売電がどのくらいになっているかの表示はなく、太陽光発電ユーザーにとっては、まったくもって物足りない。「電気ご使用量のお知らせ」というページにも、使用料だけで購入量というのがないので、やはり「でんき家計簿」にすべてをゆだねるわけにはいかないことが分かる。

スマートメーターに関係する「Aルート」「Bルート」「Cルート」とは?

 そこで登場してくるのが、今回のテーマである「Bルート」なのだ。

 Bルートという用語を初めて目にする人も少なくないと思うが、これはスマートメーターから発信される情報がどのようなルートで伝わるかを示すもので、図のようにAルート、Bルート、Cルートの3種類が存在している。

Aルート、Bルート、Cルートの仕組み

 スマートメーターとは通信機能や制御機能を持った電力メーターなわけだが、電話回線やインターネット回線ではない、独自の回線を用いて電力会社(送配電)がスマートメーターからの情報を得るのがAルート。

 そしてその電力会社が受け取ったデータを転送する形で、小売事業者(新電力会社)などに渡すのがCルートというもの。

 先ほどの「でんき家計簿」での時間別グラフは、このAルートから入手した情報なわけだ。このAルートにおいては買電情報だけでなく、売電情報も届いているはずなのだが、でんき家計簿では情報が公開されておらず、従来通り1カ月に1度届く検針票を待つしかないのだ。

家庭のHEMSなどと連携できるようになる「Bルート」

 では、そのBルートとは何なのか。実はスマートメーターには、家庭内に設置されているHEMSなどの機器と電波で通信する機能が搭載されている。具体的には920MHzという周波数帯を使ったWi-SUNという規格での通信であり、ここでやり取りされるのがBルートというものなのだ。

 ただ、家庭の使用電力は個人情報であるため、勝手に傍受されると大きな問題になる。そこで、IDとパスワードが割り振られており、前述のBルートの申請を行なうと、スマートメーターの設置後、IDが封書で、パスワードがメールで送られてくるのだ。

BルートのIDが書かれた書類

 これをHEMS機器側に設置することで通信が可能になるというわけである。

 ちなみに、このIDとパスワードは、スマートメーターが設置されれば自動的に届くというわけではない。つまり、ただ電力会社を乗り換えただけでは入手できない。前述のBルート利用の申請が必要であり、その申請を行なうことでIDやパスワードが発行されるのだが、実はこのBルートの申請には条件がある。それは、スマートメーター対応のHEMS機器を、自分で用意する必要があるということだ。

 まあ、先に申請を行なってからHEMS機器を入手しても大丈夫なようなので、それほど厳しい条件ではないが、そもそも、そのスマートメーター対応のHEMS機器というのが現状、あまり選択肢がないのだ。

 「エコーネットコンソーシアムのサイト」を見ると、その一覧があるが、見てみるとそのほとんどが「高圧Bルート」対応のもの。高圧Bルートとは、50kW以上の事業所や工場などで使うスマートメーター用のもので家庭用のものは少ない。

 現在あるものとしては、IIJが出す「SA-W1」と「SA-M0」、また、グラモが開発しソフトバンク コマース&サービスが販売する「iRemocon Wi-Fi(SM)」といったものがあり、これらを入手する必要がある。

IIJ「SA-M0」
グラモとソフトバンクC&Sが共同開発した「iRemocon Wi-Fi(SM)」

 実はもともとIIJの人と話をしたのは、先日行った電力自由化EXPOでBルートの説明をしていたのを知ったのがキッカケ。たまたま友人にIIJの社員がいたので、彼を通じて相談をしたところ、担当の方を紹介してもらい、Bルート申し込みの話を教えてもらうのと同時に、数カ月HEMS機器を貸してもらう約束を取り付けたので、申し込んだのだ。

 一方、こちらも偶然ではあるが、筆者がBルートの申し込みをした翌日、家電 Watch編集部から、ソフトバンクC&SのiRemocon Wi-Fi(SM)を貸すので記事で取り上げてもらえないか、という連絡があったのだ。

 そこで、これらでどんなことができるのか、またどんな違いがあるのかも試していったので、次回の記事で、その具体的な結果を紹介していくことにする。

藤本 健